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第三章
違和感しかない
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「クレイさま……」
「ティオ……私の伴侶になってくれるか?」
「あの……私の気持ちは固まっておりますが、今はまだお答えできません」
「なぜだ?」
「私は陛下の護衛騎士でございます。まずは陛下に許可を頂かなければ……」
「ああ……確かにそうだな。陛下の専属護衛騎士であれば、自分だけの判断で返事などできないのはわかる。だが、一言でいい。私への気持ちを教えてはくれぬか?」
陛下の専属護衛騎士であるティオに今すぐに私の伴侶となる返事が欲しいというわがままは言えない。
だが、ほんの少しでいい。
私を好きだと言ってくれたら、今はそれだけで我慢ができる。
プライドも何もかも捨て、縋るような目でティオを見つめると、ティオは私の目を見ながらゆっくりと口を開いた。
「私も……クレイさまと、離れたくありません……」
「ああ、ティオ! なんて嬉しいんだ!!」
気持ちが通じ合うことがこんなにも嬉しいことだと思わなかったな。
「ティオ、今すぐにでもティオを私のものにしたいが、ティオが陛下に許可をいただくというのなら、それまで我慢する。だから、今すぐにでも陛下に御目通りの許可をいただこう」
「えっ、今からですか?」
「ああ、少しの時間も惜しいからな」
「わっ、ちょ――っ!」
焦るティオを抱きかかえて、急いで部屋から出て階段を駆け降りると
「わぁ! お兄さまだぁ!!」
と久しぶりに聞く、可愛い弟の声が聞こえた。
<sideルーディー>
アリーシャ殿がヴェルナーに公爵家の現状を話にわざわざ騎士団の訓練場にまで足を運んでくれて、それをマクシミリアンから聞いた私たちは、父上に許可を取り、早速公爵家に向かった。
「ルーもお泊まりしてくれるんだよね?」
「ああ、もちろんだとも。私たちはもう離れて夜を過ごすことなどできないのだからな。アズールも私が抱きしめていないと眠れないだろう?」
「うん。ルーにお腹の奥をゴリゴリしてもらって抱きしめてもらわないと、ウズウズして眠れないもん」
「ふふっ。そうだな。アズールは私と愛し合うのが好きだからな」
「ルーも?」
「えっ?」
「ルーも、アズールと愛し合うのが好き?」
「ああ、大好きだよ。わかっているだろう?」
私の言葉に安心したようにアズールが抱きついてくる。
ああ、本当に私は幸せだ。
そういえば、今夜は初夜でたっぷりと愛し合ったあのベッドでアズールと眠るわけか。
これはまた、あの日の興奮が甦るかもしれないな。
無邪気に実家への里帰りを喜んでいるアズールとは対照的に、私はアズールとの甘い夜を考えている。
だが、それも仕方がない。
なんせ18年も我慢していたのだからな。
私はそれを免罪符に今夜もアズールをたっぷりと愛するのだ。
公爵家の前に馬車が停まり、アズールを抱きかかえて降りると馬車の音に気づいたのか、玄関の扉が開きベンが出てきた。
「ああー! ベン!!」
「アズールさま! ルーディーさまもおかえりなさいませ」
「ふふっ。久しぶりだね」
「はい。アズールさまとルーディーさまのお元気そうなお顔を拝見できて嬉しゅうございます」
「ベン、今日はここに泊まるから頼むぞ」
「――っ、承知しました」
アズールが来たことに喜んでいたベンだったが、我々が泊まることには一瞬表情が曇ったように見えた。
アリーシャ殿の話ではアズールが来てくれるのを心待ちにしているようだったはずだが……。
何か理由でもあるのだろうか?
「ねぇ、ルー! 早く中に入ろう!」
「ああ、そうだな」
アズールは久しぶりの実家に待ちきれないようだ。
急かすように私と中に入り、今頃仕事をしているはずの義父上の元に行こうと言い出した。
執務室か。
ここに義父上とクレイがいるわけだな。
扉を叩くと、勢いよく扉が開いたと思ったら、
「クレイか?!」
と声がかけられた。
「お父さま!」
アズールが声をかけると、義父上は
「あ、アズール! き、来てくれたのか?」
と驚きと嬉しさが入り混じったようななんとも言えない表情で迎えてくれた。
アズールは私の腕からぴょんと飛び跳ねると、義父上に向かって飛んでいった。
「みんなに会いたくて遊びにきたの! お父さま、嬉しい?」
「あ、ああ。嬉しいとも! アズール、よく帰ってきてくれた」
アズールが里帰りしてきたことを喜んでいるのは確かだが、どこか違和感がある。
さっきのベンの態度も然り、義父上の態度も然り。
一体なんだというんだ?
「ねぇ、お母さまとお兄さまは?」
「アリーシャは今の時間なら庭にいるはずだ。クレイは……今は、自室にいる」
「まだお仕事の時間なのに?」
「あ、ああ。そうなんだが、その……大切な友人が来ていて、部屋で話をしているのだよ」
「お兄さまのお友達? 珍しいね。せっかくだから僕も挨拶したい!」
「えっ……それは……」
「ルー、お部屋に行ってみよう!」
そう言いながらアズールは私の腕の中に飛び込んで戻ってきた。
ああ、やはりアズールがいると落ち着く。
それにしてもクレイが仕事の時間にも関わらず、自室で友人といるのはどうも気になる。
今まで感じていた違和感はこれか?
気になりつつも、アズールの誘いに乗って執務室を出る。
そして、クレイの部屋に向かおうと階段を上がろうとすると、階段から勢いよく駆け降りてくる音が聞こえた。
見れば、クレイが誰かを大事そうに抱きかかえているのが見える。
んっ? あれは……父上の専属護衛騎士のティオ?
一体どういうことだ?
「ティオ……私の伴侶になってくれるか?」
「あの……私の気持ちは固まっておりますが、今はまだお答えできません」
「なぜだ?」
「私は陛下の護衛騎士でございます。まずは陛下に許可を頂かなければ……」
「ああ……確かにそうだな。陛下の専属護衛騎士であれば、自分だけの判断で返事などできないのはわかる。だが、一言でいい。私への気持ちを教えてはくれぬか?」
陛下の専属護衛騎士であるティオに今すぐに私の伴侶となる返事が欲しいというわがままは言えない。
だが、ほんの少しでいい。
私を好きだと言ってくれたら、今はそれだけで我慢ができる。
プライドも何もかも捨て、縋るような目でティオを見つめると、ティオは私の目を見ながらゆっくりと口を開いた。
「私も……クレイさまと、離れたくありません……」
「ああ、ティオ! なんて嬉しいんだ!!」
気持ちが通じ合うことがこんなにも嬉しいことだと思わなかったな。
「ティオ、今すぐにでもティオを私のものにしたいが、ティオが陛下に許可をいただくというのなら、それまで我慢する。だから、今すぐにでも陛下に御目通りの許可をいただこう」
「えっ、今からですか?」
「ああ、少しの時間も惜しいからな」
「わっ、ちょ――っ!」
焦るティオを抱きかかえて、急いで部屋から出て階段を駆け降りると
「わぁ! お兄さまだぁ!!」
と久しぶりに聞く、可愛い弟の声が聞こえた。
<sideルーディー>
アリーシャ殿がヴェルナーに公爵家の現状を話にわざわざ騎士団の訓練場にまで足を運んでくれて、それをマクシミリアンから聞いた私たちは、父上に許可を取り、早速公爵家に向かった。
「ルーもお泊まりしてくれるんだよね?」
「ああ、もちろんだとも。私たちはもう離れて夜を過ごすことなどできないのだからな。アズールも私が抱きしめていないと眠れないだろう?」
「うん。ルーにお腹の奥をゴリゴリしてもらって抱きしめてもらわないと、ウズウズして眠れないもん」
「ふふっ。そうだな。アズールは私と愛し合うのが好きだからな」
「ルーも?」
「えっ?」
「ルーも、アズールと愛し合うのが好き?」
「ああ、大好きだよ。わかっているだろう?」
私の言葉に安心したようにアズールが抱きついてくる。
ああ、本当に私は幸せだ。
そういえば、今夜は初夜でたっぷりと愛し合ったあのベッドでアズールと眠るわけか。
これはまた、あの日の興奮が甦るかもしれないな。
無邪気に実家への里帰りを喜んでいるアズールとは対照的に、私はアズールとの甘い夜を考えている。
だが、それも仕方がない。
なんせ18年も我慢していたのだからな。
私はそれを免罪符に今夜もアズールをたっぷりと愛するのだ。
公爵家の前に馬車が停まり、アズールを抱きかかえて降りると馬車の音に気づいたのか、玄関の扉が開きベンが出てきた。
「ああー! ベン!!」
「アズールさま! ルーディーさまもおかえりなさいませ」
「ふふっ。久しぶりだね」
「はい。アズールさまとルーディーさまのお元気そうなお顔を拝見できて嬉しゅうございます」
「ベン、今日はここに泊まるから頼むぞ」
「――っ、承知しました」
アズールが来たことに喜んでいたベンだったが、我々が泊まることには一瞬表情が曇ったように見えた。
アリーシャ殿の話ではアズールが来てくれるのを心待ちにしているようだったはずだが……。
何か理由でもあるのだろうか?
「ねぇ、ルー! 早く中に入ろう!」
「ああ、そうだな」
アズールは久しぶりの実家に待ちきれないようだ。
急かすように私と中に入り、今頃仕事をしているはずの義父上の元に行こうと言い出した。
執務室か。
ここに義父上とクレイがいるわけだな。
扉を叩くと、勢いよく扉が開いたと思ったら、
「クレイか?!」
と声がかけられた。
「お父さま!」
アズールが声をかけると、義父上は
「あ、アズール! き、来てくれたのか?」
と驚きと嬉しさが入り混じったようななんとも言えない表情で迎えてくれた。
アズールは私の腕からぴょんと飛び跳ねると、義父上に向かって飛んでいった。
「みんなに会いたくて遊びにきたの! お父さま、嬉しい?」
「あ、ああ。嬉しいとも! アズール、よく帰ってきてくれた」
アズールが里帰りしてきたことを喜んでいるのは確かだが、どこか違和感がある。
さっきのベンの態度も然り、義父上の態度も然り。
一体なんだというんだ?
「ねぇ、お母さまとお兄さまは?」
「アリーシャは今の時間なら庭にいるはずだ。クレイは……今は、自室にいる」
「まだお仕事の時間なのに?」
「あ、ああ。そうなんだが、その……大切な友人が来ていて、部屋で話をしているのだよ」
「お兄さまのお友達? 珍しいね。せっかくだから僕も挨拶したい!」
「えっ……それは……」
「ルー、お部屋に行ってみよう!」
そう言いながらアズールは私の腕の中に飛び込んで戻ってきた。
ああ、やはりアズールがいると落ち着く。
それにしてもクレイが仕事の時間にも関わらず、自室で友人といるのはどうも気になる。
今まで感じていた違和感はこれか?
気になりつつも、アズールの誘いに乗って執務室を出る。
そして、クレイの部屋に向かおうと階段を上がろうとすると、階段から勢いよく駆け降りてくる音が聞こえた。
見れば、クレイが誰かを大事そうに抱きかかえているのが見える。
んっ? あれは……父上の専属護衛騎士のティオ?
一体どういうことだ?
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