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第一章

眩しい太陽

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<sideアズール>

おっきいけど優しそうなマックスが、僕とルーのお出かけについてきてくれることになった。

「アズール、初めてのお外、楽しんでいらっしゃい」

「あい。おかーちゃま。いてきまちゅいってきます

「ふふっ。行ってらっしゃい。王子、それからマクシミリアン。アズールをよろしくお願いします」

「ああ。任せていてくれ。さぁ、アズール。行こうか」

僕をぎゅっと抱きかかえると、ルーはゆっくり玄関に向かった。

ベンが扉を開けると、明るい光が差し込んできた。

「わぁっ! まぶちぃまぶしい

朝や夕方のもうすぐ日が落ちそうな時間に庭に出たことはあるけれど、こんな真っ昼間の太陽の光を浴びるのは初めて。

「アズールっ、大丈夫か?」

ルーが僕の目の上に手を翳してくれたおかげで、眩しい光が和らいだ。

だいどーぶだいじょうぶ。びっくりちたらけしただけ

「そうか、ならよかった。今日は周りを散歩するだけだから、ゆっくり歩いて行こう」

「わーい、おちゃんぽーおさんぽー

僕とルーが歩いている三歩くらい後ろをマックスがついてきてくれていたけど、目の前から誰か近づいてくると、さっと僕たちの前を歩き始めた。
マックスの姿を見て、近づいてこようとした人はすぐにいなくなったけど、僕はそれよりも他の場所に目が釘付けになっていた。

「あっ!」

「んっ? どうした、アズール」

「まっくちゅ、ちっぽ」

「んっ? なんて言ったんだ?」

そう言われて、マックスのお尻を指差しながらもう一度いうと、ルーはわかってくれたみたいだった。

「ああ、マクシミリアンの尻尾か? それがどうかしたか?」

「まんまるー、あじゅーる、おちょろいおそろい

お父さまもお母さまもお兄さまも、それにルーもみんなフサフサでもふもふのしっぽ。
ベンも狐さんのフサフサなしっぽをしてたし、この世界では僕以外はみんなフサフサでもふもふのしっぽなのかと思ってた。

そっかぁー。
クマさんってまんまるしっぽなんだな。知らなかった。

猫ちゃんが細長いしっぽっていうのは知ってたんだけどな。
だって、病室の外にある庭を歩いている猫ちゃんを見かけたことがあったから。

師長さんはあの猫ちゃんはノラネコだから可哀想だって言っていたけど、僕は羨ましくてたまらなかったな。

いつかあの猫ちゃんみたいに外を駆け回れたらなって思っていたけど、そういえば、猫ちゃんとウサギさんってどっちが早く走れるんだろうな……。

なんて、マックスのしっぽ見てたらいろんなこと考えちゃってた。
大きな身体にまんまるでちっちゃなしっぽがついているのがなんだかとっても可愛くて、僕と同じように柔らかくてもふもふしているのか気になってしまった。

「まっくちゅ、ちっぽ、あじゅーる、ちゃわれるさわれる?」

「ちゃわれる……触れる? アズール、それはダメだ!!」

「――っ! ふぇ……っぇ……」

いきなり大声が飛んできて僕はびっくりして涙が出てしまった。

「ああ、悪い。いきなり大声を出して怖かったな。おー、よしよし。私が悪かった」

「るー、おこっちゃーおこったー

「悪かった。でも、前に言っただろう? 耳と尻尾は大事な場所だから、伴侶や婚約者以外の者は家族であっても勝手に触れてはいけないって」

「あっ、ちょーらったそうだった。みみと、ちっぽ、らいじだいじ

「そうだ、アズールは偉いな。すぐに理解してくれる」

「あじゅーる、まっくちゅ、ちっぽ、ちゃわらにゃいさわらない

そうはっきり言い切ると、マックスはなんだか少し顔を赤くしていたけれど笑顔を見せてくれた。

「アズール、外の景色はどうだ? 今日は風もあるし、日差しも気持ちいだろう?」

出てきたばかりの時は眩しかった日差しも、目が慣れてきたのか明るくて風も心地良い。

「あじゅーる、おちょと、ちゅきー」

「ふふっ。そうか、ならばいつでも散歩をしよう」

「あじゅーる、おちょと、あるけりゅあるける?」

僕は1歳になってからお家の中ではだいぶ歩けるようになった。
耳をぴこぴこと揺らしながら歩くと、すごく歩きやすいんだ。

「そうだな。まだ外を歩くのは難しいだろうな。当分は私が抱っこして連れて行こう」

「あじゅーる、るーの、らっこだっこも、ちゅきー」

「そうか、それならよかった」

外を自分で歩いてみたい気持ちはあるけど、僕の中では生まれて19年も外を歩いていないから、ちょっと怖いんだよね。
外を歩くってどんな感覚なんだろうな……。
なんか想像もつかないや。

「アズール、あの店に行ってみようか?」

ありぇあれにゃになに?」

「アイスクリームやケーキを出してくれるお店だよ。せっかくだからおやつを食べて帰ろう」

おやちゅおやつ! いくぅー!!」

お店でデザートを食べられるなんて!!!
ずっとしてみたかったことがやっと叶うんだ!!!

僕はあまりの嬉しさに、ルーの腕の中でぴょんぴょん跳ねるのを抑えられなかった。
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