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番外編

楽しいお茶会  2

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<side敬介>

「お、お義母さん、どこに行くんですか?」

「ふふっ。私の部屋よ。せっかくのお茶パーティーだから、着替えをしてもらおうと思って」

「着替え、ですか?」

悠真くんと顔を見合わせている隣で、鳴宮教授は

「わぁ、なんだか楽しそうですね」

となんだか乗り気になっている。

「どんな服に着替えるんですか?」

「ふふっ。せっかくですから、可愛く変身しましょうか」

「可愛く?」

「以前周平から話を聞いたことがあるのだけど、皆さん、ウェディングドレスをお召しになったのでしょう?」

「ああ、前に敬介くんのホテル関連で着たことがあったね。あの時のドレス、宗一郎さんが買取してくれたからたまに着てるよ」

ああ、あれか。
一応買取はしてくれたけれど、周平さん……あのあと俺だけのためにドレスを作ってくれたんだよね。
そっちの方をよく着てるかも……ってちょっと恥ずかしくて言えないけど。

「みなさん、すごくお似合いだったと聞いたから私も見たかったって思っていたの。でも実際に本人にお会いしたら、ますます綺麗な方達ばっかりで嬉しくなってしまったわ。というわけで、今日は中世ヨーロッパのお茶会というテーマでやってみましょう!」

「中世、ヨーロッパの、お茶会、ですか?」

「ええ。ドレスアップして、テラスでお茶会したら雰囲気楽しめそうだし、あっ! そうだ! それぞれの旦那さまに執事になってもらうのはどうかしら?」

「えっ? 執事に?」

「ええ。コーヒーを淹れてとか、ケーキ取ってとか頼んだらきっとしてくれるわ。ねぇ、敬介くん、周平もやってくれるでしょう?」

「え、そ、そうですね……」

どうかなぁ……なんて思ったけど、

「それ! すごく楽しそう!!」

とものすごく乗り気になっていたのはやっぱり鳴宮教授。

「悠真さんはどう? なんだかもう決まっちゃいそうだけど……」

大丈夫かなと思いながら小声で尋ねてみたけれど、

「ええ、まぁドレスアップするのはちょっと恥ずかしいですけど、伊織さんの執事は見たいですね」

とちょっと乗り気な様子。

「悠真さんが乗り気なら、じゃあ、やってみようかな。私も周平さんの執事は見てみたいし」

「ふふっ。やっぱりそうですよね」

だって、こんな機会でもないとみられそうにないから。

でも周平さんの執事か……。
ふふっ。楽しそう。

「さぁ、じゃあ私のクローゼットから、お互いに似合いそうなものを選んでいきましょうか。洋服はたっぷりあるからどれでも選んでいいですよ」

そう言ってお義母さんが寝室の隣にある扉を開けると、一部屋丸々洋服が詰まっていて驚いた。

しかもどれも上質なものばかり。

「わぁ、これ悠真くんに似合いそう!」

「ええ、ほんと! こっちは敬介くんに合いそう!!」

お義母さんと教授で次々に選んでいくのを俺と悠真さんはただ茫然と眺めていた。

<side周平>

「……周平くん、皐月たちはどこに連れて行かれたんだ?」

「志良堂教授、申し訳ありません。母は言い出したら聞かなくて……。おかしなことにはならないはずですからご安心ください」

「いや、そんな心配は全くしていないが急に連れて行かれて少し驚いただけだ」

「本当に申し訳ありません。伊織も申し訳ない」

「いえ、そんなお気になさらず。悠真も皐月さんも驚いてはいましたが嫌がってはいませんでしたし、周平さんのお母さまなら安心ですから。とりあえず、お母さまがおっしゃった通りお茶会の準備をしておきましょう」

志良堂教授も伊織もなんでもないと言ってくれるが、本当にうちの母親ときたら……はぁー。
ため息しか出ないな。

とりあえず父さんに話をしておくか。

「教授、とりあえずリビングにどうぞ」

「ああ、ありがとう。お邪魔するよ」

ソファーに案内すると、父さんがコーヒーを持ってやってきた、

「いらっしゃいませ。あれ? 他の人たちは?」

「父さん、実は母さんが――」

さっきの出来事を全て話すと、

「それは申し訳ない。あ、挨拶が遅れました。私、周平と涼平、それに敬介と朝陽の父でございます。志良堂教授と伊織くんの話は予々伺っております。今日は我が家にお越しいただきありがとうございます。お越しいただいて早々に妻がはしゃいでしまいまして申し訳ありません」

と頭を下げてくれたが、

「いえいえ、可愛らしい奥方で何より。うちの皐月と話が会いそうですよ。うちのも楽しいことが大好きなもので、こちらに来る間もずっとはしゃいでいたのですよ」

と余裕たっぷりに笑顔で返してくれた。
ああ、本当にありがたい。

「うちの悠真も結構ノリがいいほうですから、きっとお母さまと仲良くしていると思いますよ。こういう姿を見られるのも滅多になくて私も楽しんでいますからお気になさらず。それよりも今日のお茶会で召し上がっていただこうと思って、プリンとクッキーを用意してきたんですよ。早速テーブルに並べましょうか」

「ああ、そうだな。奥方はテラスにと仰っていましたがそちらでよろしいですか?」

「はい。周平、案内してくれ。お皿とケーキスタンドを準備していますから好きに使っていただいて構いませんよ」

父が案内すると、教授と伊織はテラスに向かい、持ってきたスイーツを並べ始めた。

伊織の作ってきた美味しそうなカスタードプリンと抹茶やチョコなど五種類ほどのクッキー。
教授のお手製のスイートポテトパイ。
それから、父特製のアップルパイとガトーショコラ。

それらを並べるともう圧巻だ。

甘い匂いがテラス中に広がる。
私もこういう時のために何かお菓子の一つでも作れるようになっていた方が良さそうだな。

「ほお、これは素晴らしいな。そんじょそこらのスイーツビュッフェにも勝てそうだ」

「ハハッ。確かに」

「紅茶とコーヒーも準備万端です。あとは妻たちが下りてくるだけなんだが……」

遅いなと思っていると、

「お待たせー!」

と母の声が聞こえた。
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