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アヤシロからの電話
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『イケメンスパダリ弁護士に助け出されて運命が変わりました』という作品の
番外編 『理央のために※』というお話と繋がっていますが、時間的なお話の都合を考慮してあちらのお話を少し加筆修正しています。
* * *
ユヅルを抱きかかえたまま、屋敷に戻るとセルジュとミシェルがちょうど戻ってきたところだった。
ミシェルはユヅルを見ると、嬉しそうに駆け寄ってきて散歩に行っていたのかと尋ねた。
庭にある『ばーず、すくれーと』に連れて行ってもらっていたとユヅルが話すと、一瞬考えた様子を見せたがすぐに『Base secrète』のことだと理解したらしい。
ミシェルもユヅルの可愛いフランス語の発音に随分と慣れたようだな。
Base secrèteがなんのことだかピンときていないミシェルに、セルジュが庭のツリーハウスのことだと教えると、すぐにわかったようだ。
ミシェルがここにきてすぐにあのツリーハウスの存在に気づいたが、セルジュが私の父と私の思い出の家だとでも言ったのだろう。
ミシェルは決して入りたいとは言い出さなかった。
ユヅルは自分だけが中に入ったことに申し訳ないと思っているようだが、あのツリーハウスに二人で行かせるわけにはいかない。
危険もあるし、何よりあの場所は私たちだけの場所にしておきたい。
そんな理由でユヅルにダメだと言ったのだが、反抗することも無く私のいうことを素直に聞いてくれた。
やはりユヅルは良い子だ。
セルジュも、そしてリュカも感心したようにユヅルを見つめていた。
「エヴァンさんの大事なツリーハウスだからね。大丈夫、ちゃんとわかってるから」
そして、ミシェルもまた私の気持ちをよくわかってくれているようだ。
暴走気味なところはあるが、こういうところはユヅル同様素直で良い子なのだ。
「それよりも、ケイトくんからのメッセージみた?」
とミシェルが尋ねると、ユヅルは何も知らないようだ。
勉強中はスマホには触れないように言ってあるし、今日はそのままあのツリーハウスに行ったからまだみていないのだろう。
『エヴァンさん、ユヅルと大事な話があるんです。少しの間、二人で話しても良いですか?』
『ケイトと言っていたな? 何か問題でも?』
『いいえ、でもまだ内緒です。ユヅルを危険な目に遭わせたりしませんから良いですか?』
あの件で少しは私の心配な気持ちを理解してくれたようだ。
まぁアヤシロの愛しい伴侶絡みなら、危ないことではないだろう。
後ろにいるセルジュに目を向ければ、セルジュも納得しているような視線を向けている。
ならば、私が反対することではない。
ユヅルにも友達との話は必要だからな。
ユヅルを腕から下ろすと、ミシェルは嬉しそうにユヅルの手を引いて少し離れたソファに腰を下ろし、スマホを見ながら楽しそうに話をしている。
『エヴァンさま、ご心配なさいませんように。どうやら、ケイトさまからサプライズのお申し出があったようでございますよ』
『サプライズ? 誰のだ?』
『今度こちらで挙式をなさる、アヤシロさまのご友人方のご伴侶さまが試験にパスされたのはご存知でございましょう?』
『ああ、先日アヤシロもそんな話をしていたし、ユヅルにも報告があったと聞いた』
『こちらに来られた時に、そのお二人のお祝いをなさりたいそうで、それにミシェルとユヅルさまも参加してほしいとのことでございます』
『ああ、なるほどな。それで、ユヅルたちは何をするんだ?』
『それは……ミシェルが頑なに教えてはくれないものでわかりかねますが……わかり次第、すぐにご報告いたします』
『まぁ、アヤシロに聞いてみればすぐにわかるだろうが……せっかくのサプライズだ。何も知らずにいてやろうか』
『よろしいのですか?』
『ユヅルとミシェルがいるんだ。とんでもないことはアヤシロがさせないだろう。たまには黙って静観するのも良いんじゃないか』
私の言葉にセルジュは目を丸くして、ジュールに視線を向けた。
ジュールもまた驚いている様子だったが、
『旦那さまも少しは大人になられたのですね』
と言って笑顔を見せた。
私は十分大人なのだが……ユヅルのことで散々欲望のままに動いている私には反論すらできなかった。
その日の夜、ユヅルが眠りについてしばらくしたころ電話が鳴っているのに気づいた。
そっとベッドから抜け出て確認してみれば、画面表示にはアヤシロの名前。
おそらく今日の件を連絡でもしてくれたのかもしれない。
ーアヤシロ。どうした、こんな時間に。
ー悪い、寝ていたか?
ーいや、私は起きていたから大丈夫だが……ユヅルを一人にしているからすぐに戻らないとな。もしかしてケイトからのメッセージの件か?
ーいや、そっちは大丈夫だ。佳都が可愛い演出を考えているから安心してくれ。それよりも、こっちはどうしてもロレーヌの力を借りないといけない事態が起こってるんだ。
ー何か困ったことでもあったのか?
ー今度そっちで挙式する友人の伴侶なんだが、クリスマスを経験していないって話はしただろう?
ーああ、だから結婚式をクリスマスにしてやりたいって話だったな。
ーそうなんだが、友人が他にクリスマスプレゼントをあげるから何が欲しいかと尋ねたら……
ああ、そういうことか。
なんだ、宝石か? 車か? それとも飛行機とでも?
慎ましい恋人だと聞いていたが、やはり金持ちと付き合えば傲慢になるものだな。
なんでも頼めば手に入るとでも思いだしたか……。
やはりどこの国でも同じような人間はいるものだな。
私のそばにいても何一つ変わらないのはユヅルだけだ。
アヤシロの友人だから信頼していたのだが見る目がないのだな……。
正直そんな人間をユヅルの友達として認めたくはないな……そう呆れ果てていた矢先、アヤシロの口から飛び出したのは驚くべき言葉だった。
番外編 『理央のために※』というお話と繋がっていますが、時間的なお話の都合を考慮してあちらのお話を少し加筆修正しています。
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ユヅルを抱きかかえたまま、屋敷に戻るとセルジュとミシェルがちょうど戻ってきたところだった。
ミシェルはユヅルを見ると、嬉しそうに駆け寄ってきて散歩に行っていたのかと尋ねた。
庭にある『ばーず、すくれーと』に連れて行ってもらっていたとユヅルが話すと、一瞬考えた様子を見せたがすぐに『Base secrète』のことだと理解したらしい。
ミシェルもユヅルの可愛いフランス語の発音に随分と慣れたようだな。
Base secrèteがなんのことだかピンときていないミシェルに、セルジュが庭のツリーハウスのことだと教えると、すぐにわかったようだ。
ミシェルがここにきてすぐにあのツリーハウスの存在に気づいたが、セルジュが私の父と私の思い出の家だとでも言ったのだろう。
ミシェルは決して入りたいとは言い出さなかった。
ユヅルは自分だけが中に入ったことに申し訳ないと思っているようだが、あのツリーハウスに二人で行かせるわけにはいかない。
危険もあるし、何よりあの場所は私たちだけの場所にしておきたい。
そんな理由でユヅルにダメだと言ったのだが、反抗することも無く私のいうことを素直に聞いてくれた。
やはりユヅルは良い子だ。
セルジュも、そしてリュカも感心したようにユヅルを見つめていた。
「エヴァンさんの大事なツリーハウスだからね。大丈夫、ちゃんとわかってるから」
そして、ミシェルもまた私の気持ちをよくわかってくれているようだ。
暴走気味なところはあるが、こういうところはユヅル同様素直で良い子なのだ。
「それよりも、ケイトくんからのメッセージみた?」
とミシェルが尋ねると、ユヅルは何も知らないようだ。
勉強中はスマホには触れないように言ってあるし、今日はそのままあのツリーハウスに行ったからまだみていないのだろう。
『エヴァンさん、ユヅルと大事な話があるんです。少しの間、二人で話しても良いですか?』
『ケイトと言っていたな? 何か問題でも?』
『いいえ、でもまだ内緒です。ユヅルを危険な目に遭わせたりしませんから良いですか?』
あの件で少しは私の心配な気持ちを理解してくれたようだ。
まぁアヤシロの愛しい伴侶絡みなら、危ないことではないだろう。
後ろにいるセルジュに目を向ければ、セルジュも納得しているような視線を向けている。
ならば、私が反対することではない。
ユヅルにも友達との話は必要だからな。
ユヅルを腕から下ろすと、ミシェルは嬉しそうにユヅルの手を引いて少し離れたソファに腰を下ろし、スマホを見ながら楽しそうに話をしている。
『エヴァンさま、ご心配なさいませんように。どうやら、ケイトさまからサプライズのお申し出があったようでございますよ』
『サプライズ? 誰のだ?』
『今度こちらで挙式をなさる、アヤシロさまのご友人方のご伴侶さまが試験にパスされたのはご存知でございましょう?』
『ああ、先日アヤシロもそんな話をしていたし、ユヅルにも報告があったと聞いた』
『こちらに来られた時に、そのお二人のお祝いをなさりたいそうで、それにミシェルとユヅルさまも参加してほしいとのことでございます』
『ああ、なるほどな。それで、ユヅルたちは何をするんだ?』
『それは……ミシェルが頑なに教えてはくれないものでわかりかねますが……わかり次第、すぐにご報告いたします』
『まぁ、アヤシロに聞いてみればすぐにわかるだろうが……せっかくのサプライズだ。何も知らずにいてやろうか』
『よろしいのですか?』
『ユヅルとミシェルがいるんだ。とんでもないことはアヤシロがさせないだろう。たまには黙って静観するのも良いんじゃないか』
私の言葉にセルジュは目を丸くして、ジュールに視線を向けた。
ジュールもまた驚いている様子だったが、
『旦那さまも少しは大人になられたのですね』
と言って笑顔を見せた。
私は十分大人なのだが……ユヅルのことで散々欲望のままに動いている私には反論すらできなかった。
その日の夜、ユヅルが眠りについてしばらくしたころ電話が鳴っているのに気づいた。
そっとベッドから抜け出て確認してみれば、画面表示にはアヤシロの名前。
おそらく今日の件を連絡でもしてくれたのかもしれない。
ーアヤシロ。どうした、こんな時間に。
ー悪い、寝ていたか?
ーいや、私は起きていたから大丈夫だが……ユヅルを一人にしているからすぐに戻らないとな。もしかしてケイトからのメッセージの件か?
ーいや、そっちは大丈夫だ。佳都が可愛い演出を考えているから安心してくれ。それよりも、こっちはどうしてもロレーヌの力を借りないといけない事態が起こってるんだ。
ー何か困ったことでもあったのか?
ー今度そっちで挙式する友人の伴侶なんだが、クリスマスを経験していないって話はしただろう?
ーああ、だから結婚式をクリスマスにしてやりたいって話だったな。
ーそうなんだが、友人が他にクリスマスプレゼントをあげるから何が欲しいかと尋ねたら……
ああ、そういうことか。
なんだ、宝石か? 車か? それとも飛行機とでも?
慎ましい恋人だと聞いていたが、やはり金持ちと付き合えば傲慢になるものだな。
なんでも頼めば手に入るとでも思いだしたか……。
やはりどこの国でも同じような人間はいるものだな。
私のそばにいても何一つ変わらないのはユヅルだけだ。
アヤシロの友人だから信頼していたのだが見る目がないのだな……。
正直そんな人間をユヅルの友達として認めたくはないな……そう呆れ果てていた矢先、アヤシロの口から飛び出したのは驚くべき言葉だった。
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