真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

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第一章

初めてのご挨拶

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<sideルーディー>

「アズール! ああっ、よく似合ってるっ! 可愛いぞ」

「むーーっ」

私が数ヶ月にもわたってようやく完成した今日の衣装に身を包み、可愛いアズールがさらに可愛くなってやってきたから、心からの賛辞を伝えたはずだったのに、なぜかうかない顔だ。
あんなにもこの衣装を気に入ってくれた様子だったのに、着てみると違ったのだろうか?

「アズール? どうしたんだ?」

「あじゅーる、かっこいくない?」

「えっ?」

「るー、みたい、かっこいく、なりちゃい、のに……かわいいって……」

そうだったのか……。
だから私と揃いの服だと知ってあんなにも喜んでくれていたのか……。

「――っ!! アズールっ! アズールは格好良いいぞ」

「……かっこ、いい? かわい、ない?」

「いや、格好良くて可愛いんだ! どちらもあるのはすごいことなんだぞ」

「あじゅーる、ちゅごいすごい?」

「ああ、すごいぞ! こんなに格好良くて可愛いんだからな。こんなにすごいのはこの世でアズールだけだぞ」

「んーん、ちあう!」

「えっ?」

ちあうちがう! るーも! ちゅごいっ!!」

「アズール……」

ああ、どうしてこんなにアズールは可愛いんだろうな。
私の心をいとも容易く掴んでいく。

「ふふっ。そうね。アズールも、ルーディー王子もすごいわ。格好いいし、可愛い」

公爵夫人の言葉にアズールは満面の笑みを浮かべ、

「るー、らっこだっこ

と私に手を伸ばしてきた。

私はその手に触れると、そのまま自分の腕の中にアズールを閉じ込めた。

「るー、おちょろいおそろい

「ああ、そうだな。お揃いだ」

「ふふっ。うれちぃ」

ああ、私はこのアズールの笑顔を一生守るんだ。
決して曇らせることがないように……。


「旦那さま。奥さま。そろそろご招待客の皆さまが大広間にお揃いでございます。国王さまも今、こちらに向かわれていると連絡がございました。あと5分ほどでご到着でございます」

「おお、そうか。ならば皆で玄関にお出迎えに行くぞ」

「るーの、おとーちゃま?」

「ああ、そうだ。そして、私の世話役にも紹介しよう。父上と一緒に来るはずだからな」

「せわーく?」

「ふふっ。世話役。爺のことだよ」

「じぃ?」

「そうだ。そう呼んで欲しいと言っていたから、アズールが呼んであげたら喜ぶぞ」

「じぃーっ! じぃーっ!」

ウサギ族は嬉しかったり、興奮したりすると飛び跳ねて感情を表すと聞いたが、本当なのだな。
私の尻尾が大きく動くようなものか……。

私のそれとは違って、私の腕の中で飛び跳ねるアズールは実に可愛らしいものだ。


<sideヴィルヘルム(ヴォルフ公爵)>


アズールがルーディー王子と揃いの服で目の前に現れ、こんなにも可愛らしいものかと驚きを隠せなかった。
ルーディー王子にしては中のシャツが少し可愛らしいと思ったが、アズールと揃いにするためのものだったのだな。
アリーシャの願いもきちんと聞き入れてくれたようだ。

陛下がそろそろわが屋敷に到着されるということで、皆で玄関に並んだが、緊張する我々とは対照的にアズールはルーディー王子の腕の中でぴょんぴょんと飛び跳ねて楽しそうだ。

その可愛い姿を見ていると少しずつ緊張も解けていく気がする。

我が家の前に馬車が止まる音が聞こえたと同時に、玄関扉を開けてご到着を待つ。

頭を下げ、待っていると

「ああ、ヴォルフ公爵。今日の招待、実に待ちかねたぞ」

と喜びに満ちた声が頭上から聞こえる。

「はい。陛下におかれましては――」
「ああ、今日は其方の息子と、我が息子ルーディーとの婚約発表というめでたい日なのだからそんな堅苦しい挨拶は良い。それよりも、其方の息子……いや、私の息子になるのか。アズールを早く紹介してくれぬか?」

「陛下。こんな玄関先で流石に失礼でございますぞ」

「ああ、そうだな。フィデリオの言う通りだ。悪いが、挨拶の前に中に案内してもらえるか?」

「はい。こちらへどうぞ」

大広間に行く前にリビングに通し、席に着かれたのを確認してお声がけした。

「陛下。ルーディー王子に抱き抱えられているのが、我が息子・アズールにございます」

「おおっ! 其方が、アズール……。本当にウサギ族なのだな。しかも真っ白で実に可愛らしい。ああ、この日をどれだけ待ち侘びたことか。ルーディー、もっと近くまで連れてきてくれ」

「父上、アズールは私の許嫁にございますので、あまりお触れにならないようにお願いいたします」

「今日くらいいいではないか! 今日はお披露目の日なのだぞ!!」

「ですが……」

ルーディー王子の気持ちはわからなくはないが、親子の間に私が言葉を挟むのも違う気がする。
さて、どうしたら良いか……。

そう思っていると、

「るーの、おとーちゃま?」

と可愛いらしいアズールの声が響いた。

「おお、そうだ。ルーディーの父だぞ。アズール、私に抱っこされてくれるか?」

「らっこ、ちゅる!」

「おお、そうかそうか。可愛らしいな。ほら、アズールの方から言ってくれているのだぞ。ルーディー、手を離せ」

「くっ――!」

アズールが言ったことには絶対反対しないルーディー王子は、渋々ながらも陛下にアズールを渡した。

「おお、本当に小さくて可愛らしいな。それにこの衣装は実に似合っている。ああ、そうか。ルーディーとお揃いなのだな」

嬉しそうにそう話しながら、アズールの髪を何度も何度も撫でている。

しばらくその様子を見つめていたルーディー王子だったが、

「顔も白くて実に可愛いな」

と陛下の手がアズールの頬に触れようとした瞬間、さっと陛下の腕にルーディー王子の腕が伸びるのが見えた。

えっ? と思った時にはアズールはすでにルーディー王子の腕の中に戻っていて、あまりの早技に私の目でさえ、ボヤッとしか見えなかった。

これが獣人の身体能力か……。
本当にすごいな。
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