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第三章
穏やかで幸せな空間
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<sideヴェルナー>
「ここは気持ちがいいね。日差しもポカポカで座っていると眠たくなってきちゃう」
きっと昨夜はルーディーさまと遅くまで愛し合っていらっしゃったのだろう。
私だって、昨夜はマクシミリアンと離れがたくて激しくしないまでもずっとマクシミリアンの愛を感じていた。
それくらい愛しい人との別れは、たとえ数日といえども辛いものがあるのだから遅くまで愛し合ってしまうのも当然だろう。
ただ、私もマクシミリアンも辛い訓練にも耐え得ることのできる騎士。
だから、初夜並みに激しい交わりでなければ、数時間の睡眠が取れれば多少の疲れは取れるし、何より、あの特製蜂蜜オイルが疲れを癒してくれる効果もあるので、翌日に支障をきたすことは少ない。
そして、ルーディーさまは言わずと知れた肉体と底なしの体力をお持ちだから、どれほど激しく愛し合おうとも、翌日に支障をきたすことは一切ないだろう。
むしろアズールさまとの交わりはルーディーさまのお力を倍増させる威力もあるだろうから、愛し合えば愛し合うほどルーディーさまは元気になると思ったほうがいいかもしれない。
けれど、アズールさまは別だ。
誰よりも小さなお身体でルーディーさまを受け入れていらっしゃるのだ。
いくら神の定めたもうた相手とはいえ、この体格差は如何ともし難い。
あの小さなお身体でロルフさまとルルさまという二人のお子さまをご出産されたこともいまだに信じられないと思ってしまうくらいだから、座っているだけで眠たくなってしまうのも当然かもしれない。
フィデリオさまもアズールさまの今の状態を理解なさっているから、ルーディーさまがご出発された後すぐに遊びに連れて行ってくださったのだろう。
ルーディーさまがいなくなって寂しがるお二人がアズールさまに甘えに行かれることがわかっていたからだ。
私たちに庭で待つようにとおっしゃられたのも今の間に身体を休むことができるようにという配慮だろう。
「枕と布団もご用意しておりますので、少し休まれてはいかがですか? お外で眠るのも楽しいですよ」
「うん、それいいかも!」
そんなアズールさまの声に、さっと枕と大きめのブランケットが用意される。
アズールさまは嬉しそうにそこに横たわり、気持ちよさそうに目を瞑る。
「風が気持ちいいね、ヴェル」
「ええ、本当に。今日みたいに天気がよろしければ、北の森へもスムーズに行けますからもしかしたら予定より早い帰還も期待できるかもしれませんね」
「ふふっ。そうだったらいいね。やっぱりルーがいないと寂しいもん」
「そうですね。さぁ、少しお休みください。ロルフさまとルルさまが戻られたらお起こしいたしますよ」
「うん、お願い」
そういうと、アズールさまはすぐにスウスウと可愛らしい寝息を立てて夢の世界に落ちていった。
それからしばらく経って、ロルフさまとルルさまが頬を赤く染めながら駆け足でこちらに向かってくるのが見えた。
お二人が戻ってきたら起こすとアズールさまには伝えていたけれど、正直なところもう少し寝かせて差し上げたい。
駆けてくるお二人に見えるように、人差し指を口の前につけて見せると、嬉しそうに駆けてきたお二人は私の意図に気づいたようで急ブレーキを駆けて止まり、ゆっくりとこっちに向かってきた。
本当に優しいお子さまたちだ。
「まんま、ねちぇるの?」
「お疲れなのですよ。もう少しだけ休ませて差し上げてもいいですか?」
そういうと二人は当然とでもいうように頷き、持っていたバスケットを低いテーブルの上に置いた。
そして、そっとアズールさまの元に近づくと、身体を小さく丸め、アズールさまに寄り添うように抱きついた。
お二人のふさふさの尻尾でがまるで羽毛布団のようにふわふわにアズールさまを包み込み、夢の中でも気持ちいいのがわかるのか、アズールさまは嬉しそうに笑って、
「ふふっ。ふわふわ……っ」
と幸せそうな声をあげていた。
ああ、これを私たちだけで見ていいのかと申し訳なく思うくらい、幸せな空間が広がっている。
けれど、それを壊してしまうのももったいなくて、私もフィデリオさまも、そしてティオもしばらくその可愛らしい3人の姿を目を細めて見守っていた。
「んっ……るる?」
「ふふっ。まんまっ」
「こっちは、ろるふ?」
「まんま、おきちゃ?」
「気持ちがいいと思ったら、ルルとロルフが抱きついてくれてたんだね。ありがとう」
「ふふっ。まんまに、ほめりゃれちゃー!」
目を覚まされたアズールさまと可愛らしい子どもたちの会話を垣間見るのも楽しくて仕方がない。
「爺の宝探しは見つかったの?」
「うん! じぇ~んぶ、ううと、ろーふが、みちゅけちゃー!!」
「そうなんだ、頑張ったね」
「みちぇみちぇーっ!」
飛び上がったお二人は競うようにバスケットを持ってくる。
その中には、マクシミリアンが一生懸命作っていたアズールさまにそっくりなバロンと、美味しそうなお菓子が入っている。
さぁ、これで、今からお茶会の始まりだ。
「ここは気持ちがいいね。日差しもポカポカで座っていると眠たくなってきちゃう」
きっと昨夜はルーディーさまと遅くまで愛し合っていらっしゃったのだろう。
私だって、昨夜はマクシミリアンと離れがたくて激しくしないまでもずっとマクシミリアンの愛を感じていた。
それくらい愛しい人との別れは、たとえ数日といえども辛いものがあるのだから遅くまで愛し合ってしまうのも当然だろう。
ただ、私もマクシミリアンも辛い訓練にも耐え得ることのできる騎士。
だから、初夜並みに激しい交わりでなければ、数時間の睡眠が取れれば多少の疲れは取れるし、何より、あの特製蜂蜜オイルが疲れを癒してくれる効果もあるので、翌日に支障をきたすことは少ない。
そして、ルーディーさまは言わずと知れた肉体と底なしの体力をお持ちだから、どれほど激しく愛し合おうとも、翌日に支障をきたすことは一切ないだろう。
むしろアズールさまとの交わりはルーディーさまのお力を倍増させる威力もあるだろうから、愛し合えば愛し合うほどルーディーさまは元気になると思ったほうがいいかもしれない。
けれど、アズールさまは別だ。
誰よりも小さなお身体でルーディーさまを受け入れていらっしゃるのだ。
いくら神の定めたもうた相手とはいえ、この体格差は如何ともし難い。
あの小さなお身体でロルフさまとルルさまという二人のお子さまをご出産されたこともいまだに信じられないと思ってしまうくらいだから、座っているだけで眠たくなってしまうのも当然かもしれない。
フィデリオさまもアズールさまの今の状態を理解なさっているから、ルーディーさまがご出発された後すぐに遊びに連れて行ってくださったのだろう。
ルーディーさまがいなくなって寂しがるお二人がアズールさまに甘えに行かれることがわかっていたからだ。
私たちに庭で待つようにとおっしゃられたのも今の間に身体を休むことができるようにという配慮だろう。
「枕と布団もご用意しておりますので、少し休まれてはいかがですか? お外で眠るのも楽しいですよ」
「うん、それいいかも!」
そんなアズールさまの声に、さっと枕と大きめのブランケットが用意される。
アズールさまは嬉しそうにそこに横たわり、気持ちよさそうに目を瞑る。
「風が気持ちいいね、ヴェル」
「ええ、本当に。今日みたいに天気がよろしければ、北の森へもスムーズに行けますからもしかしたら予定より早い帰還も期待できるかもしれませんね」
「ふふっ。そうだったらいいね。やっぱりルーがいないと寂しいもん」
「そうですね。さぁ、少しお休みください。ロルフさまとルルさまが戻られたらお起こしいたしますよ」
「うん、お願い」
そういうと、アズールさまはすぐにスウスウと可愛らしい寝息を立てて夢の世界に落ちていった。
それからしばらく経って、ロルフさまとルルさまが頬を赤く染めながら駆け足でこちらに向かってくるのが見えた。
お二人が戻ってきたら起こすとアズールさまには伝えていたけれど、正直なところもう少し寝かせて差し上げたい。
駆けてくるお二人に見えるように、人差し指を口の前につけて見せると、嬉しそうに駆けてきたお二人は私の意図に気づいたようで急ブレーキを駆けて止まり、ゆっくりとこっちに向かってきた。
本当に優しいお子さまたちだ。
「まんま、ねちぇるの?」
「お疲れなのですよ。もう少しだけ休ませて差し上げてもいいですか?」
そういうと二人は当然とでもいうように頷き、持っていたバスケットを低いテーブルの上に置いた。
そして、そっとアズールさまの元に近づくと、身体を小さく丸め、アズールさまに寄り添うように抱きついた。
お二人のふさふさの尻尾でがまるで羽毛布団のようにふわふわにアズールさまを包み込み、夢の中でも気持ちいいのがわかるのか、アズールさまは嬉しそうに笑って、
「ふふっ。ふわふわ……っ」
と幸せそうな声をあげていた。
ああ、これを私たちだけで見ていいのかと申し訳なく思うくらい、幸せな空間が広がっている。
けれど、それを壊してしまうのももったいなくて、私もフィデリオさまも、そしてティオもしばらくその可愛らしい3人の姿を目を細めて見守っていた。
「んっ……るる?」
「ふふっ。まんまっ」
「こっちは、ろるふ?」
「まんま、おきちゃ?」
「気持ちがいいと思ったら、ルルとロルフが抱きついてくれてたんだね。ありがとう」
「ふふっ。まんまに、ほめりゃれちゃー!」
目を覚まされたアズールさまと可愛らしい子どもたちの会話を垣間見るのも楽しくて仕方がない。
「爺の宝探しは見つかったの?」
「うん! じぇ~んぶ、ううと、ろーふが、みちゅけちゃー!!」
「そうなんだ、頑張ったね」
「みちぇみちぇーっ!」
飛び上がったお二人は競うようにバスケットを持ってくる。
その中には、マクシミリアンが一生懸命作っていたアズールさまにそっくりなバロンと、美味しそうなお菓子が入っている。
さぁ、これで、今からお茶会の始まりだ。
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