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第三章
穏やかな日差しの下で……
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<sideアズール>
「ロルフーっ、待て待てぇーっ」
「きゃっ、きゃっ!」
「ロルフ、こっちだぞぉー!!」
「わぁーっ」
「ふふっ。ロルフ以上に大人の方が楽しんでるわ」
よく晴れたある日。
僕は庭にある大きな木にもたれかかりながら、ルーとお父さま、そしてお兄さまがロルフと追いかけっこをしながら遊んでいるのを楽しそうに見ていた。
出産して、もう半年。
アントン先生からは二人が歩き始める頃まではミルクを飲ませてあげられたら……なんて言われていたから1年くらい飲ませるのかなぁなんて思っていた。
だって、僕は結構長いことお母さまのおっぱいを飲んでいた気がするもん。
だけど、狼の成長はウサギ族とは随分と違うようで、みるみるうちに元気に逞しく成長したロルフは三ヶ月くらいで歩き始めた。
ルルもそのすぐ後には歩けるようになって、二人はあっという間に卒乳してしまった。
ミルクをあげなくなると、僕の体力もみるみるうちに回復して、ベッドで過ごすことの方が少なくなった。
不思議に思ってアントン先生に尋ねたら、ミルクをあげている間は全ての栄養がミルクを作ることに取られていたから普通の人よりは疲れやすくなっていたのだろうと言われた。
それでも僕はルーの蜜をもらっていたからまだマシだったみたい。
だって、ロルフとルルのミルクの量は日に日に増えていたし、自分の食事だけじゃ二人に満足にミルクをあげることもできてなかったもんね。
ベッド生活を終えて、歩けるようになったロルフやルルと遊べるのはすごく嬉しいけど、やっぱり二人が美味しそうにミルクを飲むのを見られなくなるのはちょっと寂しかったかな。
僕の体調もすっかり戻ったのを見て、ルーがそろそろお城に戻ろうかと提案してくれた。
お父さまたちにはずっとここにいていいよと言われたけれど、ルーもそろそろ国王としてお義父さまから仕事を引き継ぐ準備をしないといけないんだって。
でも、急に環境を変えてしまうのはロルフとルルも大変かもしれないからってことで、話し合いの結果、公務のある平日はお城にいて、週末は僕の実家に泊まりに行くことに決まったんだ。
お城に戻るときはお父さまもお母さまも、それにお兄さまも寂しがっていたけれど、週末には会えるからと言うとなんとか我慢してくれたみたいだ。
ティオは僕と子どもたちの護衛をしてくれるから、お城に行っても頻繁に会えるけどね。
週末に実家に来たときは、ロルフの有り余る体力を発散させるためにこうしてお父さまたちが相手をしてくれて庭を走り回っている。
楽しそうに走り回ってるロルフを見るのは楽しい。
やっぱり狼さんは元気だな。
あっ、でも同じ狼だけどルルは女の子だからか、言葉も早いし、元気はあるけれどあまり走り回ったりはしない。
今は僕の隣で、すっかりお気に入りになっているウサギの耳のついた服を着て、僕たちに
「みちぇー」
とお尻をフリフリして見せてくれる。
幼い頃、僕は一生懸命しゃべっていたけど、お父さまもお母さまも、それにルーもいつも可愛い、可愛いって言ってくれたのを思い出す。
今ならあの時のみんなの気持ちがわかるかも。
だって、あの時の僕と同じように舌足らずな発音がすっごく可愛いと思えるんだもん。
「ああーっ、本当にルルは可愛いわ。ロルフはかっこいいし、本当に私の孫たちは最高だわ! ねぇ、ティオ」
「はい。本当に最高ですね」
「ふふっ。うう、ちゃいこーっ!」
お母さまとティオの言葉にご機嫌なルルはさらにその場で飛び跳ねて見せる。
「まんまっ、まんまっ」
「あらあら、本当にアズールみたいね」
僕みたいだと言われてルルは嬉しそうに僕のところに飛び込んでくる。
「まんまっ、ちゅきぃー」
「ふふっ。まんまもルルが好きだよー」
「ちゅきぃ、ちゅきぃ」
ああ、本当に幸せな時間だ。
「アズール。私のことも好きか?」
いつの間にかロルフを抱っこして戻ってきたルーがそんなことを尋ねてくる。
僕が答える前に、ルーの腕の中にいるロルフも
「まんまっ、ろーふ、ちゅきぃ?」
と張り合うように尋ねてくる。
ふふっ。本当にこの親子は僕のことが好きすぎる。
「あらあら、アズールは大人気ね」
「ルーもロルフもルルも大好きだよ」
そういうと、ルーはロルフを抱えたまま、ルルを抱きかかえた僕も一緒に抱き上げた。
「わぁっ、危ないよ」
「大丈夫。私は落としたりしないよ」
そう自信満々に言い切るルーをかっこいいなと思いながらこっそりとルーにキスをした。
「ロルフーっ、待て待てぇーっ」
「きゃっ、きゃっ!」
「ロルフ、こっちだぞぉー!!」
「わぁーっ」
「ふふっ。ロルフ以上に大人の方が楽しんでるわ」
よく晴れたある日。
僕は庭にある大きな木にもたれかかりながら、ルーとお父さま、そしてお兄さまがロルフと追いかけっこをしながら遊んでいるのを楽しそうに見ていた。
出産して、もう半年。
アントン先生からは二人が歩き始める頃まではミルクを飲ませてあげられたら……なんて言われていたから1年くらい飲ませるのかなぁなんて思っていた。
だって、僕は結構長いことお母さまのおっぱいを飲んでいた気がするもん。
だけど、狼の成長はウサギ族とは随分と違うようで、みるみるうちに元気に逞しく成長したロルフは三ヶ月くらいで歩き始めた。
ルルもそのすぐ後には歩けるようになって、二人はあっという間に卒乳してしまった。
ミルクをあげなくなると、僕の体力もみるみるうちに回復して、ベッドで過ごすことの方が少なくなった。
不思議に思ってアントン先生に尋ねたら、ミルクをあげている間は全ての栄養がミルクを作ることに取られていたから普通の人よりは疲れやすくなっていたのだろうと言われた。
それでも僕はルーの蜜をもらっていたからまだマシだったみたい。
だって、ロルフとルルのミルクの量は日に日に増えていたし、自分の食事だけじゃ二人に満足にミルクをあげることもできてなかったもんね。
ベッド生活を終えて、歩けるようになったロルフやルルと遊べるのはすごく嬉しいけど、やっぱり二人が美味しそうにミルクを飲むのを見られなくなるのはちょっと寂しかったかな。
僕の体調もすっかり戻ったのを見て、ルーがそろそろお城に戻ろうかと提案してくれた。
お父さまたちにはずっとここにいていいよと言われたけれど、ルーもそろそろ国王としてお義父さまから仕事を引き継ぐ準備をしないといけないんだって。
でも、急に環境を変えてしまうのはロルフとルルも大変かもしれないからってことで、話し合いの結果、公務のある平日はお城にいて、週末は僕の実家に泊まりに行くことに決まったんだ。
お城に戻るときはお父さまもお母さまも、それにお兄さまも寂しがっていたけれど、週末には会えるからと言うとなんとか我慢してくれたみたいだ。
ティオは僕と子どもたちの護衛をしてくれるから、お城に行っても頻繁に会えるけどね。
週末に実家に来たときは、ロルフの有り余る体力を発散させるためにこうしてお父さまたちが相手をしてくれて庭を走り回っている。
楽しそうに走り回ってるロルフを見るのは楽しい。
やっぱり狼さんは元気だな。
あっ、でも同じ狼だけどルルは女の子だからか、言葉も早いし、元気はあるけれどあまり走り回ったりはしない。
今は僕の隣で、すっかりお気に入りになっているウサギの耳のついた服を着て、僕たちに
「みちぇー」
とお尻をフリフリして見せてくれる。
幼い頃、僕は一生懸命しゃべっていたけど、お父さまもお母さまも、それにルーもいつも可愛い、可愛いって言ってくれたのを思い出す。
今ならあの時のみんなの気持ちがわかるかも。
だって、あの時の僕と同じように舌足らずな発音がすっごく可愛いと思えるんだもん。
「ああーっ、本当にルルは可愛いわ。ロルフはかっこいいし、本当に私の孫たちは最高だわ! ねぇ、ティオ」
「はい。本当に最高ですね」
「ふふっ。うう、ちゃいこーっ!」
お母さまとティオの言葉にご機嫌なルルはさらにその場で飛び跳ねて見せる。
「まんまっ、まんまっ」
「あらあら、本当にアズールみたいね」
僕みたいだと言われてルルは嬉しそうに僕のところに飛び込んでくる。
「まんまっ、ちゅきぃー」
「ふふっ。まんまもルルが好きだよー」
「ちゅきぃ、ちゅきぃ」
ああ、本当に幸せな時間だ。
「アズール。私のことも好きか?」
いつの間にかロルフを抱っこして戻ってきたルーがそんなことを尋ねてくる。
僕が答える前に、ルーの腕の中にいるロルフも
「まんまっ、ろーふ、ちゅきぃ?」
と張り合うように尋ねてくる。
ふふっ。本当にこの親子は僕のことが好きすぎる。
「あらあら、アズールは大人気ね」
「ルーもロルフもルルも大好きだよ」
そういうと、ルーはロルフを抱えたまま、ルルを抱きかかえた僕も一緒に抱き上げた。
「わぁっ、危ないよ」
「大丈夫。私は落としたりしないよ」
そう自信満々に言い切るルーをかっこいいなと思いながらこっそりとルーにキスをした。
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