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思いがけない仕事
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「そんな……ただのお遊びなので、そんな大したことはないです……」
「いえいえ、この柔らかな感じがすごく癒されますよ」
あまりの恥ずかしさに声が尻すぼみになってしまったけれど、砂川さんはじっくりとそのメモを見続けていた。
「あ、あの……」
落書き程度の絵をじっくりみられて恥ずかしくて、返してもらおうと声をかけようとしたのだけど、砂川さんは
「ちょっと待ってくださいね。平松くんにお願いしたい仕事があるんです」
と言って、スタスタと自分のデスクに向かった。
お願いしたい仕事?
一体なんだろう?
想像もつかなくてただ待っていることしかできなかったけれど、砂川さんは数枚の書類とパンフレットを持って俺のところに戻ってきた。
「これを平松くんの感性でイラストにして見せてもらえませんか?」
砂川さんはいくつかのパンフレットを取り出して、俺に見せてくれた。
綺麗な大自然や海の生物と楽しそうに遊んでいる子どもたちの写真が載っていて実に楽しそうに見える。
「えっ? これをイラストに?」
「はい。実は、イリゼホテルからお子さま向けの観光ツアーパンフレットを作成して欲しいという話が来ているんです」
「お子さま向けの、パンフレット……」
「ええ、観光ツアーというのは基本的に小学生以下、ツアーによっては中学生でも保護者同伴が基本なので、お子さま向けのツアーは大人向けのパンフレットに一緒に記載しているんです。ですが、大人向けのパンフレットはお子さまが見ても楽しくないでしょう? 特に小学校低学年以下のお子さまには」
「確かに、そうですね……」
「そうすると、観光への期待も半減すると思うんです。結果的にツアーが良かったとしても、それはあくまでも結果論で、本当ならツアーの始まりから楽しくワクワクできるものになったほうがいいですよね。お子さまの年齢が低いとどうせ覚えてないからって思う方もいらっしゃいますけど、ものすごくワクワクしたことって意外と大人になっても覚えているものですし」
「始まりから、楽しくワクワク……確かにそのほうが、ツアーを終えてからの満足感も上がりそうですね」
「そうなんですよ! それで、イリゼホテルから館内に並べるパンフレットをお子さまたちの目を惹きやすいものにして欲しいという依頼を受けていたんです。なので、グラフィックデザイナーに依頼しようと考えていたのですが。倉橋がイマイチ乗り気ではなくて……」
「えっ? 倉橋社長が? どうしてですか?」
「ふふっ。平松くんのこの絵を見てわかりました。お子さま向けの絵にはこういう温かみが必要なのだと。倉橋はお子さま向けだからこそ、機械で作られた絵よりも手書きの絵を求めていたんじゃないかと思うんです」
俺の絵が温かみがある?
そんなこと言われたことない。
でも……そう言って評価してもらえるのはとても嬉しいことだ。
「もちろん平松くんの描いたものがすぐに採用されるとは決まったわけではないですが、一度やって見ませんか?」
「はい! やらせてください!!」
「ふふっ。ではお願いしますね。必要なものは全て会社に揃っていますから、自由に使ってください」
「わかりました」
俺の返事に砂川さんはにこやかに笑って、奥の部屋へ向かった。
「ふふっ。平松くん、早速大きな仕事が舞い込んできたね! 僕も応援してるから頑張って! 何かわからないことがあったらなんでも言って! 絶対に一人で考え込んだり、無理はしないこと! いい?」
「はい。わかりました。ありがとうございます!」
もちろんこれですぐに決まるなんて甘いこと考えてない。
でも、チャンスを与えられたことが何より嬉しい。
もしこれで採用されなかったとしても、いい経験にはなるはずだ!
あの会社ではチャンスすら与えられなかったんだ。
せっかくのチャンスを無駄にしないようにしよう。
俄然やる気が出てきた!
俺は初めて与えられた仕事に興奮が止まらなかった。
観光ツアーの絵を描くにはまずはどんな観光かしっかりと自分が理解していないと意味がないよな。
俺は元々のパンフレットはもちろん、参加した人の感想や写真などの資料を引っ張り出して、片っ端から頭に詰め込んでいった。
じっくりと読み込んで、でもまだ足りなくてどうしようかと考えたけれど、やっぱり答えは一つしかない。
「あ、あの……」
「んっ? 何かあった?」
「あ、いえ。その、できたら、一度西表島をこの目で見てみたいなって……俺、まだ何も知らなくて……」
「ああ、そっか。確かにそうだよね。自分で体験したほうが絵にもしやすいか」
自分が言おうとしたことを全て理解してくれるのがすごく嬉しい。
名嘉村さんって本当に優しい人だ。
「今からちょうどお昼休みだし、休憩しながら砂川さんに相談してみようか」
「はい」
俺は名嘉村さんと一緒に、砂川さんのいる部屋に向かった。
砂川さんは社長が出勤している時は俺たちと同じところで仕事をするそうだけど、社長がいない間は社長代理としての仕事をされるので、社長室の隣に専用の部屋を持っている。
やっぱり砂川さんって優秀な人なんだなと改めて思ってしまう。
それなのに物腰が柔らかくて、俺なんかにも丁寧に対応してくれるし……石垣にいるという恋人さんにしてみれば自慢の彼氏だろうな。
「いえいえ、この柔らかな感じがすごく癒されますよ」
あまりの恥ずかしさに声が尻すぼみになってしまったけれど、砂川さんはじっくりとそのメモを見続けていた。
「あ、あの……」
落書き程度の絵をじっくりみられて恥ずかしくて、返してもらおうと声をかけようとしたのだけど、砂川さんは
「ちょっと待ってくださいね。平松くんにお願いしたい仕事があるんです」
と言って、スタスタと自分のデスクに向かった。
お願いしたい仕事?
一体なんだろう?
想像もつかなくてただ待っていることしかできなかったけれど、砂川さんは数枚の書類とパンフレットを持って俺のところに戻ってきた。
「これを平松くんの感性でイラストにして見せてもらえませんか?」
砂川さんはいくつかのパンフレットを取り出して、俺に見せてくれた。
綺麗な大自然や海の生物と楽しそうに遊んでいる子どもたちの写真が載っていて実に楽しそうに見える。
「えっ? これをイラストに?」
「はい。実は、イリゼホテルからお子さま向けの観光ツアーパンフレットを作成して欲しいという話が来ているんです」
「お子さま向けの、パンフレット……」
「ええ、観光ツアーというのは基本的に小学生以下、ツアーによっては中学生でも保護者同伴が基本なので、お子さま向けのツアーは大人向けのパンフレットに一緒に記載しているんです。ですが、大人向けのパンフレットはお子さまが見ても楽しくないでしょう? 特に小学校低学年以下のお子さまには」
「確かに、そうですね……」
「そうすると、観光への期待も半減すると思うんです。結果的にツアーが良かったとしても、それはあくまでも結果論で、本当ならツアーの始まりから楽しくワクワクできるものになったほうがいいですよね。お子さまの年齢が低いとどうせ覚えてないからって思う方もいらっしゃいますけど、ものすごくワクワクしたことって意外と大人になっても覚えているものですし」
「始まりから、楽しくワクワク……確かにそのほうが、ツアーを終えてからの満足感も上がりそうですね」
「そうなんですよ! それで、イリゼホテルから館内に並べるパンフレットをお子さまたちの目を惹きやすいものにして欲しいという依頼を受けていたんです。なので、グラフィックデザイナーに依頼しようと考えていたのですが。倉橋がイマイチ乗り気ではなくて……」
「えっ? 倉橋社長が? どうしてですか?」
「ふふっ。平松くんのこの絵を見てわかりました。お子さま向けの絵にはこういう温かみが必要なのだと。倉橋はお子さま向けだからこそ、機械で作られた絵よりも手書きの絵を求めていたんじゃないかと思うんです」
俺の絵が温かみがある?
そんなこと言われたことない。
でも……そう言って評価してもらえるのはとても嬉しいことだ。
「もちろん平松くんの描いたものがすぐに採用されるとは決まったわけではないですが、一度やって見ませんか?」
「はい! やらせてください!!」
「ふふっ。ではお願いしますね。必要なものは全て会社に揃っていますから、自由に使ってください」
「わかりました」
俺の返事に砂川さんはにこやかに笑って、奥の部屋へ向かった。
「ふふっ。平松くん、早速大きな仕事が舞い込んできたね! 僕も応援してるから頑張って! 何かわからないことがあったらなんでも言って! 絶対に一人で考え込んだり、無理はしないこと! いい?」
「はい。わかりました。ありがとうございます!」
もちろんこれですぐに決まるなんて甘いこと考えてない。
でも、チャンスを与えられたことが何より嬉しい。
もしこれで採用されなかったとしても、いい経験にはなるはずだ!
あの会社ではチャンスすら与えられなかったんだ。
せっかくのチャンスを無駄にしないようにしよう。
俄然やる気が出てきた!
俺は初めて与えられた仕事に興奮が止まらなかった。
観光ツアーの絵を描くにはまずはどんな観光かしっかりと自分が理解していないと意味がないよな。
俺は元々のパンフレットはもちろん、参加した人の感想や写真などの資料を引っ張り出して、片っ端から頭に詰め込んでいった。
じっくりと読み込んで、でもまだ足りなくてどうしようかと考えたけれど、やっぱり答えは一つしかない。
「あ、あの……」
「んっ? 何かあった?」
「あ、いえ。その、できたら、一度西表島をこの目で見てみたいなって……俺、まだ何も知らなくて……」
「ああ、そっか。確かにそうだよね。自分で体験したほうが絵にもしやすいか」
自分が言おうとしたことを全て理解してくれるのがすごく嬉しい。
名嘉村さんって本当に優しい人だ。
「今からちょうどお昼休みだし、休憩しながら砂川さんに相談してみようか」
「はい」
俺は名嘉村さんと一緒に、砂川さんのいる部屋に向かった。
砂川さんは社長が出勤している時は俺たちと同じところで仕事をするそうだけど、社長がいない間は社長代理としての仕事をされるので、社長室の隣に専用の部屋を持っている。
やっぱり砂川さんって優秀な人なんだなと改めて思ってしまう。
それなのに物腰が柔らかくて、俺なんかにも丁寧に対応してくれるし……石垣にいるという恋人さんにしてみれば自慢の彼氏だろうな。
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