上 下
56 / 85
番外編

緊張の対面

しおりを挟む
同時刻に投稿しています
『天涯孤独になった僕をイケメン外国人が甘やかしてくれます』と対になっています。
楽しんでいただけたら嬉しいです♡

  *   *   *

「理央、ほらこっちにおいで。そろそろ着陸態勢に入るぞ」

榊くんと楽しそうに話をしているところだが、仕方がない。
それでも声をかけると理央は素直に俺の元に戻ってきた。
素直で本当にいい子だ。

一人ずつシートベルトはつけるものの、通常の飛行機とは違ってペアシートになっているから俺たちの身体が遮るものが何もなく、ピッタリ寄り添ったままだ。

悠木は空良くんの腰にシートベルトをつけているが、寄り添うどころか、自分の胸に空良くんをもたれかけさせて寝かせている。
朝食の時もずっと眠そうだったからな。

あんなになるとわかっていても、空良くんと愛し合っていたんだろう。
あの様子だときっと明け方近くまで楽しんでいたに違いない。
あいつは本当に鬼畜だな。
あんなんじゃなかったと思ったがやっぱり最愛ができると変わるんだろうな。


だんだんと高度が下がってきて建物が見えるようになってくると、理央は窓の外を嬉しそうに眺めて始めた。

「この下はもうフランスですか?」

「ああ、そうだな。見える景色も日本とは違うだろう?」

「はい。本当に絵本の世界みたい!」

「フランスは昔の街並みも残っているからな。理央が気に入ったら、ゆくゆくはヨーロッパに住んでも構わないぞ」

「えっ! そんなことできるんですか?」

「ああ。フランスで司法試験に受かれば、EUの中ならどこでも弁護士として働けるからな。フランスでなくても問題ないよ」

「すごーい!!」

「ふふっ。理央が俺のそばで働いてくれるなら、俺はどこでもやれるよ」

「凌也さん……」

そうだ。
働く場所はどこでもいい。
理央さえいてくれさえすればそれで……。

フランスでは二人で街を散歩するのもいいな。
理央の夢が広がるかもしれない。

あんなひどい場所で成長してきた理央は自分の夢を見ることすら諦めて、ただ毎日の仕事を終わらせることに必死だった。
そんな理央を俺の手で救い出せたことは本当に幸運だったんだ。

本当に見つけられてよかった。
そんな思いが込み上げてきて、俺は理央をギュッと抱きしめた。

「理央の夢を叶えるのが俺の夢だから……理央はなんでも好きにしてくれていいんだぞ」

「僕はどこで暮らしてもいいからずーっと凌也さんのそばにいたいです。夢、叶えてくれますか?」

「理央――っ、ああ。もちろんだ。誰がなんと言っても離さないよ」

「ふふっ。嬉しい」

理央と抱き合いながら甘い甘いキスを交わしている間に、飛行機は無事にパリ国際空港に到着した。


「わぁー、ドキドキするーっ!!」

飛行機を降りてロレーヌ総帥たちとの待ち合わせ場所に向かう間中、理央は何度も何度も飛び跳ねながら嬉しい感情を表していた。

「ふふっ。もう何度も話したりしているんだろう? 同じ年だし緊張しなくても大丈夫だろう?」

「でも……テレビ電話とか写真で見たときはすっごく大人っぽくて同じ年には見えなかったですよ」

「ああ、弓弦くんは父親がフランス人だからな、そのせいだろう。日本人は比較的童顔だと言われることが多いからな」

「僕のこと子どもだって思われるかも……」

「気にしないでいい。そのままの理央を俺は愛しているんだから……」

「凌也さん……」

嬉しそうに抱きついてくる理央を抱き上げると、一瞬喜んだものの

「あっ、下ります」

と恥ずかしそうに言い出した。
きっと佳都くんや空良くんの視線が気になったのだろう。
俺たちはすでに家族だし、もうすぐ挙式もして正式な夫夫になるんだから姫抱っこくらい気にしなくてもいいのだが。

仕方ない。
ここはいうことを聞いてやるか。

優しく理央を下ろし、その代わりに理央の腰に手を回してピッタリと寄り添わせた。

先を行く、綾城と佳都くんが到着口にさしかかった途端

「ケイトーーっ!!」

と大きな声が空港に響き渡った。

その声に俺たち全員が視線を向けると、俺たちの目の先にとてつもなく目立つ集団がいた。

あの絶対的王者の風格を醸し出しているのがロレーヌ総帥だ。
リモートで直接話はしたが、やはり実物のオーラは半端ないな。

そのすぐ隣にいるのがおそらく弓弦くんだろう。
あのオーラに圧倒されないなんて、弓弦くんも意外と大物かもしれないな。

大声をあげながら我々に手を振っているのがミシェルさんか。
天使の音を奏でると言われるだけあって見た目も可愛らしいな。
まぁ理央には敵わないが。
その隣で周りの者たちに威嚇を放っているのがロレーヌ総帥の秘書のセルジュさん。
ロレーヌ一族だけあって、こちらもオーラは半端ない。

彼らを守るように立っているのが護衛兼家庭教師のリュカさんとパリ警視庁警備隊長のジョルジュさん。
どこからの気配にもすぐに対応できるように満遍なく意識を向けているようだな。
さすがだ。

こんなに目立つ集団と行動を共にするのか……。

理央には誰にも手出しされないように俺がしっかりと守らないとな。

「凌也さん、早く弓弦くんたちのところに行きたいです」

「ああ、そうだな。急ごう」

綾城と佳都くんの跡を追うようについていくと、

「ようこそ! フランスに!!」

と弓弦くんとミシェルさんに歓迎され、理央は嬉しそうだ。

友達に出迎えてもらえるなんて初めての経験だからな。
やっぱり友達ができて本当によかった。

理央は早速弓弦くんたちと、佳都くんたちと7人で集まってきゃっきゃと楽しそうに話をしている。
可愛らしい子猫がたくさん集まって笑顔で話をしているのを見ると癒されるな。

「ロレーヌ、目立ちすぎだぞ」

「悪い、こんなに集まるとは思ってなかったんだよ。とりあえず車を用意しているから、話は後にして屋敷に行こう。君たち、悪いが自分の伴侶を連れてついてきてくれ」

ロレーヌ総帥の言葉に俺はすぐに理央の元に行き、到着口で集まっていると他の人の邪魔になるからといって納得させ、ロレーヌ総帥の後に続いて駐車場へ向かった。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【続編】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺(紗子)
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(10/21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。 ※4月18日、完結しました。ありがとうございました。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...