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第一章

アズールからのサプライズ

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<sideルーディー>

「行きたいところ? どこだ?」

「ふふっ。あっち」

アズールの指差す方は……広間か?
広間に私と行きたいとはなんだろうか?

アズールとようやく再会できたばかりでうまく頭も働かないが、とりあえず行ってみるとしよう。

アズールを腕の中に抱きしめながら、急いで広間に向かう。
大きな扉をさっと開けると、パン、パン、パンと室内用の祝砲がなる。

何事だと中を覗けば普段のシンプルな広間が一転、部屋中にバロンで作られた可愛らしい飾り付けが施され、大勢の者たちが

「ルーディー王子、おかえりなさいませ!」

と声をかけてくる。

驚いてアズールをみれば、

「ふふっ。ルー、おたんじょうび、おめでとう」

と笑顔を向けてくれた。

「たん、じょうび……そうか、私の誕生日か」

「わすれてた?」

「ああ。儀式を早く終わらせて、アズールの元に戻ることしか考えていなかったからな」

「じゃあ、あずーるがはじめて? おたんじょうび、おめでとうっていったの」

「そうだな、はじめてだ」

「ふふっ。よかったぁ。ことしも、あずーるがいちばんだね」

アズールは私がアズールのはじめての誕生日に一番先に祝いの言葉を伝えてからよほど嬉しかったのか、あれから私の誕生日にはいつも一番最初に言ってくれるようになった。
皆もそれをわかっているから、あえて誰も私に言わなくなったのだが。

そういえば、私が出発する前に爺がアズールに私のサプライズパーティーをしようと声をかけていたんだったな。
儀式を無事に終わらせることで頭がいっぱいで、自分の誕生日のことはすっかり忘れていた。
これがアズールの考えてくれたサプライズパーティーか。

ふふっ。実に可愛らしい。

「ありがとう。アズールが最初に祝ってくれて嬉しいよ」

「これだけじゃないよ」

「んっ? まだあるのか?」

「ふふっ。ルー、あれ、みて」

アズールの小さな手が指し示す方に目をやると、驚きのものが私を出迎えた。

「――っ、こ、これは……っ」

「ふふっ。ルーと、あずーるだよ」

「えっ? もしかして……っ、これをアズールが? いや、まさかな」

アズールの身長の半分くらいの大きさをした、私とアズールにそっくりなバロンクンスト。
みれば、小さなバロンをいくつも使って作り上げているのがわかる。
この繊細でしかも緻密な形、これは到底一人で作り上げたとは思えない。

「あずーる、つくったの。いっぱい、いっぱいふくらませたよ」

「なんと――っ」

あまりにも驚いて、マクシミリアンと爺に目を向ければ、

「アズールさまが一生懸命頑張っておられましたよ。ルーディーさまのためにそれはもう必死に」

と爺が教えてくれた。

「アズール、ありがとう! 私のためにこんなにも素晴らしいパーティーを用意してくれたのだな」

「ふふっ。ルーがうれしい、あずーるもうれしいよ。それにね。まだあるの」

「まだあるのか? これだけでも十分驚かせてもらったぞ」

心からの本心を伝えたが、アズールは本当にまだ何かを用意してくれているようでマクシミリアンに声をかけた。
すると、マクシミリアンは恭しく大きな箱を持ってきて。目の前にあるテーブルの上に置いた。

「アズール。開けていいのか?」

「うん。どうぞ」

アズールの了承を得て、箱を開けると、中から金色に輝く王冠が現れた。

「これは……っ」

「あずーるが、つくったの。ルーのおいわいには、おうかんがひつようでしょ?」

アズールを抱きかかえたまま、片方の手でアズールが作ってくれたという王冠に触れる。

その感触で紙で作られた物だとすぐにわかった。
壊さないようにそっと持ち上げると、その繊細さに驚く。
先ほどのバロンクンストといい、この紙の王冠といい、これを全てアズールが一人で作ったとは信じられないほどの素晴らしさだな。

「ねぇ、ルー。あずーるをおろして」

「なぜだ?」

「あずーるがルーのあたまに、おうかんをのせてあげる」

キラキラとした目でそう言われたら、

「ああ、ありがとう。頼むよ」

としか言いようがない。
というか、アズールに王冠を被せてもらえるのはむしろ喜びしかない。

アズールを下ろし、アズールの手が届くようにしゃがみ込むと、

「ルー、かっこいいおうさまになってね」

といいながら、王冠を被せた。

儀式を無事に終えた時よりも、今の方がずっとずっと嬉しい。

「ああ、アズールのために、そしてこの国のために一生格好いい王さまになると誓うよ」

そういうと、アズールと、そしてこの広間にいる物全ての者たちから大歓声と拍手が巻き起こった。
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