真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

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第三章

突然の召集命令

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<sideヴェルナー>

今日アズールさまは王子と一緒に公爵家に里帰りをなさっているから、今頃家族揃って楽しい時間を過ごされていることだろう。
その間、私はマクシミリアンとの楽しい時間。

マクシミリアンに寄りかかって本を読んでいたが、少し小腹が空いてきた。
この穏やかな時間を失うのは勿体無いが、背に腹は変えられない。

「マクシミリアン、あのパンケーキを作ってくれないか? 一緒に食べたい」

「ええ、いいですよ。喜んで」

私が頼むと何をおいてもすぐに行動してくれるのは嬉しい。
それにしても、私が何を頼んでもすぐに作れるのはいつもすごいと思う。
どうやっているのかも見当がつかないが、それは知らない方がいいのかもしれない。

「ヴェルナー、パンケーキにかけるのはチョコレートソースとキャラメルソース、それから蜂蜜のどれがいいですか?」

マクシミリアンはパンケーキを作ってくれる時、必ずこの三種類のどれにするかを尋ねるようになったが、私は決まって蜂蜜を選ぶ。
それをマクシミリアンもわかっているはずなのに毎回必ずこの問いかけを繰り返す。

きっと私が蜂蜜を選ぶのが聞きたいのだろう。
だから、たまには蜂蜜以外のものも言ってやろうかと頭をよぎるが、蜂蜜と言った時のあの笑顔が見たくて、ついつい蜂蜜と言ってしまうんだ。

「そうだな、蜂蜜がいい。たっぷりかけてくれ」

「わかりました」

嬉しそうな笑顔でパンケーキを焼いていく。
初めて食べさせてもらった日から、もう何度食べさせてもらっただろう。
回を増すごとにさらに美味しくなっていく。

初めはたっぷりかかった蜂蜜も申し訳ない気さえしていたが、今ではたっぷりとかかったものを頬張るのが美味しい。
そして、私の唇ごとマクシミリアンに舐められるまでがパンケーキを食べる時の決まりになっている。

「さぁ、できましたよ」

美味しそうな香ばしい香りと蜂蜜の甘い香りがなんとも食欲をそそる。
口元に差し出された一片をパクリと口に入れると、すぐに唇をペロリと舐められる。

「美味しいですね」

「ああ、今日のパンケーキも最高だな。マクシミリアンにも食べさせてやる」

少し大きめにカットしたパンケーキを差し出すと、嬉そうに口を開ける。
わざと蜂蜜が唇につくように食べさせて、私もすかさず舐め取ってやるとマクシミリアンの目に欲情の炎が灯った気がした。

「ヴェルナー、いいですか?」

「そんなこと、聞くなっ」

「ふふっ。はい。じゃあ、いきましょうか」

いつの間にかパンケーキは空になっている。
残したくはなかったからちょうどいい。

マクシミリアンの首に手を回して抱きかかえてもらった瞬間、部屋の扉を叩く音が聞こえた。

「なんだ? 今頃」

休日だとわかっているのに扉が叩かれることはよっぽどのことでない限り、あり得ない。
ということは不測の事態でも起こったか。

「無視するわけにはいきませんからね」

マクシミリアンは大きなため息をつきながら、私を椅子に下ろし扉を開けに行った。
部屋の外には入り口を守っている警備の騎士の姿が見える。

「どうした?」

「お休みのところ、申し訳ございません。ただいま、公爵家より遣いが参りまして、団長が副団長とヴェルナーさまをお呼びとのことで、すぐに公爵邸にお越しくださいとのご指示です」

「何? 団長が?」

マクシミリアンが私にチラリと視線を向けるが、命令に背くことなどできるはずもない。
しかも相手は団長であり、次期国王のルーディーさまなのだから。

頷いて見せると、マクシミリアンはすぐに警備の騎士に

「わかった、すぐにいく」

と伝え扉を閉めた。

「マクシミリアン、すぐに準備を」

「はい。でもその前に……」

「んんっ!!」

「キスだけで今は我慢しておきます」

「ふふっ。あとは夜だな」

「――っ!! はいっ!!」

がっかりした顔も可愛かったが、すぐに笑顔に戻るのもマクシミリアンの良いところだ。

それにしても王子がわざわざ私たち二人を公爵邸にお呼びになるとは一体なんだろう?
何か悪いことでもなければ良いのだが……。

少し不安を覚えながらも、私たちは急いで公爵邸に向かった。

公爵邸に到着すると、ベン殿に出迎えられそのままアズールさまと王子の過ごす部屋に案内された。

今日はご家族で楽しい時間をお過ごしになっているのだとばかり思っていただけに、こんな時間にそれぞれの部屋でお過ごしなのが不思議に思えた。

なんとも言えない緊張感を覚えながら、扉を叩くとしばらくして王子が一人で出てこられ、中に案内してくださったがそこにアズールさまの姿が見えない。

こちらから尋ねるわけにもいかず、とりあえず案内されるがままにソファーに腰を下ろすと、

「休日にわざわざ出向いてもらって悪かったな。だがこういうことは少しでも早い方がいいと思ってな」

と笑顔を向けられた。

この表情から察するに悪いことではないのか?

「何かございましたか?」

「ああ、それがな……」

一瞬の静寂に緊張が高まる。

「実は、アズールに子ができたのだ」

「えっ?」
「はっ?」

あまりにも想像していなかった言葉に思わず大きな声をあげてしまっていた。
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