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第三章
蜜の効果
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私の匂いが染み込んだブランケットをアズールのそばに置いて、私はそっと寝室を出た。
私が扉の前に立ったのと扉が叩かれたのはほぼ同時。
そっと扉を開けると、義母上がロルフだけを抱きかかえて立っていた。
「おはよう。ルーディー。さすがね、私が来ていることに気付いたのね。そろそろロルフにミルクを飲ませて欲しくて連れてきたの」
腕に抱いていたロルフだけを私に渡しながら笑顔を向けられる。
「義母上、どうしてロルフだけ? んっ? これは……ティオの匂い?」
なぜかロルフからティオの匂いを強く感じる。
威嚇のようなものは一切感じられないから問題はないが、どうしてこんなにも匂いがするのかは気になるところだ。
「ふふっ。実は、昨夜はベンが腰を痛めてしまってね、急遽クレイとティオにロルフの世話をお願いしたのよ。」
「ああ、そういうことですか。でも、ティオにロルフの世話は大変だったのではないですか?」
大きくなって物心がつけば、自分よりも弱い種族の相手に無闇に威嚇をしてはいけないというのを学ぶものだが、赤子の時はまだ自分でコントロールすることができず、大声で泣いたりしている時はもちろん、寝ている時でも夢に引きずられて威嚇を出してしまうことがある。
ベンはもう年齢的にそこまで強く威嚇を感じなくなってきているから安心だが、まだ真っ盛りのティオは気を遣ったことだろう。
まだ隣にクレイがいる分、少しは安心だっただろうが。
「それが、ロルフはティオを気に入ったみたいなの。ティオもロルフのそばにいても落ち着いていられたみたいよ」
「そうですか。それならよかった。じゃあ、しばらく夜の世話は……」
「ええ。クレイとティオにお願いするつもりよ。構わないでしょう?」
「将来的に二人の子になる可能性が少しでもある以上、仲を深めておいてもらうのは悪いことではないですからね」
そう。
今の所、ロルフが私の後継となってこのヴンダーシューン王国の国王となることになっているが、神殿での神の儀式を終えるまでは仮のままだ。
その時にならなければ、まだ誰にもわからない。
それよりも先に決まるとすれば、私と同じ狼獣人が生まれた時だけ。
「私たちがこの屋敷にいる間はアズールの負担を減らすためにも、クレイとティオにもロルフと関われる時間を増やしても良さそうですね。ですが、まだロルフとルルにはアズールとの母子の時間は必要ですよ。無理やり引き離すようなことは……」
「ええ。そうね。大丈夫。わかっているわ。あくまでも本当の親はあなたとアズール。クレイとティオにはそう伝えておくから。ロルフ、あなたもわかっているわよね」
義母上のにこやかな笑顔に見つめられていたロルフが、その言葉に呼応するようにチュパチュパと自分の指を舐め始めた。
「あらあら、お腹がすいたみたい。アズールに朝のミルクを飲ませるように言ってあげてちょうだい。私はルルを連れてくるわ」
「わかりました」
いつもならアズールの様子を見に中まで入ってくる義母上だが、今日はアズールのところに行こうともしなかったな。
きっと私たちがひさしぶりに甘い夜を過ごしたことに気付いたのだろう。
なんせ、私からアズールの匂いが漂っているのだから。
それでも何も言わないのは、信頼されている証なのだろう。
私は義母上に感謝しつつ、ロルフを連れてアズールの元に戻った。
まだアズールはベッドでブランケットを抱きしめながら、夢の世界にいるようだったけれど
「ふぇ……っ、ふぇ……っ」
とロルフが泣きだすと、
「う、ん……っ、ろ、るふ……」
と寝ぼけながらも、夜着を捲り始める。
ふふっ。眠っていてもすっかり母なのだなと感心する。
まだまだ二人とアズールを引き離すわけにはいかないな。
そっとアズールの胸元にロルフを近づけてやると、ロルフはすぐにアズールの可愛らしい赤い実をパクリと咥えた。
「んくっ……んくっ……」
一心不乱に飲み進めていくロルフを支えながら、愛しいアズールを見つめていると
「んっ……ルー?」
とアズールの目が開いて私の名を呼ぶ。
「ふふっ。おはよう。ロルフがアズールのミルクを欲しがっていたから飲ませているぞ」
「夢かと思ったら、本当に飲んでたんだ。びっくりしちゃった。ふふっ、でもいっぱい飲んでるね」
「ああ、私が昨日たっぷりと飲み干したが、ロルフたちの分は無くなっていないと確認できただろう?」
そういうとアズールの顔が真っ赤になる。
私がアズールのミルクを飲んだことを思い出したのか。
それともたっぷりと蜜を注がれたのを思い出したのか。
いずれにしても照れて顔を真っ赤にするアズールは実に可愛らしい。
「義母上からルルを受け取ってくるからその間、ロルフを見ていられるか?」
「うん、ロルフ一人ならアズールだけでも大丈夫だよ。ねー、ロルフ」
聖母のような微笑みをロルフに向けながらアズールはそう言ってくれたが、一応クッションで支えを置き、私はそろそろ来るだろう義母上とルルの到着を待った。
寝室の扉を開けると、ちょうど義母上がルルを連れて部屋に入ってくるところだった。
「アズールは起きたかしら?」
「今ロルフにミルクをあげていますよ」
「それならよかった。ルルにも飲ませてあげてちょうだい」
そう言って渡されたルルを抱きしめると、ふわっと義父上の匂いがする。
それに反応して、少し眉を顰めたのを義母上に見られた気がしたが、何も言わずにアズールの元に連れて行った。
するとアズールのミルクの匂いに反応したのか、ルルも
「ふぇ……っ、ふぇ……っ」
と泣き始める。
私は慌ててロルフが飲んでいるのとは反対の、アズールの赤い実にルルの顔を近づけるとルルもロルフに負けないくらいの大きな口を開けてパクリと咥えた。
「んくっ……んくっ……」
アズールの小さな身体でこの二人を満足させてあげられるだけのミルクを作るのは本当に大変なことなのだろう。
けれど、アズールはそれでも愛おしい我が子たちへの授乳を幸せそうにしている。
この幸せな時間がいつまでも続くように二人への授乳が終わったら、また蜜を飲ませてやらないといけないな。
いや、それよりも中に注いだほうが効果は大きいか。
そんなことを考えていると、いち早くミルクをたっぷりと飲み干したロルフが
「けぷっ」
と可愛いらしい声をあげてアズールの赤い実から口を離したと思ったら、嬉しそうにアズールを見ながら
「まっまっ」
と可愛らしい声をあげた。
私が扉の前に立ったのと扉が叩かれたのはほぼ同時。
そっと扉を開けると、義母上がロルフだけを抱きかかえて立っていた。
「おはよう。ルーディー。さすがね、私が来ていることに気付いたのね。そろそろロルフにミルクを飲ませて欲しくて連れてきたの」
腕に抱いていたロルフだけを私に渡しながら笑顔を向けられる。
「義母上、どうしてロルフだけ? んっ? これは……ティオの匂い?」
なぜかロルフからティオの匂いを強く感じる。
威嚇のようなものは一切感じられないから問題はないが、どうしてこんなにも匂いがするのかは気になるところだ。
「ふふっ。実は、昨夜はベンが腰を痛めてしまってね、急遽クレイとティオにロルフの世話をお願いしたのよ。」
「ああ、そういうことですか。でも、ティオにロルフの世話は大変だったのではないですか?」
大きくなって物心がつけば、自分よりも弱い種族の相手に無闇に威嚇をしてはいけないというのを学ぶものだが、赤子の時はまだ自分でコントロールすることができず、大声で泣いたりしている時はもちろん、寝ている時でも夢に引きずられて威嚇を出してしまうことがある。
ベンはもう年齢的にそこまで強く威嚇を感じなくなってきているから安心だが、まだ真っ盛りのティオは気を遣ったことだろう。
まだ隣にクレイがいる分、少しは安心だっただろうが。
「それが、ロルフはティオを気に入ったみたいなの。ティオもロルフのそばにいても落ち着いていられたみたいよ」
「そうですか。それならよかった。じゃあ、しばらく夜の世話は……」
「ええ。クレイとティオにお願いするつもりよ。構わないでしょう?」
「将来的に二人の子になる可能性が少しでもある以上、仲を深めておいてもらうのは悪いことではないですからね」
そう。
今の所、ロルフが私の後継となってこのヴンダーシューン王国の国王となることになっているが、神殿での神の儀式を終えるまでは仮のままだ。
その時にならなければ、まだ誰にもわからない。
それよりも先に決まるとすれば、私と同じ狼獣人が生まれた時だけ。
「私たちがこの屋敷にいる間はアズールの負担を減らすためにも、クレイとティオにもロルフと関われる時間を増やしても良さそうですね。ですが、まだロルフとルルにはアズールとの母子の時間は必要ですよ。無理やり引き離すようなことは……」
「ええ。そうね。大丈夫。わかっているわ。あくまでも本当の親はあなたとアズール。クレイとティオにはそう伝えておくから。ロルフ、あなたもわかっているわよね」
義母上のにこやかな笑顔に見つめられていたロルフが、その言葉に呼応するようにチュパチュパと自分の指を舐め始めた。
「あらあら、お腹がすいたみたい。アズールに朝のミルクを飲ませるように言ってあげてちょうだい。私はルルを連れてくるわ」
「わかりました」
いつもならアズールの様子を見に中まで入ってくる義母上だが、今日はアズールのところに行こうともしなかったな。
きっと私たちがひさしぶりに甘い夜を過ごしたことに気付いたのだろう。
なんせ、私からアズールの匂いが漂っているのだから。
それでも何も言わないのは、信頼されている証なのだろう。
私は義母上に感謝しつつ、ロルフを連れてアズールの元に戻った。
まだアズールはベッドでブランケットを抱きしめながら、夢の世界にいるようだったけれど
「ふぇ……っ、ふぇ……っ」
とロルフが泣きだすと、
「う、ん……っ、ろ、るふ……」
と寝ぼけながらも、夜着を捲り始める。
ふふっ。眠っていてもすっかり母なのだなと感心する。
まだまだ二人とアズールを引き離すわけにはいかないな。
そっとアズールの胸元にロルフを近づけてやると、ロルフはすぐにアズールの可愛らしい赤い実をパクリと咥えた。
「んくっ……んくっ……」
一心不乱に飲み進めていくロルフを支えながら、愛しいアズールを見つめていると
「んっ……ルー?」
とアズールの目が開いて私の名を呼ぶ。
「ふふっ。おはよう。ロルフがアズールのミルクを欲しがっていたから飲ませているぞ」
「夢かと思ったら、本当に飲んでたんだ。びっくりしちゃった。ふふっ、でもいっぱい飲んでるね」
「ああ、私が昨日たっぷりと飲み干したが、ロルフたちの分は無くなっていないと確認できただろう?」
そういうとアズールの顔が真っ赤になる。
私がアズールのミルクを飲んだことを思い出したのか。
それともたっぷりと蜜を注がれたのを思い出したのか。
いずれにしても照れて顔を真っ赤にするアズールは実に可愛らしい。
「義母上からルルを受け取ってくるからその間、ロルフを見ていられるか?」
「うん、ロルフ一人ならアズールだけでも大丈夫だよ。ねー、ロルフ」
聖母のような微笑みをロルフに向けながらアズールはそう言ってくれたが、一応クッションで支えを置き、私はそろそろ来るだろう義母上とルルの到着を待った。
寝室の扉を開けると、ちょうど義母上がルルを連れて部屋に入ってくるところだった。
「アズールは起きたかしら?」
「今ロルフにミルクをあげていますよ」
「それならよかった。ルルにも飲ませてあげてちょうだい」
そう言って渡されたルルを抱きしめると、ふわっと義父上の匂いがする。
それに反応して、少し眉を顰めたのを義母上に見られた気がしたが、何も言わずにアズールの元に連れて行った。
するとアズールのミルクの匂いに反応したのか、ルルも
「ふぇ……っ、ふぇ……っ」
と泣き始める。
私は慌ててロルフが飲んでいるのとは反対の、アズールの赤い実にルルの顔を近づけるとルルもロルフに負けないくらいの大きな口を開けてパクリと咥えた。
「んくっ……んくっ……」
アズールの小さな身体でこの二人を満足させてあげられるだけのミルクを作るのは本当に大変なことなのだろう。
けれど、アズールはそれでも愛おしい我が子たちへの授乳を幸せそうにしている。
この幸せな時間がいつまでも続くように二人への授乳が終わったら、また蜜を飲ませてやらないといけないな。
いや、それよりも中に注いだほうが効果は大きいか。
そんなことを考えていると、いち早くミルクをたっぷりと飲み干したロルフが
「けぷっ」
と可愛いらしい声をあげてアズールの赤い実から口を離したと思ったら、嬉しそうにアズールを見ながら
「まっまっ」
と可愛らしい声をあげた。
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