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第二章

僕の誓い

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<sideアズール>

「ねぇ、お母さまー。お兄さまはまだ帰ってこないの?」

今日の夕方には帰ってくると言っていたのに、まだ帰ってきてくれない。
待ちきれなくてお母さまの部屋に尋ねに行くと、

「いいえ。もう帰ってきているわ。今、応接室でルーディー王子とお父さまとお話をしているはずよ」

「えっ? ルーがいるの?」

「ええ。さっきアズールが私に話をしてくれた『あお』のことを、お父さまとクレイにもお話しなさっているのよ」

「そっか。ねぇ、お母さま……僕が、生まれる前の記憶があるって言って、すぐに信じられた?」

お母さまが蒼央のことを信じてくれたのはとても嬉しいけれど、それでも最初は半信半疑だったんじゃないのかなって思ってしまう。

「ふふっ。当たり前じゃない。私はアズールの母親なのよ。アズールが嘘なんかつかない子だってわかってるもの。それよりも『あお』の記憶があることでアズールが寂しい思いをしていたんじゃないかってそっちの方が心配だったわ」

「ううん! 僕、何も寂しくなんかなかったよ。生まれてからずっと初めての体験ばかりで……抱っこしてもらいながらねんねするのも、ギュッと抱きしめてくれた温もりも、それにいつも笑顔のお母さまがみられて僕、すごく嬉しかった。これがお母さんなんだって、初めて知ったんだ」

「アズール……」

「僕が幸せだなって思えば思うだけ、心の中の蒼央が喜んでくれるんだよ。だから、僕たちはずっと幸せだったんだ」

「ありがとう……本当にお母さまの子どもに、そしてこの家の子どもに生まれてきてくれてありがとう、アズール」

「お母さま……」

ギュッと抱きしめてくれるお母さまの温もりがとっても嬉しい。


「そろそろお話も終わった頃だわ。応接室に行ってみましょうか」

優しく抱きしめられたまま、背中をトントンと叩かれて心地いい。
そのまま眠ってしまいそうだったけれど、そう誘われて

「うん! 行きたい!!」

と一気に目が覚めた。

「あらあら。ふふっ、じゃあ行ってみましょうか」

「お母さま、僕歩けるよ。大人になったんだから」

「ふふっ。そうね。でも、お母さまがアズールを抱っこしたいの。抱っこさせてくれる?」

「僕、大人だからお母さまのお願い事聞いてあげる」

「ふふっ。嬉しいわ」

お母さまにギュッと抱きしめられるたびにふわりと優しい匂いがする。
お母さまの匂い。
安心する嬉しい匂いだ。
ルーのとは全然違うけど、でもなんだか嬉しい匂いなんだよね。


応接室の扉を叩き、お母さまが声をかけると

「ちょうど今話が終わったところだ。おお、アズールも一緒だったか」

とお父さまが出迎えてくれた。

「アズール!」
「アズール!!」

お父さまの後ろから、ルーとお兄さまが二人一緒に僕の名前を呼んで手を差し出している。

えっと、これはどっちに行くべき?

お兄さまにはお帰りなさいの挨拶をしたい。
でも、ルーは僕の許嫁で大切な人だよ。

どうしよう……と悩んでいると、

「アズールの心のままに飛び込んだらいいの。ちゃんと行きたい方に飛んで行くわ」

とお母さまが耳元で囁いてくれた。

そっか。
自分で決められないなら心に決めてもらおう。

僕がお母さまの腕からぴょーんと跳ねると、すぽっとルーの腕の中に入った。

「ふふっ。さすが私のアズールだな」

ルーの嬉しそうな表情とは対照的にお兄さまはすっごく寂しそう。

「ごめんね、お兄さま」

「いや、気にしないでいい」

「お兄さま、おかえりなさい。お兄さまが帰ってきてくれて僕、とっても嬉しい」

ルーの腕に抱っこされながら、挨拶をすると悲しげな表情が少しだけ笑顔になった気がした。

「そうか、私の帰宅をそんなに楽しみにしていてくれたのか」

「うん。だって、僕が大人になったってお兄さまに早くお伝えしたかったんだもん!」

「えっ――!!」

「ふふっ。驚いたでしょう? 僕ね、おちんちんから蜜が出て大人になったの! すごいでしょ!!」

「ぶほっ!!! ごほっ、ごほっ」」

僕が大人になったことを伝えると、お兄さまは突然顔を真っ赤にして咳き込み始めた。

「お兄さま? 大丈夫?」

「あ、ああ。大丈夫だ。心配しなくていい。それよりもさっきのは……」

「さっきの? ああ、大人になったってこと? そうなの! すごいでしょう? ねぇ、ルー。アズールは大人になったんだよね?」

抱っこしてくれているルーに声をかけると、

「あ、ああ。そうだな。だが、そんなふうに大々的に発表せずとも……」

となんとも歯切れが悪そうだ。

「言っちゃダメだった? でも、ルーはアズールが大人になったのを本当に喜んでくれる人に話すべきだって言ってたよ」

「えっ? ああ、そうだったな」

「だからお兄さまなら喜んでくれると思ったけど、お兄さまは喜んでくれないの?」

「そ、そんなことはない! アズールが大人になって嬉しいよ! おめでとう、アズール!」

「ふふっ。ありがとう、お兄さま」

お兄さまにおめでとうと言ってもらえて僕は嬉しくてたまらなかった。
と同時にやっぱり気になってしまった。

「ねぇ、お兄さま……」

「んっ? どうした?」

「お兄さまの蜜はいっぱいでた?」

「ぶふっ! ごほっ、ごほっ!! あ、アズール。どうしてそんなことを?」

「だって、僕の蜜少なかったの。身体が小さかったからかなって思って……お兄さまは僕よりもずっとおっきぃからいっぱい出たのかなって……聞いちゃダメだった? 僕、悪いこと、聞いちゃった?」

怒られちゃうかなと思って不安になったけれど、

「あ、いや。そう、いうことではない。聴かれるとは思わなかったから驚いただけだ。蜜の量は……アズールと同じくらいじゃないか? そんなには変わらないだろう」

「そっか。そうなんだ……じゃあ、みんな一緒なんだね。ふふっ。そっか、一緒か」

僕だけ身体が小さいから、蜜も少ないんだと思っていたけどみんな一緒なんだと聞いてホッとする。

「じゃあ、僕もルーやお兄さまみたいに成人したらおっきくなれるんだね」

「えっ……それは ……」

「ふふっ。楽しみだなぁ。ねぇ、ルー。アズール、ルーの赤ちゃんをいつかいっぱい産めるように、いっぱい大きくなるね」

「「「――っ!!!!!!」」」


18歳で死んじゃった蒼央とずっと一緒にこれからの人生を楽しく過ごしながら、本当にいつかルーの赤ちゃんを産みたいと思う日が来たら、その時はいっぱい産んでおっきく育てる。

僕は大好きな家族に囲まれながら、そう心に誓ったんだ!



  *   *   *
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ここで第二章完結となります。
引き続き第三章(最終章)に入っていきます。
どうぞお楽しみに!!
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