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第三章
アズールの願いを叶えよう
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<sideルーディー>
アズールの妊娠がわかって、あっという間に三週間が経った。
あれからしばらくは慣れない体調の変化にアズールの心がついていけなかったようで、不安定な様子が続いていた。
少しでも離れると不安そうに目を覚まし、離れないでと訴えてくる。
だから、私はアズールの気の済むまで寄り添い続けた。
あまり食事も摂れないアズールのために、フランツが柔らかく食べやすい、いろんな食事を用意してくれたがどれもアズールは食べることができなかった。
あの柔らかく煮た人参でさえも飲み込むことができずに吐き出してしまう状態で、水分だけはなんとか摂れたものの、栄養が摂れないアズールはどんどんやつれていく。
流石にアズールと腹の子たちが心配になって、私が噛み砕いたものをアズールに食べさせたところ、それだけは吐かずに食べることができた。
医師の話ではどうやら私の唾液が混ざったのがアズールの身体には良かったとのこと。
ならばと、それからはいろいろな料理を私が噛み砕き、長い舌でアズールの口に運び食べさせると美味しそうに食べてくれた。
そこまでたくさんの量を食べれずとも何度かに分ければ確実に食べられるようになり、あれほどやつれていたアズールの顔にも赤みがさすようになった。
ああ。これで一安心だな。
「ルー、ちょっとお日さまに当たりたいな」
「だが、まだベッドから出るのはやめた方がいいんじゃないか?」
「ルーが一緒なら大丈夫。ねぇ、いいでしょう?」
この三週間、ずっと部屋に篭りっぱなしなのだから外に出たいアズールの気持ちもよくわかる。
医師にはアズールにストレスを与えないようにできるだけアズールの願いは叶えるようにと言われているから、外に出ても問題はないはずだ。
心配だが、ここで無理にやめさせてアズールの体調が悪くなってもいけない。
何もないように私がついていればいいだけだ。
「わかった。じゃあ、温かくして抱きかかえていこう。それでいいか?」
「うん! ルー、ありがとう」
「じゃあ、準備をするから少しだけここで待っていてくれるか?」
「わかった、大丈夫だよ」
ほんの少しの時間も離れることができなかった頃に比べると、やはり気持ちが安定しているようだな。
そのことに安堵しつつ、私は急いで寝室を出てクレイとティオを呼んだ。
今日はちょうど訓練が休みで、クレイとの時間を過ごしていたから良かった。
クレイもティオもアズールのために何かできることがあれば声をかけて欲しいと言ってくれているから本当に助かる。
「義兄上、お呼びですか?」
「ああ、休んでいるところ悪いが、アズールが太陽に当たりたいと言っているから中庭を散歩しようと思う。中庭に座れる場所の準備とお茶の支度を頼む。菓子を食べられるかはわからんが、準備だけはしておいてほしいのだ」
「アズールが中庭に? 体調は大丈夫なんですか?」
「ああ、今日はだいぶ調子もいいようだ。アズールの願いはできるだけ叶えてやりたいからな」
「わかりました。すぐに用意します」
二人に任せていれば大丈夫だ。
私はすぐに寝室に戻り、アズールを外に出す支度を始めた。
「ルー、あのブランケットがいい」
寒くないように毛布で包んでやろうとした私にアズールが声をかける。
アズールがいうブランケットは、私が幼少期に気に入って使っていた、私の匂いがたっぷり染み込んだブランケット。
アズールの一歳のお披露目会の時に爺がアズールに渡したものだ。
だいぶ匂いは薄くなっているが、アズールはあれからもずっとこのブランケットを大切にしてくれていた。
それとは別に私の蜜をたっぷりと染み込ませたブランケットも気に入ってくれていたが、アズールが寝ている間にちゅーちゅーと蜜を舐め取ってしまうため、すぐに交換してしまっていた。
だが、最初のこのブランケットだけは決して手放すことなく、ずっとそばに置いていてくれたのだ。
「だいぶ古くなったが、これでいいのか?」
「うん。ルーの思い出だもん。きっとお腹の赤ちゃんたちもこのブランケット好きになるよ」
「アズール……」
ああ、なんて私は幸せなのだろうな。
本当にアズールに愛されている。
アズールが好きだと言ってくれたそのブランケットでアズールを包み、久しぶりに部屋を出る。
すると、もう準備を整え終わったらしいティオとクレイがそっと近づいてきた。
久しぶりにアズールの顔を見られてほっとしているのだろう。
クレイとティオの目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見える。
それはそうだろうな。
あの菓子を吐き出してから、クレイとティオは初めてアズールに会うのだから。
「アズール、元気そうだな」
「あっ、お兄さま。それにティオも! うん、僕はもう元気だよ」
アズールの笑顔にティオの目から涙がこぼれ落ちる。
「ティオ……ごめんね。お菓子食べられなくて……」
「――っ、アズール、さま……気になさらないでください……私はアズールさまにお子さまができてとても嬉しいです」
「ありがとう、ティオ」
アズールが手を伸ばすと、ティオは笑顔でそっとその手を握った。
アズールの妊娠がわかって、あっという間に三週間が経った。
あれからしばらくは慣れない体調の変化にアズールの心がついていけなかったようで、不安定な様子が続いていた。
少しでも離れると不安そうに目を覚まし、離れないでと訴えてくる。
だから、私はアズールの気の済むまで寄り添い続けた。
あまり食事も摂れないアズールのために、フランツが柔らかく食べやすい、いろんな食事を用意してくれたがどれもアズールは食べることができなかった。
あの柔らかく煮た人参でさえも飲み込むことができずに吐き出してしまう状態で、水分だけはなんとか摂れたものの、栄養が摂れないアズールはどんどんやつれていく。
流石にアズールと腹の子たちが心配になって、私が噛み砕いたものをアズールに食べさせたところ、それだけは吐かずに食べることができた。
医師の話ではどうやら私の唾液が混ざったのがアズールの身体には良かったとのこと。
ならばと、それからはいろいろな料理を私が噛み砕き、長い舌でアズールの口に運び食べさせると美味しそうに食べてくれた。
そこまでたくさんの量を食べれずとも何度かに分ければ確実に食べられるようになり、あれほどやつれていたアズールの顔にも赤みがさすようになった。
ああ。これで一安心だな。
「ルー、ちょっとお日さまに当たりたいな」
「だが、まだベッドから出るのはやめた方がいいんじゃないか?」
「ルーが一緒なら大丈夫。ねぇ、いいでしょう?」
この三週間、ずっと部屋に篭りっぱなしなのだから外に出たいアズールの気持ちもよくわかる。
医師にはアズールにストレスを与えないようにできるだけアズールの願いは叶えるようにと言われているから、外に出ても問題はないはずだ。
心配だが、ここで無理にやめさせてアズールの体調が悪くなってもいけない。
何もないように私がついていればいいだけだ。
「わかった。じゃあ、温かくして抱きかかえていこう。それでいいか?」
「うん! ルー、ありがとう」
「じゃあ、準備をするから少しだけここで待っていてくれるか?」
「わかった、大丈夫だよ」
ほんの少しの時間も離れることができなかった頃に比べると、やはり気持ちが安定しているようだな。
そのことに安堵しつつ、私は急いで寝室を出てクレイとティオを呼んだ。
今日はちょうど訓練が休みで、クレイとの時間を過ごしていたから良かった。
クレイもティオもアズールのために何かできることがあれば声をかけて欲しいと言ってくれているから本当に助かる。
「義兄上、お呼びですか?」
「ああ、休んでいるところ悪いが、アズールが太陽に当たりたいと言っているから中庭を散歩しようと思う。中庭に座れる場所の準備とお茶の支度を頼む。菓子を食べられるかはわからんが、準備だけはしておいてほしいのだ」
「アズールが中庭に? 体調は大丈夫なんですか?」
「ああ、今日はだいぶ調子もいいようだ。アズールの願いはできるだけ叶えてやりたいからな」
「わかりました。すぐに用意します」
二人に任せていれば大丈夫だ。
私はすぐに寝室に戻り、アズールを外に出す支度を始めた。
「ルー、あのブランケットがいい」
寒くないように毛布で包んでやろうとした私にアズールが声をかける。
アズールがいうブランケットは、私が幼少期に気に入って使っていた、私の匂いがたっぷり染み込んだブランケット。
アズールの一歳のお披露目会の時に爺がアズールに渡したものだ。
だいぶ匂いは薄くなっているが、アズールはあれからもずっとこのブランケットを大切にしてくれていた。
それとは別に私の蜜をたっぷりと染み込ませたブランケットも気に入ってくれていたが、アズールが寝ている間にちゅーちゅーと蜜を舐め取ってしまうため、すぐに交換してしまっていた。
だが、最初のこのブランケットだけは決して手放すことなく、ずっとそばに置いていてくれたのだ。
「だいぶ古くなったが、これでいいのか?」
「うん。ルーの思い出だもん。きっとお腹の赤ちゃんたちもこのブランケット好きになるよ」
「アズール……」
ああ、なんて私は幸せなのだろうな。
本当にアズールに愛されている。
アズールが好きだと言ってくれたそのブランケットでアズールを包み、久しぶりに部屋を出る。
すると、もう準備を整え終わったらしいティオとクレイがそっと近づいてきた。
久しぶりにアズールの顔を見られてほっとしているのだろう。
クレイとティオの目にはうっすらと涙が浮かんでいるように見える。
それはそうだろうな。
あの菓子を吐き出してから、クレイとティオは初めてアズールに会うのだから。
「アズール、元気そうだな」
「あっ、お兄さま。それにティオも! うん、僕はもう元気だよ」
アズールの笑顔にティオの目から涙がこぼれ落ちる。
「ティオ……ごめんね。お菓子食べられなくて……」
「――っ、アズール、さま……気になさらないでください……私はアズールさまにお子さまができてとても嬉しいです」
「ありがとう、ティオ」
アズールが手を伸ばすと、ティオは笑顔でそっとその手を握った。
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