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第三章

二人の部屋で

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<sideルーディー>

もうそろそろ一時間が経とうとしている。
これなら迎えに行ってもいいだろう。
ああ、早くアズールに会いたい。

「クレイ、マクシミリアン、愛しい夫を迎えに行くとしよう。それでは父上」

もっとアズールたちと喋りたかったと言い出しそうな父上をその場に残し、クレイとマクシミリアンと共にアズールたちのいる部屋に向かった。

「どんな話をしていたのか、ドキドキしますね」

「ふふっ。ティオはきっとアズールから質問攻めにあったことだろう。だが、それも家族と認めている証拠だ。ティオがアズールに質問されるままに話していたとしても許してやれ」

「はい。それは承知しております」

まぁ、クレイとしては複雑だろう。
あれだけ可愛がっていたアズールに自分の閨事情が筒抜けになっているのかもしれないのだからな。

部屋の扉を叩くとすぐに扉が開いた。
なぜか爺の腕の中にアズールがすっぽりとおさまったまま出迎えられ、つい威嚇を放ってしまうが

「ルーっ!!」

私の姿を見て、嬉しそうに飛び込んでくる可愛らしいアズールの姿に威嚇は一瞬にして霧散した。

「お兄さまとマックスも一緒だ! お迎えに来たの?」

「ああ、そうだ。そろそろ時間だと思ってな。それにしてもアズール、なぜ爺に抱きかかえられていたのだ?」

可愛いアズールと爺に何かがあるとは全く思ってはいない。
しかもクレイもヴェルナーも一緒の空間にいるのだから心配も何もしていないが、なぜ抱きかかえられていたのか、その理由を知りたいと思うのは伴侶として当然のことだろう。

「あのね、爺に聞きたいことがあって腕の中にぴょんしたの」

「アズールが爺に聞きたいこと? それはなんだ?」

「あの、ルーディーさまっ! それは――」

爺に尋ねた瞬間、ヴェルナーが慌てて止めようとしたのを遮るようにアズールが満面の笑みを向けながら、口を開いた。

「爺はおっきぃのを口に咥えられるより、中をゴリゴリ擦りながら蜜を吐き出す方が好きなのかなって聞きたかったの」

「ぶほっ!!」
「げほっ!!」
「ぐほっ!!」

突然のアズールの明け透けな言葉に私も、そしてクレイとマクシミリアンも驚きのあまり吹き出してしまった。

「? ルー? どうしたの? 大丈夫?」

ああーっと頭を押さえるヴェルナーと顔を赤くしているティオ、そして居た堪れない表情の爺が見えるが、私の腕の中にいるアズールには私たちがなぜこうなっているのかわからないようだ。

口よりも中が良いかなんて、まさか爺にそんなことを聞くとはな……。
世界広しといえどもアズールだけだろう。

実の孫であるマクシミリアンも聞かないだろうし、いや、聞きたくもないか。

「い、いや。なんでもない。その答えは後でゆっくり聞くとしよう。クレイとティオはそろそろ公爵家に帰らなければいけないそうだ」

「ああ、そうなんだ」

私のいうことを全く疑うこともない。
本当にアズールは素直だから助かるな。

「ヴェルナー、もう今日の護衛はいいぞ。マクシミリアンも来ているから一緒に帰るといい」

「はい。ありがとうございます。それでは失礼いたします」

バタバタとみんな急いで部屋から出て行って、さっきまで大所帯だった部屋はあっという間にアズールと二人だけの空間に戻った。

「それでどうだった? 有意義に過ごせたか?」

「うん。楽しかった。ティオがお兄さまの相手だなんて本当に嬉しい」

「ふふっ。そうか。それで、アズールはどうしてあの質問を爺にしたんだ?」

とりあえず話を聞いてどうしてその流れになったのか把握しておかねばな。

「あのね、アズールとティオがおっきぃのを口に咥えたって話になったの。そうしたら、ヴェルはそんなことしたことないっていうから、もしかしたら口に咥えたりするのは相手が狼さんだけで、熊さんはしないのが普通なのかなって気になっちゃったの。だから爺に……」

「なるほど。そういうことか。それで爺はなんと言ってくれた?」

「うーんと、結局は人によるけど、爺はどっちも好きって言ってた」

「そ、そうか……」

あまり率先して知りたくはない情報だったが、まぁいい。

「ヴェルナーのことは何か言っていたか?」

「ヴェルが年上だし、上官だから咥えさせることに抵抗があるんじゃないかって言っていたよ」

「なるほど、さすが爺だな。孫のことがよくわかっている」

「そうなの?」

「ああ。だがこれから変わるかもしれないぞ」

そういうと、アズールは

「また話を聞くのが楽しみだね」

と笑っていた。

さて、次に話を聞いたらどんな話が聞けるのだろうな。
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