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第三章

私たちの子ども

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<sideクレイ>

「クレイ、ティオ。ちょっといいかしら?」

そろそろ寝ようかとティオに声をかけていた時、突然扉が叩かれ母上の声が聞こえた。

「何かあったのでしょうか?」

「なんだろうな?」

ティオの夜着の上にショールを羽織らせて急いで扉を開けると、母上がロルフを腕に抱き立っていた。

「母上、どうかなさったのですか?」

「こんな時間にごめんなさいね。実はベンがロルフとルルのお世話をしてくれていたのだけど、少し腰を痛めてしまったみたいで無理をさせたくないのよ。それで、今晩一晩だけあなたたちにロルフのお世話をしてもらいたいの。頼めるかしら? ルルは私とヴィルでお世話をするわ」

「ベン殿が……それは心配ですね。ロルフくんならお任せください。喜んでお世話します」

すぐにそう言ってくれたのはティオ。
まぁ、この段階で断るのはティオには難しいだろう。

「あの、義兄上は私たちに任せても良いとおっしゃっているのですか?」

「アズールは夜はゆっくり寝かせてあげないと大変だし、ルーディーはアズールに付き添っているでしょう? だから、夜のお世話は任せてくれているから気にしないでいいわ」

確かにそうか。
アズールは日中にミルクをあげるだけでも体力を使うからな。

「わかりました。何か特別なお世話はありますか?」

「いいえ、ロルフは夜はぐっすり眠るから大丈夫よ。もしかしたらいつもと違う部屋だというのを敏感に察知して泣いてしまうかもしれないけれど、抱っこしてゆらしてあげたらすぐに眠るわ。良かったら、クレイとティオの真ん中で寝かせてあげて。そうしたら安心して朝まで眠るはずよ」

ロルフをティオと一緒に……。
ちょっと複雑だが、まだ生まれて間もない子どもに嫉妬するのも恥ずかしい。

「明日、朝にはまた迎えにくるから一晩よろしくね」

「はい。お任せください」

母上はティオの腕にロルフを抱かせると、ホッとしたように部屋を出ていった。

「クレイさま。ロルフくんももう寝そうですから、休みましょうか」

「ああ。そうだな。ティオ、私が抱っこしようか」

そう言ってティオの腕からロルフを受け取ろうとすると、

「ふぇ……っ」

とロルフの小さな泣き声が聞こえてくる。

「おー、よしよし。ロルフくん。大丈夫だよ」

ティオの優しい声と、背中をトントンと優しく叩く音にロルフの機嫌があっという間に良くなってウトウトしかける。

「ティオ、あやすのが上手だな。私は嫌われているのだろうか……」

「そんなことないですよ。ロルフくんもちょっとびっくりしちゃっただけです」

ティオの優しい言葉にホッとするものの、少し寂しい。

両手が塞がっているティオのために布団を捲り寝かせてやってから、私も反対側に身体を横たわらせた。
いつもならピッタリとくっついて寝ているが、今日は間にロルフがいる。

なんとも不思議な気分だ。

「ふふっ」

「どうした?」

「なんだか、私たちの子どもみたいに思えて……幸せだなって思ってしまいました」

「ロルフが、私たちの子ども……」

「私には逆立ちをしてもクレイさまとの子どもを産むことはできませんが、ロルフくんのお世話をしているとこの時だけは自分が親になれたような気がして嬉しいです」

「ティオ……子どもが欲しいか?」

こんなにも愛情深く、そして子どもの扱いも上手なティオだから、本当は自分の子が欲しいと思っているのではないか……そんな不安に駆られてしまう。

「私が欲しいのはクレイさまとの子どもだけですよ。他の人との間に欲しいとは思いません。ロルフくんは、クレイさまと血のつながりのある子ですから他の人との子どもよりは愛しいですよ。クレイさまは他の人との間に子どもが欲しいですか?」

「私にはティオだけだ。ティオを私のものにしたときにそう伝えたことは今でもなんら変わっていない。悪い、私が少し不安になってしまっただけだ」

「クレイさま……私は一生クレイさまのおそばにいますよ。だから、安心してください」

「ティオ……っ、おっとっ!」

抱きしめようとして、間にロルフがいることを思い出す。

「ふふっ。クレイさま……愛してます」

「ティオ……っ」

ロルフを起こさないように身体を起こして、ティオの唇を奪う。
唇を喰み、舌を滑り込ませて舌を絡ませ合う。
激しいキスにティオが必死に声を我慢しているのは、ロルフを起こさないためか。
なんとも可愛らしい。

「んんっ!!!」

突然、ティオが身体をビクリと震わせて大きな声を上げたことに驚いて唇を離すと、ロルフの小さな手がティオの胸に触れているのが見えた。
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