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第三章
ご機嫌な理由
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<sideルーディー>
「きゅるるっ」
腕の中で眠るアズールの腹から可愛らしい音が聞こえて、私は目を覚ました。
ふふっ。
夜にあれだけたくさん動いたのだ。
お腹が空くのも当然だろう。
もう少し寝かせてやりたいが、アズールの小さな腹は待ちきれないように、何度も腹を鳴らしている。
食事をしてからまた休ませればいいか。
「アズール、アズール」
耳元に優しく声をかけると、アズールの瞼が開き、綺麗な瞳が私を捉える。
「う、ん……るー……おは、よう……」
「ああ、おはよう」
アズールはまだ少し寝ぼけたままで、私の顔を撫でる。
「ふふっ。ふさふさぁ~」
嬉しそうなその声に私は幸せを噛み締める。
アズールと出会うまで、毛むくじゃらな顔に嫌悪していた。
自分だけみんなと違うのを思い知らされるのが嫌で鏡を見るのも辛い時期があった。
けれどアズールと出会って世界が変わった。
私が毛嫌いしていた毛むくじゃらな顔に嬉しそうに触れ、笑顔を見せてくれたのだ。
アズールが私の顔に笑顔で触れてくれたあの日から、私は自分の顔が好きになった。
誰に何を言われてもいい。
アズールだけが好きでいてくれるのなら……と思えるようになったのだ。
あれから20年近い年月が経った今でも、アズールは私の毛むくじゃらな顔を相変わらず愛してくれるし、毎朝必ず撫でてくれる。
それはきっと無意識なのだろう。
でもその時の表情がいつも幸せそうで……それが見たくて、私はアズールを起こすのだ。
満足そうに私の顔を撫でてから、アズールからキスをしてくれる。
アズールが寝起きにキスをしてくれるようになったのは、夫夫となってからだが、それなしで起きていた頃が信じられないほど今では大事な習慣だ。
「身体は辛くないか?」
「うん、大丈夫。ルーの蜜がアズールのお薬だから」
もう傷も癒えたし、授乳も終えたし薬としての役目を果たしたのではないかと思ったが、アントンが言うには、次の子を安定的に望みたいのであれば、体調を万全に整えるためにも、体内に蜜を注ぐことを途切れさせない方がいいとのことだった。
もちろん、義務的にするのでは意味がない。
アズールの心と身体は顕著に現れるのだ。
私が愛を込めて注げば注ぐほど、翌日の体調はすこぶるいい。
アズールにとって私の蜜が時期を問わず、薬だと言うのは事実のようだ。
「では、そろそろ身支度を整えて朝食にしようか。お腹が空いただろう?」
「えっ? なんでわかったの?」
「ふふっ。私がアズールのことで知らないことはないよ」
寝ている間に腹の音を聞いていたのは内緒にしておこう。
可愛いものは私の中だけで留めておく方がいい。
ベッドから起き上がらせて、私の選んだ服に着替えさせる。
ああ、今日のアズールもいつもと変わらずに可愛い。
「ロルフとルルはもう起きてるかな?」
「そうだな。そろそろ起きる頃かもしれないな。あの子たちのことだ、起きたらすぐに私たちを起こしにくるだろう」
「うん、そうだね」
そんな話をしながら、寝室を出たところで、突然部屋の扉を叩く音が聞こえた。
「ああ、ベンが来たようだな」
足音と匂いですぐにわかる。
安心して扉を開けば、朝の挨拶もそこそこにダイニングルームに案内される。
どうやら、ロルフたちはすでに起きていて朝食を待ってくれていたようだ。
待たせてしまってすまないと思いつつ、ダイニングルームに向かうと、部屋に入った瞬間、ロルフとルルが私たちめがけて飛んできた。
「おおっと!!」
アズールを抱きかかえながら、ロルフとルルも抱きかかえる。
私の手にかかれば、容易いことだ。
だが、危険なことに変わりはない。
「ロルフ、ルル。元気なことはいいことだが、私以外には突然飛びかかったりしてはいけないぞ。特にアズールに飛び掛かっては絶対にダメだ。それはわかってるな?」
私が真剣にいえば、どんなに小さな子でも言うことをきく。
なんと言っても私は狼族の長なのだから。
真剣な表情で頷く二人に笑顔を向け、
「よし、いい子だ」
と褒めると、途端に嬉しそうに笑う。
その笑顔がアズールにそっくりなのが何よりも可愛い。
「それで、どうしたんだ? 朝からご機嫌だったな」
「あちゃごはん、ろーふと、ううが、ちゅくっちゃのー」
「えっ? 今、なんと言ったのだ?」
「朝ごはん、って言わなかった?」
「ふふっ。ろーふと、ううで、あちゃごはん、ちゅくっちゃのー! あっち、ちゅわってぇー!」
驚く私とアズールにそういうと、腕の中のロルフとルルは私たちを席に着くように指示をした。
「きゅるるっ」
腕の中で眠るアズールの腹から可愛らしい音が聞こえて、私は目を覚ました。
ふふっ。
夜にあれだけたくさん動いたのだ。
お腹が空くのも当然だろう。
もう少し寝かせてやりたいが、アズールの小さな腹は待ちきれないように、何度も腹を鳴らしている。
食事をしてからまた休ませればいいか。
「アズール、アズール」
耳元に優しく声をかけると、アズールの瞼が開き、綺麗な瞳が私を捉える。
「う、ん……るー……おは、よう……」
「ああ、おはよう」
アズールはまだ少し寝ぼけたままで、私の顔を撫でる。
「ふふっ。ふさふさぁ~」
嬉しそうなその声に私は幸せを噛み締める。
アズールと出会うまで、毛むくじゃらな顔に嫌悪していた。
自分だけみんなと違うのを思い知らされるのが嫌で鏡を見るのも辛い時期があった。
けれどアズールと出会って世界が変わった。
私が毛嫌いしていた毛むくじゃらな顔に嬉しそうに触れ、笑顔を見せてくれたのだ。
アズールが私の顔に笑顔で触れてくれたあの日から、私は自分の顔が好きになった。
誰に何を言われてもいい。
アズールだけが好きでいてくれるのなら……と思えるようになったのだ。
あれから20年近い年月が経った今でも、アズールは私の毛むくじゃらな顔を相変わらず愛してくれるし、毎朝必ず撫でてくれる。
それはきっと無意識なのだろう。
でもその時の表情がいつも幸せそうで……それが見たくて、私はアズールを起こすのだ。
満足そうに私の顔を撫でてから、アズールからキスをしてくれる。
アズールが寝起きにキスをしてくれるようになったのは、夫夫となってからだが、それなしで起きていた頃が信じられないほど今では大事な習慣だ。
「身体は辛くないか?」
「うん、大丈夫。ルーの蜜がアズールのお薬だから」
もう傷も癒えたし、授乳も終えたし薬としての役目を果たしたのではないかと思ったが、アントンが言うには、次の子を安定的に望みたいのであれば、体調を万全に整えるためにも、体内に蜜を注ぐことを途切れさせない方がいいとのことだった。
もちろん、義務的にするのでは意味がない。
アズールの心と身体は顕著に現れるのだ。
私が愛を込めて注げば注ぐほど、翌日の体調はすこぶるいい。
アズールにとって私の蜜が時期を問わず、薬だと言うのは事実のようだ。
「では、そろそろ身支度を整えて朝食にしようか。お腹が空いただろう?」
「えっ? なんでわかったの?」
「ふふっ。私がアズールのことで知らないことはないよ」
寝ている間に腹の音を聞いていたのは内緒にしておこう。
可愛いものは私の中だけで留めておく方がいい。
ベッドから起き上がらせて、私の選んだ服に着替えさせる。
ああ、今日のアズールもいつもと変わらずに可愛い。
「ロルフとルルはもう起きてるかな?」
「そうだな。そろそろ起きる頃かもしれないな。あの子たちのことだ、起きたらすぐに私たちを起こしにくるだろう」
「うん、そうだね」
そんな話をしながら、寝室を出たところで、突然部屋の扉を叩く音が聞こえた。
「ああ、ベンが来たようだな」
足音と匂いですぐにわかる。
安心して扉を開けば、朝の挨拶もそこそこにダイニングルームに案内される。
どうやら、ロルフたちはすでに起きていて朝食を待ってくれていたようだ。
待たせてしまってすまないと思いつつ、ダイニングルームに向かうと、部屋に入った瞬間、ロルフとルルが私たちめがけて飛んできた。
「おおっと!!」
アズールを抱きかかえながら、ロルフとルルも抱きかかえる。
私の手にかかれば、容易いことだ。
だが、危険なことに変わりはない。
「ロルフ、ルル。元気なことはいいことだが、私以外には突然飛びかかったりしてはいけないぞ。特にアズールに飛び掛かっては絶対にダメだ。それはわかってるな?」
私が真剣にいえば、どんなに小さな子でも言うことをきく。
なんと言っても私は狼族の長なのだから。
真剣な表情で頷く二人に笑顔を向け、
「よし、いい子だ」
と褒めると、途端に嬉しそうに笑う。
その笑顔がアズールにそっくりなのが何よりも可愛い。
「それで、どうしたんだ? 朝からご機嫌だったな」
「あちゃごはん、ろーふと、ううが、ちゅくっちゃのー」
「えっ? 今、なんと言ったのだ?」
「朝ごはん、って言わなかった?」
「ふふっ。ろーふと、ううで、あちゃごはん、ちゅくっちゃのー! あっち、ちゅわってぇー!」
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