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番外編

素晴らしいお宝

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他のお話で子どもの時の映像の話を書いたせいで、こっちの兄弟でも思いついてしまったお話です。

涼平&朝陽についてはかなり久し振りなのであんまり設定を覚えてなくて、特に蓮見兄弟の両親はどんなだったかうろ覚えなので、今回はまだ健在だというテイで海外で生活しているということで書いてみました。
もしどこかで両親がすでに亡くなった設定を出していたら……とりあえず今回はスルーしてください(笑)
楽しんでいただけると嬉しいです♡


  *   *   *


< side敬介>


そろそろ休憩でもしようかとデスクから立ち上がったその瞬間、久々の相手からの電話が鳴った。

ーもしもし、どうしたの?

ー敬介さん、今お時間大丈夫ですか?

ーちょうど休憩しようかと思ったところだから大丈夫だよ。

ーよかったぁ。

ーそれより朝陽くん。この前、ドラマが終わったばかりで休暇に入ってるんじゃないか?

ーそうなんです。久しぶりに一週間お休みもらえてのんびりしてたところです。

ーじゃあ、隣に蓮見も?

ーあ、いえ。涼平さん……今、お義父さんたちを空港に見送りに行ってるんです。

ーあれ? もう帰る日だった?

ーいいえ、急遽彼方から呼ばれちゃったみたいで予定を変更して急いで帰ることになっちゃって……涼平さんがすぐにチケットを取ってお二人を空港まで送りにいったんで俺はお留守番です。バタバタになった代わりにまた来月来るって仰ってましたから、その時は是非一緒に食事でもしましょうね。

ーああ。お義父さんたちには申し訳なかったな。せっかく東京に来てくれていたのに、俺の方が西表に行ってて……

ー仕方ないですよ。西表イリゼ建設でどうしても来て欲しいって言われたんですから。

ー明日には戻る予定だったから、明日の夜、食事でもって周平さんと話していたんだけどな。

ー浅香さん、今西表だから流石に周平さんは隣にいないですよね?

ーうん。いないけど、どうかした?

ー実は、すごいお宝をお義母さんに頂いたんで、浅香さんがこっちに戻ってきたらこっそり見ないかなって。そのお誘いです。

ーすごいお宝って? 

ー今回、お義母さんたちが帰国されたのは、こっちの家を処分するためだって聞いてますよね?

ーうん。もうあっちに永住することを決めたって仰ってたから、こっちの家にあるものを整理するんだって。

ーそれで、一昨日お義母さんたちの手伝いに涼平さんと行ってきたんですよ。その時に、お義母さんがこっそり教えてくれたんです。なんと! 涼平さんと周平さんの子どもの時からのアルバムとビデオですよ。

ーえっ!!! 本当にお宝じゃない!!

ーでしょう? それでお義母さんが事務所の俺宛に送ってくれたんですよ。だから今頃事務所の俺の部屋に置いてあるはずなんで、東京戻ってきたら事務所に寄ってもらえませんか? 一緒にみましょう!

ー絶対行くっ!!!

ーふふっ。浅香さんならそう言ってくれると思った。じゃあ、明後日とかどうですか? ちょうど次の仕事の台本が届くんで俺も事務所に行くんですよ。涼平さんにもそれならバレないし。

ーOK。わかった。じゃあ、明後日14時には行けるからその頃でいい?

ー大丈夫です。じゃあ、楽しみにしててくださいね。

嬉しそうな朝陽くんの声と変わらないくらい、俺も思いがけないお宝の登場に喜びを隠せなかった。


東京に戻った翌日、『テリフィックオフィス』の様子を見てくると言って一人で事務所に向かった。

石垣や西表から帰った後はいつも必ず事務所に寄るから、何も不審には思われなかったようでホッとした。

事務所に行くと

「あっ! 浅香さんっ!! 待ってたよ!」

と朝陽くんが駆け寄ってきた。

「ごめん、待たせちゃった?」

「ふふっ。俺が楽しみすぎて早々と来ちゃっただけ。お義母さんからの荷物届いていたよ!」

そう言って、朝陽くん専用の部屋に俺を連れて行ってくれる。

ここは朝陽くんのために蓮見が用意した部屋。
いつも朝陽くんはここで台本を覚えたり、撮影に必要な映像を見たりして集中力を高めているんだ。

だから、テレビはもちろん機材も揃っているからお義母さんが送ってくれた映像を見るにはもってこいの部屋だ。

「お義母さん、浅香さんにも渡してってたくさん詰めてくれたから、ここに置いて少しずつ持って帰っていいですよ」

「うん。そうする。わぁーっ! アルバムもそれぞれにちゃんとあるんだね」

「お義父さんが結構几帳面に整理してくれていたみたい。とりあえず写真は後にして映像見ません?」

「あっ! 見たいっ! 見たいっ!!」

「ふふっ。じゃあ、これから……」

そう言って朝陽くんは一本のビデオテープをセットした。

「セットの仕方も書いてあったから助かったよ。そうでもなきゃこのお宝映像見られないところだった」

「ふふっ。確かに」

ドキドキしながら映像が再生されるのを見ると、現れたのは小さいけれど見ただけで周平さんだとわかる男の子。

「可愛いっ!! この周平さん、小学生くらいかな」

「うん、そうかも。ほら、こっちの涼平さん、まだ幼稚園生みたいだよ」

「うわっ! これが蓮見? 信じられないくらい可愛いな」

「ふふっ。でも二人ともちゃんと今の面影ありますね。この時からモテてたんだろうな……」

「朝陽くん、ヤキモチ?」

「いえっ! そんなことはないですけど……でもやっぱりヤキモチかな……」

「ふふっ。だよね。ほら、見て! 周平さんの運動会! 一位の周平さんに女の子たちが群がってる!! こういうの見るとやっぱりちょっと妬いちゃうよね」

全然嬉しそうにしていないから、そこはホッとしてるけど。
朝陽くんのことを言えないくらい俺も相当ヤキモチ焼きだな。



「兄ちゃん、一位だったね」

「ああ、そうだな」

「でも俺のほうが早いからな」

「何言ってるんだ、俺が涼平に負けるわけないだろう!」

「いいや、勝てるもん! よーい、どんっ!!」

「ちょ――っ! はぁっ、はぁっ!」

「へへ~ん、ほらやっぱり俺の方が早かっただろ!! 俺が一位だ!!」

「あんなのズルだろ! いきなり走り出したんだから!」

「ズルでもなんでも勝てばいいんだよーだ!」

あっかんべーをしながら走り去っていく幼い頃の蓮見。
ふふっ。くだらない。
あいつにもこんな時代があったのか。

6つも上だから普通に勝負したら勝てないと思ってあんなこと……まずい、おかしすぎて我慢できないっ!!


一生懸命笑いを堪えながら朝陽くんに目をやると、涙を潤ませている。

「あ、朝陽くん? もしかして蓮見のこんな姿見て幻滅したのか? これは子どもの頃のことだから……」

「あっはっは。ちがいますよ! もう、二人とも可愛くっておかしくって我慢できなかったんです」

「ははっ。なんだ、びっくりした。でも、ほんとこんな時代があったんだなって笑えるな」

「本当にこれ、お宝映像ですよ」

「だな。流石に倉橋に見せたら蓮見が怒りそうだから、これは二人だけの秘密にしておこうか」

「ですね。でも、ほんと二人も可愛いーっ!!」



「なにが二人だけの秘密だって?」

「わっ!」
「えっ?」

突然部屋の扉が勢いよく開き、声が聞こえたと思って驚いて見てみるとそこにいたのは、周平さん、と蓮見……。

「えっ? どうして、ここに?」

「それはこっちが聞きたいな。こんなところに二人で入り込んで一体何をしているんだ?」

「敬介、私にも教えてもらおうか」

ジリジリと詰め寄ってくる蓮見と周平さんの姿に、俺と朝陽くんの顔からは笑顔が消えてしまっていた。



「はぁーっ、母さんも余計なことを……」

「涼平さん、知ってたんですか?」

「朝陽が母さんと何かコソコソ話をしているのは気づいていたが、まさかこんなのをもらって事務所に隠しているとは思ってなかったよ」

大きなため息を吐きながら朝陽くんを見つめる蓮見の隣で、周平さんもじっと俺を見ていた。

「あの、お義母さんを怒らないでください。俺たちのためにしてくれたんですよ。それに俺……涼平さんの子どもの時の姿見られてすごく楽しいんです」

「じゃあ、こんなビデオテープじゃなくてちゃんとディスクに保存しよう」

「えっ? いいんですか?」

「ああ。朝陽と浅香がそんなにも喜ぶんならな。いいだろ、兄貴」

「ああ。すぐにうちで全部作業できるように用意しておくよ」

「わぁーっ! ありがとうっ! 周平さん大好きっ!!」

あまりの嬉しさに抱きつくと、周平さんは嬉しそうに俺を抱きしめた。

そのままキスを……と思っていたのに、

「ん゛っ、んっ!」

それは大きな咳払いの音にかき消されてしまった。

「悪いけど、ここは朝陽の部屋だぞ。いちゃつくなら自分の部屋にしてくれ」

危うく親友の前でキスしてしまうところだったことに気づいて顔が赤くなる。

「じゃあ、敬介。帰ろうか」

周平さんはビデオデッキからビデオを取り出し、お義母さんから送られてきた重そうな段ボールに入れて軽々と持ち上げ、そのまま俺を自宅に連れ帰った。

「敬介……幼い頃の私はどうだった?」

「いっぱい女の子にモテてて不安になりました」

「えっ……」

「ふふっ。でも……俺を見るような優しい目で見てた人が誰もいなかったから、ホッとしましたよ。本当に周平さん、俺だけが好きなんですね」

「ああ。当たり前だろう? 私には生涯敬介だけだ」

「じゃあ、いっぱい愛してください……っ」

「――っ!!! 敬介っ!!」

俺はそのまま唇を奪われ、寝室に連れ込まれた。
あの映像の中の可愛い周平くんが、こんな獰猛な獣になるなんて……あの時の周平くんに教えてあげたいくらいだ。
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