欠陥品オメガが運命と出会って幸せになりました

波木真帆

文字の大きさ
16 / 17
番外編

触れ合いたい※

しおりを挟む
久しぶりに瑞季視点。
瑞季の妊婦姿が見たいとリクエストをいただいたのでちょこっと書いてみました。
楽しんでいただけると嬉しいです♡

  *   *   *


<side瑞季>

哉藍せいらん、これは……」

瑞季ルェイジーの新しい孕妇装インフゥーヂゥアンだ。美しいだろう?」

ようやく悪阻の時期を終え、少しお腹が目立ってきた頃、哉藍は十数着の美しい孕妇装を私たちの部屋に運び入れた。柔らかく着心地の良さそうなそのドレスは全て私のために仕立てられた世界に一つだけのもの。あまりの美しさに私がうっとりしているのがわかるのか、お腹の子もさっきより元気に動いている気がする。

「え、ええ。それはとっても。ですが、多すぎです。つい数日前にもお出かけ用の衣装を下さったばかりですよ」

私の好きな淡い色味の美しい漢服に目を奪われてしまうが、ここはしっかりとお伝えしないと。まだお腹が少し大きくなったばかりだというのに、数日おきにこんなにも衣装を用意してもらっては出産の頃には一部屋が衣装で埋まってしまうかもしれない。

「あと数ヶ月で着られなくなってしまうものですから、そんなにたくさんは用意してくださらなくてもいいのですよ」

「何を言っているんだ? 瑞季の腹にいるその子はこの天翠テンツォイ帝国の皇帝である私の跡を継ぐ大事な子なのだぞ。そして、瑞季は私の愛しい伴侶。私の大事な二人を守る大事な衣装を作るのは伴侶として当然のことだ。腹の子は日に日に大きくなっているのだ。先週着ていた衣装が今週はもう着られないなんてこともあるかもしれない。私は瑞季が安心して過ごせる衣装を用意したいだけだ。私の気持ちは瑞季にとって迷惑なのか?」

「そんなっ、迷惑だなんて! 哉藍の気持ちはとても嬉しいです。ただ着られなくなってしまったらもったいない気がして……」

「さすが瑞季だな。そのようなことを考えてくれていたのか……。だがそのようなことは気にしないでいい。私が瑞季の衣装を仕立てることで民が潤うのだ。衣装だけではないぞ。私が瑞季と赤子のために用意したらしただけ民が潤うのだ。そうして、結果的に国が潤うことになる。だから何も気にしないでいい」

哉藍の言葉に驚いてしまうけれど、確かに哉藍が私のためにしてくれたことがすぐに城下で流行り、かなり活気づいていた。数ヶ月しか着ない服のためにもったいないと思ったけれど、それで城下が潤い、国が潤うならば私はその機会を奪ってはいけないのかもしれない。やっぱり哉藍は素晴らしい皇帝だ。私の浅はかな考えよりもずっと周りに目を向けていらっしゃる。

「哉藍。わかりました。この美しい衣装を喜んで着させていただきますね」

「おお、そうか、よかった。では、着て見せてくれぬか?」

「えっ? 今、ですか?」

「ああ。やっと出来たこの衣装をぜひ瑞季に着てもらいたいのだ。ダメか?」

縋るような目で見つめられると、ダメだなんて言えるわけがない。哉藍が私のために作ってくださった衣装なのだから。望んでくださるのなら、喜んで着よう。

「哉藍……手伝ってくださいますか?」

「ああ。喜んで」

哉藍はそれはそれは嬉しそうな表情で私の服に手をかけするりと脱がせていく。少しふっくらとしたお腹を優しく撫でてくれる。

「ここに私たちの子がいると思うと幸せでたまらないな」

「哉藍が触れてくださっているから、赤ちゃんも嬉しそうですよ」

「瑞季も嬉しいか?」

「ええ。それはもちろん。でも……」

「どうした?」

「もっと、奥まで触れてほしいです……」

「だが、それは……」

お腹に子ができて、重い悪阻が続いた私を心配して哉藍はいつも優しく抱きしめてくれていたけれど、決して身体をつなげようとはしなかった。それが私と赤ちゃんを守るためだとわかっていてもやっぱり哉藍と触れ合えないのは辛い。

「大丈夫です。先生にお尋ねしたら、激しくしなければいいんだそうですよ。特に、哉藍の蜜は私にもお腹の子にもいい栄養になるそうですから」

「そう、なのか?」

「はい。でも、優しくしてくださいね」

「――っ!! ああ、もちろんだとも」

私のお願いに、哉藍は新しい衣装に着替えることも忘れて、そのまま私を抱き上げて寝台に連れて行った。

「ああ……瑞季。この数ヶ月、ずっと触れたかった……特に、このぷっくりと膨らんだ赤い実に」

「ひゃあっん」

妊娠中のせいか、いつも以上に敏感になっている気がする。

「瑞季、可愛い……」

パクリと優しく喰まれるだけで身体の奥が疼く。

「せい、らん……っ、ここ……っ、おくに、ほ、しぃ……っ」

哉藍の手をとって、もうすっかりトロトロになっているそこに導くと哉藍の目に欲情の炎が見えた。

「優しくするからな」

興奮しつつも、優しい言葉を耳元で囁き、私を安心させてくれながらゆっくりと哉藍の大きな昂りが私の中に入ってくる。いつものように私を揺らしたり、最奥を激しく突いたりはしないけれど、哉藍のおっきなモノが入ってきて一つになっているというだけで私の中に安心感と心地よさが溢れてくる。

――妊娠中はとかく精神的に不安定になりがちですから、身体をお繋げになるだけで出産への不安も消えてしまいますよ。きっとお腹の御子さまもご両親が仲良くしていることに安心なさるのですよ。ですから、皇妃さまが不安だとお感じになったら、陛下の愛情をいただいたら良いのです。

先生の仰った通りだったな。哉藍の愛情が私を心から安心させてくれる。

「ああ……っ、せい、らん……っ」

小刻みに気持ちい箇所を擦られて、私はあっという間に蜜を溢した。
そんな私の姿にとろけるような笑顔を見せながら、哉藍も私の中に熱い蜜を吐き出してくれた。

「ああ……すごぃ。せい、らんのみつ、いっぱぃ……」

「瑞季……愛してるよ」

まだ中に入ったまま、哉藍からの甘い口付けに私はこの上ない幸せを感じた。
翌日目覚めるとほんの少しふっくらしていたお腹が、目に見えてわかるほどに大きくなっていた。
どうやら哉藍の蜜が本当に栄養になったみたいだ。

「すぐに瑞季の新しい孕妇装を仕立てよう」

大きくなったお腹を撫でる哉藍の声に反応するように、お腹がポコポコっと嬉しそうに動いていた。
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

結婚間近だったのに、殿下の皇太子妃に選ばれたのは僕だった

BL
皇太子妃を輩出する家系に産まれた主人公は半ば政略的な結婚を控えていた。 にも関わらず、皇太子が皇妃に選んだのは皇太子妃争いに参加していない見目のよくない五男の主人公だった、というお話。

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

僕たちの世界は、こんなにも眩しかったんだね

舞々
BL
「お前以外にも番がいるんだ」 Ωである花村蒼汰(はなむらそうた)は、よりにもよって二十歳の誕生日に恋人からそう告げられる。一人になることに強い不安を感じたものの、「αのたった一人の番」になりたいと願う蒼汰は、恋人との別れを決意した。 恋人を失った悲しみから、蒼汰はカーテンを閉め切り、自分の殻へと引き籠ってしまう。そんな彼の前に、ある日突然イケメンのαが押しかけてきた。彼の名前は神木怜音(かみきれお)。 蒼汰と怜音は幼い頃に「お互いが二十歳の誕生日を迎えたら番になろう」と約束をしていたのだった。 そんな怜音に溺愛され、少しずつ失恋から立ち直っていく蒼汰。いつからか、優しくて頼りになる怜音に惹かれていくが、引きこもり生活からはなかなか抜け出せないでいて…。

虐げられΩは冷酷公爵に買われるが、実は最強の浄化能力者で運命の番でした

水凪しおん
BL
貧しい村で育った隠れオメガのリアム。彼の運命は、冷酷無比と噂される『銀薔薇の公爵』アシュレイと出会ったことで、激しく動き出す。 強大な魔力の呪いに苦しむ公爵にとって、リアムの持つ不思議な『浄化』の力は唯一の希望だった。道具として屋敷に囚われたリアムだったが、氷の仮面に隠された公爵の孤独と優しさに触れるうち、抗いがたい絆が芽生え始める。 「お前は、俺だけのものだ」 これは、身分も性も、運命さえも乗り越えていく、不器用で一途な二人の成り上がりロマンス。惹かれ合う魂が、やがて世界の理をも変える奇跡を紡ぎ出す――。

【本編完結】あれで付き合ってないの? ~ 幼馴染以上恋人未満 ~

一ノ瀬麻紀
BL
産まれた時から一緒の二人は、距離感バグった幼馴染。 そんな『幼馴染以上恋人未満』の二人が、周りから「え? あれでまだ付き合ってないの?」と言われつつ、見守られているお話。 オメガバースですが、Rなし全年齢BLとなっています。 (ほんのりRの番外編は『麻紀の色々置き場』に載せてあります) 番外編やスピンオフも公開していますので、楽しんでいただけると嬉しいです。 11/15 より、「太陽の話」(スピンオフ2)を公開しました。完結済。 表紙と挿絵は、トリュフさん(@trufflechocolat)

処理中です...