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抑えられない昂り
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楽しそうにヴァイオリンを弾くユヅルの姿がたまらなく可愛い。
しかもあのコスチュームは一体?
あんなのフランスでは見たことがない。
だが、あれがユヅルの可愛さに拍車をかけている。
あっという間に一曲目の演奏が終わり、二曲目に入った。
目の前に座っているリオとソラは知っている曲だったようで楽しそうに口ずさみ始めた。
考えてみれば、この曲の日本語を聞くのは初めてかもしれない。
なるほど。
日本語だとこんな歌詞になるのか。
楽しいものだ。
舞台に目をやると、ミシェルが演奏しながら、舞台の端でユヅルたちを見守っているリュカの元に近付いているのが見える。
一体どうしたのだろうと思っていると、リュカは端に置いてあった棚からマイクを取り出した。
そして、恥ずかしそうにしながらも、美しい声で歌い始めた。
リュカはこんなにも歌がうまかったのか……知らなかったな。
フランス語の歌詞と、リオたちの口ずさむ日本語の歌詞とがあいまって、ユヅルたちの演奏に彩りを与えてくれている。
これは素晴らしい演奏会だ。
この演奏室には舞台上での演奏を自動に録画している機能があるから、あとでまたじっくりと全体を見ながら演奏を聴くのも楽しいだろう。
どうせセルジュやアヤシロたちが熱心に撮っているスマホには、自分の恋人しか映っていないだろうしな。
まぁそういう私もユヅルしか撮ってないのだが。
三曲目は軽快な曲調で演奏しているユヅルたちも弾んでいる。
自然と身体を揺り動かしながら弾いているが、その度にユヅルの着ているコスチュームの裾が捲れ上がって太ももの際どいところまで見え、この距離でもうっすらと私のつけた花弁が見え隠れしている。
いつもならこんな可愛らしい姿を誰にも見せたくはない。
だが、リオたちへのお祝いの演奏会なのだ。
しかもこんなにも楽しそうにしているというのに、途中で辞めさせるなんてそんなことできるはずがない。
ここは必死に抑えるんだ。
そして、とうとう演奏が終了した。
『Bravo!』
「ブラボー!」
「素敵ーーっ!」
思い思いに声を投げかけると、ユヅルが目を丸くしながら私を見つめる。
そしてあっという間にユヅルの大きな目に涙が溜まっていくのが見えた。
ユヅルが泣いている。
そう思った瞬間、勝手に身体が動いていた。
舞台上に飛び上がり、ユヅルを抱きしめる。
私の上着でユヅルをすっぽりと包み込むと、ユヅルが嬉し涙だったと教えてくれた。
ああ、そうだな。
初めてできた友人のお祝いのために、ずっと一生懸命練習していたんだもんな。
リオとソラの笑顔と私たちの拍手がユヅルを喜びに導いたんだ。
アヤシロの伴侶は実に楽しい提案をしてくれたものだ。
あとでしっかりお礼を言っておかねばな。
さて、演奏についての感想はともかく、ユヅルに聞いておきたいことがある。
この可愛らしい衣装だ。
緊張しながら、この衣装をどうしたのかと尋ねれば、ケイトが日本から持ってきてくれたのだという。
おお、ケイト!
以前の白い犬の可愛い着ぐるみパジャマに次いで、なんと素晴らしい贈り物をしてくれたんだ!!!
これはお礼も奮発しなければな。
「似合ってない、ですか……?」
心の中でケイトに感謝している間にユヅルに誤解されそうになっている。
私は急いで、似合いすぎて困っていたのだと白状し、
「ユヅルが可愛すぎてたまらなく興奮してしまったよ。誰にも見せたくないくらいにな」
とユヅルを強く抱きしめながら、耳元で囁いた。
愚息の昂りをわからせるようにわざとユヅルの腹に当てたら気づくだろうかと思ったが、ユヅルはすぐに顔を真っ赤にし私を見つめた。
ははっ。流石にわかってくれたようだな。
フランスに来てから毎日のように愛し合っているから当然といえば当然か。
そもそもこの部屋に入ってユヅルを見た時から、すでに昂っているのだ。
服の下でとんでもなく硬くなっているに決まっている。
ユヅルは私のそんな姿に困っているようだったが、周りに人がいるこんな状態ではどうしていいのかわからないのだろう。
周りを見れば、皆、私と同じように自分の服で伴侶を包み込み、グッと腰を押し付けているように見える。
ふふっ。どこも同じだな。
ならば、ここは私が言ってやるとするか。
「みんな、素晴らしい演奏と歌を披露してくれた伴侶にお礼を言いたいだろう? それぞれしばらく部屋で過ごすといい。私たちもしばらく失礼する」
私がそう宣言し、いの一番にユヅルを抱きかかえ演奏室から出ると、後ろからアヤシロたちはもちろん、セルジュもジョルジュでさえもついてきているのが分かる。
ジョルジュには職務怠慢だぞと言ってやりたいところだが、伴侶のこんなにも可愛い姿を見れば、いくら警備隊長といえども我慢などできるはずがない。
この屋敷にいる間はほぼ危険はないと言っていいのだから、まぁ今回だけは許してやろう。
それよりもユヅルとの大事な時間だ。
私は興奮を隠せないまま、ユヅルと共に自室へ戻った。
しかもあのコスチュームは一体?
あんなのフランスでは見たことがない。
だが、あれがユヅルの可愛さに拍車をかけている。
あっという間に一曲目の演奏が終わり、二曲目に入った。
目の前に座っているリオとソラは知っている曲だったようで楽しそうに口ずさみ始めた。
考えてみれば、この曲の日本語を聞くのは初めてかもしれない。
なるほど。
日本語だとこんな歌詞になるのか。
楽しいものだ。
舞台に目をやると、ミシェルが演奏しながら、舞台の端でユヅルたちを見守っているリュカの元に近付いているのが見える。
一体どうしたのだろうと思っていると、リュカは端に置いてあった棚からマイクを取り出した。
そして、恥ずかしそうにしながらも、美しい声で歌い始めた。
リュカはこんなにも歌がうまかったのか……知らなかったな。
フランス語の歌詞と、リオたちの口ずさむ日本語の歌詞とがあいまって、ユヅルたちの演奏に彩りを与えてくれている。
これは素晴らしい演奏会だ。
この演奏室には舞台上での演奏を自動に録画している機能があるから、あとでまたじっくりと全体を見ながら演奏を聴くのも楽しいだろう。
どうせセルジュやアヤシロたちが熱心に撮っているスマホには、自分の恋人しか映っていないだろうしな。
まぁそういう私もユヅルしか撮ってないのだが。
三曲目は軽快な曲調で演奏しているユヅルたちも弾んでいる。
自然と身体を揺り動かしながら弾いているが、その度にユヅルの着ているコスチュームの裾が捲れ上がって太ももの際どいところまで見え、この距離でもうっすらと私のつけた花弁が見え隠れしている。
いつもならこんな可愛らしい姿を誰にも見せたくはない。
だが、リオたちへのお祝いの演奏会なのだ。
しかもこんなにも楽しそうにしているというのに、途中で辞めさせるなんてそんなことできるはずがない。
ここは必死に抑えるんだ。
そして、とうとう演奏が終了した。
『Bravo!』
「ブラボー!」
「素敵ーーっ!」
思い思いに声を投げかけると、ユヅルが目を丸くしながら私を見つめる。
そしてあっという間にユヅルの大きな目に涙が溜まっていくのが見えた。
ユヅルが泣いている。
そう思った瞬間、勝手に身体が動いていた。
舞台上に飛び上がり、ユヅルを抱きしめる。
私の上着でユヅルをすっぽりと包み込むと、ユヅルが嬉し涙だったと教えてくれた。
ああ、そうだな。
初めてできた友人のお祝いのために、ずっと一生懸命練習していたんだもんな。
リオとソラの笑顔と私たちの拍手がユヅルを喜びに導いたんだ。
アヤシロの伴侶は実に楽しい提案をしてくれたものだ。
あとでしっかりお礼を言っておかねばな。
さて、演奏についての感想はともかく、ユヅルに聞いておきたいことがある。
この可愛らしい衣装だ。
緊張しながら、この衣装をどうしたのかと尋ねれば、ケイトが日本から持ってきてくれたのだという。
おお、ケイト!
以前の白い犬の可愛い着ぐるみパジャマに次いで、なんと素晴らしい贈り物をしてくれたんだ!!!
これはお礼も奮発しなければな。
「似合ってない、ですか……?」
心の中でケイトに感謝している間にユヅルに誤解されそうになっている。
私は急いで、似合いすぎて困っていたのだと白状し、
「ユヅルが可愛すぎてたまらなく興奮してしまったよ。誰にも見せたくないくらいにな」
とユヅルを強く抱きしめながら、耳元で囁いた。
愚息の昂りをわからせるようにわざとユヅルの腹に当てたら気づくだろうかと思ったが、ユヅルはすぐに顔を真っ赤にし私を見つめた。
ははっ。流石にわかってくれたようだな。
フランスに来てから毎日のように愛し合っているから当然といえば当然か。
そもそもこの部屋に入ってユヅルを見た時から、すでに昂っているのだ。
服の下でとんでもなく硬くなっているに決まっている。
ユヅルは私のそんな姿に困っているようだったが、周りに人がいるこんな状態ではどうしていいのかわからないのだろう。
周りを見れば、皆、私と同じように自分の服で伴侶を包み込み、グッと腰を押し付けているように見える。
ふふっ。どこも同じだな。
ならば、ここは私が言ってやるとするか。
「みんな、素晴らしい演奏と歌を披露してくれた伴侶にお礼を言いたいだろう? それぞれしばらく部屋で過ごすといい。私たちもしばらく失礼する」
私がそう宣言し、いの一番にユヅルを抱きかかえ演奏室から出ると、後ろからアヤシロたちはもちろん、セルジュもジョルジュでさえもついてきているのが分かる。
ジョルジュには職務怠慢だぞと言ってやりたいところだが、伴侶のこんなにも可愛い姿を見れば、いくら警備隊長といえども我慢などできるはずがない。
この屋敷にいる間はほぼ危険はないと言っていいのだから、まぁ今回だけは許してやろう。
それよりもユヅルとの大事な時間だ。
私は興奮を隠せないまま、ユヅルと共に自室へ戻った。
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