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第一章

大きな収穫

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<sideルーディー>

「あじゅーる、おれい、ちたい」

そう言い出した時、一瞬どうしようか迷った。

可愛いアズールを招待客みんなの前に晒し、しかも挨拶をさせたら、みんながアズールの虜になるのではないか?
そうなれば、これから行動範囲の広がるアズールに何か危険なことでも起こりはしないかと心配になったのだ。

けれど、アズールは今日の祝いの席が本当に楽しかったようだ。

皆が自分のために集まってくれたことが嬉しくてたまらなかったのだろう。

それがわかったからこそ、アズールがお礼の挨拶をしたいと言ったのを拒むことができなかった。

ヴォルフ公爵にも了承をとり、会の最後にアズールに話をさせることにした。

その挨拶の最中、ヴォルフ公爵でなく、私がアズールのそばについていることにしたのは、アズールがどんなに可愛かろうとも私のものだと牽制するためだ。

すでに私たちが正式に婚約者となったことは発表済みだが、どんな愚か者がいるかわからない。

アズールの挨拶の後で、はっきりと私の口から宣言しておこうと思ったのだ。

それなのに……。

――あじゅーる、るー、だいちゅきだいすき。あじゅーる、るーと、じゅっちょずっといっちょいっしょ。るー、は、あじゅーるの、らからだからられもだれも、とっちゃ、らめらよだめだよ


まさか、アズールが皆に私との仲をしっかりと公表し、牽制までしてくれるとは思ってもみなかった。

ああ、私はどこまで幸せなのだろうな……。

この場にいる者たちの中で、アズールの幼児語を理解出来る者がどれほどいるかはわからないが、少なくともアズールのあの幸せそうな表情を見れば、私への愛を訴えてくれているのは理解できたことだろう。

「ねー、るーは、あじゅーるの、らよねだよね?」

満面の笑みでそう尋ねてくるアズールを抱きしめながら、私は声高らかに宣言した。

「ああ、そうだ。私はアズールのものであり、アズールもまた私のものだ。私たちは運命の番という何ものにも代え難い存在として生まれたが、それだけではない深い愛情で結ばれている。だから、アズールを私から取ろうとする者、そして、アズールから私を奪い、王妃になろうと企む者を私は決して許さない。私たちに手を出そうとする者は、自分の命を賭ける覚悟でやるがいい。そのような愚か者は、この由緒正しきヴンダーシューン王国にはいないだろうが、私が正式にここで宣言した以上、これは決定事項だ。このことを決して忘れてはならぬ」

私の言葉に、大広間中に緊張が走った。

どうやらつい感情が爆発して、獣人としての威嚇を放っていたようだ。

まずい、やりすぎたか。

この大広間の雰囲気をどうしようかと思っていると、

「るー、かっちょよかっちゃかっこよかった。るー、だいちゅき」

とアズールの可愛らしい声が響いた。

そのあまりにも可愛らしい声に、一気に皆の緊張がほぐれていくのがわかる。

私はアズールに助けられたのだな。
本当に私はアズールと出会えて幸せだ。

その後、ヴォルフ公爵の挨拶でお披露目会は無事にお開きとなった。

最後、堂々と皆の前で話をして疲れたのか、アズールはいつの間にかスヤスヤと深い眠りについていた。

アズールを公爵邸でそのまま寝かし、私は父上と共に城に戻った。

「ルーディー、あの威嚇だけは褒めるわけにはいかないが、それ以外はよかったぞ。あれでアズールに手を出そうとする輩は出ないだろうからな」

「はい。父上。ありがとうございます」

「とはいえ、注意は必要だぞ。特に外に連れ出す時はな」

「それは重々承知しています。決して、私の腕から下ろしたりはしません」

「ああ、それでいい。お前さえ、ついていれば安心だからな。今日はゆっくり休むがいい」

「はい。父上」

自室に戻り、私は今日の出来事を思い返していた。

私と揃いの衣装に身を包んだアズール。
皆の声に驚き、私の上着に隠れたアズール。
楽しそうに食事を選ぶアズール。
自分の食べかけを私に食べさせてくれたアズール。
ダンスをしたいとねだり、初めてのダンスに喜んでいたアズール。
大勢の前で私を大好きだと言ってくれたアズール。

そのどれもが私の大事な宝物だ。

それにしても、アズールが食べさせてくれたもの、確か人参だったか。
正直言ってあの味は全く覚えていないが、アズールの指の味だけはしっかり覚えている。

野菜などどれを食べても同じ味だが、アズールが食べさせてくれるとあんなにも極上の味になるとは知らなかった。
これから野菜はアズールに食べさせてもらうことにしよう。

アズールのあの極上の味を思い出しながら、ひたすらに昂りを鎮めた。
久しぶりの欲はとんでもない量が出たが、これは流さずに新しいブランケットに染み込ませておくことにしようか。
それをまたアズールに渡し、しっかりとマーキングしておくことにしよう。
爺は本当にいいことを教えてくれたものだ。
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