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番外編
初詣に行こう! <後編> 周平&敬介Ver.
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「そこまで人も多くないですね」
「ああ、近くに大きなところがあるからそこに流れているのだろう。ここの方がゆっくり参拝できていい」
「そうですね」
「敬介、私から絶対に離れるなよ。敬介があまりにも美しいから変なのが寄ってきたら困る」
「ふふっ。大丈夫ですよ。周平さんが隣にいたら誰も近づいてこないですから」
可愛らしい笑顔を浮かべてそんなことを言ってくるが、やはりこの格好……逆に目立っているんじゃないか?
まぁ、敬介が気に入ってくれているのなら文句はないが。
誰も近づいてこないのならそれでいい。
「それにしても母さんは本当に着物を合わせるのが上手だ。敬介にピッタリ似合っているな」
「ふふっ。デザイナーの周平さんに言われると嬉しいです。あっ、ちょっと思ったんですけど、もしかしたら朝陽くんのところにもお義母さんが着物を送っているかもしれないですね」
「ああ、確かにそうだな。だが今年は旅行にも行かず家でのんびりと過ごすと言っていたから、わざわざ人混みにはこないんじゃないか?」
「ふふっ。周平さんはわかってないですね。朝陽くんならこういうのはかえって大喜びですよ。多分、蓮見を説得してでも一緒に来るはずです」
自信満々にそう言い切る敬介の言葉に納得してしまう。
そんな敬介に感心していると、参拝を終えてこちらに戻ってきた女性たちの声が聞こえてきた。
新年らしく振袖姿だが、なんだかやけに興奮しているようだな。
『絶対さっきのは芸能人だって!』
『わかる、オーラが違ったよね。でもさ、あんな女性芸能人っていたっけ?』
『それが思い出せないんだよねぇ……うーん、誰だっけ?』
『ってか、隣にいた人……どうみてもあっち系だったんだけど……芸能人がああいう系と一緒に歩く?』
『ああー確かに。ってことは、あの人極妻?』
『きゃーっ、似合いすぎっ!!』
『でもさ、あれだけ着物着こなしているのをみると、ちょっと恥ずかしくなっちゃうよね』
『そう! なんであんなに綺麗に歩けるんだろ! 本当不思議。私なんて帯が苦しいやら、草履は痛いやらで早く脱ぎたいんだけど……』
『ふふっ。だから、着慣れてるんだよ。極妻だし』
『ああ、そっか。なるほどーっ』
とめどなく会話がされているのを茫然とみていると、彼女たちがこちらを向いて立ち止まった。
しまった。
勝手に話を聞いていたことに気づかれたか。
だが声が大きすぎて聞こえてきたという方が正しいんだが……。
と心の中で弁解していると、今度は私たちに向けての言葉が聞こえてくる。
『きゃーっ、こっちはあっち系じゃなくて、絶対マフィアの方だよね?』
『わかる! 絶対そう!!』
『ねぇ、マフィアの首領の奥さんって何ていうの? 姐さん?』
『それはあっちでしょ! あっ、でも何ていうんだろ?』
『ちょ、ちょっと聞こえてるって!』
『あっ、やばっ!! いこっ!!』
小声で話していたようだが、しっかり全部聞こえたが……。
「敬介……さっきのは私のことだな? マフィアの首領って……」
「ふふっ。かっこいいってことですよ。ほら、気にしないでいきましょう!」
グッと腕を組まれて、参道を進む。
「それにしてもさっきの子たちの話……」
「マフィアの首領か?」
「そっちじゃなくて、綺麗な極妻の話です。多分……」
敬介が楽しげな表情を見せたところで、目の前に見覚えのある着物が見えた。
「あっ、あれは……」
「ふふっ。やっぱり。朝陽くんだ。初詣来てましたね。周平さん、声かけましょう」
「あ、ああ。そうだな」
嬉しそうな敬介と共に、目の前の和服姿の二人に声をかけた。
「なんだ、お前たちも来ていたのか?」
驚いていたのを隠して冷静に声をかけると、涼平は驚いた表情で振り向いた。
やはり変装していたか。
それでも兄弟だからわかるものだな。
朝陽くんの方は流石だな。
着物を美しく着る姿勢をしているし、見事に着こなしている。
涼平の隣にいれば、極妻だと思われるのも無理はないか。
朝陽くんは私の隣に立つ美しい敬介の姿に驚いていたが、その反応すら敬介は楽しんでいるようだ。
まぁ二人きりの初詣でなくても楽しそうな敬介をみられるのはいい。
参拝を済ませ、おみくじを弾きに行くという敬介と朝陽くんの後を追うように涼平と並んで歩く。
「まさか、今日来るとは思わなかったな」
「母さんから、写真を送れって言われてたからな。それに朝陽が楽しみにしていたし。でも兄貴と浅香に会えて良かったよ。一緒に写真撮れば母さんも喜ぶだろう?」
「ああ、そうだな」
私は二人が楽しそうにおみくじを選んでいる写真を撮った。
「兄貴、その画像全部くれよ」
「ああ、わかってる。その代わり、お前も……」
「ああ、わかってるよ」
お互いに写真を取り合ってももちろんメインは自分の伴侶。
でも一緒に映る姿も可愛くて見逃すわけにはいかない。
これがわかっているからこそ、やりやすいんだ。
おみくじを引いて、旅行に吉が出た朝陽くんから、沖縄旅行の誘いがきた。
ちょうど西表島のイリゼホテルも完成間近だし、楽しめそうだ。
父さんたちに知られたら一緒に行きたいと言い出しそうだが……そこはおいおい考えるとしよう。
旅行の話に嬉しそうに手を取りあって喜ぶ敬介と朝陽くんを見ていると、微笑ましいが同時に嫉妬もしてしまう。
狭量すぎるかと思ったが、涼平は当然のように
「朝陽、そんなに可愛い顔を無防備に晒すな」
と敬介のそばから朝陽くんを奪い取る。
そうか、それでいいのか。
じゃあ、私もしっかりと自分のものを腕の中におさめておくことにしよう。
「敬介、可愛すぎる敬介を今すぐ独占したい……」
耳元でそう囁くと、敬介は一気に顔を赤らめて、
「イリゼホテルに行きましょうか」
と言ってくれた。
ああ、もう本当に私の伴侶は可愛すぎるな。
敬介はその後、自分だけじゃ恥ずかしいと思ったのか涼平と朝陽くんにもホテルに泊まろうと声をかけていた。
「明日、お茶でもしよう」
そんな誘い文句に朝陽くんを連れてイリゼホテルに向かったが、翌日敬介にそんな余裕はなかった。
まぁ、きっと朝陽くんも同じだろう。
なんせこんなに綺麗な着物姿の伴侶と愛し合って、一度や二度で我慢できるはずがないからな。
後で母さん宛に敬介と朝陽くんの着物姿の写真を送ったところ、それからすぐに鳴宮教授から着物着用でのお茶会に誘われてしまった。
どうやら母さんから画像が送られてきたらしい。
またすごいお茶会になりそうな予感がするが……それはまた別のお話。
「ああ、近くに大きなところがあるからそこに流れているのだろう。ここの方がゆっくり参拝できていい」
「そうですね」
「敬介、私から絶対に離れるなよ。敬介があまりにも美しいから変なのが寄ってきたら困る」
「ふふっ。大丈夫ですよ。周平さんが隣にいたら誰も近づいてこないですから」
可愛らしい笑顔を浮かべてそんなことを言ってくるが、やはりこの格好……逆に目立っているんじゃないか?
まぁ、敬介が気に入ってくれているのなら文句はないが。
誰も近づいてこないのならそれでいい。
「それにしても母さんは本当に着物を合わせるのが上手だ。敬介にピッタリ似合っているな」
「ふふっ。デザイナーの周平さんに言われると嬉しいです。あっ、ちょっと思ったんですけど、もしかしたら朝陽くんのところにもお義母さんが着物を送っているかもしれないですね」
「ああ、確かにそうだな。だが今年は旅行にも行かず家でのんびりと過ごすと言っていたから、わざわざ人混みにはこないんじゃないか?」
「ふふっ。周平さんはわかってないですね。朝陽くんならこういうのはかえって大喜びですよ。多分、蓮見を説得してでも一緒に来るはずです」
自信満々にそう言い切る敬介の言葉に納得してしまう。
そんな敬介に感心していると、参拝を終えてこちらに戻ってきた女性たちの声が聞こえてきた。
新年らしく振袖姿だが、なんだかやけに興奮しているようだな。
『絶対さっきのは芸能人だって!』
『わかる、オーラが違ったよね。でもさ、あんな女性芸能人っていたっけ?』
『それが思い出せないんだよねぇ……うーん、誰だっけ?』
『ってか、隣にいた人……どうみてもあっち系だったんだけど……芸能人がああいう系と一緒に歩く?』
『ああー確かに。ってことは、あの人極妻?』
『きゃーっ、似合いすぎっ!!』
『でもさ、あれだけ着物着こなしているのをみると、ちょっと恥ずかしくなっちゃうよね』
『そう! なんであんなに綺麗に歩けるんだろ! 本当不思議。私なんて帯が苦しいやら、草履は痛いやらで早く脱ぎたいんだけど……』
『ふふっ。だから、着慣れてるんだよ。極妻だし』
『ああ、そっか。なるほどーっ』
とめどなく会話がされているのを茫然とみていると、彼女たちがこちらを向いて立ち止まった。
しまった。
勝手に話を聞いていたことに気づかれたか。
だが声が大きすぎて聞こえてきたという方が正しいんだが……。
と心の中で弁解していると、今度は私たちに向けての言葉が聞こえてくる。
『きゃーっ、こっちはあっち系じゃなくて、絶対マフィアの方だよね?』
『わかる! 絶対そう!!』
『ねぇ、マフィアの首領の奥さんって何ていうの? 姐さん?』
『それはあっちでしょ! あっ、でも何ていうんだろ?』
『ちょ、ちょっと聞こえてるって!』
『あっ、やばっ!! いこっ!!』
小声で話していたようだが、しっかり全部聞こえたが……。
「敬介……さっきのは私のことだな? マフィアの首領って……」
「ふふっ。かっこいいってことですよ。ほら、気にしないでいきましょう!」
グッと腕を組まれて、参道を進む。
「それにしてもさっきの子たちの話……」
「マフィアの首領か?」
「そっちじゃなくて、綺麗な極妻の話です。多分……」
敬介が楽しげな表情を見せたところで、目の前に見覚えのある着物が見えた。
「あっ、あれは……」
「ふふっ。やっぱり。朝陽くんだ。初詣来てましたね。周平さん、声かけましょう」
「あ、ああ。そうだな」
嬉しそうな敬介と共に、目の前の和服姿の二人に声をかけた。
「なんだ、お前たちも来ていたのか?」
驚いていたのを隠して冷静に声をかけると、涼平は驚いた表情で振り向いた。
やはり変装していたか。
それでも兄弟だからわかるものだな。
朝陽くんの方は流石だな。
着物を美しく着る姿勢をしているし、見事に着こなしている。
涼平の隣にいれば、極妻だと思われるのも無理はないか。
朝陽くんは私の隣に立つ美しい敬介の姿に驚いていたが、その反応すら敬介は楽しんでいるようだ。
まぁ二人きりの初詣でなくても楽しそうな敬介をみられるのはいい。
参拝を済ませ、おみくじを弾きに行くという敬介と朝陽くんの後を追うように涼平と並んで歩く。
「まさか、今日来るとは思わなかったな」
「母さんから、写真を送れって言われてたからな。それに朝陽が楽しみにしていたし。でも兄貴と浅香に会えて良かったよ。一緒に写真撮れば母さんも喜ぶだろう?」
「ああ、そうだな」
私は二人が楽しそうにおみくじを選んでいる写真を撮った。
「兄貴、その画像全部くれよ」
「ああ、わかってる。その代わり、お前も……」
「ああ、わかってるよ」
お互いに写真を取り合ってももちろんメインは自分の伴侶。
でも一緒に映る姿も可愛くて見逃すわけにはいかない。
これがわかっているからこそ、やりやすいんだ。
おみくじを引いて、旅行に吉が出た朝陽くんから、沖縄旅行の誘いがきた。
ちょうど西表島のイリゼホテルも完成間近だし、楽しめそうだ。
父さんたちに知られたら一緒に行きたいと言い出しそうだが……そこはおいおい考えるとしよう。
旅行の話に嬉しそうに手を取りあって喜ぶ敬介と朝陽くんを見ていると、微笑ましいが同時に嫉妬もしてしまう。
狭量すぎるかと思ったが、涼平は当然のように
「朝陽、そんなに可愛い顔を無防備に晒すな」
と敬介のそばから朝陽くんを奪い取る。
そうか、それでいいのか。
じゃあ、私もしっかりと自分のものを腕の中におさめておくことにしよう。
「敬介、可愛すぎる敬介を今すぐ独占したい……」
耳元でそう囁くと、敬介は一気に顔を赤らめて、
「イリゼホテルに行きましょうか」
と言ってくれた。
ああ、もう本当に私の伴侶は可愛すぎるな。
敬介はその後、自分だけじゃ恥ずかしいと思ったのか涼平と朝陽くんにもホテルに泊まろうと声をかけていた。
「明日、お茶でもしよう」
そんな誘い文句に朝陽くんを連れてイリゼホテルに向かったが、翌日敬介にそんな余裕はなかった。
まぁ、きっと朝陽くんも同じだろう。
なんせこんなに綺麗な着物姿の伴侶と愛し合って、一度や二度で我慢できるはずがないからな。
後で母さん宛に敬介と朝陽くんの着物姿の写真を送ったところ、それからすぐに鳴宮教授から着物着用でのお茶会に誘われてしまった。
どうやら母さんから画像が送られてきたらしい。
またすごいお茶会になりそうな予感がするが……それはまた別のお話。
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