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第一章
初めての……
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<sideルーディー>
アズールが食べかけの人参を千切って私に食べさせてくれた。
たっぷりの唾液が付いた指で私に差し出してくれたとき、これほどのご褒美があるのかと思わず吠えてしまいそうになったくらいだ。
ああ、クレイはなんと素晴らしい提案をしてくれたのだろう!!
きっと、ずっと我慢している私への贈り物だろうな。
ああ、さすが私の義弟。
アズールの可愛らしい姿を招待客たちに見せてしまったのは大きな失態だったが、それを大きく上回るほどの幸せな時間を過ごした。
たっぷりとアズールの味を堪能した後は、アズールの食事をさせる。
もちろん誰にも見えないように配慮しながら。
「おにゃか、ぽんぽんちた」
私から見れば、全く食べていないと思える量だが、確かにアズールの腹は服の上からでもぽっこりと膨らんでいるのがわかる。
やはり小さな身体なのだと改めて感じさせられる。
いつの間にか、食事を終えていたクレイがヴォルフ公爵に呼ばれて行き、私とアズールは皆が楽しそうにダンスをしている姿を上から眺めていた。
「るー、たのちい?」
「ああ、もちろん楽しいよ。アズールと一緒にいるのだから、最高だ」
そう答えたが、アズールはなんだか浮かない顔をしている。
「アズールは楽しくないのか?」
「あじゅーる、るー、いっちょ、うれちぃ」
「ならば、どうした?」
「るー、おどりゅ、にゃいにゃい。ちゅまんにゃい?」
「んっ? どういう意味だ?」
だいぶアズールの言葉にもなれたかと思っていたが、今のはよくわからなかった。
困っていると、
「ルーディーさま。アズールさまは、皆さんが楽しそうに踊っているのに、ルーディーさまが踊りに行けないのはご自分のせいだと思われたのではないですか?」
とそばにいた爺が教えてくれた。
ああ。もしかして、ずっと皆が踊っているのをみていたから、私が踊りたがっていると思ったのか。
ふふっ。なんて可愛いんだろうな。アズールは。
「そうか。アズール、心配しなくていい。私がみていたのは、いつかアズールと一緒に踊る日のことを想像していただけだ。アズールはもう私という許嫁がいるのだから、成人祝いや婚礼の際は私とだけ踊るのだぞ」
本当は父であるヴォルフ公爵や兄であるクレイとなら踊っても構わないが、私だけだということにしておこう。
「あじゅーる、るーと、おどりゅー」
「そうか、その時が楽しみだな」
「ちあう! いまー」
「今? 今、踊りたいのか?」
思ってもみないおねだりに驚いて尋ねれば、アズールは嬉しそうに何度も首を縦に振る。
「うーん、爺……どう思う?」
「よろしいではありませんか。今日はアズールさまのお祝いでございますぞ。音楽に合わせて、ルーディーさまが動いて差し上げたら良いのです。アズールさまもお喜びになると思いますよ」
「そうか。そうだな。じゃあ、アズール、私たちも踊りに行くとするか」
「うにゃっ!!!」
嬉しい時なんかに出るアズールの可愛らしい声が聞こえた。
私はアズールを抱いたまま立ち上がり、父上に声をかけた。
「父上、アズールとダンスをしてきます」
「なに? アズールとダンス? だが、アズールは……」
「大丈夫です。私がアズールをサポートしますから」
「そうか。わかった。皆の者。今日の主役、アズールとルーディーがダンスを行う。中央を開けてくれ」
父上のその声に、大広間中が大きな騒めきに包まれ、たった今までたくさんの人で溢れていた中央が綺麗に円を描くように人がいなくなった。
アズールを抱いたまま、中央に進み
「ワルツを!」
声をかけると、ゆったりとした甘い旋律が響き始めた。
この曲が気に入ったのか、アズールが嬉しそうに笑う。
私がステップを踏むたびに、アズールも一緒に足を動かしたり、ぴょこぴょこと耳を揺らしたり……。
本当にダンスをしているようだ。
ああ、なんという幸せな時間なのだろう。
世界広しといえども、許嫁の1歳の誕生日に共にダンスを踊ることができる幸せ者は私以外にはいないだろうな。
一曲踊り終えると、招待客たちから拍手が沸き起こった。
「うにゃあっ!!」
アズールはその拍手の大きさに驚き、すぐに私の上着に隠れてしまった。
また可愛い尻尾が見えてしまう! と思った瞬間、そばにいた爺がさっと例のブランケットを私たちにかけてくれた。
本当に爺の素早い対応には頭がさがる。
アズールはよほどこのブランケットが気に入ったのか、あんな驚いていたのにすぐに嬉しそうに巻きつき始めた。
自分ではわからないが相当、私の匂いが染み付いているのだろう。
恥ずかしくもあるが、嬉しさの方が大きいな。
アズールが食べかけの人参を千切って私に食べさせてくれた。
たっぷりの唾液が付いた指で私に差し出してくれたとき、これほどのご褒美があるのかと思わず吠えてしまいそうになったくらいだ。
ああ、クレイはなんと素晴らしい提案をしてくれたのだろう!!
きっと、ずっと我慢している私への贈り物だろうな。
ああ、さすが私の義弟。
アズールの可愛らしい姿を招待客たちに見せてしまったのは大きな失態だったが、それを大きく上回るほどの幸せな時間を過ごした。
たっぷりとアズールの味を堪能した後は、アズールの食事をさせる。
もちろん誰にも見えないように配慮しながら。
「おにゃか、ぽんぽんちた」
私から見れば、全く食べていないと思える量だが、確かにアズールの腹は服の上からでもぽっこりと膨らんでいるのがわかる。
やはり小さな身体なのだと改めて感じさせられる。
いつの間にか、食事を終えていたクレイがヴォルフ公爵に呼ばれて行き、私とアズールは皆が楽しそうにダンスをしている姿を上から眺めていた。
「るー、たのちい?」
「ああ、もちろん楽しいよ。アズールと一緒にいるのだから、最高だ」
そう答えたが、アズールはなんだか浮かない顔をしている。
「アズールは楽しくないのか?」
「あじゅーる、るー、いっちょ、うれちぃ」
「ならば、どうした?」
「るー、おどりゅ、にゃいにゃい。ちゅまんにゃい?」
「んっ? どういう意味だ?」
だいぶアズールの言葉にもなれたかと思っていたが、今のはよくわからなかった。
困っていると、
「ルーディーさま。アズールさまは、皆さんが楽しそうに踊っているのに、ルーディーさまが踊りに行けないのはご自分のせいだと思われたのではないですか?」
とそばにいた爺が教えてくれた。
ああ。もしかして、ずっと皆が踊っているのをみていたから、私が踊りたがっていると思ったのか。
ふふっ。なんて可愛いんだろうな。アズールは。
「そうか。アズール、心配しなくていい。私がみていたのは、いつかアズールと一緒に踊る日のことを想像していただけだ。アズールはもう私という許嫁がいるのだから、成人祝いや婚礼の際は私とだけ踊るのだぞ」
本当は父であるヴォルフ公爵や兄であるクレイとなら踊っても構わないが、私だけだということにしておこう。
「あじゅーる、るーと、おどりゅー」
「そうか、その時が楽しみだな」
「ちあう! いまー」
「今? 今、踊りたいのか?」
思ってもみないおねだりに驚いて尋ねれば、アズールは嬉しそうに何度も首を縦に振る。
「うーん、爺……どう思う?」
「よろしいではありませんか。今日はアズールさまのお祝いでございますぞ。音楽に合わせて、ルーディーさまが動いて差し上げたら良いのです。アズールさまもお喜びになると思いますよ」
「そうか。そうだな。じゃあ、アズール、私たちも踊りに行くとするか」
「うにゃっ!!!」
嬉しい時なんかに出るアズールの可愛らしい声が聞こえた。
私はアズールを抱いたまま立ち上がり、父上に声をかけた。
「父上、アズールとダンスをしてきます」
「なに? アズールとダンス? だが、アズールは……」
「大丈夫です。私がアズールをサポートしますから」
「そうか。わかった。皆の者。今日の主役、アズールとルーディーがダンスを行う。中央を開けてくれ」
父上のその声に、大広間中が大きな騒めきに包まれ、たった今までたくさんの人で溢れていた中央が綺麗に円を描くように人がいなくなった。
アズールを抱いたまま、中央に進み
「ワルツを!」
声をかけると、ゆったりとした甘い旋律が響き始めた。
この曲が気に入ったのか、アズールが嬉しそうに笑う。
私がステップを踏むたびに、アズールも一緒に足を動かしたり、ぴょこぴょこと耳を揺らしたり……。
本当にダンスをしているようだ。
ああ、なんという幸せな時間なのだろう。
世界広しといえども、許嫁の1歳の誕生日に共にダンスを踊ることができる幸せ者は私以外にはいないだろうな。
一曲踊り終えると、招待客たちから拍手が沸き起こった。
「うにゃあっ!!」
アズールはその拍手の大きさに驚き、すぐに私の上着に隠れてしまった。
また可愛い尻尾が見えてしまう! と思った瞬間、そばにいた爺がさっと例のブランケットを私たちにかけてくれた。
本当に爺の素早い対応には頭がさがる。
アズールはよほどこのブランケットが気に入ったのか、あんな驚いていたのにすぐに嬉しそうに巻きつき始めた。
自分ではわからないが相当、私の匂いが染み付いているのだろう。
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