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番外編

日本出発

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ロレーヌ総帥が今回のフランス旅行のために我々に用意してくれた飛行機は、所有する飛行機の中でも大きめのものらしいと綾城が教えてくれた。
特筆すべきは機内に大きな個室が4つもあることだろう。
しかも機内にそれぞれ風呂もあり、個室は全て防音設備が整っているという至れり尽くせりぶりだから甘い時間を過ごすのもわけない。
そのおかげで寝ている間は理央との二人だけの時間を確保できる。

だが、フランスに到着してからのことを考えると、あまり激しいことはしない方がいいだろうな。
翌朝、自力で立つこともできない理央を抱きかかえて部屋から出てきた姿を見られでもしたら、悠木のように鬼畜扱いされることは目に見えている。

例え、どれだけ理央に煽られようが理性を無くさないようにしなければな。

「理央、行くぞ」

ウキウキしながらも少し緊張している理央の手をとって、機内に入ると

「わぁーっ! すごいっ!! 凌也さん! おっきなソファーがありますよ!」

理央が目を輝かせて辺りを見回している。

「ああ、そうだな。すごいな」

努めて冷静を装ってそう言いはしたものの、綾城の結婚式で泊まったホテルのような豪華な内装に正直俺も驚いた。
これが飛行機の中だとは到底思えない。

さすが世界の大富豪・ロレーヌ総帥所有の飛行機だな。

自慢ではないが、俺だって一生遊んで暮らせるほどの蓄えもあるし、資産は今この時も確実に増えている。
だが、やはりロレーヌ家は桁違いだ。

男としてもプライドが少し気になるところだが、まぁこれは相手が悪い。
ここは素直に感謝しておくことにしよう。

「理央、飛行機に初めて入ってみた感想はどうだ?」

「すごく広くて素敵です! 飛行機がおっきいのは、こんなにひろいお部屋があるからなんですね」

「えっ? いや……」

「こんな広い飛行機の中、僕……探検しに行きたいです!!」

「あ、ああ。行ってみようか」

嬉しそうに目を輝かせる理央にはこれが普通の飛行機じゃないといえなかったな……。
理央は飛行機自体も見るのは初めてだと言ってたし、中の様子も知らなかったんだろうな。

理央にとって飛行機とはこういうものだと、そんな変な常識を植え付けてしまったな。
俺と二人での旅行はもちろんファーストクラスで行くつもりだが、とはいえ、このプライベートジェットと比べられたら理央にしょぼいと思われてしまうかもしれない。

うーん、どうしようか……。

そう思っていると、

「理央くん、この飛行機すごいね!」

と空良くんが話しかけてきた。

「うん。飛行機ってこんなにすごいんだね」

「ふふっ。違うよ、普通の飛行機は電車とかバスみたいにいっぱい座るところが並んでるんだよ」

「えっ? そうなの?」

「うん、だからこの飛行機は特別。エヴァンさんのお仕事、飛行機で海外を飛び回るって言ってたし、疲れないようにこの飛行機を作ったんじゃないかな」

「ああ、そっか。なるほど! ゆっくり過ごしたいもんね」

理央は空良くんの説明に納得したように笑っていた。

ああ……よかった。
空良くんのおかげで助かったな。

後で悠木に礼を言っておこう。

「あっ、観月。悠木とあと周防くんたちも来てくれ」

綾城に声をかけられて集まると、

「一応4部屋あるから好きな部屋を選んでくれ。ロレーヌが言うにはどれも大体同じ作りらしいから、あとは場所だけだな。部屋はそれぞれ前方にふた部屋、後方にふた部屋あるらしい。どうする?」

と尋ねられた。

「理央、どっちがいい?」

「僕……前がいいです!」

「そうか、なら綾城。俺たちは前方の部屋にしよう」

空良くんと佳都くんは後方がいいと言ったため、榊くんと周防くんは俺たちと同じ前方の部屋に決まった。

「じゃあ、出発まであと10分くらいあるから楽な格好に着替えたらリビングに集まってくれ」

「ああ、わかった」

俺たちは部屋に入り、部屋着用に楽な服に着替えた。
これから12時間以上の空の旅だ。
特に理央にとっては初めての飛行機だからな。
気圧も低くなるから締め付けの少ない服にしておいた方がいい。

部屋に入って驚いた。

本当にここは機内なんだろうかと思うほど広々としたベッドが置かれている。
隣には小さめだが外の景色が見られるジャグジー付きの風呂までついている。
風呂がついていることは聞いていたが、まさかここまでの代物だとは思わなかったな。

「凌也さん、見て! 外が見えるお風呂場ですよ!!」

「ふふっ。後で一緒に入ろうな」

「一緒に?」

「ああ、外の景色をみながら入るのは楽しいぞ、きっと」

理央の頬が赤いのは俺と一緒に入る風呂を想像したからだろう。
いつもイチャイチャしてるからな。

今日だって、それは変えられない。
自制はするつもりだが、ハネムーンだから少しくらいは許してほしい。
大丈夫、鬼畜にだけはならないつもりだから。

「夜は二人でゆっくり楽しもうな」

唇に軽くキスをして、理央が惚けてる間にさっと着替えを済ませ綾城たちの待つリビングへと向かった。

ソファーにいち早く座っていると、佳都くんも空良くんも、そして榊くんまでもほんのり頬を染めて出てきたところを見ると、部屋でやってたことは皆変わらないようだ。

やっぱり俺たち全員、同じ穴のムジナだ。
大体可愛い伴侶を前に我慢できるわけないな。

それがわかったから、今夜は思っていたよりももっと甘いひと時を過ごせそうだ。
ああ、楽しい空の旅になりそうだな。
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