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幸せな夫夫になると誓うよ
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司祭は聖書の言葉を引用し、夫婦(夫夫)とは何たるかを説いた後で、自らの言葉で私たちに語りかけた。
ミヅキとリオ、ユウキとソラと続いて、私たちにも。
「ユヅル、あなたの、ソンザイ、そのものが、エヴァンの、ゲンドウリョク、とナル。イッショウ、エヴァンの、そばで、エヴァンの、ササえ、となるヨウニ。そして、エヴァンは、ユヅルを、イッショウ、アイし、シアワセ、にするヨウニ。おタガイに、シンジあい、ササえあって、イきるコトが、ダイジ」
聞き取るのはともかく、日本語を話すのはあまり得意ではないと言っていたが、辿々しくもしっかりと伝えてくれた言葉をユヅルは真剣に聞き入っていた。
ユヅルの存在こそが私の原動力。
まさしくその通りだ。
ユヅルが私のそばからいなくなれば、途端に仕事どころか、生きることもままならなくなるだろう。
ユヅルがそばにいてくれればそれで私は生きていられる。
それを守れるのなら、私は一生ユヅルを愛し続ける。
ユヅルは司祭の言葉に一切の躊躇いもなく、
僕……エヴァンさんのそばで一生支え続けます」
と言ってくれた。
本当にユヅルと出会えたことは私の人生において最大の幸運だった。
あの時ユヅルとの縁を繋いでくれた父の形見のスマホは一生大切に保管しておくとしよう。
指輪の交換という司祭の言葉に私の元にリュカが駆け寄ってきて、私の手に美しい小箱を渡してくれた。
これには私がユヅルのために作った結婚指輪が入っている。
ユヅルの細く長い指を美しく彩る結婚指輪をどうするか、それはドレス同様に難しかった。
だが、それと同じくらい考えることは楽しかった。
なんせ一生物だ。
たくさんのデザインを考えようやく決まったのが、希少なダイヤモンドをあしらったフルエタニティリング。
指輪の細さもダイヤの大きさにもかなり拘って作った至極の逸品だ。
ユヅルはこの指輪を一目見るや、目を輝かせ喜んでくれた。
ああ、この笑顔を見るために作ったのだ。
それが叶って私は今最高に幸せだ。
ユヅルの小さな左手をとり、薬指に嵌めるとユヅルは嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「エヴァンさん、次は僕が」
そう言って、ユヅルが私の手をとる。
小さな指で私の指輪を嵌めてくれた瞬間、ユヅルと出会ってからのことが一気に甦ってきた。
ああ、ようやくこの時が来たのだ
ユヅルが嵌めてくれたこの指輪を私は生涯外さない……そう心に誓った。
指輪の交換の後は誓いのキス。
ユヅルがほんのり頬を染めるのも可愛らしい。
ミヅキたち、そしてユウキたちの誓いのキスを経て私たちの番だ。
ユヅルの顔の前に被さっていた薄いベールをあげると、ユヅルの表情が鮮明に映る。
『Je t’aime.』
自然に漏れ出た言葉を与えながら、ユヅルと唇を重ね合わせる。
甘く柔らかな唇の感触を味わいながら、ゆっくりと離すとユヅルの口からも
「僕も、愛してます……」
と可愛らしい声が漏れた
歓声と拍手にかき消されるほど小さな言葉でも、私の耳からは一生消えることはないだろう。
結婚証明書に私とユヅルの名前を書く。
漢字で書こうか、アルファベットにしようかと悩んでいたが、私はアマネが考えた『弓弦』という漢字が好きなのだ。
ケイトと初めて会った時に初めてそんな意味があることを知ったが、その時、アマネがニコラとの繋がりをユヅルに託したのだとわかった。
ニコラの命の次に大切にしていたヴァイオリン。
三人で穏やかな生活を作っていたら、きっとユヅルという名を喜んだに違いない。
これからユヅル・ロレーヌとしての人生を歩んでいくユヅルにとって、最後にこの漢字を書く機会かもしれない。
そんな思いを込めてユヅルに告げると、ユヅルは嬉しそうに自分の漢字名を結婚証明書に書き記した。
美しく繊細でそれでいて力強いその字を記念に大切に保管するとしよう。
私たちが書き終えたのを確認して、司祭が
『それでは彼らの結婚の証人としてサインをお願いします』
と告げると、私たちの前にセルジュとミシェルがやってきた。
同様にミヅキたちの前にはマサオミとシュウゴが。
そしてユウキたちの前にはアヤシロとケイトが並んだ。
ユヅルに祝いの言葉を告げるミシェルの横で、セルジュは
『これからもお二人仲良くお幸せに。私はこの場にいられて本当に幸せです』
と少し涙を浮かべながらサインをしてくれた。
『お前たちに負けないくらい幸せな夫夫になるよ』
笑顔を見せると、セルジュは嬉しそうに笑った。
隣でミシェルがユヅルをギュッと抱きしめたが、ここで引き離しては感動も台無しだ。
今日だけ、今日だけ……と言い続けたが、あまりの長さに
「もういいだろう」
と引き離してしまった。
セルジュもミシェルも笑っていたが、私の狭量さはもう変わることはないだろう。
なんせユヅルが可愛すぎるのだから。
愛しいユヅルを抱きしめながら、式は滞りなく無事に終了した。
ミヅキとリオ、ユウキとソラと続いて、私たちにも。
「ユヅル、あなたの、ソンザイ、そのものが、エヴァンの、ゲンドウリョク、とナル。イッショウ、エヴァンの、そばで、エヴァンの、ササえ、となるヨウニ。そして、エヴァンは、ユヅルを、イッショウ、アイし、シアワセ、にするヨウニ。おタガイに、シンジあい、ササえあって、イきるコトが、ダイジ」
聞き取るのはともかく、日本語を話すのはあまり得意ではないと言っていたが、辿々しくもしっかりと伝えてくれた言葉をユヅルは真剣に聞き入っていた。
ユヅルの存在こそが私の原動力。
まさしくその通りだ。
ユヅルが私のそばからいなくなれば、途端に仕事どころか、生きることもままならなくなるだろう。
ユヅルがそばにいてくれればそれで私は生きていられる。
それを守れるのなら、私は一生ユヅルを愛し続ける。
ユヅルは司祭の言葉に一切の躊躇いもなく、
僕……エヴァンさんのそばで一生支え続けます」
と言ってくれた。
本当にユヅルと出会えたことは私の人生において最大の幸運だった。
あの時ユヅルとの縁を繋いでくれた父の形見のスマホは一生大切に保管しておくとしよう。
指輪の交換という司祭の言葉に私の元にリュカが駆け寄ってきて、私の手に美しい小箱を渡してくれた。
これには私がユヅルのために作った結婚指輪が入っている。
ユヅルの細く長い指を美しく彩る結婚指輪をどうするか、それはドレス同様に難しかった。
だが、それと同じくらい考えることは楽しかった。
なんせ一生物だ。
たくさんのデザインを考えようやく決まったのが、希少なダイヤモンドをあしらったフルエタニティリング。
指輪の細さもダイヤの大きさにもかなり拘って作った至極の逸品だ。
ユヅルはこの指輪を一目見るや、目を輝かせ喜んでくれた。
ああ、この笑顔を見るために作ったのだ。
それが叶って私は今最高に幸せだ。
ユヅルの小さな左手をとり、薬指に嵌めるとユヅルは嬉しそうな笑顔を浮かべた。
「エヴァンさん、次は僕が」
そう言って、ユヅルが私の手をとる。
小さな指で私の指輪を嵌めてくれた瞬間、ユヅルと出会ってからのことが一気に甦ってきた。
ああ、ようやくこの時が来たのだ
ユヅルが嵌めてくれたこの指輪を私は生涯外さない……そう心に誓った。
指輪の交換の後は誓いのキス。
ユヅルがほんのり頬を染めるのも可愛らしい。
ミヅキたち、そしてユウキたちの誓いのキスを経て私たちの番だ。
ユヅルの顔の前に被さっていた薄いベールをあげると、ユヅルの表情が鮮明に映る。
『Je t’aime.』
自然に漏れ出た言葉を与えながら、ユヅルと唇を重ね合わせる。
甘く柔らかな唇の感触を味わいながら、ゆっくりと離すとユヅルの口からも
「僕も、愛してます……」
と可愛らしい声が漏れた
歓声と拍手にかき消されるほど小さな言葉でも、私の耳からは一生消えることはないだろう。
結婚証明書に私とユヅルの名前を書く。
漢字で書こうか、アルファベットにしようかと悩んでいたが、私はアマネが考えた『弓弦』という漢字が好きなのだ。
ケイトと初めて会った時に初めてそんな意味があることを知ったが、その時、アマネがニコラとの繋がりをユヅルに託したのだとわかった。
ニコラの命の次に大切にしていたヴァイオリン。
三人で穏やかな生活を作っていたら、きっとユヅルという名を喜んだに違いない。
これからユヅル・ロレーヌとしての人生を歩んでいくユヅルにとって、最後にこの漢字を書く機会かもしれない。
そんな思いを込めてユヅルに告げると、ユヅルは嬉しそうに自分の漢字名を結婚証明書に書き記した。
美しく繊細でそれでいて力強いその字を記念に大切に保管するとしよう。
私たちが書き終えたのを確認して、司祭が
『それでは彼らの結婚の証人としてサインをお願いします』
と告げると、私たちの前にセルジュとミシェルがやってきた。
同様にミヅキたちの前にはマサオミとシュウゴが。
そしてユウキたちの前にはアヤシロとケイトが並んだ。
ユヅルに祝いの言葉を告げるミシェルの横で、セルジュは
『これからもお二人仲良くお幸せに。私はこの場にいられて本当に幸せです』
と少し涙を浮かべながらサインをしてくれた。
『お前たちに負けないくらい幸せな夫夫になるよ』
笑顔を見せると、セルジュは嬉しそうに笑った。
隣でミシェルがユヅルをギュッと抱きしめたが、ここで引き離しては感動も台無しだ。
今日だけ、今日だけ……と言い続けたが、あまりの長さに
「もういいだろう」
と引き離してしまった。
セルジュもミシェルも笑っていたが、私の狭量さはもう変わることはないだろう。
なんせユヅルが可愛すぎるのだから。
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