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ユヅルはクラウンティアラを大切に箱に戻すと、大事そうに胸に抱きかかえた。
そんなにも喜んでもらえると嬉しいものだ。
ショコラショーとケーキを楽しんで、私たちはエミールの店を後にした。
「ここからはもう城に向かっていくだけだ。後30分ほどだからゆったりと寛いでいてくれ」
ユヅルは嬉しそうにはーいと返事をすると、リオとソラと嬉しそうに車に乗り込んだ。
私たちも後を追うように車に乗り込むと、隣に座ったミヅキが
『あの……ロレーヌ総帥……』
と少し言いにくそうにしながら声をかけてきた。
フランス語だったのは、リオたちに聞かれたくないからだろうか?
『どうした?』
『あの……さっきの、クラウンティアラですが……あれは本気で、フェーヴが当たった人に渡すおつもりだったんですか?』
『んっ? そのつもりだったが、何か悪かったか?』
『い、いえ。悪いも何も……あれはおそらく億は下らないかと思うのですが……』
『そうだな。三億くらいか、まぁ大したことはないよ』
「――っ!!」
私の言葉に大きく目を見開いたミヅキと、そして私たちの会話を聞いていたユウキも同じように目を丸くしていた。
『ミヅキもユウキもどうかしたか?』
『いえ……心からあのクラウンティアラが当たらなくてホッとしたところです』
『ええ。三億は流石に受け取れませんからね』
『そういうものか?』
ふむ。
私からの贈り物なら誰でも欲しがるものだが、やはりこの二人はアヤシロと同じであまり物欲がないようだ。
そういうところも気に入ったな。
『と、ところで、これからのことですが、着替えを済ませたらカメラマンとの撮影だとおっしゃってましたよね?』
『ああ。そうだ。あの城の中で、どこで撮ってもらっても構わないよ。今日は全ての部屋を開放しているからそれぞれ思い思いの場所で撮ってもらったらいい』
『庭もいいですか?』
『ああ。もちろん! そうか、庭もあったな。確かに今日のような天気なら外での撮影も映えるはずだ。庭も広いからどこを使ってくれてもいいよ。噴水も、花壇もいいな。観光客エリアからは私たちのエリアには絶対に入ってこられないから、安心するといい』
『城内でおすすめの場所はありますか?』
『そうだな、大階段では撮っておいた方がいいだろうな。あとはギャラリーもいいぞ。それから舞踏室と、ああ、テラスから湖が見えるんだ。そこで撮るのもおすすめだな』
『わぁ、撮りたい場所が多すぎて1時間で回れるかどうか……。うれしい悲鳴ですね』
そういうと、ミヅキとユウキはそれぞれ話し合いを始めた。
『じゃあ、俺は庭から撮るよ』
『わかった。じゃあ、俺はテラスとギャラリーにしよう』
お互いに取る順番を決めているようだ。
場所が広いとはいえ、やはり二人っきりの撮影がいいのだろう。
『ならば、私は大階段で撮っておこうか。私がユヅルに仕立てたドレスはトレーンが長いから、階段で映えるぞ』
『ああ、それはいいですね。私のは光に当たるとほのかなピンク色に変わるのですよ』
『私のは理央がずっと見ていた絵本のままのドレスなので、可愛らしいと思いますよ』
私もその話し合いに参加しながら、お互いに仕立てたドレスの素晴らしさを熱く語った。
どれも違って、見ているだけで楽しめそうだ。
そんなことを話していると、車はとうとう目的地の城に到着した。
『ああ、やっぱり素晴らしいな。このお城は。まさかここで結婚式が挙げられるとは……』
ミヅキもユウキも感動してくれているようだが、ユヅルたちは先ほどまで盛り上がっていたというのに、突然静かになってしまった。
一体どうしたのだろう?
気になって、ユヅルに話しかけにいくと、どうやらこの城の大きさに驚いたようだ。
あまりにも古い城だから想像と違ったと思ったが、驚いただけのようでホッとした。
ミヅキたちが車から降りていったのを確認して、私もユヅルをエスコートして降りる。
実際に大きな城を目の当たりにしてポカーンと口を開けているユヅルが実に可愛らしい。
続けてやってきたシュウゴたちもまた驚いているようだったが、アヤシロとケイトは懐かしいと嬉しそうに笑っていた。
そういえば新婚旅行であちらの観光客エリアに泊まったと言っていたな。
きっとこちらの方がより気に入ってくれることだろう。
そんなにも喜んでもらえると嬉しいものだ。
ショコラショーとケーキを楽しんで、私たちはエミールの店を後にした。
「ここからはもう城に向かっていくだけだ。後30分ほどだからゆったりと寛いでいてくれ」
ユヅルは嬉しそうにはーいと返事をすると、リオとソラと嬉しそうに車に乗り込んだ。
私たちも後を追うように車に乗り込むと、隣に座ったミヅキが
『あの……ロレーヌ総帥……』
と少し言いにくそうにしながら声をかけてきた。
フランス語だったのは、リオたちに聞かれたくないからだろうか?
『どうした?』
『あの……さっきの、クラウンティアラですが……あれは本気で、フェーヴが当たった人に渡すおつもりだったんですか?』
『んっ? そのつもりだったが、何か悪かったか?』
『い、いえ。悪いも何も……あれはおそらく億は下らないかと思うのですが……』
『そうだな。三億くらいか、まぁ大したことはないよ』
「――っ!!」
私の言葉に大きく目を見開いたミヅキと、そして私たちの会話を聞いていたユウキも同じように目を丸くしていた。
『ミヅキもユウキもどうかしたか?』
『いえ……心からあのクラウンティアラが当たらなくてホッとしたところです』
『ええ。三億は流石に受け取れませんからね』
『そういうものか?』
ふむ。
私からの贈り物なら誰でも欲しがるものだが、やはりこの二人はアヤシロと同じであまり物欲がないようだ。
そういうところも気に入ったな。
『と、ところで、これからのことですが、着替えを済ませたらカメラマンとの撮影だとおっしゃってましたよね?』
『ああ。そうだ。あの城の中で、どこで撮ってもらっても構わないよ。今日は全ての部屋を開放しているからそれぞれ思い思いの場所で撮ってもらったらいい』
『庭もいいですか?』
『ああ。もちろん! そうか、庭もあったな。確かに今日のような天気なら外での撮影も映えるはずだ。庭も広いからどこを使ってくれてもいいよ。噴水も、花壇もいいな。観光客エリアからは私たちのエリアには絶対に入ってこられないから、安心するといい』
『城内でおすすめの場所はありますか?』
『そうだな、大階段では撮っておいた方がいいだろうな。あとはギャラリーもいいぞ。それから舞踏室と、ああ、テラスから湖が見えるんだ。そこで撮るのもおすすめだな』
『わぁ、撮りたい場所が多すぎて1時間で回れるかどうか……。うれしい悲鳴ですね』
そういうと、ミヅキとユウキはそれぞれ話し合いを始めた。
『じゃあ、俺は庭から撮るよ』
『わかった。じゃあ、俺はテラスとギャラリーにしよう』
お互いに取る順番を決めているようだ。
場所が広いとはいえ、やはり二人っきりの撮影がいいのだろう。
『ならば、私は大階段で撮っておこうか。私がユヅルに仕立てたドレスはトレーンが長いから、階段で映えるぞ』
『ああ、それはいいですね。私のは光に当たるとほのかなピンク色に変わるのですよ』
『私のは理央がずっと見ていた絵本のままのドレスなので、可愛らしいと思いますよ』
私もその話し合いに参加しながら、お互いに仕立てたドレスの素晴らしさを熱く語った。
どれも違って、見ているだけで楽しめそうだ。
そんなことを話していると、車はとうとう目的地の城に到着した。
『ああ、やっぱり素晴らしいな。このお城は。まさかここで結婚式が挙げられるとは……』
ミヅキもユウキも感動してくれているようだが、ユヅルたちは先ほどまで盛り上がっていたというのに、突然静かになってしまった。
一体どうしたのだろう?
気になって、ユヅルに話しかけにいくと、どうやらこの城の大きさに驚いたようだ。
あまりにも古い城だから想像と違ったと思ったが、驚いただけのようでホッとした。
ミヅキたちが車から降りていったのを確認して、私もユヅルをエスコートして降りる。
実際に大きな城を目の当たりにしてポカーンと口を開けているユヅルが実に可愛らしい。
続けてやってきたシュウゴたちもまた驚いているようだったが、アヤシロとケイトは懐かしいと嬉しそうに笑っていた。
そういえば新婚旅行であちらの観光客エリアに泊まったと言っていたな。
きっとこちらの方がより気に入ってくれることだろう。
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