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第三章

最高のタイミング

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<sideルーディー>

双子のロルフとルルが生まれて一週間が経った頃、ようやくアズールも開腹した痛みを感じなくなっていた。

「これほど回復が早いのは素晴らしいことですよ。しっかりとお薬を飲まれて静養なさったおかげでございますね。でもご無理をなさってはいけませんよ。もうしばらくは今まで通り、ミルクをあげる以外はゆっくりなさってくださいね」

診察に来たアントンもかなり上機嫌だ。
それくらい、アズールの産後の過ごし方はあっていたようだ。

「アントン、大丈夫だ。私がついているからな」

「そうでございますね。ルーディーさまがいらっしゃったら私も心配はございません。ロルフさまもルルさまもお健やかにお育ちのご様子で安堵しております」

「ああ、みんなが手伝ってくれるからロルフもルルものびのびと育っているんだ。なぁ、アズール」

「うん。お母さまもティオもすっごくお世話してくれるから、ありがたいよね。自分の子どもなのにいっぱいお世話してもらっちゃって申し訳ない気もするけど……」

「アズールさま、そんな心配はご無用ですよ。ロルフさまとルルさまが元気にお育ちになれるようにミルクをあげること。そして、ゆっくりと静養なさることが今のアズールさまの大事なお役目ですからね」

「うん、わかった! ありがとう、アントン先生」

アントンは顔色の良いアズールの様子に笑顔を浮かべながら帰って行った。

「ねぇ、ルー」

「どうした?」

「そろそろ、お義父さまと爺にもロルフとルルを抱っこしてもらいたいなって思うんだけど……ダメかな?」

「そうだな。アントンも元気になったと太鼓判を押してくれたことだしそろそろ父上たちにも来てもらうとしよう。ただし、無理は絶対にしてはいけないぞ」

「うん、大丈夫! 心配なら、ルーがずっとアズールのそばにいて」

「ああ、わかった。そうしよう。じゃあ、早速父上に早馬を送ろう! 少し待っていてくれ」

私は少しの間、アズールから離れ急いでベンに父上と爺に早馬を送るように告げた。

<sideフィデリオ>

「陛下っ! 陛下っ!!」

「どうした?」

「ヴォルフ公爵家より早馬が参りました」

「おおっ!! それでなんと?」

「はい。お子さま方とお会いできるそうです」

「おおーっ!!!!」

待ちに待った連絡に陛下は喜びを隠せずに大きな声で叫んだ。

「やっとだな。待ち遠しかったぞ。ああっ、こんなことをしている場合じゃない! マティアスのところに寄って、急いでヴォルフ公爵家に向かうぞ!」

「えっ? でも注文してまだ三日でございますぞ。さすがのマティアス殿も……」

そう話していると、突然扉を叩く音が聞こえた。

「マティアスさまがお越しでございます」

「なんとっ!! すぐに通すのだ!!」

思いもかけないタイミングでマティアス殿がやってきて驚きしかない。
まさかもうできたとでも言うのだろうか?

「ご、注文の、お品を、お届けに、参りました……」

ふらふらしながら、部屋に入ってきたマティアス殿の顔は青白く生気がない。

「マティアス殿、かなり無理をしたのではありませんか?」

「いえ、どうぞ、お気になさらず。早く、お届けしたい、一心で、私がやったことですから……」

「マティアス! 本当によく頑張ってくれた。さぁ、私に完成したものを見せてくれ!!」

「は、はい。こちら、でございます……」

「私が陛下の元にお届けします」

ふらふらと立ち上がり、陛下のもとに行こうとしたマティアス殿に声をかけ、受け取った衣装を陛下に手渡すと、

「おおっ!! なんと素晴らしい!!! これは実に可愛らしいな」

大絶賛なさって、嬉しそうに何度も眺めていらっしゃった。

「陛下のお言葉、大変嬉しく存じます」

「マティアス、本当によく頑張ってくれたな。これは衣装の代金と其方への手間賃だ。受け取るが良い」

陛下がずっしりと重い金貨が入った袋を差し出したのを受け取り、マティアス殿に渡すとその重さに目を丸くしていたが、

「ありがとうございます!! ありがとうございます!!」

と何度も礼を言いながら、帰って行った。

「これで贈り物を持って、アズールの元にいけるな。ああ、可愛い双子とアズールに会えるのが楽しみだ」

私は急いで陛下の身支度を整えると、馬車に乗って公爵家に向かった。

公爵家に到着すると、玄関の前でヴォルフ公爵とご家族が待っていらした。

「出迎えありがとう」

「いえ、こちらこそおいでくださり大変ありがたく存じます」

「アズールと子どもたちは起きているか?」

「はい。陛下とフィデリオ殿を今か今かと待っております」

「そうか、楽しみだな」

嬉しそうに眦を下げ、中に入る陛下の後から贈り物の箱を持ってついていく。

ああ、とうとうあのルーディーさまとアズールさまのお子さまに会えるのだ。
私は年甲斐もなく、すっかりはしゃいでしまっていた。
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