真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
71 / 296
第一章

国王となるための儀式

しおりを挟む
<sideルーディー>

「ふぇーーんっ、ルー、いたいよぉーっ! ひどいよぉー!」

「違うっ!! 其方はアズールではないっ!!」

目にいっぱい涙を溜め、手を伸ばしてくる姿はアズールそのもの。
だが、私の全てが目の前に映るアズールを拒否している。

「ふぇっ……ルー、アズールが、きらいになっちゃったの?」

「アズールのことを私が嫌いになることはこの世界が滅びることがあっても絶対にあり得ない。だが、私の目のまえにいるアズールは私のアズールではない」

「なにいってるの? ぼくは、アズールだよ! ルーは、ぼくが、わからないの?」

「――っ!」

耳を揺らす仕草も、悲しそうに耳を垂らし小首を傾げる姿も、確かにアズールだ。
きっと私以外なら、これはアズールだと言うに違いない。
もしかしたらアズールを産んだ母、アリーシャ殿であっても間違えるかもしれない。
それくらいにアズールにそっくりだ。

だが、私は絶対に違うと断言できる。

「アズールの名を騙るな。私のアズールはこの世でただ一人。私の帰りをずっと待ち侘びてくれているあのアズールだけだ。アズールの名を騙る不届きものは私の前から消えろっ!!!」

尻尾を逆立てビリビリと思いっきり威嚇しながら、そうキッパリと言い切った瞬間、目の前のアズールがふっと消えてしまった。
と同時にまたこの部屋の中がふっと暗闇に包まれた。

「なんだっ! この暗闇は!」

暗闇の中でも動けるはずの視界が全て遮られてしまっている。

今度は一体何が起こるんだ?!

だが、何が起きようとも私は決して間違えたりはしない。
来るなら来い!
なんでも受けてたってやる!!

いつでも放出できるように自らの力を解放していると、ふっと目の前が明るくなり、先ほどとは違った空間が現れた。

「ルーディー王子」

「誰だ?!」

「この神殿の長・ヨナスにございます」

真っ白な装束に身を包み、なんの気配も感じさせない彼が神殿長か……。

「神殿長。ようやく会えたな。此度、成人を迎えるにあたり次期国王として儀式を受けに参った。悪いがすぐに儀式を頼む」

偽物のアズールに会ったからか、早くアズールに会いたいと言う気持ちが止められない。

しかし、私の必死な形相を見て、神殿長ヨナスは微笑みを返した。

「なんだ? 何がおかしい?」

「いえ。もう儀式は終わりました」

「儀式が終わった? それはどういうことだ?」

「先ほど、不思議な出来事がございましたでしょう?」

「不思議な? ああ、私の愛しいアズールの名を騙る別人が現れたことか?」

「はい。ルーディー王子。あの者がどうして偽物だとお気づきになったのですか? 最初は本物だと思われたのでしょう?」

ヨナスは全てを見ていたのか?
全く気づかなかったな。
今でもヨナスの気配は何も感じられないのだから当然といえば当然か。

ここで嘘を申してもすぐにわかるだろうな。
素直に思ったことを告げるしかないな。

「確かに最初はアズールだと思った。だが、全く感じられなかったんだ。アズールの匂いが」

「匂い、でございますか」

「そうだ。そして、私の匂いもな」

「ルーディー王子の匂い?」

「ああ。私はアズールに私の匂いがたっぷりと染み込んだブランケットを渡してきた。アズールはそれにしっかりと巻きついて寝てくれているはずだ。だから、身体中に私の匂いと、そしてアズール本人の匂いがついているはずなのにあの者からはなんの匂いも感じられなかった。だから、あれがアズールではない偽物だとわかったんだ」

「そうでございましたか……。なるほど」

納得したように何度も頷くヨナスに私はもう一度尋ねた。

「それで儀式が終わったとはどういうことなのだ?」

「ふふっ。それは、ルーディー王子が自分の欲に惑わされず、正しき事柄を選ぶことができるかというのが国王となるための試練だったのです」

「――っ!! ならば、あの偽物のアズールは……」

「あの部屋は今、ルーディー王子が一番欲しいと強く望まれているものが現れる部屋だったのでございます。そして、あの時、自らの欲が生み出したあの偽物に唆され、唇を重ねていたらもう二度とあの部屋から出ることはできなかったでしょう」

私が一番欲しいもの……。

私にとって何もよりも欲しいものは今までもこれからも、そして生涯変わることなくアズールだけだ。

だから、あの偽物が現れたのか……。

「アズールへの愛が私をあの部屋から救ったのだな」

「その通りでございます。そして、これでルーディー王子は次期国王として神に認められたのです。おめでとうございます」

「ああ、ありがとう。これからもこの国のために、そしてアズールのために私の生涯を捧げ守ると誓う」

「ルーディー王子。これで儀式は終了です。どうぞお気をつけてお帰りくださいませ。そしてこの儀式のこと、御他言は無用に願います」

「ああ、しかと肝に銘じておく。ヨナス、世話になった」

にこやかな微笑みを浮かべながらヨナスがスッと手を動かすと、ふわりと身体が宙に浮いたような不思議な感覚がして、気がついた時には私は神殿の入り口に立っていた。
しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...