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第三章
最後のひとつ
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<sideフィデリオ>
「じぃーっ! みちゅけちゃよーっ!」
隠しておいたバロンにマクシミリアンの匂いがついていると理解なさったロルフさまとルルさまは、鼻を利かせてすぐに二つ目のバロンを見つけてしまった。
「こんろは、ろーふが、みちゅけちゃのーっ。ちゅごいでちょー!」
「さすがでございますね。でも最後の一つは難しいですぞ」
「らいろーぶ! じぇっちゃい、みちゅけりゅもんー!! いこう、うう!」
ふふっ。負けず嫌いなところはルーディーさまにそっくりだ。
本当に可愛らしい。
尻尾を揺らしながらパタパタと駆けていく二人をティオ殿と一緒に追いかける。
元気いっぱいのお二人についていくのはティオ殿はともかく、年老いた私には大変だがそれでもまだまだやれるはずだ。
なんせ私は泣く子も黙るベーレンドルフ家の偉大なる熊なのだから。
なんて、今の私の姿をルーディーさまがご覧になれば、私の方こそ負けず嫌いだなと笑われそうだな。
「フィデリオさま。最後の一つはどちらにお隠しになったのですか?」
いろんな場所を駆け回っても見つからない様子のお二人を見て、こっそりとティオ殿が尋ねてくる。
「ふふっ。お二人が一番喜ぶ場所ですよ」
「一番喜ぶ場所?」
「はい。そして、一番最初にヒントも伝えてるのですよ」
「ヒントを?」
私の言葉にティオ殿も一生懸命考えているようだ。
こんなにも純粋で素直だからこそ、クレイさまもお惹かれになったのかもしれないな。
お二人の跡を追いかけながらも、ティオ殿は必死に考えているようだが、まだ場所の特定には至っていないようだ。
ふふっ。お二人が見つけるのが先か。
それともティオ殿があのヒントに気づくのが先か。
どちらだろうな。
「ああーっ!! らいじなちょこ、わちゅれちぇちゃー!! うう、きっちょ、あっちらよ!!」
ここでもない、あっちでもないとルルさまの手を引いて城内を走り回っていたロルフさまが、何かを思いつかれたように大声で叫ぶと一目散に目的の場所に走って行かれた。
ふふっ。どうやらロルフさまが先に気づかれたようだな。
ロルフさまとルルさまの跡を追いかけながら、
「ああっ! そうかっ!!」
とティオ殿も声を上げる。
「ふふっ。わかったようですね」
「はい。なるほど、だからあれがヒントだったんですね」
「はい。こうしてみるとただバロンを見つけるよりも宝探し感が増して楽しいでしょう?」
「さすがですね、フィデリオさま」
お二人の跡を追いかけて辿りついて早々、ロルフさまとルルさまの大きな声が飛んでくる。
「ああーっ、ふらんちゅらぁー!!」
「ほんちょらぁー! どうちて、ふらんちゅが、いりゅのー?」
「ふふっ。どうしてでしょう?」
「んーっ、ああーっ、なんかー、いいにおいがちゅるー!!」
ヴォルフ公爵家の専属料理人であるフランツ殿が城内の厨房にいることに驚きつつも、お二人はいい匂いがする方に興味が行ってしまっているのはやはりお子さまなのだと微笑ましく思ってしまう。
そんな中、フランツ殿はお二人ににこやかな笑顔を向けながら、
「ちょうど美味しいお菓子が焼けたところですよ」
そう言って、お二人に背を向けオーブンに身体を向けた。
すると、
「ああーっ!! みちゅけちゃあー!!」
と嬉しそうなお二人の声が響いた。
そう。
最後のバロンはフランツ殿の後ろのポケットに隠していたのだ。
「ふふっ。おめでとうございます。三つ全て見つけられたのですね。これがご褒美のおやつですよ」
そう言って、フランツ殿はたった今焼けたばかりの焼き菓子を、二つの小さなバスケットに手早く分けて入れた。
「わぁー、おいちちょうー」
「ふふっ。ロルフさまとルルさまの大好物ですからね。このフランツが心を込めて作りましたよ。アズールさまと皆さまで美味しく召し上がってくださいませ」
「ふらんちゅ、あいあとーっ!。らいちゅき」
「ううも、ふらんちゅ、らぁーいちゅき!!」
ロルフさまとルルさまは両方からフランツ殿に抱きついて、頬にチュッとキスをなさった。
思いもかけないことにフランツ殿は焦っていたけれど、私とティオ殿は顔を見合わせて小さく頷いた。
このことはルーディーさまには内緒にしておこうというのが伝わったようだ。
ロルフさまはともかく、ルルさまが、いくら頬とはいえ、キスをなさったことはお知りになりたくはないだろう。
私とティオ殿は何も見なかったふりをして、ロルフさまとルルさまと一緒に、庭で待っておられるアズールさまとヴェルナー殿の元に向かった。
「じぃーっ! みちゅけちゃよーっ!」
隠しておいたバロンにマクシミリアンの匂いがついていると理解なさったロルフさまとルルさまは、鼻を利かせてすぐに二つ目のバロンを見つけてしまった。
「こんろは、ろーふが、みちゅけちゃのーっ。ちゅごいでちょー!」
「さすがでございますね。でも最後の一つは難しいですぞ」
「らいろーぶ! じぇっちゃい、みちゅけりゅもんー!! いこう、うう!」
ふふっ。負けず嫌いなところはルーディーさまにそっくりだ。
本当に可愛らしい。
尻尾を揺らしながらパタパタと駆けていく二人をティオ殿と一緒に追いかける。
元気いっぱいのお二人についていくのはティオ殿はともかく、年老いた私には大変だがそれでもまだまだやれるはずだ。
なんせ私は泣く子も黙るベーレンドルフ家の偉大なる熊なのだから。
なんて、今の私の姿をルーディーさまがご覧になれば、私の方こそ負けず嫌いだなと笑われそうだな。
「フィデリオさま。最後の一つはどちらにお隠しになったのですか?」
いろんな場所を駆け回っても見つからない様子のお二人を見て、こっそりとティオ殿が尋ねてくる。
「ふふっ。お二人が一番喜ぶ場所ですよ」
「一番喜ぶ場所?」
「はい。そして、一番最初にヒントも伝えてるのですよ」
「ヒントを?」
私の言葉にティオ殿も一生懸命考えているようだ。
こんなにも純粋で素直だからこそ、クレイさまもお惹かれになったのかもしれないな。
お二人の跡を追いかけながらも、ティオ殿は必死に考えているようだが、まだ場所の特定には至っていないようだ。
ふふっ。お二人が見つけるのが先か。
それともティオ殿があのヒントに気づくのが先か。
どちらだろうな。
「ああーっ!! らいじなちょこ、わちゅれちぇちゃー!! うう、きっちょ、あっちらよ!!」
ここでもない、あっちでもないとルルさまの手を引いて城内を走り回っていたロルフさまが、何かを思いつかれたように大声で叫ぶと一目散に目的の場所に走って行かれた。
ふふっ。どうやらロルフさまが先に気づかれたようだな。
ロルフさまとルルさまの跡を追いかけながら、
「ああっ! そうかっ!!」
とティオ殿も声を上げる。
「ふふっ。わかったようですね」
「はい。なるほど、だからあれがヒントだったんですね」
「はい。こうしてみるとただバロンを見つけるよりも宝探し感が増して楽しいでしょう?」
「さすがですね、フィデリオさま」
お二人の跡を追いかけて辿りついて早々、ロルフさまとルルさまの大きな声が飛んでくる。
「ああーっ、ふらんちゅらぁー!!」
「ほんちょらぁー! どうちて、ふらんちゅが、いりゅのー?」
「ふふっ。どうしてでしょう?」
「んーっ、ああーっ、なんかー、いいにおいがちゅるー!!」
ヴォルフ公爵家の専属料理人であるフランツ殿が城内の厨房にいることに驚きつつも、お二人はいい匂いがする方に興味が行ってしまっているのはやはりお子さまなのだと微笑ましく思ってしまう。
そんな中、フランツ殿はお二人ににこやかな笑顔を向けながら、
「ちょうど美味しいお菓子が焼けたところですよ」
そう言って、お二人に背を向けオーブンに身体を向けた。
すると、
「ああーっ!! みちゅけちゃあー!!」
と嬉しそうなお二人の声が響いた。
そう。
最後のバロンはフランツ殿の後ろのポケットに隠していたのだ。
「ふふっ。おめでとうございます。三つ全て見つけられたのですね。これがご褒美のおやつですよ」
そう言って、フランツ殿はたった今焼けたばかりの焼き菓子を、二つの小さなバスケットに手早く分けて入れた。
「わぁー、おいちちょうー」
「ふふっ。ロルフさまとルルさまの大好物ですからね。このフランツが心を込めて作りましたよ。アズールさまと皆さまで美味しく召し上がってくださいませ」
「ふらんちゅ、あいあとーっ!。らいちゅき」
「ううも、ふらんちゅ、らぁーいちゅき!!」
ロルフさまとルルさまは両方からフランツ殿に抱きついて、頬にチュッとキスをなさった。
思いもかけないことにフランツ殿は焦っていたけれど、私とティオ殿は顔を見合わせて小さく頷いた。
このことはルーディーさまには内緒にしておこうというのが伝わったようだ。
ロルフさまはともかく、ルルさまが、いくら頬とはいえ、キスをなさったことはお知りになりたくはないだろう。
私とティオ殿は何も見なかったふりをして、ロルフさまとルルさまと一緒に、庭で待っておられるアズールさまとヴェルナー殿の元に向かった。
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