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第三章
助けとなるために
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「あ、あの……今、アズールさまに、お子さまが……と聞こえたのですが……」
「ははっ。お前たちが驚くのも無理はないな。そうだ、聞き間違いではないぞ。アズールに子ができたのだ。私たちの子だぞ」
「――っ!!!! それはっ!!!」「「 おめでとうございますっ!!!」」
あまりにも突然で、あまりにも嬉しい報告に私とマクシミリアンは声を合わせてお祝いの言葉を叫んだ。
「ああ、ありがとう。私もアズールも喜んでいるよ」
嬉しそうに目を細める王子の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
お二人の愛の結晶がアズールさまのお腹に宿ったのだからそれも当然だろう。
「それで、アズールさまは今どちらに?」
「今は身体を休めているのだ。医師の話では多胎だろうから安定するまではくれぐれも安静にということだった。好きな菓子も食べられないようで……さっき、ようやく水を口にして今は眠っているよ」
「そうですか……」
お菓子をいつも美味しそうに召し上がっておられたのに、それも食べられないとは……。
今まで体調不良もなかったアズールさまだから、余計に今はお辛いだろうな。
それにしてもあの小さなお身体にお子さまが数人……。
安静にしなければいけないのも無理はないな。
「あっ、でしたら団長は……」
「ああ、そのことがあってお前たちに来てもらったんだ」
マクシミリアンの言葉に王子が本題に入ったというように話し始めた。
「さっきも言ったように今は絶対安静で、アズールから目を離せる状況にないのでな、アズールが落ち着くまで騎士団の仕事は休ませてもらおうと思っている。それがいつまでになるかは今の段階では見当もつかない。もしかしたら、子が生まれるまでアズールのそばにいることになるかもしれないし、子が生まれたら生まれたでアズールと子どもたちの世話もすることになるから、長ければこれから2年くらいは騎士団から離れることになるかもしれない」
「2年、ですか……」
「そうだ。だから、その間アズールに護衛は必要なくなるから、ヴェルナーとティオには騎士団に戻ってもらおうと思っている。そして、マクシミリアンとヴェルナーで団長と副団長として騎士団を守っていってほしいのだ」
確かにそうだ。
私とティオはあくまでもアズールさまのおそばに王子がいない時間の護衛、もしくは王子がおそばにいらっしゃる際のお出かけに同行して不測の事態に備えることが仕事なのだから、外出もできずずっと王子がおそばにいらっしゃる今の状況では護衛として私たちがついている意味はない。
それなら、騎士団で王子の抜けた穴を少しでも補い、マクシミリアンの助けとなった方がいいに決まっている。
「ルーディーさまのお力には全く及びませんが、そういう事情でしたら精一杯務めさせていただきます」
「そうか、ヴェルナー。受けてくれるか。お前が引き受けてくれるなら安心だ。マクシミリアンも他の者に副団長を任せるよりヴェルナーの方がいいだろう?」
「はい。それはもちろん」
「ちょ――っ、マクシミリアンっ!」
「ははっ。素直で良い。まぁ、騎士たちにあまり惚気ないようにだけ注意してくれ。パートナーがいない者にはお前たちのいちゃつきが目に毒になるかもしれんからな」
「そんな、いちゃつくだなんて……っ、なぁ、マクシミリアン!」
王子にそんなことを言われて恥ずかしくて、なんとかマクシミリアンに同意を求めると、
「可愛いヴェルナーが横にいて我慢できるかは分かりませんが、なんとか頑張ってみます」
とさらに恥ずかしい言葉が返ってきた。
けれど王子は
「ああ、頑張ってくれ」
と笑顔で返してくださる。
どうやら、こんなに軽口を言い合うほど王子とマクシミリアンは仲がいいようだ。
「あの、アズールさまのお見舞いに時々寄ってもよろしいですか?」
「ああ、アズールの調子がいい時なら構わぬ。アズールもヴェルナーやティオと話ができたら、気も楽になるだろうからな。ただ、悪いが今の状態ではいつになるかはわからん」
「それはどうぞお気になさらず。アズールさまの体調がよろしい時で構いません」
「そう言ってくれるとありがたい」
「アズールさまが何か御所望されましたらすぐに早馬ででもお知らせください。すぐにお持ちします」
「ははっ。それはいいな。その時は頼むよ」
「はい。お任せください」
王子とアズールさまのお子が順調に育つために私も力になれればいい。
本当に無事に出産されるのを祈るばかりだ。
「マクシミリアン、アズールさまが孕られたとは……流石に驚いたな」
公爵邸からの帰り道、そう声をかけると
「ええ。あのアズールさまが母親になられるのだと思ったら何とも不思議な気分ですね」
と少し潤んだ声が返ってきた。
一歳を迎えたばかりのアズールさまの専属護衛になったマクシミリアンはそれから10年ほどそばで成長を見守ってきたのだ。
最初はマクシミリアンの名前も呼べずに『まっくちゅ』と呼んでいたアズールさまが、子どもを産み、お育てになるとはなんとも感慨深いものがあるのだろうな。
「マクシミリアンや、ご家族、それにルーディーさまの愛情たっぷりとお育ちになったアズールさまが母になられるのだから、お子さま方もきっと健やかにお育ちになるはずだ」
「ヴェルナー、ありがとうございます」
「今日は私にも愛情をたっぷり与えてくれ」
「――っ!! はいっ!! すぐに帰りましょう!!」
マクシミリアンを元気にしてやろうと思って言ったのだが、あっという間に抱きかかえられて気づけば自室の寝室に連れ込まれていた。
元々今夜はそのつもりだったが、嬉しい知らせにいつも以上に興奮しそうだ。
今日はたっぷりと蜜を注いでもらうとしようか。
「ははっ。お前たちが驚くのも無理はないな。そうだ、聞き間違いではないぞ。アズールに子ができたのだ。私たちの子だぞ」
「――っ!!!! それはっ!!!」「「 おめでとうございますっ!!!」」
あまりにも突然で、あまりにも嬉しい報告に私とマクシミリアンは声を合わせてお祝いの言葉を叫んだ。
「ああ、ありがとう。私もアズールも喜んでいるよ」
嬉しそうに目を細める王子の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。
お二人の愛の結晶がアズールさまのお腹に宿ったのだからそれも当然だろう。
「それで、アズールさまは今どちらに?」
「今は身体を休めているのだ。医師の話では多胎だろうから安定するまではくれぐれも安静にということだった。好きな菓子も食べられないようで……さっき、ようやく水を口にして今は眠っているよ」
「そうですか……」
お菓子をいつも美味しそうに召し上がっておられたのに、それも食べられないとは……。
今まで体調不良もなかったアズールさまだから、余計に今はお辛いだろうな。
それにしてもあの小さなお身体にお子さまが数人……。
安静にしなければいけないのも無理はないな。
「あっ、でしたら団長は……」
「ああ、そのことがあってお前たちに来てもらったんだ」
マクシミリアンの言葉に王子が本題に入ったというように話し始めた。
「さっきも言ったように今は絶対安静で、アズールから目を離せる状況にないのでな、アズールが落ち着くまで騎士団の仕事は休ませてもらおうと思っている。それがいつまでになるかは今の段階では見当もつかない。もしかしたら、子が生まれるまでアズールのそばにいることになるかもしれないし、子が生まれたら生まれたでアズールと子どもたちの世話もすることになるから、長ければこれから2年くらいは騎士団から離れることになるかもしれない」
「2年、ですか……」
「そうだ。だから、その間アズールに護衛は必要なくなるから、ヴェルナーとティオには騎士団に戻ってもらおうと思っている。そして、マクシミリアンとヴェルナーで団長と副団長として騎士団を守っていってほしいのだ」
確かにそうだ。
私とティオはあくまでもアズールさまのおそばに王子がいない時間の護衛、もしくは王子がおそばにいらっしゃる際のお出かけに同行して不測の事態に備えることが仕事なのだから、外出もできずずっと王子がおそばにいらっしゃる今の状況では護衛として私たちがついている意味はない。
それなら、騎士団で王子の抜けた穴を少しでも補い、マクシミリアンの助けとなった方がいいに決まっている。
「ルーディーさまのお力には全く及びませんが、そういう事情でしたら精一杯務めさせていただきます」
「そうか、ヴェルナー。受けてくれるか。お前が引き受けてくれるなら安心だ。マクシミリアンも他の者に副団長を任せるよりヴェルナーの方がいいだろう?」
「はい。それはもちろん」
「ちょ――っ、マクシミリアンっ!」
「ははっ。素直で良い。まぁ、騎士たちにあまり惚気ないようにだけ注意してくれ。パートナーがいない者にはお前たちのいちゃつきが目に毒になるかもしれんからな」
「そんな、いちゃつくだなんて……っ、なぁ、マクシミリアン!」
王子にそんなことを言われて恥ずかしくて、なんとかマクシミリアンに同意を求めると、
「可愛いヴェルナーが横にいて我慢できるかは分かりませんが、なんとか頑張ってみます」
とさらに恥ずかしい言葉が返ってきた。
けれど王子は
「ああ、頑張ってくれ」
と笑顔で返してくださる。
どうやら、こんなに軽口を言い合うほど王子とマクシミリアンは仲がいいようだ。
「あの、アズールさまのお見舞いに時々寄ってもよろしいですか?」
「ああ、アズールの調子がいい時なら構わぬ。アズールもヴェルナーやティオと話ができたら、気も楽になるだろうからな。ただ、悪いが今の状態ではいつになるかはわからん」
「それはどうぞお気になさらず。アズールさまの体調がよろしい時で構いません」
「そう言ってくれるとありがたい」
「アズールさまが何か御所望されましたらすぐに早馬ででもお知らせください。すぐにお持ちします」
「ははっ。それはいいな。その時は頼むよ」
「はい。お任せください」
王子とアズールさまのお子が順調に育つために私も力になれればいい。
本当に無事に出産されるのを祈るばかりだ。
「マクシミリアン、アズールさまが孕られたとは……流石に驚いたな」
公爵邸からの帰り道、そう声をかけると
「ええ。あのアズールさまが母親になられるのだと思ったら何とも不思議な気分ですね」
と少し潤んだ声が返ってきた。
一歳を迎えたばかりのアズールさまの専属護衛になったマクシミリアンはそれから10年ほどそばで成長を見守ってきたのだ。
最初はマクシミリアンの名前も呼べずに『まっくちゅ』と呼んでいたアズールさまが、子どもを産み、お育てになるとはなんとも感慨深いものがあるのだろうな。
「マクシミリアンや、ご家族、それにルーディーさまの愛情たっぷりとお育ちになったアズールさまが母になられるのだから、お子さま方もきっと健やかにお育ちになるはずだ」
「ヴェルナー、ありがとうございます」
「今日は私にも愛情をたっぷり与えてくれ」
「――っ!! はいっ!! すぐに帰りましょう!!」
マクシミリアンを元気にしてやろうと思って言ったのだが、あっという間に抱きかかえられて気づけば自室の寝室に連れ込まれていた。
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