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第三章
検査の結果は……
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<sideアズール>
「お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃった」
「じゃあ、部屋に戻ろうか?」
「ううん、もう少しここにいたい。いい?」
「ああ、構わないよ。眠くなったら、このまま寝るといい」
「ルー、ありがとう」
体調も良くなって、心配してくれていたティオとベンとも久しぶりに会うことができたし、ずっと食べたかったお菓子も食べられて満足したら眠くなってきてしまった。
お腹に赤ちゃんがいるってわかってから、やけに眠たくてたまらない。
こんなに寝てて大丈夫なのかなって心配に思って、一度診察に来てくれた先生に聞いたんだ。
でも、僕が寝ている時に赤ちゃんが大きくなっているから、眠たい時はいっぱい寝ていいって言われてホッとした。
それ以来、寝てても赤ちゃんが大きくなってるんだって思ったら、安心できたんだ。
「るー……」
「アズール、愛してるよ」
半分寝ながらも、ちゅっと唇にキスされた感触に気づく。
「ふさ、ふさぁ……すきぃ……」
手を伸ばすと、ルーのふさふさのほっぺたに触れて気持ちがいい。
きっと赤ちゃんもルーのふさふさ、気に入るだろうな。
って、そういえば、赤ちゃんはどっちなんだろう?
お兄さまたちみたいなふさふさの狼さんの耳と尻尾で生まれてくるのかな?
それとも、ルーみたいに全部が狼さんみたいに生まれてくるのかな?
あ、でも前にルーに聞いた時は、何百年かに一人、ルーみたいに全部が狼さんみたいに生まれてくるって言ってたから、赤ちゃんは耳と尻尾だけ狼さんなのかも……。
僕みたいなウサギは、全部が狼さんの人が生まれた後じゃないと生まれないって言ってたし。
じゃあ、お兄さまみたいな狼さんか。
生まれたてってどんな感じなんだろう。
生まれた時からふさふさのしっぽなのかな?
うーん、気になる。
「しっぽ……ふさ、ふさ……」
寝ぼけながらそんなことを言っていたら、ふさふさのしっぽが僕のお腹を優しく撫でてくれる。
「ふふっ……きもち、いぃ……」
そんな温もりを感じながら、僕はぐっすりと眠ってしまっていた。
<sideルーディー>
眠たいと言い出したアズールを抱きしめていると、どんどん体温が上がっていく。
最初は熱でも出たのかと心配したけれど、腹に子がいる時は眠ると体温が上がるのだそうだ。
深い眠りになればなるほど温かくなるのは、腹の子が元気である証拠らしい。
そう聞くと安心する。
寝ぼけながらも私の名を呼んでくれるアズールが可愛くて、愛の言葉を囁きキスを贈るとアズールの手が私の頬を撫でる。
けむくじゃらで鏡を見るたびにため息をついていた頃もあったが、アズールが私のこのけむくじゃらな頬に触れて、喜んでくれたあの日から私は自分の顔が好きになれた。
アズールと出会ったあの日から、私の人生は大きく変わったのだ。
そして、さらに大きな転機を迎えようとしている。
私たちの可愛い子が、アズールの小さな腹の中で必死に大きくなろうと頑張っているのだ。
ふさふさのしっぽ……と寝言でも言ってくれるその私の尻尾でアズールの腹を優しく撫で、腹の子たちに私とアズールの愛を伝える。
「ふふっ……きもち、いぃ……」
そんな幸せの声を聞きながら、しばらくの間アズールの可愛い寝顔を見つめていた。
そんな楽しい時間を過ごした数日後、医師のアントンが屋敷にやってきた。
「そろそろアズールさまの体調も落ち着かれた頃ですので、詳しい検査をいたしましょう。これで、お腹の中に何人お子さまがいらっしゃるかわかりますよ」
「その検査はアズールには負担はないか?」
「はい。もちろんでございます。アズールさまは横になっていらっしゃるだけで大丈夫ですよ。もし、何か痛みや変化があれば、すぐにお知らせください」
そういうとアントンはカバンから何やら道具を取り出し、アズールの腹に服の上から当て始めた。
「これでわかるのか?」
「はい。以前はもっと大掛かりな道具が必要で、検査するにも病院まで足を運んでいただいていたのですが、ベーレンドルフ家のマクシミリアンさまにこちらの道具を作っていただいてからは、検査も楽になりました。ある程度大きくなってからしか反応しないのですが、それでもこちらの方が安心かつ安全に検査ができるのですよ」
「マクシミリアンが? それはすごいな」
「はい。マクシミリアンさまは手先が器用でいろんな道具を作ってくださるのです」
そういえば、以前アズールのためにおにぎりを作る機械や、バロンをふくらませる機械も作っていたな。
なるほど、熊族が手先が器用だというのは本当なのだな。
アントンは服の上から念入りに何度も当て、確信を持った様子で口を開いた。
「お腹のお子さまはお二人のようです。これからお腹で成長していくことを考えますと、おそらく、アズールさまのお腹ではお二人が限界かと存じます。ですので、次に妊娠なさった時もお二人になるでしょうね」
「そうか。二人か。アズール、私たちの可愛い子が二人生まれるぞ!」
「お腹に……二人も? すごいっ!! 一気に楽しくなるね!!」
「ああ、そうだな」
あと半年後には腹の子たちが生まれてくるわけか……。
ああ、待ち遠しくてたまらないな。
「お腹いっぱいになったら眠くなってきちゃった」
「じゃあ、部屋に戻ろうか?」
「ううん、もう少しここにいたい。いい?」
「ああ、構わないよ。眠くなったら、このまま寝るといい」
「ルー、ありがとう」
体調も良くなって、心配してくれていたティオとベンとも久しぶりに会うことができたし、ずっと食べたかったお菓子も食べられて満足したら眠くなってきてしまった。
お腹に赤ちゃんがいるってわかってから、やけに眠たくてたまらない。
こんなに寝てて大丈夫なのかなって心配に思って、一度診察に来てくれた先生に聞いたんだ。
でも、僕が寝ている時に赤ちゃんが大きくなっているから、眠たい時はいっぱい寝ていいって言われてホッとした。
それ以来、寝てても赤ちゃんが大きくなってるんだって思ったら、安心できたんだ。
「るー……」
「アズール、愛してるよ」
半分寝ながらも、ちゅっと唇にキスされた感触に気づく。
「ふさ、ふさぁ……すきぃ……」
手を伸ばすと、ルーのふさふさのほっぺたに触れて気持ちがいい。
きっと赤ちゃんもルーのふさふさ、気に入るだろうな。
って、そういえば、赤ちゃんはどっちなんだろう?
お兄さまたちみたいなふさふさの狼さんの耳と尻尾で生まれてくるのかな?
それとも、ルーみたいに全部が狼さんみたいに生まれてくるのかな?
あ、でも前にルーに聞いた時は、何百年かに一人、ルーみたいに全部が狼さんみたいに生まれてくるって言ってたから、赤ちゃんは耳と尻尾だけ狼さんなのかも……。
僕みたいなウサギは、全部が狼さんの人が生まれた後じゃないと生まれないって言ってたし。
じゃあ、お兄さまみたいな狼さんか。
生まれたてってどんな感じなんだろう。
生まれた時からふさふさのしっぽなのかな?
うーん、気になる。
「しっぽ……ふさ、ふさ……」
寝ぼけながらそんなことを言っていたら、ふさふさのしっぽが僕のお腹を優しく撫でてくれる。
「ふふっ……きもち、いぃ……」
そんな温もりを感じながら、僕はぐっすりと眠ってしまっていた。
<sideルーディー>
眠たいと言い出したアズールを抱きしめていると、どんどん体温が上がっていく。
最初は熱でも出たのかと心配したけれど、腹に子がいる時は眠ると体温が上がるのだそうだ。
深い眠りになればなるほど温かくなるのは、腹の子が元気である証拠らしい。
そう聞くと安心する。
寝ぼけながらも私の名を呼んでくれるアズールが可愛くて、愛の言葉を囁きキスを贈るとアズールの手が私の頬を撫でる。
けむくじゃらで鏡を見るたびにため息をついていた頃もあったが、アズールが私のこのけむくじゃらな頬に触れて、喜んでくれたあの日から私は自分の顔が好きになれた。
アズールと出会ったあの日から、私の人生は大きく変わったのだ。
そして、さらに大きな転機を迎えようとしている。
私たちの可愛い子が、アズールの小さな腹の中で必死に大きくなろうと頑張っているのだ。
ふさふさのしっぽ……と寝言でも言ってくれるその私の尻尾でアズールの腹を優しく撫で、腹の子たちに私とアズールの愛を伝える。
「ふふっ……きもち、いぃ……」
そんな幸せの声を聞きながら、しばらくの間アズールの可愛い寝顔を見つめていた。
そんな楽しい時間を過ごした数日後、医師のアントンが屋敷にやってきた。
「そろそろアズールさまの体調も落ち着かれた頃ですので、詳しい検査をいたしましょう。これで、お腹の中に何人お子さまがいらっしゃるかわかりますよ」
「その検査はアズールには負担はないか?」
「はい。もちろんでございます。アズールさまは横になっていらっしゃるだけで大丈夫ですよ。もし、何か痛みや変化があれば、すぐにお知らせください」
そういうとアントンはカバンから何やら道具を取り出し、アズールの腹に服の上から当て始めた。
「これでわかるのか?」
「はい。以前はもっと大掛かりな道具が必要で、検査するにも病院まで足を運んでいただいていたのですが、ベーレンドルフ家のマクシミリアンさまにこちらの道具を作っていただいてからは、検査も楽になりました。ある程度大きくなってからしか反応しないのですが、それでもこちらの方が安心かつ安全に検査ができるのですよ」
「マクシミリアンが? それはすごいな」
「はい。マクシミリアンさまは手先が器用でいろんな道具を作ってくださるのです」
そういえば、以前アズールのためにおにぎりを作る機械や、バロンをふくらませる機械も作っていたな。
なるほど、熊族が手先が器用だというのは本当なのだな。
アントンは服の上から念入りに何度も当て、確信を持った様子で口を開いた。
「お腹のお子さまはお二人のようです。これからお腹で成長していくことを考えますと、おそらく、アズールさまのお腹ではお二人が限界かと存じます。ですので、次に妊娠なさった時もお二人になるでしょうね」
「そうか。二人か。アズール、私たちの可愛い子が二人生まれるぞ!」
「お腹に……二人も? すごいっ!! 一気に楽しくなるね!!」
「ああ、そうだな」
あと半年後には腹の子たちが生まれてくるわけか……。
ああ、待ち遠しくてたまらないな。
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