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番外編
お世話をしよう <前編>
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<side巧巳>
ー富永さん、どうかされましたか?
佑介さんが帰ってくるまで後二時間くらいかなと考えていた時に、突然スマホが鳴り出したかと思ったら相手は佑介さんの社長秘書の富永さんだった。
佑介さんの会社に入社することが決まり、入社前に会社案内をしてもらった時に、何かあった時のためにと連絡先を交換していた。
ー実は社長が体調を崩されて……
ーええっ? 佑介さん、大丈夫なんですか?
ー先ほどうちの医務室の医師に診察していただきましたが、風邪のようです。ただ熱が少し高いので今日はこのまま帰宅して自宅療養した方がいいということでした。解熱剤を処方されましたのでそれを受け取ってから、ご自宅にお送りいたします。自宅での看護は風丘さんにお任せしてよろしいですか?
ーはい、もちろんです。
ーそれでは三十分ほどで到着いたしますので、よろしくお願いいたします。
ーはい。わかりました。佑介さんをお願いします。
富永さんが一緒なら不安はない。
だけど、佑介さんが熱だなんて心配でたまらない。
とりあえずすぐに寝かせられるように布団を開けて、用意しておこう。
それから本当に三十分後にチャイムが鳴り、富永さんに肩を抱かれてふらふらになった佑介さんが帰ってきた。
こんな佑介さん見たことない、本当に身体が辛いんだろう。
「熱が高いので水分をたくさん摂らせた方がいいと言われましたので飲み物と食べやすいものを買ってきました」
「わぁ、ありがとうございます! 助かります」
「いえ。看護は大変だと思いますがよろしくお願いします。明日、明後日は休みですから。安静にしたらすぐに良くなると思いますよ」
「富永さんがいらっしゃって本当によかったです」
「何かあったらいつでもご連絡ください。あの、本当は寝室のベッドまで社長をお運びしたいのですが、きっとお二人の寝室に私が入るのは社長が嫌がると思いますので、こちらで巧巳さんにお預けしてよろしいですか?」
「えっ? あ、はい。大丈夫で――わっ!!!」」
「それではお気をつけください」
富永さんから渡されて、ぐったりとしている佑介さんを前から抱えるように抱き留めたけれど、熱があって力の抜けている佑介さんは今まで感じたことがないくらいに、重い……。
佑介さんはいつもぐったりとして動けなくなった俺を軽々とお姫さまのように抱っこしてくれるのに。
佑介さんの一大事に運ぶこともできないなんて、男として情けない……。
「風丘さん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です! 任せてください!」
なんとしてでも自力で頑張りたくて、そういうと富永さんは少し不安げにしつつも帰っていった。
いつも俺が動けない時に、佑介さんが俺のお世話をしてくれるように、俺もしっかり頑張らないと!
今が有給休暇中でよかった。
気合を入れて、佑介さんを支えながら寝室に向かう。
ふぅふぅ言いながら、一歩ずつ進む。
途中で止まってしまったらもう二度と動けなくなる気がして、止まらずに一生けんめい寝室を目指した。
「んっ……た、くみ……」
目は瞑っているけれど、佑介さんの辛そうな声が聞こえる。
「大丈夫、です。無理して、はぁっ、声……出さなくて、いいですよ。はぁっ、俺、ちゃんと、佑、介さんを、ベッドに……連れて行きます、から」
話しながら息が切れるけれど、寝室までもう少し。
大丈夫、やれる!
普段なら一分もかからない道のりを十倍以上の時間をかけて、ようやく寝室まで辿り着いた。
なんとかベッドに座らせて、横にさせる前にジャケットとネクタイを外した。
そしてゆっくりとベッドに寝かせていく。
よかった……布団を開けておいて、正解だったな。
ベルトを外し、ズボンを脱がせるとふわっと佑介さんの匂いがして興奮してしまう。
――っ、俺ってば、こんな時に何を考えてるんだ!
自分に呆れつつも、でもいつも昂った姿しか見ることがないから、通常の状態のままで下着におさまっているのを見るのはなんだか興奮してしまう。この通常の状態でも俺の昂った時より大きいんだからすごいよな。
なんだか吸い寄せられるように下着に顔を近づけると、熱があるからだろう。
いつもより濃い匂いがする。
うわっ、だめだ。
危うく襲いそうになってしまう。
熱がある相手にこんな思いを抱くなんて、俺……やばいな。
それはきっと、
――巧巳、今日も帰ってきたら……な? いいだろう?
朝からそんな言葉を言われていたからかもしれない。
必死に欲望を抑えるように、佑介さんの靴下を脱がせて布団をかけるとようやく佑介さんの匂いがしなくなってホッとした。
ー富永さん、どうかされましたか?
佑介さんが帰ってくるまで後二時間くらいかなと考えていた時に、突然スマホが鳴り出したかと思ったら相手は佑介さんの社長秘書の富永さんだった。
佑介さんの会社に入社することが決まり、入社前に会社案内をしてもらった時に、何かあった時のためにと連絡先を交換していた。
ー実は社長が体調を崩されて……
ーええっ? 佑介さん、大丈夫なんですか?
ー先ほどうちの医務室の医師に診察していただきましたが、風邪のようです。ただ熱が少し高いので今日はこのまま帰宅して自宅療養した方がいいということでした。解熱剤を処方されましたのでそれを受け取ってから、ご自宅にお送りいたします。自宅での看護は風丘さんにお任せしてよろしいですか?
ーはい、もちろんです。
ーそれでは三十分ほどで到着いたしますので、よろしくお願いいたします。
ーはい。わかりました。佑介さんをお願いします。
富永さんが一緒なら不安はない。
だけど、佑介さんが熱だなんて心配でたまらない。
とりあえずすぐに寝かせられるように布団を開けて、用意しておこう。
それから本当に三十分後にチャイムが鳴り、富永さんに肩を抱かれてふらふらになった佑介さんが帰ってきた。
こんな佑介さん見たことない、本当に身体が辛いんだろう。
「熱が高いので水分をたくさん摂らせた方がいいと言われましたので飲み物と食べやすいものを買ってきました」
「わぁ、ありがとうございます! 助かります」
「いえ。看護は大変だと思いますがよろしくお願いします。明日、明後日は休みですから。安静にしたらすぐに良くなると思いますよ」
「富永さんがいらっしゃって本当によかったです」
「何かあったらいつでもご連絡ください。あの、本当は寝室のベッドまで社長をお運びしたいのですが、きっとお二人の寝室に私が入るのは社長が嫌がると思いますので、こちらで巧巳さんにお預けしてよろしいですか?」
「えっ? あ、はい。大丈夫で――わっ!!!」」
「それではお気をつけください」
富永さんから渡されて、ぐったりとしている佑介さんを前から抱えるように抱き留めたけれど、熱があって力の抜けている佑介さんは今まで感じたことがないくらいに、重い……。
佑介さんはいつもぐったりとして動けなくなった俺を軽々とお姫さまのように抱っこしてくれるのに。
佑介さんの一大事に運ぶこともできないなんて、男として情けない……。
「風丘さん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です! 任せてください!」
なんとしてでも自力で頑張りたくて、そういうと富永さんは少し不安げにしつつも帰っていった。
いつも俺が動けない時に、佑介さんが俺のお世話をしてくれるように、俺もしっかり頑張らないと!
今が有給休暇中でよかった。
気合を入れて、佑介さんを支えながら寝室に向かう。
ふぅふぅ言いながら、一歩ずつ進む。
途中で止まってしまったらもう二度と動けなくなる気がして、止まらずに一生けんめい寝室を目指した。
「んっ……た、くみ……」
目は瞑っているけれど、佑介さんの辛そうな声が聞こえる。
「大丈夫、です。無理して、はぁっ、声……出さなくて、いいですよ。はぁっ、俺、ちゃんと、佑、介さんを、ベッドに……連れて行きます、から」
話しながら息が切れるけれど、寝室までもう少し。
大丈夫、やれる!
普段なら一分もかからない道のりを十倍以上の時間をかけて、ようやく寝室まで辿り着いた。
なんとかベッドに座らせて、横にさせる前にジャケットとネクタイを外した。
そしてゆっくりとベッドに寝かせていく。
よかった……布団を開けておいて、正解だったな。
ベルトを外し、ズボンを脱がせるとふわっと佑介さんの匂いがして興奮してしまう。
――っ、俺ってば、こんな時に何を考えてるんだ!
自分に呆れつつも、でもいつも昂った姿しか見ることがないから、通常の状態のままで下着におさまっているのを見るのはなんだか興奮してしまう。この通常の状態でも俺の昂った時より大きいんだからすごいよな。
なんだか吸い寄せられるように下着に顔を近づけると、熱があるからだろう。
いつもより濃い匂いがする。
うわっ、だめだ。
危うく襲いそうになってしまう。
熱がある相手にこんな思いを抱くなんて、俺……やばいな。
それはきっと、
――巧巳、今日も帰ってきたら……な? いいだろう?
朝からそんな言葉を言われていたからかもしれない。
必死に欲望を抑えるように、佑介さんの靴下を脱がせて布団をかけるとようやく佑介さんの匂いがしなくなってホッとした。
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はい。不倫相手の男は佑介から提供された相手なので、ただただ楽しみたいだけの人ですね。こういう人には運命の相手も現れないので妹はそれに乗った時点で終わりですからね。巧巳に戻れるはずはないですね。
忙しい部署に勤めていたからもう少し融通を聞かせてくれたら残ったかもしれませんが今の巧巳にとって最も大切なものは佑介ですからね。佑介の会社で働けるならそっちの方がいいですもんね。
会社に移るまでの間、少し新婚気分でお料理を楽しんでますが確実に巧巳専用アプリですね(笑)