大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

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待ち人来たる

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『それにしてもケイトさんとミシェルが加わったら、さらに盛り上がっているようですね。流石に話の内容までは聞こえないがチラチラと視線も感じますし』

セルジュの言葉にそっとユヅルたちの席をみれば、確かにみんなの視線がチラチラとセルジュに向いている。
ユヅルまでもがセルジュに視線を送っているのが気になるところだが、一体どんな話をしているのか……。

『きっとミシェルさんが昨夜の話でも聞かせているんじゃないですか? 表情を見るとみんな興味津々でミシェルさんの話に聞き入っているようですから』

そんなスオウの言葉に賛同する。

『ああ、なるほど。お前、あのベビードールに興奮してミシェルにいろんなことをやらせたんじゃないか?』

『ふふっ。それはノーコメントにしておきます』

すました顔をしているが、私はセルジュに少しサディスティックな一面があることを知っている。
といっても暴力を振るうわけではない。
ミシェルをわざと不安にさせて煽ったり、困らせてみたりするのが好きなだけだ。

あんな風に紳士的に見せておいて私より独占欲が強いのだから、本当にタチが悪い。

フランス全土だけでなく、ヨーロッパ中で放送されていたパリ国際コンクールの会場で生放送にも関わらず、ミシェルに自分への愛を告白させるように仕向け、そして、キスまでやってのけるほどの強者だ。
あれをみれば、ミシェルに手を出そうなんていう者が現れるわけがない。
あれほどの牽制をしたから、セルジュはミシェルを一人残してフランスを離れても安心なのだ。

といっても、毎日一時間以上のビデオ通話は欠かさないのだけど。

まぁ、それはただ単にセルジュが我慢できないだけだろう。
そのビデオ通話で一体どんな内容を繰り広げているのか見当もつかないし、想像したくもないが、きっとそこでもミシェルにいろいろなことをさせていることだろう。

今までミシェルに対するセルジュの独占欲の強さには呆れるほどだったが、ユヅルという伴侶ができた今ではあの頃のセルジュの気持ちがよくわかる。

私だって、ユヅルが私の愛しい伴侶だとヨーロッパ全土どころか、世界中に知らせてやりたいくらいだ。
だから私はユヅルを私の伴侶として選んだことを発表するのだ。

発表したら騒がしくなるだろうから、アヤシロたちに迷惑をかけてしまうだろう。
だから、発表は年明け。
新しい年とともに私とユヅルは誰もが知る夫夫になるのだ。


「んっ? 理央、どうかしたか?」

ミヅキの言葉にユヅルたちの席をみれば、今度はミヅキに視線を送っている。
しかもリオの顔がほんのりと赤く染まっているようにも見える。

なんでもないとリオは言っていたが、間違いなく何かあっただろう。

セルジュの話からミヅキの話に移ったのか?
ミヅキの話題はどんな話か想像もつかないが、あの表情を見る限り夜の話のような気がする。

後でそれとなくユヅルに尋ねてみるか。

『ところで、アヤシロとセルジュがくる前に明日の予定が決まったんだ』

『どこかに出かけるのか?』

『ああ、ユヅルがみんなとクリスマスマーケットに行きたいと言うのでな』

『クリスマスマーケット? この全員で? いやいや、無理だろ』

アヤシロは信じられないと言った様子で目を丸くしているが、その反応は当然だろう。
なんせ全員が全員、人目を惹く存在なのだから。
特にユヅルたちはどこから狙われるかわかったものじゃない。
そんなユヅルたちを連れて大勢が集まるクリスマスマーケットに行くんだ。
驚くのもよくわかる。

『ジョルジュやスオウとも話をして、各々がしっかりと伴侶を守るということで出かけることになった。もちろん、パリ警視庁にある我が家専属警備隊にもしっかりと周りを固めてもらうからみんなは自分の伴侶だけをみていたらいい』

『しかし……』

『綾城、お前が心配する気持ちもよくわかるが、みんなで過ごせるのもあとわずかしかない。せっかくだから理央に思い出を作ってやりたいんだよ』

『観月……わかったよ。佳都も喜ぶだろうからな』

ミヅキの思いがアヤシロにも伝わったようだ。
さすが親友だな。

『それにしても悠木は遅――』
『お待たせしてすみません』

アヤシロの言葉に被さるように聞こえてきたのは、ようやく現れた待ち人の声。

その声の方向に視線を向けた途端、みんなが息を呑んだ。
そして、おそらく同じことを思ったに違いない。

なんだ……あの色気ダダ漏れの二人は……。
特にユウキの腕の中で身動き一つせず抱きついているあのソラの姿。

もしかして今の今まで愛し合っていたのか?

ふふっ。アヤシロのことを鬼畜だと言っていたが、やはり鬼畜はユウキの方だったようだな。
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