上 下
48 / 49
番外編

幸せを願って

しおりを挟む
『イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています』で崇史が東京で周平たちと飲み会をしたその後のお話です。
今、連載中の
『エリート警察官僚はようやく見つけた運命の相手を甘やかしたくてたまらない!』の裏話に続くようなお話になっていますので楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *
崇史くんたちとの飲み会を終えて、私と敬介はイリゼホテル銀座の中にある、オーナー部屋に向かった。
ここは清掃を含めて敬介しか立ち入らない敬介だけの部屋だったが、今では敬介と私だけの部屋になっている。

清掃は入らずとも倉橋くんが開発した自動シーツ交換機能がついたベッドや、死角なく隅々まで床掃除ができるロボット、そのほか、風呂場やトイレの清掃もボタンひとつで丸洗いできるシステムを導入しているため、常にピカピカを維持している。それらのシステムは私たちの住む自宅にも導入して極力家事にかかる時間を部屋し、その分敬介との愛の時間に費やしている。

「敬介、疲れていないか? おいで」

一足早くソファーに腰を下ろし、敬介を呼ぶと嬉しそうに駆け寄ってくる。
私の腕の中にすっぽりとおさまる敬介を抱きしめながら、唇を奪う。

甘い味はさっき食べていたスイーツの味だろう。

甘いものはそこまで得意ではないが、敬介の味がするなら別だ。
極上のスイーツをたっぷりと味わって唇を離した。

「敬介とのキスは最高だな」

「俺も、周平さんとのキス、大好きですよ」

広い部屋なのにソファーの片隅で小さくなって座るのも、これはこれで心地いい。

「それにしても真壁さん……驚きましたね」

「ああ。確かにあれは驚いたな。何も聞いてなかったから特にだな」

「周平さん、寂しい?」

「いや、私も敬介と幸せな時間を過ごしているんだ。ずっと心配していた後輩が幸せを手にしたのならこれ以上嬉しいことはないよ。これで、あの四人組もみんな幸せになった」

「でも、明日から一緒に暮らすって言ってましたし 八尋さんへのあの態度もおかしかったし、まだ思いが通じ合っているようには感じなかったですけど……」

やはり敬介もそれを感じたか。
私も同じだ。

「ああ。あれは、牽制しているとしか思えなかったな。だが、どうして冬貴は崇史くんに牽制なんか?」

「何か勘違いしているのかもしれませんね。真壁さんのお相手は八尋さんのお祖父さんの秘書をやっていた人だと言ってましたし……」

「勘違い、か……。そうだな、私も少し勘違いしていたことがあったから冬貴の気持ちは分からんでもないな」

「周平さんが勘違い、ですか?」

「敬介があまりにも涼平や倉橋くんと仲が良かったからな。どちらかに気があるんじゃないかとは思っていたよ。特に倉橋くんはバイだからね。敬介さえ、本気を出せばすぐにそんな関係になってしまうんじゃないかと思って心配していた」

「だから、三人で事務所作るという話になった時に倉橋とあって話をしたんですか?」

「ああ。そうなんだ。もし、少しでも気があるようなら速攻で引き離すつもりでいたよ」

敬介のやっぱり……とでも言いたげな表情に、きっと涼平たちからこの話を聞いていたんだろうということが察せられた。

「引いてるか?」

「いえ。そんなにまで俺のことを思ってくれてたのに、俺には会いに来てくれなかったんだなってがっかりしただけです」

「――っ、それは……」

「わかってます。言って、もう二度と会えなくなるくらいならずっと見守っているだけで……って思ってくれたんですよね。嬉しいです。もし…‥あの時、すぐに声をかけてくれていたとしても、当時の俺がその気持ちに答えられるかも今はわからないし、今更その時のことを後悔しても意味はないから、今は周平さんとこうしていられることを幸せだと感じます」

「敬介……」

「周平さん……今日はたっぷり愛して……」

「ああ。仰せのままに……」

敬介を抱きかかえてベッドに向かう。
そのまま敬介の綺麗な裸を堪能し、欲望の蜜を敬介とともに出し合って、ベッドのボタンを押して風呂場に向かった。

何度も蜜を出したからかぐったりと私の身を預ける敬介とともにベッドに戻ってくると、もう綺麗なシーツに替わっていた。

これは愛しい者と暮らすなら必需品だろう。
冬貴も一緒に暮らすことにしたと言っていたから、このベッドを祝いとして贈るように倉橋くんに連絡をしておこうか。

私でさえも引越しの時に一度入っただけで他に人を入れたことがないあの部屋に、出会ったばかりの彼を入れるくらいだ。
しかも一緒に暮らすだなんて、今までの冬貴なら絶対に考えられない。

それは私も全く同じだ。
敬介以外の人間は家族でも入れたことがない。
その私が敬介だけはその日のうちに連れ帰ったのだからな。

まぁあの時はしこたま酔っ払っていたから他に連れて行く場所がなかったという理由もあるが……。

あの可愛い寝顔を他の人には見せたくないという心理も働いていた。
だから冬貴が早々に彼との同居を決めたのはそんな理由もあるに違いない。

ようやく訪れた冬貴の春。
私にできる限りのことはしてやろう。

そう思っていたが、まさか敬介が冬貴の大事な人である久代要くんと親友になるとは夢にも思っていなかった。
しおりを挟む
感想 50

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない

鈴宮(すずみや)
恋愛
 孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。  しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。  その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

処理中です...