106 / 296
第二章
まさかの頼み事
しおりを挟む
<sideヴェルナー>
マクシミリアンとの試合だけでも神経をお使いになっただろうに、そのままアズールさまがお部屋にお泊まりになって大変な夜をお過ごしになったと思っていたが、まさかアズールさまをお風呂にまで入れることになっていたとは思いもしなかった。
目隠しをして、分厚い手袋をつけ、そして拘束具で昂りを抑えてのお風呂でもかなりの忍耐力を試されたことだろう。
さぞ、今頃は魂の抜けたような顔で、私がアズールさまをお迎えに上がるのを待ち望んでいらしたのかと思ったけれど、王子の部屋に向かうと、思ったよりも元気そうなお姿に驚いてしまう。
すごいな。
あれほどの苦行を乗り越えるともう達観してしまうのか。
「ああ、ヴェルナー。アズールを迎えにきたのか?」
「は、はい。おはようございます。王子、アズールさま。よくお眠りになられましたか?」
「ヴェル、おはよう。ぐっすり眠ったよー。ヴェルは……ついさっきまで、マックスのところにいたの?」
「えっ?」
「だって、ヴェルの身体からマックスの匂いがしてるー」
すんすんと鼻を向けられて、途端に恥ずかしくなる。
「あ、いえ。その……」
「ふふっ。照れなくてもいいのにぃー」
アズールさまは、私とマクシミリアンが恋人同士だというのをご存知でいつもこうやって揶揄ってこられるが、実際には私たちがどのような間柄なのかはご存知ないだろう。
なんせ、まだ色ごとについては何もご存知ではないのだから。
「ヴェルナー。少し話がしたいのだがいいか?」
「は、はい。もちろんでございます」
王子は私の返事に頷くと、アズールさまにお声をかけた。
「アズール、爺がアズールのために美味しいお菓子と紅茶を用意していると言っていたから、帰る前に食べていかないか?」
「わぁー、食べたいっ!!」
「そうか、ならそうしよう。ヴェルナー、少し待っていてくれ」
そういうと、王子はアズールさまをフィデリオ殿に預けて戻ってこられた。
「待たせて悪かったな」
「いえ、滅相もございません」
「なんだか口調が硬いな。久しぶりで緊張しているのか?」
確かにそうかもしれない。
以前は騎士団の執務室で二人っきりなどということもあった。
次期国王となるための儀式にも一緒に向かったこともある。
けれど、あの時は私の中では団長という位置付けの方が大きかった。
だから私は副団長としてそばに仕えるのが普通だと思っていたのだ。
けれど、アズールさまの護衛になってからは、団長から王子という認識に変わってしまった。
だから二人っきりになると緊張してしまうのかもしれない。
「まぁ、いい。今日はヴェルナーにどうしても話しておきたいことがあって時間を作った。アズールのことだ」
「アズールさまに何かございましたか?」
「昨夜のことは爺から話を聞いているか?」
「え? はい。王子がアズールさまをお風呂にお入れになったことは伺いましたが」
「そうだ、そのことをきっかけに重要な事柄が発生した」
持って回ったような王子の口ぶりが気になりつつも、先を待っていると、
「実は……アズールの、その……昂りが反応したんだ」
と思いがけない言葉が耳に飛び込んできた。
「えっ? たか、ぶり……? そ、それは、その……アズールさまの、お大事な場所が、ということですか?」
「そうだ。まだ蜜を出すまでには至らなかったが、兆したということは精通も近いのではないかと踏んでいる」
「アズールさまに……精通が……」
天真爛漫で真っ白な穢れなき天使のアズールさまにそのようなことが……。
王子には悪いが一生精通など現れないのではないかとさえ思っていた。
それくらいアズールさまにはそのような事柄とは無縁に思えたのだ。
「ヴェルナー、大丈夫か?」
「申し訳ありません。想像だにしておりませんでしたので……」
「アズールを見ていればそのように思っても不思議はない。だが、ウサギ族というものは元々性欲の強い種族だそうだ」
「な――っ、それはまことでございますか?」
「ああ。男女問わずに孕むことができるのが何よりの証拠だ。そもそも我々獣人の強い性欲を受け止められる存在として生まれてくるのだからな」
「あ――っ!! 確かに……」
そう言われればそうだ。
けれど、今までのウサギ族のお方がどうかわからないが、アズールさまに関してはどう見てもそのようには思えない。
アズールさまがいつか王子の蜜でお腹を膨らませるのかも信じられないというのに。
「アズールが時々私を煽ってくるのは、アズールの潜在意識の中に性に関しての知識があるからではないか?」
「それは……わかりませんが、少なくともアズールさまにはそのような意識は見られません」
「ヴェルナーにはそう見えるだろうな。だが、私にはいつでもそうだぞ」
「まさか……っ」
「だからだ。ヴェルナーには少しずつアズールに性教育をしてほしいのだ」
「えっ? 私が……アズールさまに、性教育を?」
「ああ、いつかこのようなことになろうかと護衛をお前にしたんだ。マクシミリアンに性教育などさせられないからな」
確かにそれはそうだろう。
王子が嫌なように私だって、マクシミリアンがアズールさまに性教育を施すのは見たくない。
けれど、これはかなり難しい問題だ。
「あの、王子。私には荷が勝ちすぎます」
「いや、そんなことはない。アズールはお前を信頼しているからな。私もだ。だから、少しずつでいい。アズールに知識を与えてやってくれ。そうでないと、精通が起こった時アズールはどんな反応を起こすかわからないだろう?」
そう言われるともう私は頷くしかなかった。
マクシミリアンとの試合だけでも神経をお使いになっただろうに、そのままアズールさまがお部屋にお泊まりになって大変な夜をお過ごしになったと思っていたが、まさかアズールさまをお風呂にまで入れることになっていたとは思いもしなかった。
目隠しをして、分厚い手袋をつけ、そして拘束具で昂りを抑えてのお風呂でもかなりの忍耐力を試されたことだろう。
さぞ、今頃は魂の抜けたような顔で、私がアズールさまをお迎えに上がるのを待ち望んでいらしたのかと思ったけれど、王子の部屋に向かうと、思ったよりも元気そうなお姿に驚いてしまう。
すごいな。
あれほどの苦行を乗り越えるともう達観してしまうのか。
「ああ、ヴェルナー。アズールを迎えにきたのか?」
「は、はい。おはようございます。王子、アズールさま。よくお眠りになられましたか?」
「ヴェル、おはよう。ぐっすり眠ったよー。ヴェルは……ついさっきまで、マックスのところにいたの?」
「えっ?」
「だって、ヴェルの身体からマックスの匂いがしてるー」
すんすんと鼻を向けられて、途端に恥ずかしくなる。
「あ、いえ。その……」
「ふふっ。照れなくてもいいのにぃー」
アズールさまは、私とマクシミリアンが恋人同士だというのをご存知でいつもこうやって揶揄ってこられるが、実際には私たちがどのような間柄なのかはご存知ないだろう。
なんせ、まだ色ごとについては何もご存知ではないのだから。
「ヴェルナー。少し話がしたいのだがいいか?」
「は、はい。もちろんでございます」
王子は私の返事に頷くと、アズールさまにお声をかけた。
「アズール、爺がアズールのために美味しいお菓子と紅茶を用意していると言っていたから、帰る前に食べていかないか?」
「わぁー、食べたいっ!!」
「そうか、ならそうしよう。ヴェルナー、少し待っていてくれ」
そういうと、王子はアズールさまをフィデリオ殿に預けて戻ってこられた。
「待たせて悪かったな」
「いえ、滅相もございません」
「なんだか口調が硬いな。久しぶりで緊張しているのか?」
確かにそうかもしれない。
以前は騎士団の執務室で二人っきりなどということもあった。
次期国王となるための儀式にも一緒に向かったこともある。
けれど、あの時は私の中では団長という位置付けの方が大きかった。
だから私は副団長としてそばに仕えるのが普通だと思っていたのだ。
けれど、アズールさまの護衛になってからは、団長から王子という認識に変わってしまった。
だから二人っきりになると緊張してしまうのかもしれない。
「まぁ、いい。今日はヴェルナーにどうしても話しておきたいことがあって時間を作った。アズールのことだ」
「アズールさまに何かございましたか?」
「昨夜のことは爺から話を聞いているか?」
「え? はい。王子がアズールさまをお風呂にお入れになったことは伺いましたが」
「そうだ、そのことをきっかけに重要な事柄が発生した」
持って回ったような王子の口ぶりが気になりつつも、先を待っていると、
「実は……アズールの、その……昂りが反応したんだ」
と思いがけない言葉が耳に飛び込んできた。
「えっ? たか、ぶり……? そ、それは、その……アズールさまの、お大事な場所が、ということですか?」
「そうだ。まだ蜜を出すまでには至らなかったが、兆したということは精通も近いのではないかと踏んでいる」
「アズールさまに……精通が……」
天真爛漫で真っ白な穢れなき天使のアズールさまにそのようなことが……。
王子には悪いが一生精通など現れないのではないかとさえ思っていた。
それくらいアズールさまにはそのような事柄とは無縁に思えたのだ。
「ヴェルナー、大丈夫か?」
「申し訳ありません。想像だにしておりませんでしたので……」
「アズールを見ていればそのように思っても不思議はない。だが、ウサギ族というものは元々性欲の強い種族だそうだ」
「な――っ、それはまことでございますか?」
「ああ。男女問わずに孕むことができるのが何よりの証拠だ。そもそも我々獣人の強い性欲を受け止められる存在として生まれてくるのだからな」
「あ――っ!! 確かに……」
そう言われればそうだ。
けれど、今までのウサギ族のお方がどうかわからないが、アズールさまに関してはどう見てもそのようには思えない。
アズールさまがいつか王子の蜜でお腹を膨らませるのかも信じられないというのに。
「アズールが時々私を煽ってくるのは、アズールの潜在意識の中に性に関しての知識があるからではないか?」
「それは……わかりませんが、少なくともアズールさまにはそのような意識は見られません」
「ヴェルナーにはそう見えるだろうな。だが、私にはいつでもそうだぞ」
「まさか……っ」
「だからだ。ヴェルナーには少しずつアズールに性教育をしてほしいのだ」
「えっ? 私が……アズールさまに、性教育を?」
「ああ、いつかこのようなことになろうかと護衛をお前にしたんだ。マクシミリアンに性教育などさせられないからな」
確かにそれはそうだろう。
王子が嫌なように私だって、マクシミリアンがアズールさまに性教育を施すのは見たくない。
けれど、これはかなり難しい問題だ。
「あの、王子。私には荷が勝ちすぎます」
「いや、そんなことはない。アズールはお前を信頼しているからな。私もだ。だから、少しずつでいい。アズールに知識を与えてやってくれ。そうでないと、精通が起こった時アズールはどんな反応を起こすかわからないだろう?」
そう言われるともう私は頷くしかなかった。
306
あなたにおすすめの小説
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる