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第一章
お披露目会の決まり
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<sideルーディー>
「爺、生後7ヶ月というのはどれくらいこちらのことを理解してくれているのだろうな?」
「アズールさまがどうかなさったのですか?」
「アズールは言葉こそ拙いものの、私や公爵たちの話すことをよく理解しているようなのだ。欲しいものがあれば自ら差示すこともあるし、声をかけて私たちに要求することもある。何より、私の話したことを理解して、それをやってくれようとするのだよ。これは普通のことなのか?」
「実際にアズールさまを拝見してからでないと正確なことは申せませんが、アズールさまは『神の御意志』であられるルーディーさまの伴侶となるべく、この世にお生まれになったお方でございます。ルーディーさまと意思疎通が容易くおできになるように神からお力をいただいているのではありませんか? お話を伺う限り、他のお子さまがたよりはかなり優れていらっしゃると思いますよ」
確かに爺の言う通りだ。
「そうか……確かにそうだな。アズールはこの世界でただ一人のウサギ族。獣人である私の伴侶となるべく、神が与えたもうた存在だ。赤子だとしても、生まれながらにして運命の番がわかっているのだから、私と、そして両親とくらいは意思疎通ができてもおかしくはないか……」
「はい。アズールさまはルーディーさまとお話ができることを喜んでいらっしゃるのでしょう?」
「ああ。それはもう! はいはいができるようになってからは、足音を聞くだけで私だと気づいて、扉の近くで待っていてくれるのだぞ」
「ふふっ。それはそれは、実に可愛らしいですな。お披露目の日が待ち遠しゅうございますね」
爺が目を細めてにこやかな笑顔を浮かべる。
ああ、早く爺にアズールを会わせてやりたいものだ。
アズールに会えば今よりももっと長生きしなければとより一層思ってくれるに違いない。
体調を崩し、私の世話役から一時的に離れてはいたが、こうして私の相談相手としてまた戻ってきてくれた。
爺とアズールと3人で楽しい時間を過ごすようなことができたら喜んでくれるだろうな。
「爺が愛称で呼ばせると言うことを教えてくれたおかげで、アズールが私を『ルー』と呼んでくれるのだぞ。ふふっ。まだ舌足らずで『うー』と呼ぶのだが、それがまた実に可愛らしいのだ。世界広しといえども、私を『うー』と呼んでくれるのはアズールだけだぞ」
「それはようございました。この私も爺と呼ばれとうございます」
「ははっ。そうだな。爺と会う時にはもう舌足らずではなくなっているだろうが、それでも可愛らしさに変わりはないぞ。いや、毎日可愛らしさを更新していくのだ。生まれたてのアズールも、寝返りができるようになったアズールも、そして今のアズールも日々可愛らしさを増していく。このままでいくと18になった頃が心配でたまらないな」
「それなら大丈夫でございますよ。アズールさまにはルーディーさまがついていらっしゃるのですから。 アズールさまが成人なさった頃にはもうルーディーさまは28歳におなりになっているのですから、もう騎士団を率いていらっしゃるのでしょう? 騎士団長となられたルーディーさまからアズールさまを奪おうなどと愚かな考えを持つ者などおりませんよ」
そう『神の御意志』として生まれた者は成人をすぎてから、この国の王となるまでは騎士団でその力を発揮するのが決まりとなっている。
流石に国王となってからは騎士団長との二足の草鞋は履けないため、他の者に団長の座を譲ることとなるが特別団員として騎士団に所属は続くことになる。
何かがあれば、すぐに力を貸すことが義務付けられているのだ。
私の並外れた力は、これまでずっと国のためだけに使うことだと考えていたが、そうか……愛するアズールを守るためにも使えるのだな。
「アズールが幼い頃から、私の運命の番ということをしっかりと見せつけておけば良いと言うわけだな」
「はい。その通りでございます。それはそうと、お披露目会について、陛下とヴォルフ公爵とはお話になっていらっしゃるのですか?」
「いや、まだだが……」
「それならば、お早くご相談に行かれたほうがよろしいですよ。お披露目会で着る衣装は通常、両親が用意するものでございますが、アズールさまにはルーディーさまという歴とした許嫁がおられるのです。アズールさまの御衣装にはルーディーさまのご意向をたくさん入れられるのですよ」
「爺、それはまことか?」
「はい。ですから、お早めにお話しされた方がよろしいかと存じます。そうなさいませんと、全てヴォルフ公爵家でアズールさまの御衣装が決められてしまいます」
まさかそんな決まりがあろうとは……しらなかったな。
まさか、公爵と父上が自分たちの願い通りの服を作らせるために結託して、私を話し合いの場に来させないつもりだったのではあるまいな?
だが、それはもう無理になったな。
明日早速公爵邸に行った折に、話をしてみよう。
ああ、明日までにアズールに着せる衣装を考えておかなくてはいけないな。
忙しくなったが、楽しい限りだ。
アズールのお披露目会が今から楽しみでたまらない。
「爺、生後7ヶ月というのはどれくらいこちらのことを理解してくれているのだろうな?」
「アズールさまがどうかなさったのですか?」
「アズールは言葉こそ拙いものの、私や公爵たちの話すことをよく理解しているようなのだ。欲しいものがあれば自ら差示すこともあるし、声をかけて私たちに要求することもある。何より、私の話したことを理解して、それをやってくれようとするのだよ。これは普通のことなのか?」
「実際にアズールさまを拝見してからでないと正確なことは申せませんが、アズールさまは『神の御意志』であられるルーディーさまの伴侶となるべく、この世にお生まれになったお方でございます。ルーディーさまと意思疎通が容易くおできになるように神からお力をいただいているのではありませんか? お話を伺う限り、他のお子さまがたよりはかなり優れていらっしゃると思いますよ」
確かに爺の言う通りだ。
「そうか……確かにそうだな。アズールはこの世界でただ一人のウサギ族。獣人である私の伴侶となるべく、神が与えたもうた存在だ。赤子だとしても、生まれながらにして運命の番がわかっているのだから、私と、そして両親とくらいは意思疎通ができてもおかしくはないか……」
「はい。アズールさまはルーディーさまとお話ができることを喜んでいらっしゃるのでしょう?」
「ああ。それはもう! はいはいができるようになってからは、足音を聞くだけで私だと気づいて、扉の近くで待っていてくれるのだぞ」
「ふふっ。それはそれは、実に可愛らしいですな。お披露目の日が待ち遠しゅうございますね」
爺が目を細めてにこやかな笑顔を浮かべる。
ああ、早く爺にアズールを会わせてやりたいものだ。
アズールに会えば今よりももっと長生きしなければとより一層思ってくれるに違いない。
体調を崩し、私の世話役から一時的に離れてはいたが、こうして私の相談相手としてまた戻ってきてくれた。
爺とアズールと3人で楽しい時間を過ごすようなことができたら喜んでくれるだろうな。
「爺が愛称で呼ばせると言うことを教えてくれたおかげで、アズールが私を『ルー』と呼んでくれるのだぞ。ふふっ。まだ舌足らずで『うー』と呼ぶのだが、それがまた実に可愛らしいのだ。世界広しといえども、私を『うー』と呼んでくれるのはアズールだけだぞ」
「それはようございました。この私も爺と呼ばれとうございます」
「ははっ。そうだな。爺と会う時にはもう舌足らずではなくなっているだろうが、それでも可愛らしさに変わりはないぞ。いや、毎日可愛らしさを更新していくのだ。生まれたてのアズールも、寝返りができるようになったアズールも、そして今のアズールも日々可愛らしさを増していく。このままでいくと18になった頃が心配でたまらないな」
「それなら大丈夫でございますよ。アズールさまにはルーディーさまがついていらっしゃるのですから。 アズールさまが成人なさった頃にはもうルーディーさまは28歳におなりになっているのですから、もう騎士団を率いていらっしゃるのでしょう? 騎士団長となられたルーディーさまからアズールさまを奪おうなどと愚かな考えを持つ者などおりませんよ」
そう『神の御意志』として生まれた者は成人をすぎてから、この国の王となるまでは騎士団でその力を発揮するのが決まりとなっている。
流石に国王となってからは騎士団長との二足の草鞋は履けないため、他の者に団長の座を譲ることとなるが特別団員として騎士団に所属は続くことになる。
何かがあれば、すぐに力を貸すことが義務付けられているのだ。
私の並外れた力は、これまでずっと国のためだけに使うことだと考えていたが、そうか……愛するアズールを守るためにも使えるのだな。
「アズールが幼い頃から、私の運命の番ということをしっかりと見せつけておけば良いと言うわけだな」
「はい。その通りでございます。それはそうと、お披露目会について、陛下とヴォルフ公爵とはお話になっていらっしゃるのですか?」
「いや、まだだが……」
「それならば、お早くご相談に行かれたほうがよろしいですよ。お披露目会で着る衣装は通常、両親が用意するものでございますが、アズールさまにはルーディーさまという歴とした許嫁がおられるのです。アズールさまの御衣装にはルーディーさまのご意向をたくさん入れられるのですよ」
「爺、それはまことか?」
「はい。ですから、お早めにお話しされた方がよろしいかと存じます。そうなさいませんと、全てヴォルフ公爵家でアズールさまの御衣装が決められてしまいます」
まさかそんな決まりがあろうとは……しらなかったな。
まさか、公爵と父上が自分たちの願い通りの服を作らせるために結託して、私を話し合いの場に来させないつもりだったのではあるまいな?
だが、それはもう無理になったな。
明日早速公爵邸に行った折に、話をしてみよう。
ああ、明日までにアズールに着せる衣装を考えておかなくてはいけないな。
忙しくなったが、楽しい限りだ。
アズールのお披露目会が今から楽しみでたまらない。
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☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
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