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第一章
大人になったから
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<sideアズール>
「うにゃっ! うにゃっ!」
久しぶりのルーのお泊まりに僕はすっかり眠気も飛んで浮かれ気分だった。
あまりの嬉しさにベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ねてしまう。
「アズール、私が泊まるのがそんなに嬉しいか?」
「ふふっ。だって、ルーの、ふさふさでもふもふの、しっぽ、さわりながら、ねられるんだよ」
ルーのふさふさのほっぺたも大好きだけど、一番はやっぱりふさふさもふもふの尻尾かな。
包み込まれて寝るのも好きだけど、撫で撫でするのも大好き。
あんまり触りすぎちゃいけないって言われているけど、ご褒美の時はいいよね。
ふふっ。楽しみだな。
「ア、アズール……先に、その……アリーシャ殿とお風呂に入っておいで。私も部屋の風呂に入って寝る準備をしておこう」
「はーい。あっ、そうだ。ねぇ、ルー」
「んっ? どうした?」
「ルーは、せいじん、したんでしょう? せいじん、っておとなだよね?」
「ああ。そうだな」
「じゃあ、あずーると、おふろに、はいれる?」
「――っ!! な――っ、えっ? お、ふろ?」
僕の言葉にルーは目を丸くしながら、尻尾をぎゅーんと逆立てていた。
「な、なんで……そ、んなことを?」
「だって、まえに、いっしょにはいりたいって、いったら、ルーはこどもだから、だめだっていってたよ。おふろは、おとなとはいらないといけないって。でも、ルーはおとなに、なったんだよね?」
「そ、それは……そう、なんだが……」
なんて言って断ろうかとでもいうような、そんなルーの表情に僕は寂しくなった。
「あずーると、はいるのは、いや?」
「――っ!! 嫌なわけがないだろうっ!!」
「ふぇっ!!」
突然のルーの大声にびっくりして身体を震わせると、
「――っ、ああ、悪い。アズール。驚かせてしまったな」
と優しい言葉をかけながら抱きしめてくれる。
「じゃあ、はいれる?」
「くっ――! ア、アズール……私も一緒に入りたいが……その、ほら、そう! アリーシャ殿が、アズールと一緒に入ろうと待っているのではないか? せっかくの親子の時間を邪魔してはいけないからな、今日はやめておこう。なっ?」
「うーん、そっか……。わかった、じゃあ、きょうは、おかあさまと、はいる」
「そうか! そうだな、そうしよう」
「でも、こんどおとまりのときは、いっしょに、はいれるように、おかあさまにたのんでおくね」
「えっ? あ、ああ。そう、だな」
「ふふっ。やくそく~!」
そういうと、僕はルーの右手の小指に自分の小指を絡めた。
ルーのおっきな指には小さすぎたけど、でも一応約束だからね。
「あずーる、おかあさまのとこ、いく」
「あ、ああ。私が連れて行こう」
ルーは僕をさっと抱き上げると、すぐにお母さまのところに連れて行ってくれた。
それから一緒にお風呂に行って、今日は疲れただろうからと言いながら、髪と身体をたっぷりと念入りに洗ってくれて、お風呂の中で、今日のパーティーのことをたくさんたくさん褒められていつもよりも長いお風呂を楽しんだ。
身体を拭いてもらいながら、
「おかあさま、あずーると、おふろたのしい?」
と尋ねてみた。
「ええ。お母さまにとっては幸せな時間だわ」
「そっかぁ」
「どうかしたの?」
「あのね、ルーにいっしょに、おふろにはいろうっていったの。おとなになったから、いっしょに、はいれるとおもったの。だけど、おかあさまが、あずーるといっしょにはいるのを、たのしみにしているからって、だめだったの」
「そう。王子がそんなことを……」
「だから、つぎの、おとまりのときは、おかあさま、あずーるとはいるの、がまんできる?」
「ふふっ。うーん、どうかしら? アズールとのお風呂はまだお母さまだけのものにしておきたいけれど、アズールはお母さまと入るのは嫌かしら?」
「――っ、いやじゃないっ!! おかあさま、だいすきっ!」
僕は優しいお母さまに悪いことを言ってしまったと思って、慌てて抱きついた。
「ふふっ。お母さまもアズールが大好きよ。だから、もう少しだけお母さまだけの時間にしてくれる?」
「うん、あずーるも、おかあさまとのじかん、だいすき!」
「よかったわ」
ギュッと抱きしめられながら、髪を優しく撫でられる。
それがすごく嬉しかった。
いつもより長くお風呂で楽しい時間を過ごして、ほかほかになった僕は着替えを済ませて自分の部屋に連れて行ってもらった。
「ルーが、まだ、おふろかもしれないよ」
「ふふっ。大丈夫。もう出てきているはずよ」
お母さまに抱っこされて部屋の扉を叩くと、すぐに扉が開いた。
「アズール。おかえり」
ルーからふわっと甘い匂いがする。
ふふっ。いつもそうだ。
お風呂上がりのルーからはいつも甘い匂いがするんだよね。
これって、ルー専用のシャンプーとか石鹸なのかな?
「ルーディー王子。アズールをよろしくお願いしますね」
「ああ、任せてくれ」
お母さまからルーの腕に渡されると、僕はルーの匂いに包まれる。
ふふっ。本当にルーが帰ってきたんだ!!
僕は嬉しすぎて、ルーの腕の中ではしゃいでしまった。
「うにゃっ! うにゃっ!」
久しぶりのルーのお泊まりに僕はすっかり眠気も飛んで浮かれ気分だった。
あまりの嬉しさにベッドの上でぴょんぴょんと飛び跳ねてしまう。
「アズール、私が泊まるのがそんなに嬉しいか?」
「ふふっ。だって、ルーの、ふさふさでもふもふの、しっぽ、さわりながら、ねられるんだよ」
ルーのふさふさのほっぺたも大好きだけど、一番はやっぱりふさふさもふもふの尻尾かな。
包み込まれて寝るのも好きだけど、撫で撫でするのも大好き。
あんまり触りすぎちゃいけないって言われているけど、ご褒美の時はいいよね。
ふふっ。楽しみだな。
「ア、アズール……先に、その……アリーシャ殿とお風呂に入っておいで。私も部屋の風呂に入って寝る準備をしておこう」
「はーい。あっ、そうだ。ねぇ、ルー」
「んっ? どうした?」
「ルーは、せいじん、したんでしょう? せいじん、っておとなだよね?」
「ああ。そうだな」
「じゃあ、あずーると、おふろに、はいれる?」
「――っ!! な――っ、えっ? お、ふろ?」
僕の言葉にルーは目を丸くしながら、尻尾をぎゅーんと逆立てていた。
「な、なんで……そ、んなことを?」
「だって、まえに、いっしょにはいりたいって、いったら、ルーはこどもだから、だめだっていってたよ。おふろは、おとなとはいらないといけないって。でも、ルーはおとなに、なったんだよね?」
「そ、それは……そう、なんだが……」
なんて言って断ろうかとでもいうような、そんなルーの表情に僕は寂しくなった。
「あずーると、はいるのは、いや?」
「――っ!! 嫌なわけがないだろうっ!!」
「ふぇっ!!」
突然のルーの大声にびっくりして身体を震わせると、
「――っ、ああ、悪い。アズール。驚かせてしまったな」
と優しい言葉をかけながら抱きしめてくれる。
「じゃあ、はいれる?」
「くっ――! ア、アズール……私も一緒に入りたいが……その、ほら、そう! アリーシャ殿が、アズールと一緒に入ろうと待っているのではないか? せっかくの親子の時間を邪魔してはいけないからな、今日はやめておこう。なっ?」
「うーん、そっか……。わかった、じゃあ、きょうは、おかあさまと、はいる」
「そうか! そうだな、そうしよう」
「でも、こんどおとまりのときは、いっしょに、はいれるように、おかあさまにたのんでおくね」
「えっ? あ、ああ。そう、だな」
「ふふっ。やくそく~!」
そういうと、僕はルーの右手の小指に自分の小指を絡めた。
ルーのおっきな指には小さすぎたけど、でも一応約束だからね。
「あずーる、おかあさまのとこ、いく」
「あ、ああ。私が連れて行こう」
ルーは僕をさっと抱き上げると、すぐにお母さまのところに連れて行ってくれた。
それから一緒にお風呂に行って、今日は疲れただろうからと言いながら、髪と身体をたっぷりと念入りに洗ってくれて、お風呂の中で、今日のパーティーのことをたくさんたくさん褒められていつもよりも長いお風呂を楽しんだ。
身体を拭いてもらいながら、
「おかあさま、あずーると、おふろたのしい?」
と尋ねてみた。
「ええ。お母さまにとっては幸せな時間だわ」
「そっかぁ」
「どうかしたの?」
「あのね、ルーにいっしょに、おふろにはいろうっていったの。おとなになったから、いっしょに、はいれるとおもったの。だけど、おかあさまが、あずーるといっしょにはいるのを、たのしみにしているからって、だめだったの」
「そう。王子がそんなことを……」
「だから、つぎの、おとまりのときは、おかあさま、あずーるとはいるの、がまんできる?」
「ふふっ。うーん、どうかしら? アズールとのお風呂はまだお母さまだけのものにしておきたいけれど、アズールはお母さまと入るのは嫌かしら?」
「――っ、いやじゃないっ!! おかあさま、だいすきっ!」
僕は優しいお母さまに悪いことを言ってしまったと思って、慌てて抱きついた。
「ふふっ。お母さまもアズールが大好きよ。だから、もう少しだけお母さまだけの時間にしてくれる?」
「うん、あずーるも、おかあさまとのじかん、だいすき!」
「よかったわ」
ギュッと抱きしめられながら、髪を優しく撫でられる。
それがすごく嬉しかった。
いつもより長くお風呂で楽しい時間を過ごして、ほかほかになった僕は着替えを済ませて自分の部屋に連れて行ってもらった。
「ルーが、まだ、おふろかもしれないよ」
「ふふっ。大丈夫。もう出てきているはずよ」
お母さまに抱っこされて部屋の扉を叩くと、すぐに扉が開いた。
「アズール。おかえり」
ルーからふわっと甘い匂いがする。
ふふっ。いつもそうだ。
お風呂上がりのルーからはいつも甘い匂いがするんだよね。
これって、ルー専用のシャンプーとか石鹸なのかな?
「ルーディー王子。アズールをよろしくお願いしますね」
「ああ、任せてくれ」
お母さまからルーの腕に渡されると、僕はルーの匂いに包まれる。
ふふっ。本当にルーが帰ってきたんだ!!
僕は嬉しすぎて、ルーの腕の中ではしゃいでしまった。
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