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番外編

サプライズ  <悠真&祐悟side>

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他の作品でウエディングドレスの話を書いたら、このシリーズでもドレス話が読んでみたいとのリクエストをいただき勢いのままに書いてしまったお話です。
サラッと楽しんでいただければ嬉しいです♡

少し長くなりますので前後編に分けます。
後編は明日、もしくは明後日あたりにはアップします♫








「相談したいことがあるんだけど……」

そう言われて一瞬前回のことを思い出したのは私だけではなかった。
言い出した本人も

「あっ、違いますよ。今度は浮気とかそんなんじゃないからっ」

焦ったように話す敬介さんがすごく可愛いと思った。




西表イリゼリゾートの建築が進み、完成まであと3ヶ月を切った頃、私はいつものように銀座イリゼの社長室で敬介さんと打ち合わせを続けていた。

「悠真さんと安慶名さんの新居建設もだいぶ進んでますね。この前、西表イリゼの進捗状況を視察に行った時にも案内していただきましたけど、あれからまた進んだでしょう?」

「ええ。西表イリゼが完成の頃には私たちの家も完成する予定で準備を進めてますから」

「やっと一緒に住めるんですね」

「はい。やっとです」

伊織さんとお付き合いを始めてから7年近く。
その間、ほとんど離れて暮らしていた私たちにとっては、お付き合いを始めてすぐに同棲を始めた敬介さんや他の皆さんが羨ましくて仕方がなかった。

それでも私が西表を離れることはできないし、それを選んだのは自分自身だ。
ずっと一緒にいられなくても最愛の人が自分を愛してくれて、一緒にいる時には濃密で甘い時間を過ごすことができているのだからそれ以上求めてはいけないと思っていた。

けれど、敬介さんが西表にもイリゼホテルを作ってくれて、そこに伊織さんが移ることになり、私たちはようやく西表の地で共に暮らすことができるようになったのだ。

社長から素晴らしい建築士を紹介してもらい、私と伊織さんの希望を全て兼ね揃えた家を建築中で、私は毎日毎日仕事終わりに少しずつ完成していく家を見にいくのが日課となっていた。


「それで、相談っていうのは?」

「ああ、実は西表イリゼリゾートはブライダルに力を入れようと思っていて――」

敬介さんの話ではイリゼリゾートは日常の喧騒から離れた隠れ家でゆっくりと癒しの時間を過ごすということをコンセプトに国内展開しているのだけれど、今回の西表イリゼは秘境での結婚式をコンセプトに考えているようで、ブライダルコーナーを重要視する予定らしい。

「なるほど。同じ離島の石垣イリゼとは一線を画するコンセプトで受けると思いますよ! 今、若い世代を中心に西表は人気ですからね」

「悠真さんにそう言ってもらえると嬉しいです。それで、今回国内外の有名ドレスデザイナーに声をかけたところ、ぜひうちに置いてほしいという声が殺到しまして、サンプルとしてウエディングドレスを送っていただくことになったんです。それらの中からどれを西表イリゼに置くかを決めないといけないんですが……それを悠真さんにも一緒に選んでいただければと思いまして……」

「えっ? 私がですか?」

「送っていただくサンプルは一点物のデザインなのでどこからか漏れるようなことがあってはうちの信用問題に関わりますし、それに私1人で選ぶと好みが偏る恐れもありますし、悠真さんにお手伝いいただけたら嬉しいんですが」

「選ぶというのはデザインを見て判断するんですか?」

「いえ、実際に着用しての感想も欲しいですね。悠真さんならどんなドレスでもサイズには問題なさそうですし」

「敬介さんがそこまで仰ってくださるなら、私でよければお手伝いしますが2人でもかなりな量ではないですか?」

「そうなんですよ。あとは誰に頼もうかと考えていて……」

「それなら良い人を知っていますよ」

私の笑みにもしかして? と察したらしい敬介さんから笑みが溢れた。

「あー、なるほど。なら、朝陽くんや航くんも呼びましょうか? あ、でも倉橋にバレるとうるさいな」

確かに、社長は藤乃くんにGPSをつけているから藤乃くんが単独行動をするとすぐにチェックが入るかもしれない。

「それなら、あの方・・・に仲間に入っていただくのはどうですか?」

「ああーっ、なるほど。それならうまくいくかも。そのまま周平さんたちを驚かせるのも楽しいんじゃない?
俺たちがドレス着て目の前に突然現れたら流石の周平さんたちも驚くでしょ? 安慶名さんが驚く姿も見てみたいし」

「それは楽しそうですね。私も伊織さんも社長も今週はみんな東京にいますし、都合が合えばすぐにでもできますよ。
私、ちょっと電話してみます」

そう言って電話をかけたのは、鳴宮皐月さん。
伊織さんの養父である志良堂宗一郎さんのパートナーで、友達のように仲良くしてくださっている私の大切な人の1人だ。

ーもしもし、悠真くん?

ーはい。今、お時間大丈夫ですか?

ー大丈夫だよ。今、東京に来てるんだったよね? どうしたの?

ー実は、今敬介さんと銀座イリゼで打ち合わせをしているところなんですけど――――

全て話し終えると、皐月さんは案の定乗り気になってくれた。

ーそれ、すっごく楽しそう!! 悠真くんや敬介くんのドレス姿が見られるなんて最高じゃない! 早速宗一郎さんに協力してもらって、私たちがドレスを選んでいる間、倉橋くんたちを別の場所に集めてもらうから安心して! それで、決行はいつなの?

ー今、皐月さんと電話している間に、敬介さんが朝陽くんたちに連絡してくれて明後日なら2人とも都合がいいと言っているそうです。なので、明後日の14時以降でどうですか?

ーオッケー! じゃあ、宗一郎さんにもそう伝えておくから、明後日楽しみにしてるね。



「鳴宮教授も相変わらずだな。こういう計画にすぐ乗ってくれるからゼミ生たちにも人気で」

「ふふっ。わかる気がします。皐月さんと話していると本当に楽しくって」

「じゃあ、明後日。うちの会場にドレスを集めておくので楽しみにしててくださいね」

伊織さんが私のドレス姿をどう思ってくれるか……私はそれが楽しみで仕方がなかった。


✳︎     ✳︎      ✳︎


「皐月には内緒で君たちに相談したいことがあってな、集まってもらったんだ」

志良堂教授の突然の召集に集められたのは、俺と蓮見と周平さん、そして安慶名さんの4人。

「何か困ったことでも?」

「いや、そうじゃないんだ。実はもうすぐ皐月の誕生日だろう?
それでさりげなく欲しいものの話題を出したんだが、君たちの恋人たちとみんなで旅行に行きたいと言っててね……」

「えっ? 航?」

「ああ、航くんだけじゃなくて、朝陽くんと悠真くんと敬介くんも一緒にな」

突然の話に俺たちは驚きを隠せなかったが、教授から続く言葉に納得してしまった。

「皐月は君たちの恋人たちをいたく気に入っていてね、一緒に買い物をしたり、スイーツを食べに行ったり楽しい時間を過ごしたいんだそうだ」

以前、航を皐月さんに紹介した時、かなり気に入っている様子だった。
可愛らしい朝陽くんは言わずもがなだし、浅香もゼミにいた時から気に入られていた。
砂川も今は息子として仲良く連絡を取り合い、東京に来るたびに皐月さんとお茶をしていると聞いていた。
いわば同じ立場の5人は何かしら通じるものがあるのだろう。

「ただ、君たちの可愛い恋人たちを連れて行くとよからぬものたちがすぐに寄ってくるだろう? 流石に私1人で5人を守るのは無理だからできたら君たちも一緒に着いてきて欲しいんだ。総勢10人の大所帯になってしまうが、なんとか都合をつけてもらえないだろうかと相談したくて今日集まってもらったんだ」

確かにそれぞれ違ったタイプの可愛さを持っている5人を集めると変のが寄ってくるのは間違いない。
特に航は誰からも好かれるから近くで見守っていないと危ないんだ。
教授が1人では心許ないと我々に援護を求めるのは当然だろう。

「せっかくの鳴宮教授のお祝いですから、私は構いませんよ。航と都合を合わせてご一緒できます」
「朝陽のスケジュールを調整すればうちも大丈夫です」
「敬介もたまには自分のところ以外のホテルで休ませてあげたいと思っていたところですよ。ぜひご一緒させてください」
「私も悠真ももちろん大丈夫ですよ。皐月さん、きっと喜びますね」

俺たちがそれぞれ了承の言葉を言うと、教授は嬉しそうに破顔した。

「ありがとう。助かるよ。旅行の日程や場所も一緒に考えてもらえるか?」

「もちろんです。ホテルは私が手配しますよ。国内外どこでも場所を決めてもらえれば一番いいホテルを押さえますから」

俺がそういうと、蓮見が

「場所は海外にするか。その方が朝陽も落ち着けるだろうし。飛行機は俺が手配しますよ」

と言い出した。
よし、これでファーストクラスでの旅は決定だな。

「では旅行中の全ての食事の場所は私にお任せください」

料理人である安慶名さんが選んでくれるところなら楽しみだな。

1人出遅れた周平さんはどうしようかと一瞬悩んでいたが、いい考えを思いついたとばかりに目を輝かせた。

「旅行前に敬介たち5人をうちの店に呼んで好きな服を選んでもらいましょう。
鳴宮教授は敬介たちの服を選びたいと前々から仰ってましたから」

「ああ、それはいい。皐月が大喜びだよ」

周平さんの案に教授が大賛成してくれて周平さんはホッとしたように笑っていた。

その後、旅行先をフランスに決定したところで、各々の予定を確認することで話は終わった。

「今日は集まってくれてありがとう。今、スマホを見たんだが、今日は皐月が敬介くんのホテルでみんなの恋人たちとお茶をしているようだよ。知ってたかい? お茶会が終わって迎えにきて欲しいと言っているから、一緒に行かないか?」

教授の思わぬ言葉に俺たちはみんな顔を見合わせて驚いたが、誘われるがままに浅香の銀座のホテルへと向かった。
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