イケメン店主に秘密の片想いのはずが何故か溺愛されちゃってます

波木真帆

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まさかの相手

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とりあえず気持ちを落ち着かせようとソファーに移動すると、近くでスマホが鳴っている音がする。

これって……八尋さんの?

結構鳴ってるな。
どうしよう。
でも、実家から帰ってきたばかりだし、何か重要な連絡だったら大変だ。

悪いと思いつつ、画面表示を見てみると画面には<倉橋祐悟>と書かれていた。

うわ、社長だ!

こんな時間に社長からの電話なんて、緊急事態に決まってる。
でも、これをお風呂場に持って行ったところで、八尋さんがとることはできないだろうし、それなら、俺がとってあとで折り返すと言ったほうがいいんじゃないか?

でも、人の電話を勝手にとるのはあまりいいことでは無いのかも……。

そう思いつつも、なり続ける着信音に正常な判断ができなくて、結局俺は慌てて電話をとった。

ーあ、あの……。

ーああ、八尋さん。近々石垣に行って欲しくて――

ー社長、すみません! 俺、八尋さんじゃなくて……

ーえっ? あ、もしかして……平松くん?

ーは、はい。そうなんです。すみません。

まさかこんな形で社長と話をすることになるとは思ってもなかった。
あのときのことを思い出して、ちょっと怖くなる。

ーいや、驚いたな。

ーすみません、勝手に電話をとったりして……ずっと鳴っているから急用かと思って気になって……

ー八尋さんはどうした? 店にいるのかな?

ーあ、えっと……今、お風呂に入っていて、あのすぐに出てくると思うんですけど……

ーああ、なるほど。邪魔して悪かったね。

ーえっ? 邪魔って……

ーいいよ。わかってるから。

その声があまりにも優しくて驚いてしまう。
あの時に感じたような威圧は何も感じられない。
ただただ優しい声かけに俺は戸惑うしかなかった。

ーあの、八尋さんが出てきたらすぐに社長に電話を折り返すように伝えますから。

ーいや、いいよ。ちょっとお礼も兼ねて世間話でもしようかと思っていただけだから、たいした話じゃないし気にしないでいい。

ーそう、なんですか?

ーああ、あとでメッセージを送るって伝えてくれたらいい。

ーわかりました。あ、あの……

ーんっ? どうかした?

ー八尋さんから、砂川さんと安慶名さんから預かったっていう時計を受け取ったんですけど、あれってもしかして社長が見つけてくれたんですか?

ーああ、そのことか。君が告発してくれたおかげで、あの会社が倒産して全てを片付けるためにビルを捜索したら出てきたんだ。だから、私が見つけたというほどのことをしたわけじゃない。誰が探しても出てきたはずだよ。大事なもののようだったからすぐにでも手元に渡ったほうがいいだろうと思って、砂川に渡したんだ。私より先にそっちに帰る予定だったからね。でも同じタイミングで八尋さんが東京にきていたから砂川が八尋さんに預けたんだよ。無事に君に渡ったようで良かったよ。

ーありがとうございます。俺、もう諦めてたんで……まさか戻ってくるなんて思わなくて……。

ー大切なものは無くしても必ず戻ってくるものだよ。平松くんが大切にしていたから君のところに帰ってきただけだ。これからも大切にしたらいい。

ーはい。ありがとうございます。俺……ずっと社長は怖い人だって思ってて……。会うのもドキドキしてたんですけど、今日こうやってお話しできて良かったです。

ーそんなに怖かったか?

ーはい。それはもう! ってすみません……。

ーいや、砂川にも散々文句を言われたから、反省していたんだよ。あの時は航のことしか考えてなかったものだから。悪かったね。

ーいえ。それが当然だと思います。

ー西表で会えるのを楽しみにしているよ。何より航が驚く顔を見るのが楽しみだ。

ーはい。俺も楽しみにしてます。

ーじゃあ、また西表で。

そういうと、電話は切れた。

社長の印象がだいぶ変わったな。
あんなに優しい声を出す人なんだ……。

あの時あんなに怖く感じたのは、藤乃くんを傷つけられて許せなかったんだろう。

社長が藤乃くんをどれだけ好きなのか、わかった気がするな。

今日、社長と話せて良かった。
次に会った時は藤乃くんにだけ集中して話ができる。

心の重荷が少し軽くなった気がして、ソファーに倒れ込んでいると、

「平松くん、眠いならベッドに連れて行こうか?」

と心配そうな声が聞こえた。

「あ、八尋さんっ!!」

びっくりして跳ね起きてから、

「すみません、違うんです!」

と謝ると、八尋さんは不思議そうに俺を見つめた。

「何かあった?」

「すみません。まずは謝らないと……」

「謝る?」

「あの、八尋さんがお風呂に入っている間にスマホが鳴ってて、八尋さんのところに届けようか悩んでたら、相手が社長だったので、緊急かと思って電話とっちゃったんです」

「えっ……」

俺の言葉に八尋さんの表情が曇る。
ああ、やっぱり俺はとんでも無いことをしてしまったのかもしれない。
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