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第三章

アズールの好きな匂い

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「アズール、無理をするといけないからもう少し眠るか?」

「うーん、ルーがお水くれたから体調も良くなってきたみたい。もう少しルーとおしゃべりしててもいい?」

「ああ、もちろんだとも」

アズールのお腹に当たらないように気をつけながら優しく抱きしめると、アズールが嬉しそうに笑う声が聞こえる。

「どうした?」

「ふふっ。こんな時間にルーとベッドにいるのは不思議だなって」

「ああ、そうだな。でもこれからはその時間も増えるぞ」

「さっき、これからは僕とずっと一緒にいてくれるって言ってたけど、騎士団は大丈夫なの?」

「私がヴェルナーと変わってアズールの専属護衛になるだけだから、騎士団にはなんの迷惑にもならないよ。それにマクシミリアンもヴェルナーと過ごせる時間が増えるのは喜ぶだろう」

「あっ、そっか。マックスとヴェルも仲良しだもんね」

「ああ、そうだな」

そんな話をしていると、部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
この叩き方は義母上だろうか。

「アズール、少しだけ待っていてもらえるか?」

「うん。でも、寂しいからすぐに帰ってきてね」

「ああ、わかった。その間だけこれで我慢しておいてくれ」

私は着ていた上着を脱ぎ、寝ているアズールにかけると

「わぁ、ルーの匂いがする。なんだかこういうの久しぶりだね。前は、ほらよくブランケットをくれたでしょう? あれ、すっごくルーの匂いがしてたから包まって寝るのが好きだったんだ」

と可愛いことを言ってくれる。

あれにはたっぷりと私の蜜を染み込ませていたからな。
アズールはずっと私の匂いを纏ったまま大きくなったんだ。
だから、それが自然だと思っているから、アズールは私の匂いを頭から足先までたっぷりと纏っているとは気付いてないだろうが、私の匂いは今ではもうアズールにとって欠かせない大切なものとなっていることだろう。

そういえば、アズールとの初夜を無事に終えてからは、ブランケットにわざわざ蜜を染み込ませる必要は無くなったが、アズールの身重の身体への影響を考えれば、これからしばらくはアズールと愛し合うことも抑えなくてはいけなくなるだろう。
そうしたらまたブランケットの復活か……。

アズールの身体を知らないあの頃ならまだ我慢もできたが、何もかも知ってしまった今はかなり辛いものがある。
とはいえ、身重のアズールには決して無理をさせるわけにはいかないしな。

ああっと、義母上が待っているのだったな。
急いで行かなければ。

アズールの頬にキスを贈り、私は急いで寝室を出て、部屋の扉を開けた。

「ルーディー!」

「ああ、やはり義母上ですか。義父上も待たせてすみません」

「いや、それは別に構わぬ。アズールの様子はどうだ?」

「今は落ち着いていますが、医師からは安静にするように言われているので、まだベッドに横にならせています。何か急用でも?」

「いや、急用という訳ではないのだが……その、アズールが孕ったことを陛下にお伝えしても良いかとルーディーに確認しておこうと思ってな。どうだ?」

正直に言って、わざわざ確認しにきてくれるとは思っていなかったが確認してもらえるのはありがたい。
すぐに早馬でも出されていたら、今頃父上は飛んできそうだからな。

「父上にご報告するのは構いませんが、すぐにアズールに会いにこようとするのはやめるように言ってもらえますか? さっきも言いましたが医師からは安静だと言われているので、アズールに余計な気苦労を与えたくないんです。しばらくは城にも帰らずにここで休ませてもらおうと思っていますから」

「そうか、わかった。そのようにお伝えしよう」

そう言われてホッとする。
今は何よりもアズールのことが優先だからな。

「アズールが何か食べたいものがあれば、教えてちょうだい」

「わかりました。アズールに聞いてみますね。ああ、そういえばマクシミリアンとヴェルナーを呼んでもらえますか? これからのことについて話をしておきたいので」

「ああ、確かにそれは大事なことね。わかったわ。すぐに連絡しておくから」

「よろしくお願いします。ではアズールが待っていますので、失礼します」

少し長くなってしまったかと急いで寝室に戻れば、アズールは私の上着を被って眠ってしまっていた。
やはり私の匂いは安心するのだろうな。
嬉しくもあるが、自分の上着に嫉妬してしまう。

私はアズールを抱きしめて、そっと上着を外した。
すると、アズールは目を瞑ったまま私の胸元に擦り寄ってきた。

ああ、本当に可愛い。
アズールがこんなにも私の匂いが好きならば、腹の子にも届くほどこれからもたっぷりと纏わせてやるとしよう。
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