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本当の家族に

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朝食が食べ終わったところで、

「それでこれからのことなんだが……理央は将来何になりたいとか、やってみたいことの希望はあるか?」

と尋ねられた。

「将来なりたいもの……」

「そうだ。もし、高校に行かせてもらっていたら何になりたいとか漠然とでもいい。何か考えていたことはあったのか?」

もし、高校に行けてたら……

「俺は、あの施設で育ててもらってたから、せめてもの恩返しのためにいい学校に行っていい職業に就きたいと思ってました。でも何になりたいかはよくわからなくて……でも」

「んっ? でも?」

「俺を助けてくれた凌也さんがすごくかっこよかったから、今は、凌也さんみたいな弁護士さんになるのっていいなって思ってます」

「――っ! そう、か……理央がそんな風に誉めてくれるのは嬉しいな。じゃあ、理央……勉強を頑張ってみないか?
今から頑張れば夢も叶うぞ」

「えっ? でも、俺……中卒だから」

「高校認定試験というのに合格すれば、高卒と同じ資格を得られるからそんなのは問題じゃない。そこからまた大学合格に向かって頑張ればいい。どうだ、やってみないか?」

頑張れば俺も大学に行ける?
もしかしたら凌也さんと同じ弁護士になれたりして?
うそっ!
そんなことが俺にもできるなんて!

「俺、頑張りたいです!! これから先凌也さんと一緒に過ごせるなら、お仕事も一緒にできるようになりたいです!!」

「理央……。そうか、そうなったら私も嬉しいよ。じゃあ、今日買い物行った時に勉強に必要なものも揃えような」

「あ、でも俺……買い物は……」

「ああ、そうか。その話もあったな。理央、これから話す話は決して強制じゃないんだ。だから、しっかりと考えて決めてほしいんだが……理央、私と本当の家族にならないか?」

「えっ? 本当の家族って……」

ずっと一緒にいようって約束したよね?
それじゃなくて本当のって……どういうこと?

「できることなら、理央と結婚して家族になりたいが、今の日本の法律では男同士では結婚という形はできない。だから、男同士で家族になるには理央を私の息子として養子縁組をすることになる。つまり、法律上、理央は私の子供ということになるんだ。だけど、もし私に何かあれば、理央はまた1人になってしまう」

「何かって……」

「私は理央より年上だろう? 年齢からいっても私の方が先に死ぬ。だが、私は理央を一生幸せにすると約束しただろう? 理央をもう二度と1人にはしない。だから、理央を私の親と養子縁組をして私と兄弟にしたいと思ってる」

「俺と、凌也さんが……兄弟? でも、そんなこと、凌也さんのお父さんたちがお許しになるかどうか……」

「いや、私の父も母もそれを望んでるんだ。そもそも理央をうちの家族として迎えようと言ってくれたのは両親なんだ」

「えっ……本当に?」

「ああ、理央を診てもらった時に理央と一生一緒にいたいって打ち明けたんだ。父も母も理央が息子になってくれるのを楽しみにしてたよ」

じゃあ……俺に、凌也さんだけじゃなくてお父さんとお母さんができるってこと?
そんな嬉しいことあるの?
本当に今年の誕生日は凄すぎるよ!!

俺はあまりの嬉しさに涙を流した。
ずっと誰かに愛されたいって思ってた俺に凌也さんっていう素敵な人が現れた上に、ずっと欲しいと思ってたお父さんとお母さんまでできるなんて……。

「理央……嫌なら無理には……」

「ううん、ちが――っ、俺、嬉しすぎて……」

「そうか、よかった。じゃあ、すぐに手続きしよう。その前に両親にも会わせような」

そう言って凌也さんは俺をギュッと抱きしめたまま、優しく背中を撫でてくれた。

「理央、これからは私が何をしてあげても遠慮することはないんだ。私たちは家族だからね。
家族がお互いを思ってしてあげることに遠慮なんかしないだろう? だから、私が理央にしてあげることは全て受け入れて欲しいんだ。いい?」

そんな贅沢なこと……本当にいいんだろうか。
でも、家族なら……遠慮される方が辛いのかも。
俺もいつか凌也さんに何かしてあげられるようになればいい。
そのために勉強は必要だもんな。

「はい。わかりました。すごく嬉しいです!」

「ああ、理央。聞き分けが良くて嬉しいよ。じゃあ、準備して出かけようか」

「あ、でも俺……着替えが」

「ああ、それならそろそろ届くはずだよ」

「えっ? 届くって?」

その時ピンポーンとチャイムがなった。

「理央、ここで待っててくれ」

「は、はい」

一体何が届いたんだろうと不思議に思っていると、あっという間に凌也さんが箱を手にこっちへ戻ってきた。

「ほら、理央の服だよ。今日出かける時用に急遽用意したものだから、ちゃんとしたものは出かけた時にゆっくり選んで買うからな。下着も入ってるから」

「はい……わぁっ、すごくカッコいい!」

綺麗な箱を開けると、中からグレーの下着と黒い細身のズボン、手触りのいい白のTシャツ、そして綺麗な水色のシャツが出てきた。
広げて当てるだけでもう既にカッコいい。

まず下着を穿いてから凌也さんから借りたTシャツを脱ぎ、白のTシャツを着ようとすると凌也さんがじっと俺を見つめているような視線を感じた。

「んっ? 何か着る順番間違えちゃいましたか?」

「い、いや、大丈夫。サイズが合うか見てただけだよ」

ああ、そういうことか。

「サイズぴったりみたいです。ほら」

Tシャツとズボンを穿いてくるっと回って見せると、

「――っ! あ、ああ。よく似合ってる」

となぜか凌也さんは顔が真っ赤になっていた。
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