真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
上 下
44 / 288
第一章

専属護衛選定会議

しおりを挟む
<sideルーディー>

「るー、おちょとおそといきちゃいいきたい!」

そう言われてからずっと待たせていたが、無事に1歳のお披露目も終わって、ようやく外に連れ出せる時期になった。
だがそのためにはまず、アズールの専属護衛を決めなくてはいけない。

次期国王となる私の婚約者と正式に決まったアズールには、王国騎士団の精鋭から護衛を決めることになっている。

現国王である父上、そして婚約者である私。
アズールの父であるヴォルフ公爵。
私の世話役である爺とアズールの世話役であるベン。
そして、王国騎士団団長のヴェルナーの6人が、10人に絞られた騎士たちの中からたっぷりじっくり時間をかけて協議を重ねた。

まずは、アズールを守ることができる身体能力と格闘能力を備えていること。
物音や不審な動きにすぐ対処できるように日々のトレーニングを怠らない人物であることが求められる。

アズールのために身を挺して守ることを厭わないこと。
何かあったときにアズールを危険から守ることが最も重要であるから、これは王国騎士団にいるものとしての当然の心得である。

そして、アズールの専属護衛として最も重要な事はアズールに邪な思いを向けず、純粋にアズールのそばに居られる者が求められる。

アズールは誰がどう見ても可愛い。
誰でも一目見ただけで虜になる。
それは誰の心も奪ってしまうウサギ族の習性であるから仕方がない部分があるが、アズールは歴代のウサギ族の中でも群を抜いて可愛いのだ。
なんと言ってもあの純粋で無邪気で透き通った綺麗な心を表しているかのような真っ白で美しい毛並み。
ピンと張った長い耳。
ぴょこぴょこと動くのも、時に垂れているのも実に可愛らしい。
そして、小さくて丸くてふわふわな尻尾。

それだけでも可愛いのに、今はまだ舌足らずな口調も、ぴょんぴょん跳ねる姿も何もかもが愛おしい。

私がそばにいない間、こんなにも可愛いアズールを安心して任せられるためにはアズールに決して邪な思いを向けないことが専属護衛としての最重要事項となる。

だが、選ばれし10人の精鋭たちはどの者も決め手にかける。
さて、どうしたものか……。

専属護衛が決まらなければいつまで経ってもアズールを外に連れていく事はできない。

どうしようかと思っていると、

「僭越ではございますが、お話をさせていただいても宜しゅうございますか?」

と爺が口を挟んだ。

「ああ、フィデリオ。気づいたことがあればなんでも言ってくれ」

「はい。アズールさまの専属護衛にはマクシミリアンを推薦いたしたく存じます」

「マクシミリアン? お前の孫か?」

「はい。昨年、騎士になったばかりではございますが、すでに陛下の護衛にと打診をいただいているようでございます。そうでございますよね? ヴェルナーさま」

「そうなのか?」

皆の視線が一斉に騎士団長ヴェルナーに注がれる。

「は、はい。確かにマクシミリアン・ベーレンドルフは武術に長け、体格、性格共に申し分なく、新人ながら陛下の護衛に抜擢されるほどの逸材でございます」

「私の護衛に声がかかるくらいなら、護衛としての実力に問題はない。それでマクシミリアンは伴侶はいるのか? パートナーすらいない全くの独り身であれば、いくらフィデリオの孫とはいえアズールのそばにはおく事はできぬが……」

「それは問題ございません。そうでございますね? ヴェルナーさま」

爺のその言葉に一気にヴェルナーの顔が赤くなる。

なるほど。
そういうことか。

それならばアズールの護衛として問題はなさそうだ。

「ならば、マクシミリアンをアズールの護衛にしよう。それで良いか?」

父上の言葉に私も含めて全員が賛成した。

これでようやくアズールを連れて出かけられる。

それにしてもあのヴェルナーとマクシミリアンがなぁ……。
全く知らなかった。
いくら自分の孫とはいえ、さすが爺だな。

アズールに専属護衛が決まったから明日少しの時間だが早速外に出てみようと話をすると、こちらが驚くほど喜んでくれた。
こんなにも待ち侘びていたのだな。

なかなか連れて行けずかわいそうなことをしたものだ。

アズールと外に出たらどこに行こうか、考えるだけで楽しい。

アズールの好きな果物やデザートの店には絶対に連れて行こう。
あとは、どこがいいか。

アズールが興味をもったものを見て回るだけでもきっと楽しいだろうな。

ああ、アズールと出かけるのが楽しみだ。


翌日、全ての準備を整え、マクシミリアンをつれ公爵家に向かった。

逸る気持ちを抑えながら、数時間ぶりに会うアズールの部屋に飛び込んで行ったらアズールは私の名を呼びながら歓待してくれた。

どうやら私がくるのを待ち侘びてくれていたようだ。

だが、アズールの口から

「おちょと、いくっ! おちょと!」

と興奮した声が飛び出した。

こんなにもアズールに会いたかった私と違って、アズールは外に行くのを楽しみにしていたのかと一瞬寂しくなったが、私と一緒に行きたいのだと言われれば嫌な気はしない。

アズールを抱き上げ、出かける前に専属護衛のマクシミリアンをアズールに紹介することにした。

アズールをいつでも守ってくれるから安心だといえば、喜んでくれるかと思いきや、

「るーは、まもっちぇまもってくりぇにゃいのくれないの? もう、あじゅーるの、ちょばにいにゃいそばにいない?」

とアズールはうっすらと涙を溜めながら訴えてきた。

アズールがこれほどまでに私を求めてくれているのだと思うと、心が痛い。
勘違いとはいえ、アズールを一瞬でも悲しませたことを侘びながら、専属護衛の意味を教えてやれば、アズールはホッとしたように笑った。

ああ、やっぱりアズールは笑顔が一番だ。

改めてマクシミリアンを紹介すれば、名前が長く言いにくそうだ。
なんといってもルーディーが言えないくらいだからな。

すると、マクシミリアンが愛称である『マックス』と呼んで欲しいと言い出した。
もしかしたらヴェルナーもそう呼んでいるのかと思うと少し笑ってしまう。

アズールに言えるかと尋ねれば、

「まっくちゅ?」

と可愛い言葉が返ってきた。

あまりにもその可愛い口調にさすがのマクシミリアンも崩れ落ちそうになっていたが、さすが爺が推薦するだけあってなんとかその場に止まっていたようだ。

これなら、合格だな。
しおりを挟む
感想 549

あなたにおすすめの小説

成長を見守っていた王子様が結婚するので大人になったなとしみじみしていたら結婚相手が自分だった

みたこ
BL
年の離れた友人として接していた王子様となぜか結婚することになったおじさんの話です。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

婚約破棄?しませんよ、そんなもの

おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。 アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。 けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり…… 「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」 それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。 <嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

【完結】守護霊さん、それは余計なお世話です。

N2O
BL
番のことが好きすぎる第二王子(熊の獣人/実は割と可愛い) × 期間限定で心の声が聞こえるようになった黒髪青年(人間/番/実は割と逞しい) Special thanks illustration by 白鯨堂こち ※ご都合主義です。 ※素人作品です。温かな目で見ていただけると助かります。

【完結】ここで会ったが、十年目。

N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化) 我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。 (追記5/14 : お互いぶん回してますね。) Special thanks illustration by おのつく 様 X(旧Twitter) @__oc_t ※ご都合主義です。あしからず。 ※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。 ※◎は視点が変わります。

拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。 状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。 「これ…俺、なのか?」 何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。 《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》 ──────────── ~お知らせ~ ※第3話を少し修正しました。 ※第5話を少し修正しました。 ※第6話を少し修正しました。 ※第11話を少し修正しました。 ※第19話を少し修正しました。 ※第24話を少し修正しました。 ──────────── ※感想、いいね、お気に入り大歓迎です!!

僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

処理中です...