イケメン店主に秘密の片想いのはずが何故か溺愛されちゃってます

波木真帆

文字の大きさ
21 / 121

生きてる実感

しおりを挟む
八尋さんが昼食に連れて行ってくれたのは、西表牛が食べられるというお店。
そこのおすすめだという、ハンバーガーを注文してくれた。

「ステーキも美味しいんだけど、ハンバーガーはまた格別なんだ。かなりボリュームあるけど、平松くんなら食べられるだろう」

「こういうお店のハンバーガーって一度食べてみたかったのですごく嬉しいです。でも西表牛って、初めて聞きました」

石垣牛というのは聞いたことがある――もちろん名前だけ、食べたことはない――けど、西表でも牛を生産しているんだと驚いてしまった。

「最近生産されるようになった牛でね、この牛は西表島産のパイナップルを食べて育っているから、肉に甘味があって美味しいんだよ。うちでも最近、この肉を仕入れてるんだけど、結構評判だよ。しかも、まだ出荷数が少ないから島外で出回ることはほとんどなくて、島外で食べられるのは、石垣島にある『あや』っていう焼肉店だけだよ」

「『綺』って、東京とかにもお店がある、超高級店で有名なあのお店ですか?」

「そうそう。よく知ってるね」

「以前、社長が行きたいから予約を取るように言われたんですけど、三年待ちで予約取れなかったお店です」

あの時はかなり怒ってて、しばらくの間、機嫌が悪かったんだよな。

「ああ、そうなんだ。実はその店のオーナー、倉橋くんの友人だよ」

「ええっ? そうなんですか?」

さすが社長……やっぱり友人もスケールが違うな。

「しかも、そのお店を作るときに、倉橋くんがかなり投資したらしいから、倉橋くんにしてみれば最初から勝算はあったんだろうね。現に今は日本国内に五店舗だったか、六店舗だったかあるといっていたから大成功だね」

「わぁー、社長も、その友人さんも本当にすごいんですね」

「今度、一緒に食べに行こうか?」

「えっ?」

「石垣島ならすぐに行けるし、倉橋くんに頼めば予約はすぐに取ってもらえるよ」

「でも、そんな……」

超高級店においそれと俺なんかが行けるわけないし……。

「ふふっ。大丈夫、石垣店は東京ほど高くないし、かなりリーズナブルなものも揃っているよ」

「そう、なんですか?」

「ああ、ランチだとさらにリーズナブルかな。砂川さんや、名嘉村くんも石垣に行った時はよく食べに行っているみたいだし」

そう言われると、行ってみたくなる。

「あの、じゃあ……今度ぜひ……」

「ああ、私が案内するよ。西表同様に石垣もかなり詳しいんだ」

「こっちに来てどれくらいなんですか?」

「十年は経つかな。いや、十五年近くなるかも。その間にいろんな島を巡って、どこもすごく楽しかったけど、西表が一番自分に合ってるって気づいたよ」

「あ、あの……八尋さんって、おいくつなんですか?」

「41だよ。30過ぎたら早いなんてよくいうけど、本当にあっという間だったな」

「――っ!!!」

八尋さんが41歳?
信じられないっ!

「どうかした?」

「あっ、いえ」

「もっと老けてると思った?」

「ちが――っ、その逆です! 35歳くらいだと思ってて……」

「ははっ。お世辞でも嬉しいよ。ありがとう」

「本当にお世辞なんかじゃないです」

「平松くんはいくつかな?」

「俺、26……あっ、来月で27歳になります」

両親が亡くなってから誕生日なんて気にしたことなかったけど、誕生日を思い出せるようになったのは、自分に少しゆとりができたのかもしれないな。

「じゃあ、私が西表に来た頃と同じくらいだな。まだまだ若いからこれからいろんなことできるよ。このタイミングで生活環境を変えられたのは良かったんじゃない?」

「はい。俺もそう思います。俺、ずっとある人を守ることだけが、自分の存在価値だと思っていて……それが終わった時に、何をしていいかわからなくなってんたんですけど、倉橋社長のおかげでここに来させてもらって、まだ何日かしか経ってないですけど、すごく生きてる実感がして楽しいです」

「生きてる実感って、たとえば?」

「えっと……あっちにいるときは、仕事にやりがいを感じることなんてもちろんなかったし、食事もこんなに楽しいと感じたことはなかったし、次の日の予定にワクワクして目覚めるなんて楽しみもなかったし、何かを見て楽しいなんて思うこともなかったので……」

「ふふっ。そっか。嬉しいよ」

そんな八尋さんの笑顔にハッと我に返った。

えっ、ちょっと待って……。

仕事はともかく、食事とか他のことって……全部八尋さんと、一緒……じゃないか?
もしかして、俺……八尋さんと一緒だから嬉しいみたいに発表してないか?

だから、八尋さん……嬉しいって……。

うわっ、すごい気を使わせちゃったかな?

俺よりもすごく年上でかっこいい八尋さんが、俺なんかに褒められて嬉しいはずないのに……。
ああ、もうっ! 俺ってば、どうしてペラペラ喋っちゃったんだろう。
しおりを挟む
感想 172

あなたにおすすめの小説

朝目覚めたら横に悪魔がいたんだが・・・告白されても困る!

渋川宙
BL
目覚めたら横に悪魔がいた! しかもそいつは自分に惚れたと言いだし、悪魔になれと囁いてくる!さらに魔界で結婚しようと言い出す!! 至って普通の大学生だったというのに、一体どうなってしまうんだ!?

ハイスペックストーカーに追われています

たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!! と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。 完結しました。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...