45 / 289
第一章
眩しい太陽
しおりを挟む
<sideアズール>
おっきいけど優しそうなマックスが、僕とルーのお出かけについてきてくれることになった。
「アズール、初めてのお外、楽しんでいらっしゃい」
「あい。おかーちゃま。いてきまちゅ」
「ふふっ。行ってらっしゃい。王子、それからマクシミリアン。アズールをよろしくお願いします」
「ああ。任せていてくれ。さぁ、アズール。行こうか」
僕をぎゅっと抱きかかえると、ルーはゆっくり玄関に向かった。
ベンが扉を開けると、明るい光が差し込んできた。
「わぁっ! まぶちぃ」
朝や夕方のもうすぐ日が落ちそうな時間に庭に出たことはあるけれど、こんな真っ昼間の太陽の光を浴びるのは初めて。
「アズールっ、大丈夫か?」
ルーが僕の目の上に手を翳してくれたおかげで、眩しい光が和らいだ。
「だいどーぶ。びっくりちたらけ」
「そうか、ならよかった。今日は周りを散歩するだけだから、ゆっくり歩いて行こう」
「わーい、おちゃんぽー」
僕とルーが歩いている三歩くらい後ろをマックスがついてきてくれていたけど、目の前から誰か近づいてくると、さっと僕たちの前を歩き始めた。
マックスの姿を見て、近づいてこようとした人はすぐにいなくなったけど、僕はそれよりも他の場所に目が釘付けになっていた。
「あっ!」
「んっ? どうした、アズール」
「まっくちゅ、ちっぽ」
「んっ? なんて言ったんだ?」
そう言われて、マックスのお尻を指差しながらもう一度いうと、ルーはわかってくれたみたいだった。
「ああ、マクシミリアンの尻尾か? それがどうかしたか?」
「まんまるー、あじゅーる、おちょろい」
お父さまもお母さまもお兄さまも、それにルーもみんなフサフサでもふもふのしっぽ。
ベンも狐さんのフサフサなしっぽをしてたし、この世界では僕以外はみんなフサフサでもふもふのしっぽなのかと思ってた。
そっかぁー。
クマさんってまんまるしっぽなんだな。知らなかった。
猫ちゃんが細長いしっぽっていうのは知ってたんだけどな。
だって、病室の外にある庭を歩いている猫ちゃんを見かけたことがあったから。
師長さんはあの猫ちゃんはノラネコだから可哀想だって言っていたけど、僕は羨ましくてたまらなかったな。
いつかあの猫ちゃんみたいに外を駆け回れたらなって思っていたけど、そういえば、猫ちゃんとウサギさんってどっちが早く走れるんだろうな……。
なんて、マックスのしっぽ見てたらいろんなこと考えちゃってた。
大きな身体にまんまるでちっちゃなしっぽがついているのがなんだかとっても可愛くて、僕と同じように柔らかくてもふもふしているのか気になってしまった。
「まっくちゅ、ちっぽ、あじゅーる、ちゃわれる?」
「ちゃわれる……触れる? アズール、それはダメだ!!」
「――っ! ふぇ……っぇ……」
いきなり大声が飛んできて僕はびっくりして涙が出てしまった。
「ああ、悪い。いきなり大声を出して怖かったな。おー、よしよし。私が悪かった」
「るー、おこっちゃー」
「悪かった。でも、前に言っただろう? 耳と尻尾は大事な場所だから、伴侶や婚約者以外の者は家族であっても勝手に触れてはいけないって」
「あっ、ちょーらった。みみと、ちっぽ、らいじ」
「そうだ、アズールは偉いな。すぐに理解してくれる」
「あじゅーる、まっくちゅ、ちっぽ、ちゃわらにゃい」
そうはっきり言い切ると、マックスはなんだか少し顔を赤くしていたけれど笑顔を見せてくれた。
「アズール、外の景色はどうだ? 今日は風もあるし、日差しも気持ちいだろう?」
出てきたばかりの時は眩しかった日差しも、目が慣れてきたのか明るくて風も心地良い。
「あじゅーる、おちょと、ちゅきー」
「ふふっ。そうか、ならばいつでも散歩をしよう」
「あじゅーる、おちょと、あるけりゅ?」
僕は1歳になってからお家の中ではだいぶ歩けるようになった。
耳をぴこぴこと揺らしながら歩くと、すごく歩きやすいんだ。
「そうだな。まだ外を歩くのは難しいだろうな。当分は私が抱っこして連れて行こう」
「あじゅーる、るーの、らっこも、ちゅきー」
「そうか、それならよかった」
外を自分で歩いてみたい気持ちはあるけど、僕の中では生まれて19年も外を歩いていないから、ちょっと怖いんだよね。
外を歩くってどんな感覚なんだろうな……。
なんか想像もつかないや。
「アズール、あの店に行ってみようか?」
「ありぇ、にゃに?」
「アイスクリームやケーキを出してくれるお店だよ。せっかくだからおやつを食べて帰ろう」
「おやちゅ! いくぅー!!」
お店でデザートを食べられるなんて!!!
ずっとしてみたかったことがやっと叶うんだ!!!
僕はあまりの嬉しさに、ルーの腕の中でぴょんぴょん跳ねるのを抑えられなかった。
おっきいけど優しそうなマックスが、僕とルーのお出かけについてきてくれることになった。
「アズール、初めてのお外、楽しんでいらっしゃい」
「あい。おかーちゃま。いてきまちゅ」
「ふふっ。行ってらっしゃい。王子、それからマクシミリアン。アズールをよろしくお願いします」
「ああ。任せていてくれ。さぁ、アズール。行こうか」
僕をぎゅっと抱きかかえると、ルーはゆっくり玄関に向かった。
ベンが扉を開けると、明るい光が差し込んできた。
「わぁっ! まぶちぃ」
朝や夕方のもうすぐ日が落ちそうな時間に庭に出たことはあるけれど、こんな真っ昼間の太陽の光を浴びるのは初めて。
「アズールっ、大丈夫か?」
ルーが僕の目の上に手を翳してくれたおかげで、眩しい光が和らいだ。
「だいどーぶ。びっくりちたらけ」
「そうか、ならよかった。今日は周りを散歩するだけだから、ゆっくり歩いて行こう」
「わーい、おちゃんぽー」
僕とルーが歩いている三歩くらい後ろをマックスがついてきてくれていたけど、目の前から誰か近づいてくると、さっと僕たちの前を歩き始めた。
マックスの姿を見て、近づいてこようとした人はすぐにいなくなったけど、僕はそれよりも他の場所に目が釘付けになっていた。
「あっ!」
「んっ? どうした、アズール」
「まっくちゅ、ちっぽ」
「んっ? なんて言ったんだ?」
そう言われて、マックスのお尻を指差しながらもう一度いうと、ルーはわかってくれたみたいだった。
「ああ、マクシミリアンの尻尾か? それがどうかしたか?」
「まんまるー、あじゅーる、おちょろい」
お父さまもお母さまもお兄さまも、それにルーもみんなフサフサでもふもふのしっぽ。
ベンも狐さんのフサフサなしっぽをしてたし、この世界では僕以外はみんなフサフサでもふもふのしっぽなのかと思ってた。
そっかぁー。
クマさんってまんまるしっぽなんだな。知らなかった。
猫ちゃんが細長いしっぽっていうのは知ってたんだけどな。
だって、病室の外にある庭を歩いている猫ちゃんを見かけたことがあったから。
師長さんはあの猫ちゃんはノラネコだから可哀想だって言っていたけど、僕は羨ましくてたまらなかったな。
いつかあの猫ちゃんみたいに外を駆け回れたらなって思っていたけど、そういえば、猫ちゃんとウサギさんってどっちが早く走れるんだろうな……。
なんて、マックスのしっぽ見てたらいろんなこと考えちゃってた。
大きな身体にまんまるでちっちゃなしっぽがついているのがなんだかとっても可愛くて、僕と同じように柔らかくてもふもふしているのか気になってしまった。
「まっくちゅ、ちっぽ、あじゅーる、ちゃわれる?」
「ちゃわれる……触れる? アズール、それはダメだ!!」
「――っ! ふぇ……っぇ……」
いきなり大声が飛んできて僕はびっくりして涙が出てしまった。
「ああ、悪い。いきなり大声を出して怖かったな。おー、よしよし。私が悪かった」
「るー、おこっちゃー」
「悪かった。でも、前に言っただろう? 耳と尻尾は大事な場所だから、伴侶や婚約者以外の者は家族であっても勝手に触れてはいけないって」
「あっ、ちょーらった。みみと、ちっぽ、らいじ」
「そうだ、アズールは偉いな。すぐに理解してくれる」
「あじゅーる、まっくちゅ、ちっぽ、ちゃわらにゃい」
そうはっきり言い切ると、マックスはなんだか少し顔を赤くしていたけれど笑顔を見せてくれた。
「アズール、外の景色はどうだ? 今日は風もあるし、日差しも気持ちいだろう?」
出てきたばかりの時は眩しかった日差しも、目が慣れてきたのか明るくて風も心地良い。
「あじゅーる、おちょと、ちゅきー」
「ふふっ。そうか、ならばいつでも散歩をしよう」
「あじゅーる、おちょと、あるけりゅ?」
僕は1歳になってからお家の中ではだいぶ歩けるようになった。
耳をぴこぴこと揺らしながら歩くと、すごく歩きやすいんだ。
「そうだな。まだ外を歩くのは難しいだろうな。当分は私が抱っこして連れて行こう」
「あじゅーる、るーの、らっこも、ちゅきー」
「そうか、それならよかった」
外を自分で歩いてみたい気持ちはあるけど、僕の中では生まれて19年も外を歩いていないから、ちょっと怖いんだよね。
外を歩くってどんな感覚なんだろうな……。
なんか想像もつかないや。
「アズール、あの店に行ってみようか?」
「ありぇ、にゃに?」
「アイスクリームやケーキを出してくれるお店だよ。せっかくだからおやつを食べて帰ろう」
「おやちゅ! いくぅー!!」
お店でデザートを食べられるなんて!!!
ずっとしてみたかったことがやっと叶うんだ!!!
僕はあまりの嬉しさに、ルーの腕の中でぴょんぴょん跳ねるのを抑えられなかった。
355
お気に入りに追加
5,355
あなたにおすすめの小説
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」


【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる