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第二章
聞かせてほしい
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<sideヴェルナー>
「あのね、ぼく……もうすぐ、しんじゃうの……」
大粒の涙を流しながらも、もうすでに死ぬことを受け入れているかのような表情に心が締め付けられた。
「アズールさま、そのようなことは決してございません。私が絶対にアズールさまをお死なせなど致しませんよ」
その小さなお身体をギュッと抱きしめながら、必死にそう告げたのだけれど
「ゔぇる……やさしいね。ありがとう、でも……もうわかってるんだよ。まえと、おなじなんだもの……」
と何かを悟ったような寂しそうなアズールさまの声が聞こえるだけ。
けれど、前と同じとはどういうことだろう?
「アズールさまに何があったのか、お聞きしてもいいですか? それとも、王子にお話しされますか?」
「るーに、はなしたいけど……でも、るーがかなしむから……」
「アズールさま……」
「るーには、いつもわらっててほしいの。だから……」
「ああっ、アズールさま!」
涙を流しているのに、必死に笑顔を見せてくれるそのいじらしい姿に胸が痛くなる。
「ゔぇる……ごめんね。でもぼくがいなくなったら、きしだんでがんばって……」
涙声でそんな優しい言葉をかけられて、私も泣いてしまいそうになる。
けれど騎士ともあろうものが人前で泣いてはいけない。
必死に唇を噛み締めながら涙を堪える。
アズールさまはこの小さなお身体で何を抱えていらっしゃるのだろう。
せめてそれを吐き出してほしい。
「アズールさま。私にだけ何があったのかお話いただけませんか? ずっとアズールさまのおそばにいたのです。最期のその時までおそばでお守りできるように、今アズールさまのお心を占めているものを私に共有していただけませんか?」
「うん……ゔぇる……ぼく、ほんとうはこわいんだ。みんなとはなれたくない……でもね、もうすぐしんじゃう、さいんがでちゃったんだ……」
「サイン、でございますか? それはどこに?」
顔にはもちろん見えない。
手足にも見える部分にはなさそうだ。
そもそもそれが出ただけで死ぬとわかるものだろうか?
「おしっこがでるところから、しろいのがでたら、しんじゃうんだよ」
「えっ? おし――っ、しろ?」
「びっくりしちゃうよね。でもね、ほんとなの。ぼく……さっきおきて、みちゃったの。しろいの、でてた……」
悲しげに話を続けるアズールさまの声はちゃんと聞こえているけれど、まだ頭が理解できていない。
おしっこが出るところから白いのが出たと仰っているということはおそらく精通を迎えられたんだろう。
だが、なぜそれをもうすぐ死ぬサインだと勘違いなさったのか……それがわからないとそこから先に進むことができない。
アズールさまにお会いするまでは、
――精通なんてものは世の中の男が全て経験する、生理現象なのだ。それを話すくらいどうってことない!!
そんな気楽に考えていたというのに。
うーん、どうすれば良いのか……。
「やっぱり、しぬってこわいよね……」
どう話すべきか悩み、眉を顰めていたのをアズールさまは勘違いをなさったようだ。
「よくお聞きください。アズールさま、それは死ぬサインなどではございません」
「えっ? でも……」
「アズールさまがどうしてそのような勘違いをなさったかはわかりませんが、本当は喜ばしいことなのですよ」
「よろこばしい? うれしい、っていうこと?」
「はい。その通りでございます。それはアズールさまが大人になったという証なのです」
「でも、ぼく……まだ、こどもだよ」
「年齢ではなくお身体が大人になったということなのです。大人になるとそこから時折、白いもの……蜜と申しますが、蜜が出るのですよ」
「蜜?」
驚きのあまり涙が止まったようだ。
キョトンとした表情で私を見つめている。
「それって……ヴェルも出る?」
「はい。もちろんでございます」
「えっ……お父さまもお母さまも?」
「いいえ、蜜が出るのは男性だけですから、アリーシャさまはお出にはなりません」
「そうなんだ……じゃあ、ルーも?」
「はい。王子も同じでございますよ」
ルーも同じ……そう何度も呟かれて、アズールさまは私を見つめた。
「ねぇ、ヴェルはいつ初めて出たの?」
「えっ? そう、ですね……10歳の時ですから……もう20年以上前になるでしょうか」
「にじゅう、ねん……じゃあ、本当に死んじゃうサインじゃないの?」
「ええ。反対に、蜜が出るということは身体が健やかに育っているということの証ですよ」
「そうなんだ……」
私の言葉にアズールさまは再度驚いた様子でつぶやいた。
「あのね、ぼく……もうすぐ、しんじゃうの……」
大粒の涙を流しながらも、もうすでに死ぬことを受け入れているかのような表情に心が締め付けられた。
「アズールさま、そのようなことは決してございません。私が絶対にアズールさまをお死なせなど致しませんよ」
その小さなお身体をギュッと抱きしめながら、必死にそう告げたのだけれど
「ゔぇる……やさしいね。ありがとう、でも……もうわかってるんだよ。まえと、おなじなんだもの……」
と何かを悟ったような寂しそうなアズールさまの声が聞こえるだけ。
けれど、前と同じとはどういうことだろう?
「アズールさまに何があったのか、お聞きしてもいいですか? それとも、王子にお話しされますか?」
「るーに、はなしたいけど……でも、るーがかなしむから……」
「アズールさま……」
「るーには、いつもわらっててほしいの。だから……」
「ああっ、アズールさま!」
涙を流しているのに、必死に笑顔を見せてくれるそのいじらしい姿に胸が痛くなる。
「ゔぇる……ごめんね。でもぼくがいなくなったら、きしだんでがんばって……」
涙声でそんな優しい言葉をかけられて、私も泣いてしまいそうになる。
けれど騎士ともあろうものが人前で泣いてはいけない。
必死に唇を噛み締めながら涙を堪える。
アズールさまはこの小さなお身体で何を抱えていらっしゃるのだろう。
せめてそれを吐き出してほしい。
「アズールさま。私にだけ何があったのかお話いただけませんか? ずっとアズールさまのおそばにいたのです。最期のその時までおそばでお守りできるように、今アズールさまのお心を占めているものを私に共有していただけませんか?」
「うん……ゔぇる……ぼく、ほんとうはこわいんだ。みんなとはなれたくない……でもね、もうすぐしんじゃう、さいんがでちゃったんだ……」
「サイン、でございますか? それはどこに?」
顔にはもちろん見えない。
手足にも見える部分にはなさそうだ。
そもそもそれが出ただけで死ぬとわかるものだろうか?
「おしっこがでるところから、しろいのがでたら、しんじゃうんだよ」
「えっ? おし――っ、しろ?」
「びっくりしちゃうよね。でもね、ほんとなの。ぼく……さっきおきて、みちゃったの。しろいの、でてた……」
悲しげに話を続けるアズールさまの声はちゃんと聞こえているけれど、まだ頭が理解できていない。
おしっこが出るところから白いのが出たと仰っているということはおそらく精通を迎えられたんだろう。
だが、なぜそれをもうすぐ死ぬサインだと勘違いなさったのか……それがわからないとそこから先に進むことができない。
アズールさまにお会いするまでは、
――精通なんてものは世の中の男が全て経験する、生理現象なのだ。それを話すくらいどうってことない!!
そんな気楽に考えていたというのに。
うーん、どうすれば良いのか……。
「やっぱり、しぬってこわいよね……」
どう話すべきか悩み、眉を顰めていたのをアズールさまは勘違いをなさったようだ。
「よくお聞きください。アズールさま、それは死ぬサインなどではございません」
「えっ? でも……」
「アズールさまがどうしてそのような勘違いをなさったかはわかりませんが、本当は喜ばしいことなのですよ」
「よろこばしい? うれしい、っていうこと?」
「はい。その通りでございます。それはアズールさまが大人になったという証なのです」
「でも、ぼく……まだ、こどもだよ」
「年齢ではなくお身体が大人になったということなのです。大人になるとそこから時折、白いもの……蜜と申しますが、蜜が出るのですよ」
「蜜?」
驚きのあまり涙が止まったようだ。
キョトンとした表情で私を見つめている。
「それって……ヴェルも出る?」
「はい。もちろんでございます」
「えっ……お父さまもお母さまも?」
「いいえ、蜜が出るのは男性だけですから、アリーシャさまはお出にはなりません」
「そうなんだ……じゃあ、ルーも?」
「はい。王子も同じでございますよ」
ルーも同じ……そう何度も呟かれて、アズールさまは私を見つめた。
「ねぇ、ヴェルはいつ初めて出たの?」
「えっ? そう、ですね……10歳の時ですから……もう20年以上前になるでしょうか」
「にじゅう、ねん……じゃあ、本当に死んじゃうサインじゃないの?」
「ええ。反対に、蜜が出るということは身体が健やかに育っているということの証ですよ」
「そうなんだ……」
私の言葉にアズールさまは再度驚いた様子でつぶやいた。
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