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第三章
健やかに育つために
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<sideルーディー>
可愛らしいアズールが私の昂りを嬉しそうに咥え、たっぷりと二度も蜜を飲み干した。
それだけで足りなかったのか、父上と爺に早馬を頼んで戻ってきた後も、もうちょっとだけ欲しいと言って私の昂りを取り出してさっさと咥えてしまった。
それを止めることができなかったのは、アズールの主治医であるアントンに言われたあの言葉があったからだ。
――アズールさまが食べたいと仰るものはお好きなだけ差し上げてください。アズールさまが食べたいと仰るものは全てお腹の子が食べたいものだと思っていただいて構いません。
アズールがこれほどまでに私の蜜を欲しがるのは、アズールの身体が、そして、腹の子たちが欲しているものだからだと思えば、止めるなんてことできるはずがない。
アズールの妊娠がわかって以来、欲望の蜜を久方ぶりに自分で出すという生活が続いていたから三度でも、たとえ十度でもアズールにねだられても蜜を出すことなど余裕だ。
ただ、堪え性がないことをアズールに知られることが恥ずかしいだけだ。
当の本人は、たっぷりと蜜が飲めて満足しているのだろうが。
それにしてもアズールが私の蜜を薬だと言って飲んでくれたことは嬉しいが弊害があった。
早馬を頼みにベンのところに行った時、私から漂っている匂いに慄いて使用人たちだけでなく、ベンすらも近づいてこなかったのだ。
おそらくアズールに飲ませるためにたっぷりとフェロモンを出したことが理由だろう。
「ルーディーさま。申し訳ございませんが、そのフェロモンの匂いをどうにかしていただけませんか?」
「お前たちには苦労をかけるが、アズールの体調を整えるためには必要なことなのだ。理解してはもらえぬか?」
そう言いつつも、私の強い匂いが狐族や、ましてやネズミ族のようなものたちには恐怖でしかないことはよくわかっている。
そこに義父上と義母上がやってきて、大体の様子を察し、私たちがここにいる間の世話は基本的にお二人でやってくれることになったのだ。
「義父上、義母上。申し訳ない」
「アズールとお腹の子のためなのでしょう。それならみんなで協力するだけだわ。ねぇ、あなた」
「ああ、だが私たちでもかなり強いからできるだけルーディーはアズールのそばから離れないようにしてもらおう。何かあればベルで呼んでくれたらいい」
そう言われて私は部屋に戻ったのだった。
そこからさらにアズールに蜜を求められ、それからすぐに父上たちがやってきたというわけだ。
部屋に入ってくるとすぐに父上と爺の表情が曇ったのに気づいた。
この部屋で気づいていないのはアズールだけだろう。
アズールは無邪気に私の蜜をたっぷりと飲んだと報告をして父上たちは返答に困っているようだったが、それよりももっと大事な報告があったはずだ。
「アズール。父上と爺に報告することがあったのではなかったか?」
「あっ! そうだった! お義父さま。それに爺。お腹の赤ちゃんは二人だったよ。双子ちゃんなの!!」
「おおっ!! 二人もっ!! アズールっ、でかしたぞ!!!」
「ふふっ。お義父さま。嬉しい?」
「ああ、嬉しいよ。ルーディーとアズールの子なら可愛いだろうな。早く会いたいものだ」
「ふふっ。爺も嬉しい?」
「はい。もちろんでございますよ。それまでは私も元気に過ごします。ルーディーさまとアズールさまのお子さま方のお世話ができるなんて何よりの幸せでございますよ」
そう言ってくれるフィデリオの目にはうっすらと涙が見える。
私がこのような姿で生まれてきても分け隔てなく愛を与えてくれた父上と爺の心からの言葉には私も感謝しかない。
まだ男か、女かも、それに私のような獣人か、狼族か、もしかしたら獣人とウサギ族の双子として生まれるかもわからない状況だが、とにかく私たちの子が二人も生まれることを喜んでくれて本当に嬉しい。
「無事に子が産まれるように、決して無理はするでないぞ。なんでもルーディーに頼るといいし、何か困ったことがあったら、いつでも私やフィデリオを呼んでくれたらいい。アズール、わかったな」
「はぁーい!」
素直で元気なアズールの言葉に父上と爺は嬉しそうに笑っているが、私としては正直にホッとしている気持ちが多い。
蜜を飲む前はこんなにも大きな声を出すことはできなかったのだから。
本当にアズールにとって私の蜜が薬になるのだと納得する。
こんなにも元気になれるのなら、これからもアズールの欲するままにたっぷりと蜜を飲ませることにしよう。
そうしたら子どもたちもすくすくと大きくなってくれることだろう。
子どもたちよ。アズールの腹の中で健やかに育つのだぞ。
二人に会える日が今からとても楽しみだな。
可愛らしいアズールが私の昂りを嬉しそうに咥え、たっぷりと二度も蜜を飲み干した。
それだけで足りなかったのか、父上と爺に早馬を頼んで戻ってきた後も、もうちょっとだけ欲しいと言って私の昂りを取り出してさっさと咥えてしまった。
それを止めることができなかったのは、アズールの主治医であるアントンに言われたあの言葉があったからだ。
――アズールさまが食べたいと仰るものはお好きなだけ差し上げてください。アズールさまが食べたいと仰るものは全てお腹の子が食べたいものだと思っていただいて構いません。
アズールがこれほどまでに私の蜜を欲しがるのは、アズールの身体が、そして、腹の子たちが欲しているものだからだと思えば、止めるなんてことできるはずがない。
アズールの妊娠がわかって以来、欲望の蜜を久方ぶりに自分で出すという生活が続いていたから三度でも、たとえ十度でもアズールにねだられても蜜を出すことなど余裕だ。
ただ、堪え性がないことをアズールに知られることが恥ずかしいだけだ。
当の本人は、たっぷりと蜜が飲めて満足しているのだろうが。
それにしてもアズールが私の蜜を薬だと言って飲んでくれたことは嬉しいが弊害があった。
早馬を頼みにベンのところに行った時、私から漂っている匂いに慄いて使用人たちだけでなく、ベンすらも近づいてこなかったのだ。
おそらくアズールに飲ませるためにたっぷりとフェロモンを出したことが理由だろう。
「ルーディーさま。申し訳ございませんが、そのフェロモンの匂いをどうにかしていただけませんか?」
「お前たちには苦労をかけるが、アズールの体調を整えるためには必要なことなのだ。理解してはもらえぬか?」
そう言いつつも、私の強い匂いが狐族や、ましてやネズミ族のようなものたちには恐怖でしかないことはよくわかっている。
そこに義父上と義母上がやってきて、大体の様子を察し、私たちがここにいる間の世話は基本的にお二人でやってくれることになったのだ。
「義父上、義母上。申し訳ない」
「アズールとお腹の子のためなのでしょう。それならみんなで協力するだけだわ。ねぇ、あなた」
「ああ、だが私たちでもかなり強いからできるだけルーディーはアズールのそばから離れないようにしてもらおう。何かあればベルで呼んでくれたらいい」
そう言われて私は部屋に戻ったのだった。
そこからさらにアズールに蜜を求められ、それからすぐに父上たちがやってきたというわけだ。
部屋に入ってくるとすぐに父上と爺の表情が曇ったのに気づいた。
この部屋で気づいていないのはアズールだけだろう。
アズールは無邪気に私の蜜をたっぷりと飲んだと報告をして父上たちは返答に困っているようだったが、それよりももっと大事な報告があったはずだ。
「アズール。父上と爺に報告することがあったのではなかったか?」
「あっ! そうだった! お義父さま。それに爺。お腹の赤ちゃんは二人だったよ。双子ちゃんなの!!」
「おおっ!! 二人もっ!! アズールっ、でかしたぞ!!!」
「ふふっ。お義父さま。嬉しい?」
「ああ、嬉しいよ。ルーディーとアズールの子なら可愛いだろうな。早く会いたいものだ」
「ふふっ。爺も嬉しい?」
「はい。もちろんでございますよ。それまでは私も元気に過ごします。ルーディーさまとアズールさまのお子さま方のお世話ができるなんて何よりの幸せでございますよ」
そう言ってくれるフィデリオの目にはうっすらと涙が見える。
私がこのような姿で生まれてきても分け隔てなく愛を与えてくれた父上と爺の心からの言葉には私も感謝しかない。
まだ男か、女かも、それに私のような獣人か、狼族か、もしかしたら獣人とウサギ族の双子として生まれるかもわからない状況だが、とにかく私たちの子が二人も生まれることを喜んでくれて本当に嬉しい。
「無事に子が産まれるように、決して無理はするでないぞ。なんでもルーディーに頼るといいし、何か困ったことがあったら、いつでも私やフィデリオを呼んでくれたらいい。アズール、わかったな」
「はぁーい!」
素直で元気なアズールの言葉に父上と爺は嬉しそうに笑っているが、私としては正直にホッとしている気持ちが多い。
蜜を飲む前はこんなにも大きな声を出すことはできなかったのだから。
本当にアズールにとって私の蜜が薬になるのだと納得する。
こんなにも元気になれるのなら、これからもアズールの欲するままにたっぷりと蜜を飲ませることにしよう。
そうしたら子どもたちもすくすくと大きくなってくれることだろう。
子どもたちよ。アズールの腹の中で健やかに育つのだぞ。
二人に会える日が今からとても楽しみだな。
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