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第三章
ルーの優しい言葉
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<sideアズール>
「ルー、来てっ!!」
「アズール、どうしたんだ?」
「ほら、お腹がポコポコ動いてるよ」
ルーの蜜を飲ませてもらうようになって二ヶ月。
甘くて美味しいお薬のおかげで、僕もお腹の赤ちゃんも元気いっぱいになっていた。
安定期に入り、お腹も随分と大きくなってきた。
でもこれからまだまだ大きくなるなんて信じられないな。
最近、お腹の中でムニュムニュと動く感触を感じていたけれど、今日ははっきりとお腹が動いているのが見える。
ルーを呼ぶと嬉しそうに僕のお腹に手を当てる。
「おおっ、アズールのお腹の中が相当過ごしやすいんだろう。元気に動いているな」
「ふふっ。元気いっぱいだから、ルーに似てる子かな?」
「そうかもしれないな。ほら、アズールは妊娠してから肉をよく食べるようになっただろう?」
「うん。ルーが食べているのみたら美味しそうに見えるんだもん」
「それはきっと腹の子が狼族か、もしくは私と同じ狼獣人だからかもしれないな」
「ああ! そういうことなのかな?」
「確証はないが、私はそうだと思っているぞ」
僕とルーの子どもたちは、将来ルーの跡を継いでこの国の王さまになる人と、お兄さまとティオの子どもとして将来公爵家の跡を継ぐ人と必ず二人は必要なんだって言われてるんだ。
生まれてすぐから将来が決められるのって大変そうだけど、考えてみたらルーも、そしてお兄さまもずっとそう言われて育ってきたんだよね。
期待されるってすごく大変なんだなって、お腹に赤ちゃんができて初めてわかった気がする。
この前、お義父さまが遊びにきてくれた時に言われたんだけど、もしお腹の赤ちゃんが女の子だったら、跡継ぎにはなれないんだって。
これはこの国で決まっていることだからどうしても変えることはできないみたい。
もし、この子たちが女の子だったら……みんな喜んでくれないのかな?
そんなだったら可哀想だ……。
――あんたなんか生まれて来なけりゃ良かったのにっ!!
蒼央だったときのお母さんにそう言われたことがふっと甦る。
優しいお義父さまたちがそんなこと絶対に言わないってわかってるけど、でも……この子たちが必要とされなかったらなんて思ったら不安でたまらなくなる。
「んっ? どうした、アズール」
「えっ?」
「なんだか不安そうな顔をしている。何か悩みがあるのなら私に話してくれないか?」
ルーはいつだって、どんな時だって僕の表情を見て優しい声をかけてくれる。
だから安心して何でも話せちゃうんだ。
「うん……心配になっちゃったんだ……もし、お腹の赤ちゃんが女の子だったらって……」
「もしかして跡継ぎのことが心配なのか?」
ルーにそう言われて僕は小さく頷いた。
すると大きな身体が僕と大きなお腹ごと包み込んでくれる。
「悪い。この前、女の子なら跡継ぎにはなれないと父上が話していたことがアズールの負担になったのだろう?」
「ううん。お義父さまは本当のことを教えてくれただけだもん。アズールが、不安に思っちゃっただけ……」
「アズールは優しいな」
「優しい?」
「ああ、決して相手を悪く言ったりしないだろう? そんな優しいアズールから生まれてくる子どもたちだ。女だろうが、男だろうが関係ない。私たちの大事な子どもたちだ。」
「ルー……」
「だから、アズールは何も気にせずに元気な子を産むことだけを考えていればいい」
「うん。ありがとう。ルー、大好きっ!!」
「ふふっ。こういう時はキスをしてくれたらいいのだぞ」
そんなことを言ってくれるルーの口にちゅっとキスをする。
その時は必ず、ルーのふさふさなほっぺたを触るんだ。
ああ、やっぱりルーのふさふさほっぺ。
大好きだなぁ。
ふさふさほっぺを堪能していると、ルーの口から長い舌が出てきて僕の口の中に入ってくる。
クチュクチュと舌に絡みついてくるのがすごく気持ちがいい。
それにルーの唾液が甘くて美味しいんだ。
たっぷりと僕の口の中を堪能してからルーの舌が離れていった時には、僕はもうすっかり力が抜けてしまって、ルーにもたれかかる。
それが何よりも幸せなんだ。
「お腹の子の性別がわかりますが、お聞きになりますか?」
お腹の赤ちゃんが外から見てわかるくらいによく動くようになったとアントン先生にルーが報告したら、すぐに機械を持って往診にきてくれた。
マックスが作ったあの機械でアントン先生が何度も念入りに調べている間もずっとお腹の赤ちゃんたちは元気に動き回っていた。
そうして、ようやく診察が終わったら先生がそんなことを尋ねてきた。
「もう、わかるんですか?」
「ええ。アズールさまのお腹にいらっしゃるお子さま方は活発に動き回っておられたので、ほぼ間違いなく性別は判別できたかと存じます」
男の子か、女の子かわかる……。
聞いてみたい気もする。
でも……。
「ルー、どうしよう……」
「アズールが悩んでいるうちは聞かなくていいんじゃないか? 私は生まれてからの楽しみにしてもいいと思っているよ」
「ルー……」
そんなルーの優しい言葉に僕はなんだかホッとしてしまった。
「ルー、来てっ!!」
「アズール、どうしたんだ?」
「ほら、お腹がポコポコ動いてるよ」
ルーの蜜を飲ませてもらうようになって二ヶ月。
甘くて美味しいお薬のおかげで、僕もお腹の赤ちゃんも元気いっぱいになっていた。
安定期に入り、お腹も随分と大きくなってきた。
でもこれからまだまだ大きくなるなんて信じられないな。
最近、お腹の中でムニュムニュと動く感触を感じていたけれど、今日ははっきりとお腹が動いているのが見える。
ルーを呼ぶと嬉しそうに僕のお腹に手を当てる。
「おおっ、アズールのお腹の中が相当過ごしやすいんだろう。元気に動いているな」
「ふふっ。元気いっぱいだから、ルーに似てる子かな?」
「そうかもしれないな。ほら、アズールは妊娠してから肉をよく食べるようになっただろう?」
「うん。ルーが食べているのみたら美味しそうに見えるんだもん」
「それはきっと腹の子が狼族か、もしくは私と同じ狼獣人だからかもしれないな」
「ああ! そういうことなのかな?」
「確証はないが、私はそうだと思っているぞ」
僕とルーの子どもたちは、将来ルーの跡を継いでこの国の王さまになる人と、お兄さまとティオの子どもとして将来公爵家の跡を継ぐ人と必ず二人は必要なんだって言われてるんだ。
生まれてすぐから将来が決められるのって大変そうだけど、考えてみたらルーも、そしてお兄さまもずっとそう言われて育ってきたんだよね。
期待されるってすごく大変なんだなって、お腹に赤ちゃんができて初めてわかった気がする。
この前、お義父さまが遊びにきてくれた時に言われたんだけど、もしお腹の赤ちゃんが女の子だったら、跡継ぎにはなれないんだって。
これはこの国で決まっていることだからどうしても変えることはできないみたい。
もし、この子たちが女の子だったら……みんな喜んでくれないのかな?
そんなだったら可哀想だ……。
――あんたなんか生まれて来なけりゃ良かったのにっ!!
蒼央だったときのお母さんにそう言われたことがふっと甦る。
優しいお義父さまたちがそんなこと絶対に言わないってわかってるけど、でも……この子たちが必要とされなかったらなんて思ったら不安でたまらなくなる。
「んっ? どうした、アズール」
「えっ?」
「なんだか不安そうな顔をしている。何か悩みがあるのなら私に話してくれないか?」
ルーはいつだって、どんな時だって僕の表情を見て優しい声をかけてくれる。
だから安心して何でも話せちゃうんだ。
「うん……心配になっちゃったんだ……もし、お腹の赤ちゃんが女の子だったらって……」
「もしかして跡継ぎのことが心配なのか?」
ルーにそう言われて僕は小さく頷いた。
すると大きな身体が僕と大きなお腹ごと包み込んでくれる。
「悪い。この前、女の子なら跡継ぎにはなれないと父上が話していたことがアズールの負担になったのだろう?」
「ううん。お義父さまは本当のことを教えてくれただけだもん。アズールが、不安に思っちゃっただけ……」
「アズールは優しいな」
「優しい?」
「ああ、決して相手を悪く言ったりしないだろう? そんな優しいアズールから生まれてくる子どもたちだ。女だろうが、男だろうが関係ない。私たちの大事な子どもたちだ。」
「ルー……」
「だから、アズールは何も気にせずに元気な子を産むことだけを考えていればいい」
「うん。ありがとう。ルー、大好きっ!!」
「ふふっ。こういう時はキスをしてくれたらいいのだぞ」
そんなことを言ってくれるルーの口にちゅっとキスをする。
その時は必ず、ルーのふさふさなほっぺたを触るんだ。
ああ、やっぱりルーのふさふさほっぺ。
大好きだなぁ。
ふさふさほっぺを堪能していると、ルーの口から長い舌が出てきて僕の口の中に入ってくる。
クチュクチュと舌に絡みついてくるのがすごく気持ちがいい。
それにルーの唾液が甘くて美味しいんだ。
たっぷりと僕の口の中を堪能してからルーの舌が離れていった時には、僕はもうすっかり力が抜けてしまって、ルーにもたれかかる。
それが何よりも幸せなんだ。
「お腹の子の性別がわかりますが、お聞きになりますか?」
お腹の赤ちゃんが外から見てわかるくらいによく動くようになったとアントン先生にルーが報告したら、すぐに機械を持って往診にきてくれた。
マックスが作ったあの機械でアントン先生が何度も念入りに調べている間もずっとお腹の赤ちゃんたちは元気に動き回っていた。
そうして、ようやく診察が終わったら先生がそんなことを尋ねてきた。
「もう、わかるんですか?」
「ええ。アズールさまのお腹にいらっしゃるお子さま方は活発に動き回っておられたので、ほぼ間違いなく性別は判別できたかと存じます」
男の子か、女の子かわかる……。
聞いてみたい気もする。
でも……。
「ルー、どうしよう……」
「アズールが悩んでいるうちは聞かなくていいんじゃないか? 私は生まれてからの楽しみにしてもいいと思っているよ」
「ルー……」
そんなルーの優しい言葉に僕はなんだかホッとしてしまった。
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