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生きてる実感
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八尋さんが昼食に連れて行ってくれたのは、西表牛が食べられるというお店。
そこのおすすめだという、ハンバーガーを注文してくれた。
「ステーキも美味しいんだけど、ハンバーガーはまた格別なんだ。かなりボリュームあるけど、平松くんなら食べられるだろう」
「こういうお店のハンバーガーって一度食べてみたかったのですごく嬉しいです。でも西表牛って、初めて聞きました」
石垣牛というのは聞いたことがある――もちろん名前だけ、食べたことはない――けど、西表でも牛を生産しているんだと驚いてしまった。
「最近生産されるようになった牛でね、この牛は西表島産のパイナップルを食べて育っているから、肉に甘味があって美味しいんだよ。うちでも最近、この肉を仕入れてるんだけど、結構評判だよ。しかも、まだ出荷数が少ないから島外で出回ることはほとんどなくて、島外で食べられるのは、石垣島にある『綺』っていう焼肉店だけだよ」
「『綺』って、東京とかにもお店がある、超高級店で有名なあのお店ですか?」
「そうそう。よく知ってるね」
「以前、社長が行きたいから予約を取るように言われたんですけど、三年待ちで予約取れなかったお店です」
あの時はかなり怒ってて、しばらくの間、機嫌が悪かったんだよな。
「ああ、そうなんだ。実はその店のオーナー、倉橋くんの友人だよ」
「ええっ? そうなんですか?」
さすが社長……やっぱり友人もスケールが違うな。
「しかも、そのお店を作るときに、倉橋くんがかなり投資したらしいから、倉橋くんにしてみれば最初から勝算はあったんだろうね。現に今は日本国内に五店舗だったか、六店舗だったかあるといっていたから大成功だね」
「わぁー、社長も、その友人さんも本当にすごいんですね」
「今度、一緒に食べに行こうか?」
「えっ?」
「石垣島ならすぐに行けるし、倉橋くんに頼めば予約はすぐに取ってもらえるよ」
「でも、そんな……」
超高級店においそれと俺なんかが行けるわけないし……。
「ふふっ。大丈夫、石垣店は東京ほど高くないし、かなりリーズナブルなものも揃っているよ」
「そう、なんですか?」
「ああ、ランチだとさらにリーズナブルかな。砂川さんや、名嘉村くんも石垣に行った時はよく食べに行っているみたいだし」
そう言われると、行ってみたくなる。
「あの、じゃあ……今度ぜひ……」
「ああ、私が案内するよ。西表同様に石垣もかなり詳しいんだ」
「こっちに来てどれくらいなんですか?」
「十年は経つかな。いや、十五年近くなるかも。その間にいろんな島を巡って、どこもすごく楽しかったけど、西表が一番自分に合ってるって気づいたよ」
「あ、あの……八尋さんって、おいくつなんですか?」
「41だよ。30過ぎたら早いなんてよくいうけど、本当にあっという間だったな」
「――っ!!!」
八尋さんが41歳?
信じられないっ!
「どうかした?」
「あっ、いえ」
「もっと老けてると思った?」
「ちが――っ、その逆です! 35歳くらいだと思ってて……」
「ははっ。お世辞でも嬉しいよ。ありがとう」
「本当にお世辞なんかじゃないです」
「平松くんはいくつかな?」
「俺、26……あっ、来月で27歳になります」
両親が亡くなってから誕生日なんて気にしたことなかったけど、誕生日を思い出せるようになったのは、自分に少しゆとりができたのかもしれないな。
「じゃあ、私が西表に来た頃と同じくらいだな。まだまだ若いからこれからいろんなことできるよ。このタイミングで生活環境を変えられたのは良かったんじゃない?」
「はい。俺もそう思います。俺、ずっとある人を守ることだけが、自分の存在価値だと思っていて……それが終わった時に、何をしていいかわからなくなってんたんですけど、倉橋社長のおかげでここに来させてもらって、まだ何日かしか経ってないですけど、すごく生きてる実感がして楽しいです」
「生きてる実感って、たとえば?」
「えっと……あっちにいるときは、仕事にやりがいを感じることなんてもちろんなかったし、食事もこんなに楽しいと感じたことはなかったし、次の日の予定にワクワクして目覚めるなんて楽しみもなかったし、何かを見て楽しいなんて思うこともなかったので……」
「ふふっ。そっか。嬉しいよ」
そんな八尋さんの笑顔にハッと我に返った。
えっ、ちょっと待って……。
仕事はともかく、食事とか他のことって……全部八尋さんと、一緒……じゃないか?
もしかして、俺……八尋さんと一緒だから嬉しいみたいに発表してないか?
だから、八尋さん……嬉しいって……。
うわっ、すごい気を使わせちゃったかな?
俺よりもすごく年上でかっこいい八尋さんが、俺なんかに褒められて嬉しいはずないのに……。
ああ、もうっ! 俺ってば、どうしてペラペラ喋っちゃったんだろう。
そこのおすすめだという、ハンバーガーを注文してくれた。
「ステーキも美味しいんだけど、ハンバーガーはまた格別なんだ。かなりボリュームあるけど、平松くんなら食べられるだろう」
「こういうお店のハンバーガーって一度食べてみたかったのですごく嬉しいです。でも西表牛って、初めて聞きました」
石垣牛というのは聞いたことがある――もちろん名前だけ、食べたことはない――けど、西表でも牛を生産しているんだと驚いてしまった。
「最近生産されるようになった牛でね、この牛は西表島産のパイナップルを食べて育っているから、肉に甘味があって美味しいんだよ。うちでも最近、この肉を仕入れてるんだけど、結構評判だよ。しかも、まだ出荷数が少ないから島外で出回ることはほとんどなくて、島外で食べられるのは、石垣島にある『綺』っていう焼肉店だけだよ」
「『綺』って、東京とかにもお店がある、超高級店で有名なあのお店ですか?」
「そうそう。よく知ってるね」
「以前、社長が行きたいから予約を取るように言われたんですけど、三年待ちで予約取れなかったお店です」
あの時はかなり怒ってて、しばらくの間、機嫌が悪かったんだよな。
「ああ、そうなんだ。実はその店のオーナー、倉橋くんの友人だよ」
「ええっ? そうなんですか?」
さすが社長……やっぱり友人もスケールが違うな。
「しかも、そのお店を作るときに、倉橋くんがかなり投資したらしいから、倉橋くんにしてみれば最初から勝算はあったんだろうね。現に今は日本国内に五店舗だったか、六店舗だったかあるといっていたから大成功だね」
「わぁー、社長も、その友人さんも本当にすごいんですね」
「今度、一緒に食べに行こうか?」
「えっ?」
「石垣島ならすぐに行けるし、倉橋くんに頼めば予約はすぐに取ってもらえるよ」
「でも、そんな……」
超高級店においそれと俺なんかが行けるわけないし……。
「ふふっ。大丈夫、石垣店は東京ほど高くないし、かなりリーズナブルなものも揃っているよ」
「そう、なんですか?」
「ああ、ランチだとさらにリーズナブルかな。砂川さんや、名嘉村くんも石垣に行った時はよく食べに行っているみたいだし」
そう言われると、行ってみたくなる。
「あの、じゃあ……今度ぜひ……」
「ああ、私が案内するよ。西表同様に石垣もかなり詳しいんだ」
「こっちに来てどれくらいなんですか?」
「十年は経つかな。いや、十五年近くなるかも。その間にいろんな島を巡って、どこもすごく楽しかったけど、西表が一番自分に合ってるって気づいたよ」
「あ、あの……八尋さんって、おいくつなんですか?」
「41だよ。30過ぎたら早いなんてよくいうけど、本当にあっという間だったな」
「――っ!!!」
八尋さんが41歳?
信じられないっ!
「どうかした?」
「あっ、いえ」
「もっと老けてると思った?」
「ちが――っ、その逆です! 35歳くらいだと思ってて……」
「ははっ。お世辞でも嬉しいよ。ありがとう」
「本当にお世辞なんかじゃないです」
「平松くんはいくつかな?」
「俺、26……あっ、来月で27歳になります」
両親が亡くなってから誕生日なんて気にしたことなかったけど、誕生日を思い出せるようになったのは、自分に少しゆとりができたのかもしれないな。
「じゃあ、私が西表に来た頃と同じくらいだな。まだまだ若いからこれからいろんなことできるよ。このタイミングで生活環境を変えられたのは良かったんじゃない?」
「はい。俺もそう思います。俺、ずっとある人を守ることだけが、自分の存在価値だと思っていて……それが終わった時に、何をしていいかわからなくなってんたんですけど、倉橋社長のおかげでここに来させてもらって、まだ何日かしか経ってないですけど、すごく生きてる実感がして楽しいです」
「生きてる実感って、たとえば?」
「えっと……あっちにいるときは、仕事にやりがいを感じることなんてもちろんなかったし、食事もこんなに楽しいと感じたことはなかったし、次の日の予定にワクワクして目覚めるなんて楽しみもなかったし、何かを見て楽しいなんて思うこともなかったので……」
「ふふっ。そっか。嬉しいよ」
そんな八尋さんの笑顔にハッと我に返った。
えっ、ちょっと待って……。
仕事はともかく、食事とか他のことって……全部八尋さんと、一緒……じゃないか?
もしかして、俺……八尋さんと一緒だから嬉しいみたいに発表してないか?
だから、八尋さん……嬉しいって……。
うわっ、すごい気を使わせちゃったかな?
俺よりもすごく年上でかっこいい八尋さんが、俺なんかに褒められて嬉しいはずないのに……。
ああ、もうっ! 俺ってば、どうしてペラペラ喋っちゃったんだろう。
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