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第三章
本当の息子に
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<sideヴィルヘルム(ヴォルフ公爵)>
「今日はアズールの大好物をたっぷりと用意したぞ」
当分は我が家で食べることもなくなるだろうからな。
結婚式がどうなるかはわからんが、時々はアズールを里帰りをさせてくれれば嬉しいのだが……王子の様子を見ていると、それはあまり期待はできんな。
まぁ、王子も一緒にといえば折れてくれるかもしれないが……。
「わぁ! 美味しそうっ!! ねぇ、ルー」
「ああ、本当にアズールの好きなものばかりだな。アズール、良かったな」
「うん、嬉しいっ!!」
王子の膝の上でぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねる無邪気なアズールを見ていると、初夜を済ませたとは到底思えないが
――アズール、いーっぱい蜜を注いでもらったんだよ。ルーの、すっごくおっきくて気持ちよくってね、アズールもいっぱい蜜を出したんだよ。
キラキラとした笑顔で嬉しそうにそう言っていたことが頭から離れない。
アズールがあんなことも、こんなことも知ってしまったのだな……。
正直にいうと、私もあそこまで詳しい初夜の感想は知りたくはなかったのだが、クレイが聞かずに済んだだけまだマシだと思おう。
「アズール、何が食べたい?」
「うーんと、やっぱり人参!!」
「ははっ。そういうと思ったよ」
王子は嬉しそうにアズールに人参を食べさせる。
ああ、我が家の食卓にこの人参が出てくることももう当分ないのだな。
こういう小さな一つ一つの事柄が私の寂しさを募らせる。
だが、
「やっぱりみんなで食べると美味しいね。ねぇ、お父さま」
とアズールに満面の笑みを向けられると、胸が熱くなる。
「ああ、そうだな。アズールが、結婚しても私たちの大事な息子であることに変わりない。それどころか、私たちにとってルーディーという新たな息子が増えたのだ。だから、いつでも好きなときに帰ってきていいのだぞ。そして、みんなで食事をするとしよう」
「わぁっ! ルー、聞いた? ルーが家族になったんだよ。家族が増えるって嬉しいね。ひとりぼっちだった蒼央はもういなくなっちゃったね」
「――っ! あ、ああ。そうだな。私も家族の仲間入りができて嬉しいよ」
そうか。
アズールと共にいた『あお』は、アズールが王子と初夜を過ごしたことでもう一人ではないことを悟ったのだろうな。
アズールが大人になって、一番喜んだのはもしかしたら『あお』だったのかもしれないな。
「アズール、これも食べてみるか?」
王子が骨付きの肉を差し出すが、流石にそれは無理だろう。
私もクレイもそう思っていたのだが、アリーシャだけは
「あら、アズール。食べられるようになったの?」
と嬉しそうに尋ねる。
「うん、少しだけだけど、食べられるようになったんだ」
「そう。ふふっ。やっぱり大人になったのね」
アリーシャの言葉に嬉しそうに頷き、アズールは王子が切り分けた肉を一切れ口にした。
「うん、美味しい!」
「家族揃って同じものが食べられるというのは嬉しいものだな」
王子の言葉にアズールは嬉しそうに笑っていた。
「そろそろ城に帰るとしよう。父上もアズールと一緒に帰ってくるのを待っているだろうからな」
陛下がお城でずっとお待ちになっているのだと思えば、引き留めることもできない。
大事そうにアズールを抱きかかえて玄関へ向かう王子を私たち家族とベンで送り出す。
「ヴェルナー、頼むぞ」
「はい。お任せください」
ヴェルナーはもちろんアズールの専属護衛としてアズールについていく。
私たちはアズールだけでなく、ヴェルナーとも別れることになるのだ。
この屋敷の中が一気に寂しくなるな……。
だが、ここは笑顔で見送りだ。
一生懸命笑顔を作ってアズールを送り出そうとするが、アズールが突然王子の腕からぴょんと私の腕に飛び込んできた。
「お父さま! アズールを育ててくれてありがとう! 大好き、お父さま!」
「――っ!! アズールっ!! 私の方こそ、アズールの父になれて良かったぞ。アズール、離れていてもずっと愛しているよ」
アズールは私の言葉に涙を潤ませながら、次はクレイに飛んでいった。
「お兄さま! アズールを可愛がってくれてありがとう! 大好き、お兄さま!」
「――っ!!! ア、アズールっ!! 私も大好きだよ、アズールっ!!」
クレイは必死に我慢していたのに、最後にこんなふうに言われて涙腺が崩壊したようだ。
アズールはベンにも飛び込んでいく。
「アズール、ベンとお庭をお散歩するの好きだったよ。いつもお世話してくれてありがとう」
「アズールさま……っ。私は……私は……アズールさまのお世話ができて幸せでございました」
パタパタと大きな尻尾を揺らしながら、ベンは涙を流していた。
アズールは最後にアリーシャの腕の中に飛び込んでいった。
「おかあさまっ!!」
「アズール!!」
何も言わずにギュッと抱きしめ合う二人。
これが母子の絆というものか……。
「幸せになるからね」
「ええ。アズール、大好きよ」
二人が抱き合っているのを見ながら、私は王子に手を差し出した。
「ルーディー、アズールを任せたぞ」
「――っ、はい。神に誓って守り抜きます」
この瞬間、王子は本当に私の息子になった。
「今日はアズールの大好物をたっぷりと用意したぞ」
当分は我が家で食べることもなくなるだろうからな。
結婚式がどうなるかはわからんが、時々はアズールを里帰りをさせてくれれば嬉しいのだが……王子の様子を見ていると、それはあまり期待はできんな。
まぁ、王子も一緒にといえば折れてくれるかもしれないが……。
「わぁ! 美味しそうっ!! ねぇ、ルー」
「ああ、本当にアズールの好きなものばかりだな。アズール、良かったな」
「うん、嬉しいっ!!」
王子の膝の上でぴょんぴょんと嬉しそうに跳ねる無邪気なアズールを見ていると、初夜を済ませたとは到底思えないが
――アズール、いーっぱい蜜を注いでもらったんだよ。ルーの、すっごくおっきくて気持ちよくってね、アズールもいっぱい蜜を出したんだよ。
キラキラとした笑顔で嬉しそうにそう言っていたことが頭から離れない。
アズールがあんなことも、こんなことも知ってしまったのだな……。
正直にいうと、私もあそこまで詳しい初夜の感想は知りたくはなかったのだが、クレイが聞かずに済んだだけまだマシだと思おう。
「アズール、何が食べたい?」
「うーんと、やっぱり人参!!」
「ははっ。そういうと思ったよ」
王子は嬉しそうにアズールに人参を食べさせる。
ああ、我が家の食卓にこの人参が出てくることももう当分ないのだな。
こういう小さな一つ一つの事柄が私の寂しさを募らせる。
だが、
「やっぱりみんなで食べると美味しいね。ねぇ、お父さま」
とアズールに満面の笑みを向けられると、胸が熱くなる。
「ああ、そうだな。アズールが、結婚しても私たちの大事な息子であることに変わりない。それどころか、私たちにとってルーディーという新たな息子が増えたのだ。だから、いつでも好きなときに帰ってきていいのだぞ。そして、みんなで食事をするとしよう」
「わぁっ! ルー、聞いた? ルーが家族になったんだよ。家族が増えるって嬉しいね。ひとりぼっちだった蒼央はもういなくなっちゃったね」
「――っ! あ、ああ。そうだな。私も家族の仲間入りができて嬉しいよ」
そうか。
アズールと共にいた『あお』は、アズールが王子と初夜を過ごしたことでもう一人ではないことを悟ったのだろうな。
アズールが大人になって、一番喜んだのはもしかしたら『あお』だったのかもしれないな。
「アズール、これも食べてみるか?」
王子が骨付きの肉を差し出すが、流石にそれは無理だろう。
私もクレイもそう思っていたのだが、アリーシャだけは
「あら、アズール。食べられるようになったの?」
と嬉しそうに尋ねる。
「うん、少しだけだけど、食べられるようになったんだ」
「そう。ふふっ。やっぱり大人になったのね」
アリーシャの言葉に嬉しそうに頷き、アズールは王子が切り分けた肉を一切れ口にした。
「うん、美味しい!」
「家族揃って同じものが食べられるというのは嬉しいものだな」
王子の言葉にアズールは嬉しそうに笑っていた。
「そろそろ城に帰るとしよう。父上もアズールと一緒に帰ってくるのを待っているだろうからな」
陛下がお城でずっとお待ちになっているのだと思えば、引き留めることもできない。
大事そうにアズールを抱きかかえて玄関へ向かう王子を私たち家族とベンで送り出す。
「ヴェルナー、頼むぞ」
「はい。お任せください」
ヴェルナーはもちろんアズールの専属護衛としてアズールについていく。
私たちはアズールだけでなく、ヴェルナーとも別れることになるのだ。
この屋敷の中が一気に寂しくなるな……。
だが、ここは笑顔で見送りだ。
一生懸命笑顔を作ってアズールを送り出そうとするが、アズールが突然王子の腕からぴょんと私の腕に飛び込んできた。
「お父さま! アズールを育ててくれてありがとう! 大好き、お父さま!」
「――っ!! アズールっ!! 私の方こそ、アズールの父になれて良かったぞ。アズール、離れていてもずっと愛しているよ」
アズールは私の言葉に涙を潤ませながら、次はクレイに飛んでいった。
「お兄さま! アズールを可愛がってくれてありがとう! 大好き、お兄さま!」
「――っ!!! ア、アズールっ!! 私も大好きだよ、アズールっ!!」
クレイは必死に我慢していたのに、最後にこんなふうに言われて涙腺が崩壊したようだ。
アズールはベンにも飛び込んでいく。
「アズール、ベンとお庭をお散歩するの好きだったよ。いつもお世話してくれてありがとう」
「アズールさま……っ。私は……私は……アズールさまのお世話ができて幸せでございました」
パタパタと大きな尻尾を揺らしながら、ベンは涙を流していた。
アズールは最後にアリーシャの腕の中に飛び込んでいった。
「おかあさまっ!!」
「アズール!!」
何も言わずにギュッと抱きしめ合う二人。
これが母子の絆というものか……。
「幸せになるからね」
「ええ。アズール、大好きよ」
二人が抱き合っているのを見ながら、私は王子に手を差し出した。
「ルーディー、アズールを任せたぞ」
「――っ、はい。神に誓って守り抜きます」
この瞬間、王子は本当に私の息子になった。
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