72 / 163
嬉しい贈り物
しおりを挟む
思いがけず素晴らしい贈り物を貰ったものだ。
この映像はユヅルだけでなく、私やジュール、それこそ、このロレーヌ家にとっても素晴らしいクリスマスプレゼントになった。
スクリーンを見ながら涙を流しているジュールを見ているとこちらまで嬉しくなる。
久しぶりにみるニコラとアマネの姿に、ユヅルの次に喜んでいるのはジュールかもしれないな。
ジュールが涙を流していることに気づいたシュウゴがさっとジュールの元に近づいた。
ジュールのあの嬉しそうな顔を見ると、母君から聞いたというニコラとアマネの思い出話でもしてあげているのかもしれない。
本当に優しくて良い子だ。
ジョルジュもマサオミを気に入っていることだし、フランスで一緒に生活してくれないだろうか……。
リオとミヅキもこちらに来てくれたら、ユヅルの行動範囲が広くできるのだがな。
ユヅルはジュールの涙に気づいたようでもらい泣きをしているようだった。
ポケットからハンカチを取り出して拭ってやると、嬉しそうに笑っていた。
ユヅルは自分が選んだ贈り物が喜んでもらえるかと躊躇っていたようだったが、ユヅルが一生懸命彼らのために選んだものを喜ばないわけがない。
安心させてやると、ユヅルは嬉しそうに彼らにプレゼントを渡しにいった。
それを少し離れた場所から見守っていると、ミヅキが声をかけてきた。
「弓弦くんも相当悩んだんですか? プレゼント探し」
「ああ、そうだな。だが、最後は自分でちゃんと選んでいたよ」
「そうですか。やはり、うちの理央よりはまだ弓弦くんの方が贈り物という概念をわかっているようですね」
「というと、やはり難しかったのか?」
「ええ。自分のものすら満足に与えられずに過ごしてきたから、誰かに物を贈るという事がわからなかったようですね。バッグも文房具も持っているからあげられないと話していましたから」
「そうか、一人ひとつの中に自分の贈った物をいれられないと思ったのだろうな。ならば、今回の贈り物はどうしたんだ?」
「ふふっ。少し考え方を変えさせたんですよ」
「考え方を?」
「はい。楽しみにしていてください」
ミヅキの意味深な微笑みに、きっと素晴らしい物であることはわかった。
それもこの世に一つしかないもの。
だが、リオが選ぶものとつながらない。
しかも考え方を変えさせたと言っていた。
一体どういうものなのか……気になるな。
「ふふっ。リュカ……好きっ!」
そんなことを考えていた私の耳に衝撃的なユヅルの言葉が飛び込んできて、慌ててそちらに目をやるとユヅルがリュカと抱き合っているのが見える。
ジョルジュもその二人の姿に驚いているようだが、それよりも今はさっさと引き離しにいかなければ!
急いでユヅルに駆け寄り、リュカから引き離して腕の中に閉じ込めると、
「え、エヴァンさん……びっくりした……どうしたんですか?」
なぜ私がこんなことをしたのかわからないとでもいう様子で、ユヅルが私を見つめた。
いやいや、ユヅルとリュカが抱き合っているのを見過ごせるわけがないだろう。
しかも愛の言葉まで囁いているというのに。
私の前で他の男と抱き合い、愛の言葉を囁くなんて持ってのほかだというと、ユヅルは焦りながら、
「あの、違いますよ。その好きは、好きじゃなくて……えっと……好きなものはいっぱいあっても、僕がこの世で大好きなのはエヴァンさんだけですから!」
と大広間中に響き渡るような大きな声で私への愛を叫んでくれた。
恥ずかしがり屋のユヅルからの愛の言葉を、友人たちの前で聞かせてもらえるとは思っていなかった。
リュカと抱き合っていたことは許し難いが、こんなに大きな声で愛を叫んでくれたからよしとしようか。
私は満面の笑みでユヅルにキスを贈った。
真っ赤な顔で私を見上げるユヅルに愛の告白の礼を言いながらも、他の者とのハグは禁止だとしっかり釘を刺しておいた。
ユヅルにもリュカにもそんな気がないのはわかっていても、ユヅルの身体を私以外が触れるのは許すわけにはいかない。
狭量だと言われようがそこは許すわけにはいかないのだ。
「ふふっ。ユヅル、大胆な愛の告白だったね」
そんな私たちの元にミシェルとセルジュがやってきた。
まだ顔の赤いユヅルはミシェルの言葉にさらに恥ずかしそうにしていたが、わざわざ揶揄いにきたのかと尋ねると、どうやらユヅルからの贈り物について気になってきたらしい。
ふふっ。さすがセルジュ。
やはり気づいたか。
ユヅルがあの日、あの店でミシェルのために選んだスカーフがどうも気になって、私はあれを手がけたデザイナーの元に直接連絡をした。
ロレーヌ家総帥である私からの連絡にデザイナーはかなり恐縮しながらも、あのスカーフについて話をしてくれた。
限定20枚で作られたあのスカーフのデザインを頼まれた時に、天使とヴァイオリンというモチーフで描くことになり、一枚だけいたずら心で天使の姿をミシェルに少し似せて描いたようだ。
デザイナーはミシェルの大ファンで、その依頼が来たときにすぐにミシェルを思い浮かべたらしい。
一枚だけならとこっそり描いてみたようだが、それが我がロレーヌ家にあり、ミシェルの手に渡ると知ってかなり驚いていた。
それを選んだユヅルのことを神のように崇めていたくらいだから、ミシェルの手に渡ることが嬉しくて仕方なかったのだろう。
そのお礼に今度、非売品でユヅルをモデルにしたデザインを描いてもらうことになった。
何に描いてもらうかは検討中だが、ユヅルと一緒に考えるのも楽しいかもしれない。
「ユヅルさまが見つけてくださったおかげで、私たちの元に天使のミシェルがやってきてくれたんです。本当に素敵な贈り物をありがとうございます」
セルジュは本当に嬉しそうにユヅルに礼を言っている。
まぁ礼も言いたくなるな。
もしかしたらミシェルモデルのスカーフが他所に行っていたのかもしれないのだから。
この贈り物はミシェルにとってもセルジュにとっても嬉しい贈り物になったようだ。
この映像はユヅルだけでなく、私やジュール、それこそ、このロレーヌ家にとっても素晴らしいクリスマスプレゼントになった。
スクリーンを見ながら涙を流しているジュールを見ているとこちらまで嬉しくなる。
久しぶりにみるニコラとアマネの姿に、ユヅルの次に喜んでいるのはジュールかもしれないな。
ジュールが涙を流していることに気づいたシュウゴがさっとジュールの元に近づいた。
ジュールのあの嬉しそうな顔を見ると、母君から聞いたというニコラとアマネの思い出話でもしてあげているのかもしれない。
本当に優しくて良い子だ。
ジョルジュもマサオミを気に入っていることだし、フランスで一緒に生活してくれないだろうか……。
リオとミヅキもこちらに来てくれたら、ユヅルの行動範囲が広くできるのだがな。
ユヅルはジュールの涙に気づいたようでもらい泣きをしているようだった。
ポケットからハンカチを取り出して拭ってやると、嬉しそうに笑っていた。
ユヅルは自分が選んだ贈り物が喜んでもらえるかと躊躇っていたようだったが、ユヅルが一生懸命彼らのために選んだものを喜ばないわけがない。
安心させてやると、ユヅルは嬉しそうに彼らにプレゼントを渡しにいった。
それを少し離れた場所から見守っていると、ミヅキが声をかけてきた。
「弓弦くんも相当悩んだんですか? プレゼント探し」
「ああ、そうだな。だが、最後は自分でちゃんと選んでいたよ」
「そうですか。やはり、うちの理央よりはまだ弓弦くんの方が贈り物という概念をわかっているようですね」
「というと、やはり難しかったのか?」
「ええ。自分のものすら満足に与えられずに過ごしてきたから、誰かに物を贈るという事がわからなかったようですね。バッグも文房具も持っているからあげられないと話していましたから」
「そうか、一人ひとつの中に自分の贈った物をいれられないと思ったのだろうな。ならば、今回の贈り物はどうしたんだ?」
「ふふっ。少し考え方を変えさせたんですよ」
「考え方を?」
「はい。楽しみにしていてください」
ミヅキの意味深な微笑みに、きっと素晴らしい物であることはわかった。
それもこの世に一つしかないもの。
だが、リオが選ぶものとつながらない。
しかも考え方を変えさせたと言っていた。
一体どういうものなのか……気になるな。
「ふふっ。リュカ……好きっ!」
そんなことを考えていた私の耳に衝撃的なユヅルの言葉が飛び込んできて、慌ててそちらに目をやるとユヅルがリュカと抱き合っているのが見える。
ジョルジュもその二人の姿に驚いているようだが、それよりも今はさっさと引き離しにいかなければ!
急いでユヅルに駆け寄り、リュカから引き離して腕の中に閉じ込めると、
「え、エヴァンさん……びっくりした……どうしたんですか?」
なぜ私がこんなことをしたのかわからないとでもいう様子で、ユヅルが私を見つめた。
いやいや、ユヅルとリュカが抱き合っているのを見過ごせるわけがないだろう。
しかも愛の言葉まで囁いているというのに。
私の前で他の男と抱き合い、愛の言葉を囁くなんて持ってのほかだというと、ユヅルは焦りながら、
「あの、違いますよ。その好きは、好きじゃなくて……えっと……好きなものはいっぱいあっても、僕がこの世で大好きなのはエヴァンさんだけですから!」
と大広間中に響き渡るような大きな声で私への愛を叫んでくれた。
恥ずかしがり屋のユヅルからの愛の言葉を、友人たちの前で聞かせてもらえるとは思っていなかった。
リュカと抱き合っていたことは許し難いが、こんなに大きな声で愛を叫んでくれたからよしとしようか。
私は満面の笑みでユヅルにキスを贈った。
真っ赤な顔で私を見上げるユヅルに愛の告白の礼を言いながらも、他の者とのハグは禁止だとしっかり釘を刺しておいた。
ユヅルにもリュカにもそんな気がないのはわかっていても、ユヅルの身体を私以外が触れるのは許すわけにはいかない。
狭量だと言われようがそこは許すわけにはいかないのだ。
「ふふっ。ユヅル、大胆な愛の告白だったね」
そんな私たちの元にミシェルとセルジュがやってきた。
まだ顔の赤いユヅルはミシェルの言葉にさらに恥ずかしそうにしていたが、わざわざ揶揄いにきたのかと尋ねると、どうやらユヅルからの贈り物について気になってきたらしい。
ふふっ。さすがセルジュ。
やはり気づいたか。
ユヅルがあの日、あの店でミシェルのために選んだスカーフがどうも気になって、私はあれを手がけたデザイナーの元に直接連絡をした。
ロレーヌ家総帥である私からの連絡にデザイナーはかなり恐縮しながらも、あのスカーフについて話をしてくれた。
限定20枚で作られたあのスカーフのデザインを頼まれた時に、天使とヴァイオリンというモチーフで描くことになり、一枚だけいたずら心で天使の姿をミシェルに少し似せて描いたようだ。
デザイナーはミシェルの大ファンで、その依頼が来たときにすぐにミシェルを思い浮かべたらしい。
一枚だけならとこっそり描いてみたようだが、それが我がロレーヌ家にあり、ミシェルの手に渡ると知ってかなり驚いていた。
それを選んだユヅルのことを神のように崇めていたくらいだから、ミシェルの手に渡ることが嬉しくて仕方なかったのだろう。
そのお礼に今度、非売品でユヅルをモデルにしたデザインを描いてもらうことになった。
何に描いてもらうかは検討中だが、ユヅルと一緒に考えるのも楽しいかもしれない。
「ユヅルさまが見つけてくださったおかげで、私たちの元に天使のミシェルがやってきてくれたんです。本当に素敵な贈り物をありがとうございます」
セルジュは本当に嬉しそうにユヅルに礼を言っている。
まぁ礼も言いたくなるな。
もしかしたらミシェルモデルのスカーフが他所に行っていたのかもしれないのだから。
この贈り物はミシェルにとってもセルジュにとっても嬉しい贈り物になったようだ。
122
お気に入りに追加
1,683
あなたにおすすめの小説
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
主人公は俺狙い?!
suzu
BL
生まれた時から前世の記憶が朧げにある公爵令息、アイオライト=オブシディアン。
容姿は美麗、頭脳も完璧、気遣いもできる、ただ人への態度が冷たい冷血なイメージだったため彼は「細雪な貴公子」そう呼ばれた。氷のように硬いイメージはないが水のように優しいイメージもない。
だが、アイオライトはそんなイメージとは反対に単純で鈍かったり焦ってきつい言葉を言ってしまう。
朧げであるがために時間が経つと記憶はほとんど無くなっていた。
15歳になると学園に通うのがこの世界の義務。
学園で「インカローズ」を見た時、主人公(?!)と直感で感じた。
彼は、白銀の髪に淡いピンク色の瞳を持つ愛らしい容姿をしており、BLゲームとかの主人公みたいだと、そう考える他なかった。
そして自分も攻略対象や悪役なのではないかと考えた。地位も高いし、色々凄いところがあるし、見た目も黒髪と青紫の瞳を持っていて整っているし、
面倒事、それもBL(多分)とか無理!!
そう考え近づかないようにしていた。
そんなアイオライトだったがインカローズや絶対攻略対象だろっ、という人と嫌でも鉢合わせしてしまう。
ハプニングだらけの学園生活!
BL作品中の可愛い主人公×ハチャメチャ悪役令息
※文章うるさいです
※背後注意
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる