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第三章

今すぐにでも……

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「ロルフさま。おはようございます。皆さま、お目覚めですか?」

「まんまっ、あちちにゃのー」

「えっ?」

「おててぇー、あちゅいあちゅいのー」

アズールさまの手が熱い?
まさか……。

嫌な予感がして見張りの騎士たちと待機していたティオにそこで待っているように指示を出し、ロルフさまを抱きかかえたまま、急いで中に入ると寝室の扉が開いている。
きっとロルフさまが出てこられてそのままになっているのだろう。

「アズールさま、失礼致します」

一応、扉の外から声をかけて中に入ると、横たわっていらっしゃるアズールさまの肩口にルルさまが心配そうな表情で寄り添っていらっしゃるのが見えた。

「アズールさまっ!! どうかなさったのですか?」

近づいて尋ねると、はぁっ、はぁっと辛そうな荒い息をしていらっしゃる。

「失礼致します」

断りを入れて、おでこに触れると焼けるように熱い。

これはすぐに主治医であるアントン医師をお呼びしなければ!

すぐにティオを呼び、アントン医師を呼ぶように指示を出した。
私の焦りの様子にティオもただならぬ事態を察し、急いで出て行った。

この間に、アズールさまを寝室から移動させておかなければいけない。

この寝室だとルーディーさまの威嚇フェロモンに阻まれて、アントン医師も診察しにくいことだろう。

「ロルフさま。少しの間、こちらでルルさまとお待ちいただけますか?」

「わかっちゃぁーっ!」

二人でさっと手を上げてくださる。
本当にお利口なお子さま方だ。

リビングの大きなソファーに布団を整え、アズールさまを抱きかかえてそちらに移動させる。
その間もアズールさまは苦しげな呼吸のまま、辛そうに目を瞑っていた。
起きていらっしゃるのかもわからない。

突然こんなにも高熱を出されるなんて……ルーディーさまがおそばにいらっしゃらないことがもしかしたら影響なさっているのかもしれない。

ああ、やはり運命の番で身も心も固く結ばれたお二人を物理的に引き離してはいけなかったのかもしれないな。

せめてお子さま方だけでもおそばにいていただいた方がいいだろう。

私は寝室に戻りお二人を抱きかかえてアズールさまの元に戻った。

「まんまっ、いちゃいいちゃい?」

「少しお熱がありますが、今、アントン先生をお呼びしていますのですぐに良くなられますよ」

そうは言いつつも、私の不安そうな表情は聡いお子さま方には気づかれていただろう。
それでもロルフさまもルルさまも、泣きも叫びもせずただ黙ってアズールさまのおそばについていらっしゃった。

それからしばらくしてアントン医師がおいでになった。
一緒に陛下とフィデリオさまもお越しになったが、とりあえずはアントン医師だけにお入りいただいて診察をしていただいた。

それはルーディーさまがいらっしゃったらきっと、そのようにしていたと思ったからだ。

「アズールさまの発熱はいつ頃からでいらっしゃいますか?」

「正確な時間は分かりませんが、昨夜は平熱だったと思います。その時のご様子もいつもと変わらずでした」

「なるほど……んん?」

アズールさまの脈をとっていらっしゃったアントン医師の表情が険しくなり、緊張が走る。

「ルーディーさまのお戻りはいつになりますか?」

突然ルーディーさまのことを尋ねられて焦りながらも答える。

「予定では今日から三日後のご予定です」

「三日後……ギリギリだな……」

「何か大変なことでも?」

「アズールさまにご懐妊の兆候が見られます」

「えっ……ご懐妊、って……お子さまが?」

まさか、このタイミングで……。
あまりにも突然のことに私は驚きの声しか出なかった。

「はい。お腹のお子さまは成長に必要な栄養をアズールさまから摂っていらっしゃるのですが、今はアズールさまの栄養の方が足りず、失われていく栄養に身体が抵抗して発熱していらっしゃるのです」

「それで、どうすれば良いのですか?」

「ご懐妊の兆候が出ている以上、お薬を使うことはできませんので、とにかく栄養のあるものを召し上がっていただくしか方法はございません。ただ、高熱を出しておられるのでアズールさまに召し上がっていただくのは難しいでしょう。とりあえず栄養剤で凌いでいただくしか……。ルーディーさまがいらっしゃれば、かなり栄養の高い蜜を飲んでいただくことができますので、熱も下がるかと思いますが……」

「ルーディーさまの、蜜……」

ああ、そういえば前に聞いたな。
ルーディーさまの蜜がお子さまを出産なさった時の傷も癒したのだと。

「それをアズールさまが召し上がることができれば、熱は下がるのですね?」

「ええ、それはもう。すぐに楽になると思いますが、今は北の森に行ってらっしゃるのですよね?」

「私が今からルーディーさまを呼びに行って参ります」

急げば明日の朝までにはルーディーさまに戻ってもらえるかもしれない。

急いで向かおうとしたその時、

「ゔぇる……ぼく、は……がんばれる、から……るー、のくんれん……さい、ごまで……」

と必死に私を止めようとするアズールさまの声が聞こえた。
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