大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

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欲との闘い※

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食事にしようとユヅルをキッチンの前に置かれたダイニングテーブルに連れていき椅子に座らせた。

アマネが作ってくれていたスープをよそい、ユヅルの前においてやると嬉しそうな笑みを浮かべていた。
ユヅルにとって大切な母の味だ。
しっかりと舌に覚えさせて、これから誕生日には毎年私がこのスープを作ってやるとしよう。

それからこれも……と付け加えのようにユヅルの前に置いたパンケーキ。
私にとってはある意味メインと言えるものだが、ユヅルにとっては今日はアマネのスープの方が重要だろうからこれでいい。

誕生日ケーキの代わりにというと、涙を堪えながら必死に礼を言い、アマネのスープよりも先に手をつけてくれた。

一口食べて泣き出したユヅルを見て、もしかしたら口に合わなかったのかもしれないと思ったが、ユヅルは私の作ったパンケーキを美味しいと言って泣きながら完食してくれた。

本当にユヅルは優しい子だ。


食事を終え、疲れ切った身体を早く休めた方がいいと声をかけたが、ユヅルから風呂の心配をされてしまった。
仕事終わりにそのまま駆けつけたこともあって正直風呂に入りたいが、着替えも何も持たずにきてしまった。

セルジュが気づいて次にここにくる時には着替えを持ってきてくれるだろうが、今ここには着替えは何もない。
流石に入浴後に同じ服を着る気にはなれないからここは我慢するしかないだろう。

着替えがないからと断ろうとすると、ユヅルは突然何かを思い出したかのように一人でどこかに向かおうとしていた。
一人にさせるのは心配だったが、大丈夫だと言われれば無理強いもできない。
ユヅルが一人で何かを探している間に、私は風呂の湯を張るスイッチを押してユヅルが戻ってくるのを待った。

何か大きな布状のものを手に戻ってきたかと思えば、これを着替えにしてくれという。

一体これはなんだろうと尋ねると、ユヅルが学校の授業で作ったユカタだという。

ユカタが夏に着る薄手の着物だという知識はあったが、それをユヅルが作ったとは……。
成長を見越して大きく作ったものの大きすぎて着られないというそのユカタを借りることになった。

まさかユヅルの手作りのものに袖を通すことができるとは……私はなんと幸せ者なのだろう。

私に先に風呂に入らせようとするユヅルを説得し、私は風呂に行くユヅルを見送った。

そして、風呂場の扉が閉まるのを待って、スマホを取り出した。

ーはい。エヴァンさま。何かございましたか?

ーそっちの進捗状況はどうだ?

ー警察との話し合いも私がユヅルさまの代理人ということで話を進めております。ご安心ください。アマネさまのご葬儀につきましても準備を進めております。死亡届と火葬届が受理されましたので、葬儀は3日後に告別式を行うとのことです。ご遺骨ですが、ユヅルさまともご相談になりますが、フランスに持ち帰りニコラさまのお墓に埋葬するというのはどうでしょう?

ーニコラの墓に? そうだな。いい考えだが、アマネの両親がなんと言ってくるかだな。もしかしたら警察から一報が入っているかもしれない。

ーそのことでしたらご心配なく。アマネさまのご両親には連絡はとっていないと警察に確認済みです。ですが、そうですね……何かのきっかけでアマネさまのことをお知りになってユヅルさまに何か接触してこられても困りますし、こちらから先手を打っておきましょうか。

ーセルジュ、やれるか?

ーはい。お任せください。エヴァンさまはユヅルさまのことだけお考えください。

ーああ、助かるよ。

ーエヴァンさま……くれぐれも無理やりはお控えください。

ー何言ってるんだ! 私が無理やりなどするわけがないだろう!

ーふふっ。ユヅルさま相手ですと、いつものエヴァンさまと変わられてしまうようですから……。

セルジュの言葉にハッとしながら、私は努めて冷静を装った。

ー大丈夫だ。まだ理性はあるつもりだ。

ーなら安心したしました。明日は私も一度そちらに参りますので、その時に必要なものをお持ちいたします。

ーああ、頼む。

セルジュとの電話を切ろうとしたその時、突然

「わぁっ!」

とユヅルの声が聞こえた。
慌てて目をやればユヅルが倒れそうになっている。

思うより身体が先に動いた。

さっとユヅルを抱きしめ、怪我をさせずに済んだことに安堵した。

電話の邪魔をしてごめんなさいと謝るユヅルに相手がセルジュでアマネの葬儀の日程が決まったことを話すと安心したように表情を明るくした。

ユヅル一人では何をしていいかわからず心細かったことだろう。
ユヅルが困っているときに駆けつけられて本当によかった。


ユヅルと交代で風呂に入る。
風呂場に入ると、ユヅルの甘い匂いが立ち込めている気がする。
それだけで愚息が滾りそうになる。

ああ、ユヅルが辛い時にこんな邪なことを考えるなどとんでもないことだ。
だが、私の目に入ってしまった。

ユヅルが今まで穿いていたであろう下着が……私の目の前にある。

流石にそれに触れるわけにはいかないが、見ているだけで愚息がぐんぐんと勢いを増しているのがわかる。

そういえば、さっき抱き止めたとき温まったユヅルの身体からいい匂いがしていた。
そんなことが甦ればどうしようもなかった。

もう出さないことには収まりがつかない。

ユヅルに申し訳ないと思いつつ、ユヅルの前で大きく昂った姿など見せるわけにもいかず私はさっと処理しておくことにした。

ガラッと引き戸を開け、洗い場に入る。
思っていたよりもかなり小さい湯船に驚くがここにユヅルが入っていたと思うだけで滾る。

さっと髪を洗い流し、身体を洗いながら凶悪なほどに勃ち上がった愚息を扱いた。
もちろん脳裏に浮かぶのはユヅルだ。

あの可愛らしい身体の下にどんなものを隠しているのか想像するだけで興奮が高まっていく。

「ユヅル――っ!」

必死に声を抑えて吐き出した欲は驚くほど大量で自分でも引いてしまうほどだった。
出した白濁を綺麗に洗い流し、ユヅルが浸かった湯に入るとそれだけでまた興奮してしまう自分がいる。

まるで性を覚えたばかりの子どものように興奮しまくっている自分を恥ずかしく思いながら、さっと湯船から出た。

一度出して落ち着いたのか、愚息は通常に戻っていたがそれでもすぐに暴走しそうだ。
しっかり躾けておかねばなと思いながら、ユヅルから借りたユカタに手を伸ばした。
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